ハイスクールD×D~堕ちた聖女の剣~   作:剣の舞姫

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バーサーカー、恐ろしい相手だ……。


第四十話 「バーサーカー」

ハイスクールD×D

~堕ちた聖女の剣~

 

第四十話

「バーサーカー」

 

 駒王学園の戦いは苛烈を極めた。

 上空で敵集団を次々撃ち落していくヴァーリと、カテレアと戦うアザゼル、それから地上に降りてきた敵にはアーチャーを先頭に祐斗、ゼノヴィア、イリナが斬り掛かっている。

 そして、戦っている間にリアスと一誠がギャスパーと小猫の救出に成功したらしく、朱乃、ソーナ、椿姫の時間停止が解除され、四人が合流してからは全員が戦闘に加わった。

 因みに上空で戦っているアザゼル以外のトップはアーシアを中心に囲み、結界を維持しながら学園への被害を最小限に抑えるため、校舎の防護結界の強化に努めているところだ。

 

「さて、こっちは役者が揃ったみたいだし、そろそろ遊びは終わりにしようか」

 

 そう言って、アザゼルは徐に懐から一本の小さな槍を取り出した。

 紫色の宝玉が持ち手に付いた黄金の槍は、一見すると唯の槍にしか見えないが、内包されている力は、あまりにも大きい。

 

「こいつは堕天龍の閃光槍(ダウンフォール・ドラゴン・スピア)っつてな、戦争なんかよりよっぽど面白い俺の趣味が高じて思わず自作しちまった人工神器だ……禁手(バランスブレイク)!」

 

 神器(セイクリッド・ギア)を作った。アザゼルは今、確かにそう発言した。

 本来、神器(セイクリッド・ギア)とは神が作り出した神秘の一つ、宝具で言うなら神造兵装と呼ぶべき代物なのだが、アザゼルはそれを人工的に作り出したということになる。

 そして、アザゼルの持つ堕天龍の閃光槍(ダウンフォール・ドラゴン・スピア)禁手化(バランスブレイカー)によってその姿を槍ではなく、アザゼルの全身を覆う黄金の鎧と化した。

 

堕天龍の(ダウンフォール・ドラゴン・)(アナザー・アーマー)ってとこかな?」

「……っ!」

 

 アザゼルが堕天龍の(ダウンフォール・ドラゴン・)(アナザー・アーマー)を纏った姿を見ていた地上のアーシアが、アザゼルの姿から……否、アザゼルの纏う鎧から目が離せなくなる。

 何故なのかアーシアにも理解出来ないが、あの鎧を、鎧に付いている宝玉を見ていると、胸の内で何かが惹かれるのだ。

 まるで、運命か何かが、アーシアとその鎧の奥にある『ナニカ』とを繋いでいるような、そんな予感が胸を締め付ける。

 

「あん? ファーブニル、てめぇ突然何言い出してるんだ? ……あの嬢ちゃんが、アーシア・アルジェントが気になるだと? それは後で聞くから今はこっちに集中しろ」

「何をぶつぶつと!」

「ああ、悪い悪い、ちょっとこいつに封じてる龍王様が煩くてな……まぁ良いさ、来いよ」

 

 ハルバード状になった光の槍を構え、アザゼルはカテレアに向かって挑発する。

 先代魔王の末裔という事で変にプライドの高い彼女は、それが馬鹿にされている、下に見られていると思ったのか、憤怒の表情でアザゼルに襲い掛かろうとするも……。

 

「フンッ!!」

「きゃあああああああっ!?」

 

 ただの一撃でカテレアの攻撃を打ち砕きながらアザゼルの槍がカテレアの全身を斬り刻み、カテレアは纏めていた髪が解け、服が破れ全身に無数の傷が出来てしまう。

 

「っ! おのれぇ!!」

 

 屈辱、正にそう例えるのが相応しいであろう顔で、カテレアは振り返りながら両腕を蛇の様に伸ばしてアザゼルの左腕に巻きつけて絡ませる。

 カテレアの腕はまるで解けるようにアザゼルの腕にくっ付いて、滅多な力では振りほどけそうにない。

 

「新世界の創世……そこに貴方は必要無い! 三大勢力の一角を屠れるのなら、この命投げ捨てようと意義がありましょう!!」

「おいおい自爆か? 御免被りたいね……取引としちゃあ安すぎるし、どうせ道連れにされるんなら、もっと別嬪さんだったら文句無かったがな」

 

 アザゼルはカテレアの腕が巻きついた左腕を右手に持った光の槍で自ら斬り落とした。結果として自由の身になったアザゼルは自爆しようと体内魔力を大きく膨らませ始めていたカテレアに槍を投擲。

 カテレアの額を槍が貫通し、悲鳴と共にカテレア・レヴィアタンの生涯はここで終了し、同時に堕天龍の(ダウンフォール・ドラゴン・)(アナザー・アーマー)が解除されて、アザゼルの手には鎧にあった紫色の宝玉だけが残った。

 

「カテレア・レヴィアタンは死んだか、残るは残党を片付けるだけだが……っ!」

 

 また一人、敵を斬りながらアーチャーが敵の残党に目を向けようとした時、突如感じた強大な殺気と、自分と同じ(・・・・・)気配を感じて周囲に居た者達を後ろへ放り投げ、直ぐに投影した干将・莫耶を構える。

 次の瞬間だった。結界をぶち抜いて天から何かが降ってきて、その手に持った戟を渾身の力でもって叩き付けてきた。

 

「■■■■■■■■■■■■■■ーーーーーーーっ!!!!」

「グゥッ!?」

 

 ギリギリで避けたアーチャーだったが、体勢を立て直して立ち上がると、避けた筈なのに左肩から血が噴出し、外套の裾が一部千切れてしまった。

 土煙に隠れてしまった新手、土煙が晴れる事で露わになると、まず驚いたのは2mを超える長身と、その長身よりも長い戟を軽々と持っている赤髪の巨漢の理性無き瞳だ。

 

「まさか、ここで出てくるか……バーサーカー」

「アーチャー!」

「下がっていろリアス・グレモリー……奴は、君が敵う相手ではない」

 

 獣の様に唸るバーサーカーが理性無き瞳でアーチャーを睨むと、その手の戟を両手に力強く握り締め、全身の筋肉が盛り上がる。

 来るか、そう思って干将・莫耶を構えたアーチャーは一気に突進してきたバーサーカーの戟を避けつつ、頭上へ飛び上がり干将の刃を首に叩き付けようとした。

 しかし、狂っていようとバーサーカーは武人だったらしく、本能のレベルで見事戟の柄で受け止め、いや……受け止めるどころか押し返して干将の刃を砕きながら柄をアーチャーの脇腹に叩き込む。

 

「■■■■■■■■■■■■ーーーーーーーーっ!!!!」

「がぁっ!?」

「アーチャーさん!!?」

 

 吹き飛ばされながらも体勢を整えようとしたアーチャーを追い掛けてきたバーサーカーが、アーチャーに戟を叩き付け、そのままアーチャーは地面に背中から落とされる。

 バーサーカーの筋力パラメーターは恐らくAを超えているのだろう、地面にアーチャーが叩き付けられた時、あまりの力に地面が陥没し、放射状に皹が広がった。

 

「カハッ! ……っ!」

 

 振り下ろされた戟の切っ先を転がって避けたアーチャーは転がりながら起き上がって、バーサーカーの足元に残った莫耶を投げ捨てて後方へ飛び退き、莫耶を爆発させた。

 

壊れた幻想(ブロークンファンタズム)!」

 

 バーサーカーの足元で莫耶が爆発し、爆炎の中にバーサーカーが消える。

 だが、これで決まったとは思えない。ここで確実に勝負を決めるため、アーチャーは校庭にある旗立ての高いポールの上へ駆け上ると、黒塗りの弓を投影し、もう一度投影した矢を番えた。

 

「これで、死ね……バーサーカー!」

 

 放たれた矢は偽・螺旋剣(カラドボルグⅡ)、貫通力、破壊力ではアーチャーの持つ矢の中でも最強クラスの宝具だ。

 並のサーヴァントなら、これで確実に殺せるだけの力があると自負しているので、まさに必殺の一撃、これならばバーサーカーとて無事では済むまい……そう思っていたのだが。

 

「■■■■■■■■■■■ーーーーーーーっ!!!」

 

 爆炎の中から閃光の如き勢いで戟が振られ、飛来した偽・螺旋剣(カラドボルグⅡ)を叩き落されてしまった。

 そして、出てきたバーサーカーは、無傷ではなかったが、ダメージとしては差ほど大きくはないようで、莫耶一本だけの壊れた幻想(ブロークンファンタズム)では大ダメージは期待出来なかったらしい。

 

「チッ……なるほど、流石は一騎当千と謡われた三国志史上最強の英霊だ」

 

 既に、アーチャーはバーサーカーの正体を見破っていた。

 バーサーカーが使用している武器を解析した結果、宝具を使われずとも看破出来てしまう。何故ならバーサーカーが使っている戟は、方天戟と呼ばれる種類の武器で、その中でも最強と名高き方天画戟という名なのだ。

 更にバーサーカーの格好から、間違いなく中国系だというのは察しが付く。中国系の英雄で、方天画戟を使った人物など、歴史上で一人しか居ない。

 

「まさか貴殿と刃を交える事になるとは思わなかったな、呂布奉先」

「■■■■■■■■■■■■■ーーーーーーーっ!!!!!」

 

 大した脚力だと賞賛したくなるほどだ。

 バーサーカーはただジャンプしただけでアーチャーよりも高く飛び上がり、方天画戟を振り下ろしてきた。

 勿論、アーチャーが避けた事で刃はポールを一撃で破壊し、地面へと着地した両者は向かい合って再びぶつかろうとする。

 

「生憎だが、貴様のような筋肉達磨と力比べ出来るほど、私は優秀な英霊ではないのでね……よもや裏切りの英雄と呼ばれた貴様が、卑怯などと言うまい?」

 

 振り下ろされる方天画戟を避けながらバーサーカーの脇を走りぬけると、バーサーカーの頭上数mの所に27本の剣を投影、そのまま射出する。

 

「まぁ、狂戦士となった貴様は、口が利けないだろうがな」

 

 バーサーカーの身体に次々と剣が突き刺さるが、何本かは叩き落されてしまい、バーサーカーの足元に転がった。

 だが、次の動きに移らせるような真似はしない。

 

投影、開始(トレース・オン)……鶴翼(しんぎ)、欠落ヲ不ラズ(むけつにしてばんじゃく)」

 

 再度投影した干将・莫耶を投げつけ、更にもう一組投影、それも投げつける。

 全身に剣が刺さったバーサーカーは、しかし痛みすら感じていないのか方天画戟で飛来する二組の夫婦剣を迎撃するが。

 

「心技(ちから)、泰山ニ至リ(やまをぬき)、心技(つるぎ)、黄河ヲ渡ル(みずをわかつ)」

「■■■■■■■■■■■■ーーーーーーっ!!!!!」

 

 迎撃しようとした夫婦剣と、足元に転がる剣が爆発して苦しそうな声で吼えるバーサーカーに向かって、三度投影した干将・莫耶をオーバーエッジ状態にしながら駆け出したアーチャーは腕をクロスさせたまま刃を腰より後ろへ向けて姿勢を低くする。

 空気抵抗が小さくなった事で駆ける速度が上がったアーチャーは、現状で出せる最高速度のままバーサーカーへ迫り。

 

「唯名(せいめい)、別天ニ納メ(りきゅうにとどき)」

 

 干将・莫耶を振り上げながらクロスを描くようにバーサーカーの胴体を斬り付け。

 

「両雄(われら)、共ニ命ヲ別ツ(ともにてんをいだかず)!!」

 

 勢いでジャンプしたので、重力に従いながら地面へと着地する勢いと共に振り上げられていた刃を再び振り下ろす。

 思いのほかバーサーカーの身体が固かったからか、干将・莫耶の刃は砕けてしまったが、アーチャー必殺の鶴翼三連を受けたのだ。これで決まらなければ……。

 

「っ!? ぐぁっ!?」

 

 横振りされた方天画戟の棒の部分がアーチャーの右腕に叩き込まれ、そのままアーチャーを吹き飛ばしてしまった。

 余程の力でやられてしまったのか、アーチャーはサーゼクス達が張っている結界の所まで吹き飛ばされ、地面を転がる。

 

「アーチャーさん!!」

「っ! 不味い! 右腕が折れている……っ」

 

 サーゼクスがアーチャーの右腕を見れば一目瞭然、二の腕の半ば辺りが曲がってはいけない方向へ曲がっているのだ。

 

「クッ……右腕が逝ったか」

 

 まさに化け物だと言わざるを得ない。

 あれだけの攻撃を受けて、それでもまだ立ち上がり、これだけの攻撃をする余裕があるバーサーカーは、正に三国志最強と言うべきだろう。

 

「ぬぉっ!!」

 

 すると、突然アーチャーの横にアザゼルが落ちてきた。

 

「はぁ、せっかく残るは弓兵が戦ってるバケモンだけかと思ったのによぉ……ヴァーリ、まさかお前が裏切り者だったとはな」

「すまないなアザゼル、こちらの方が面白そうだったんだ」

 

 敵集団がアーチャーとバーサーカーの戦いの間に全滅したと思ったら、今度はヴァーリの裏切りによって、敵がバーサーカーとヴァーリの二人になってしまった。

 

「よう弓兵、お互い片腕使えないなんて奇遇だな」

「部下の手綱を握れなかった貴様と一緒にするな」

「ハハ! こりゃ一本取られたなぁ」

 

 油断していたとはいえ、堕天使総督アザゼルを一撃で地面に叩き落したヴァーリと、三国志最強の英霊であるバーサーカー、リアス達では戦いにすらならないであろう強者二人を前にして、いよいよピンチが訪れた。

 

「なぁヴァーリ、うちの副総督が集めた情報によると、俺たち三大勢力にとって危険分子が集められた武装勢力があるって話なんだが……禍の団(カオス・ブリゲード)と言ったか? お前と、あそこのバケモノもそのお仲間って事だな?」

「ああ、そうなる……まぁ、俺はあの狂戦士と会ったのは今日が二度目だがな」

「そうかい、まぁそいつは別に良いさ……んで、各勢力の危険分子を束ねる禍の団(カオス・ブリゲード)のトップの名も入手していてな……無限の龍神(ウロボロスドラゴン)オーフィス、だろ?」

 

 聞き覚えのある名がアザゼルの口から出てきた。その名は、先日アーチャーが戦った少女の名……まさか、そこまでの危険人物だったとは。

 

「さて、こちらからも聞かせて貰おうか……今、バーサーカーが襲ってこないということは、近くにマスターが居るな?」

「バーサーカー? ああ、狂戦士の事か……なるほど、奴はバーサーカーというのか、君のアーチャーという名と同じ意味だな?」

「質問しているのはこちらだ。それで、返答や如何に?」

「君の言うマスターというのがアーシア・アルジェントのような存在なのだとしたら、俺は知らん……まぁ、来ているのだろうが、どこか離れた所で見ているのだろう」

 

 流石に敵マスターの名は判らなかった。まぁもっとも、バーサーカーの正体が判明しただけでも良しとするべきなのだろうが、流石に現状では解決とは言い難い。

 

「おっと、狂戦士も我慢の限界みたいだな……まぁ、本当なら俺が弓兵と戦いたかったが、仕方ない」

 

 そう言ってヴァーリは一誠の方へ顔を向ける。

 

「兵藤一誠、俺と戦え」

「何……!?」

「当然だろう? 赤と白、それは戦う運命にある。こうして敵同士として相対したのなら、戦うのが当然だ」

 

 光翼と、全身の鎧に付いている宝玉が光り輝いた。既にヴァーリは臨戦態勢を整えていて、戦う気力十分だ。

 

「勝負と行こうじゃないか、下級悪魔になる前は一般人でしかなかった史上最弱の赤龍帝:兵藤一誠と、この俺、先代魔王ルシファーの血を引く史上最強の白龍皇:ヴァーリ・ルシファーの!!」

 

 こうして、アーチャーVSバーサーカーという二人の英霊の第二ラウンドと、赤龍帝VS白龍皇という最弱と最強の戦いが、同時に始まろうとしていた。




次回はアーチャーVSバーサーカーの続きとイッセーVSヴァーリ!

あ、サーヴァントステータス表、更新しますた。

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