ハイスクールD×D~堕ちた聖女の剣~   作:剣の舞姫

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オーフィスやグレートレッド、666は私の作品では型月世界で言うアルクェイドとか第五位の蜘蛛クラスのレベルです。


第三十七話 「無限の龍神」

ハイスクールD×D

~堕ちた聖女の剣~

 

第三十七話

「無限の龍神」

 

 突如アーチャーの目の前に現れた漆黒の少女、自らオーフィスと名乗った彼女から発せられるのは抑えているのであろうとも、抑えきれずに漏れ出ている圧倒的なまでのドラゴンのオーラ。

 元来、ドラゴンというのは幻想種の頂点に位置する存在。存在そのものが一つの神秘であり、千年以上を生きるモノであればそれ自体が「魔法」に等しいとされている。

 そして、今まさに目の前に立つ少女から感じられる気配は圧倒的なまでの神秘の塊、生前に出会った死徒二十七祖など可愛く見えてしまうほどだった。

 

「感じる、お前から、無限を」

「む……?」

「我、その無限、知らない……お前、何?」

 

 アーチャーから感じられる無限、そんなもの一つしか無い。だが、自身の宝具でもあるソレを、誰にも、それこそマスターであるアーシアにすら話した事が無いソレをどうしてこの少女は見破る事が出来たのか。

 

「貴様……何者だ?」

「ん、我、オーフィス……もう、名乗った」

「そうではない、私の“コレ”に気づいた貴様の正体を聞いている……ドラゴンであるというのは分かるが」

「無限の龍神、周りはそう呼んでる」

 

 無限の龍神、御大層な名だが、成る程確かに感じられる魔力は途方も無い。それこそ無限に魔力を持っているのではないかと思ってしまうほどだ。

 

「それで、私に何の用だ?」

「我、探してる……グレートレッドを倒せる奴。お前の無限、我の無限、合わせれば勝てる、かもしれない」

「グレートレッドだと?」

 

 また知らない名が出てきた。

 

「協力、して」

「悪いが断る。私はマスターを持つサーヴァントだ、その私がマスター以外の者に素直に従うわけが無かろう」

「マスター……なら、そいつ居なければ、我に協力する?」

「マスターに手出しするというのであれば、貴様が何者であれ殺すが……ここで始めるつもりか?」

 

 瞬時にスーツからいつもの外套姿に変わって干将・莫耶を投影する。流石にこの少女を相手にして勝てるとは思えないが、マスターに危害を加えられる可能性がある以上、野放しにするわけにはいかない。

 

「無理、お前では我に勝てない」

「たわけ、やる前から決め付けてくれるな」

 

 ありったけの龍殺しの概念武装の設計図を頭に描く。まともに戦って勝てないのなら、勝てる戦いをすれば良い。

 そもそも、エミヤシロウの戦い方というのはそういうものだ。

 

「貴様も龍種だというのなら、龍殺しの概念を持つ武器は天敵であろう……?」

 

 アーチャーの周囲に展開し、宙に浮いたまま剣先をオーフィスに向けた無数の剣軍。

 グラム、バルムンク、アスカロン、天羽々斬剣、更にはベオウルフが龍退治の際にドラゴンにトドメを刺したとされる短剣やギリシャ神話のカドモス王がドラゴンを倒した際に用いた鉄槍など、とにかく龍殺しの概念や逸話を持ったアーチャーが投影可能な武器全てだ。

 

「……嫌な、武器ばかり」

「だろうな、貴様が龍種である以上、これらの武器全てが貴様の天敵だ」

 

 流石のオーフィスも少しばかり警戒し始めたのか、先ほど以上にドラゴンのオーラが膨れ上がってくるのを感じた。

 これにはアーチャーも背筋が凍る思いをしたが、真っ直ぐオーフィスを睨み付けている……のだが。

 

「っ!?」

「嫌だから、先に動く」

「ガッ!?」

 

 気が付いた時にには既にオーフィスの姿が目の前にあり、腰など一切入っていない軽い拳がアーチャーの鳩尾に入った。

 しかし、その一撃はあまりに重く、あまりに強烈で、アーチャーの身体は簡単に屋上のフェンスまで吹き飛ばされ、フェンスが激突した衝撃で大きく凹む。

 

「ぐっ、ガハッ!?」

 

 オーフィスにとっては軽く殴った程度なのだろうが、アーチャーにとっては大ダメージだった。

 口から血を吐き、投影した武器全てがいつの間にか破壊されている。

 

「ん」

「グガァ!?」

 

 まただ。またもやオーフィスの動きを捉えられず、回し蹴りで屋上の端まで吹き飛ばされてしまう。

 

「弱い……?」

「くっ……不味い、か」

 

 今の一撃で脳を思いっきり揺らされて眩暈がするのか、ふらふらと立ち上がろうとしたアーチャーだったが、全身に力が入らず座り込んでしまった。

 

「……無限、使わない?」

「生憎だが、使いたくとも使えん。魔力が足りんのでな」

 

 アーシアの魔力では、アーチャーが宝具を使うのに必要な魔力を捻出出来ない。

 切り札を使えない状況で、アーチャーが取れる手段は限られている上、アーシアが主であるが故にアーチャーのステータスは相当に低いのだ。

 これが遠坂凛や岸波白野であればもう少しステータスも高かったのであろうが、現状アーチャーはサーヴァントとしては弱い部類に入る。

 

「蛇、使う?」

「蛇、だと?」

「ん、我の蛇、飲めば強くなる」

「……一種のドーピングか、遠慮させてもらう」

「ん、なら、無限使えるようになったら、また来る」

 

 そう言って、オーフィスは音も無く消えた。途端に今まで掛かっていた重圧から開放されてアーチャーは起こしていた上体を倒して屋上に倒れ込んだ。

 

「チッ……あばらも数本やられたか」

 

 だいぶ重症だ。

 幸いにして霊核には問題が無かったので生きているが、あのまま続けていたら確実にアーチャーは死んでいただろう。

 

「コカビエルに漸く勝てただけでは、まだまだ足りないという事だな」

 

 お手上げ、そう言わざるを得ないだろう。

 アーチャーは既に死して英霊となった身、これ以上の成長はありえないので、強くなるにはマスターが今より成長することでアーチャーのステータスを上げるか、別の……。

 

「いや、あり得んか……存外、今のマスターを気に入っているからな」

 

 特に裏切る理由も無いのに裏切って、アーシアを悲しませるのは本意ではない。

 

「それより、早く来てくれ、マスター」

 

 アーシアの気配が階段を駆け上っているのを感じながら、アーチャーは意識を手放す。

 この後、アーシアが倒れたまま意識を失っているアーチャーを発見して、そしてそこに戦闘の跡があるのに気づいて、慌てながら治療を施すのだった。

 

 

 公開授業が行われた日の夜、アーシアは一応と用意してあったアーチャー用の部屋のベッドで横になるアーチャーの看病をしていた。

 折れたあばら骨は既に接合を済ませてあるし、主な外傷も塞いである。なのでもう立ち上がる事も可能なのだが、今晩だけは大人しくしておくようにとアーシアが珍しく命令してきたので、アーチャーも大人しく横になっているのだ。

 

「いったい、何があったんですか?」

「私もよくは理解していない……敵の名はオーフィスといったか、グレートレッドを倒すのに協力しろ、とか言っていたが」

 

 オーフィス、グレートレッド、この名に聞き覚えはあるかとアーシアに問いかけてみたが、アーシアも聞き覚えがあるような無いような、そんな曖昧な答えが返ってきた。

 

「とりあえず、明日の会談の席でサーゼクス・ルシファーかアザゼルにでも聞いてみるさ」

「そうですね、私も裏の事は知っていても一介のシスターでしかたら、基本的な事しか知りません」

「ああ……ああ、そういえばセラフォルー・レヴィアタンから預かったものがある」

「?」

 

 アーシアに差し出したのは人間の力(ヒューマン・システム)の王将の駒だ。

 

「これから先、アーシアは中立の代表という立場になる。恐らくはレーティングゲームにも招かれる事もあるだろうから、そのときまでに仲間を集めておけとの事だ」

「わ、私が代表ですか!?」

「そうだ、明日の会談の席ではアーシアは中立代表として席に座る事になっている」

「はぅ……わ、私なんかより、アーチャーさんの方が」

「私はアーシアのサーヴァントであって君の下の立場だ。君が代表をやらないでどうする」

「はぅぅ」

 

 なんだか途轍もなく大事になっている気がするアーシアだったが、それは決して大事ではない。

 元々はただのシスターだったのが、聖女と祭り上げられ、魔女として教会を追放され、今では中立代表という立場になってしまったのだから。

 

「気負う必要は無い、私も君のサーヴァントとして精一杯サポートはするつもりだ」

「はぅ……お願いします」

 

 後の未来で、中立代表の人間であり、「龍の姫」や「龍女皇(ドラゴンズ・ハイプリーステス)」「癒しの聖女王」の異名で呼ばれる事になる少女は、今はまだまだ自信が無くて頼りない所があった。

 近い将来、多くの邪龍や龍王を従え、味方には癒しを、敵には龍の災厄を与える存在とは言え、もうすぐ17歳になる少女が立派になるには、もう少し時間が必要らしい。




疑問が一つ、サーヴァントのステータスってマスターが強くなったり、魔力量が何かの要因で上がったりしたら上昇したりするんですかね?
セイバーが凛と再契約したときも士郎がマスターだったときよりステータスが上がりましたから、召喚後にステータス変動が全く無いという訳ではないみたいですし。

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