ハイスクールD×D~堕ちた聖女の剣~   作:剣の舞姫

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お待たせしました! 今回から停止教室のヴァンパイア編スタート!!


停止教室のヴァンパイア
第二十九話 「鈍感弓兵に水着の誘惑


ハイスクールD×D

~堕ちた聖女の剣~

 

第二十九話

「鈍感弓兵に水着の誘惑」

 

 コカビエルとの戦いの後、悪魔に転生したゼノヴィアとイリナは駒王学園に転入してきた。

 住まいはリアスが用意した悪魔ご用達の学生寮で、二人はそこで生活しているらしく、学生生活というものを随分と楽しんでいる様子だ。

 そして、季節も夏が迫ったある日、オカルト研究部は生徒会の依頼で学園のプール掃除を行う事になっていた。

 報酬は掃除後に水を張ったプールで一日、自由に遊んでも構わないという事なので、時期的にも暑くなってきたと感じる面々は大喜びで掃除を買って出たらしい。

 

「うへぇ……これを掃除するのかよ」

 

 意気揚々とプールに来た一誠が一気にテンションを落とす。

 何事かとアーチャーが霊体化したままプールへ目を向けると思わず目を覆いたくなった。

 

『これは……また酷いな』

「アーチャーさん?」

 

 霊体化しているアーチャーの声が聞こえるのはマスターであるアーシアのみなので、当然だがアーチャーの呟きが聞こえたアーシアが同じようにプールの方を見れば……いつもの笑顔が引き攣る。

 

「苔……」

「あ、あらあら……これは手強そうですわね」

「あはは……これ、僕達でやるんだね」

「うっそぉ……体操着が汚れるわ」

「むしろ、よくここまで汚れを放置したものだ」

 

 これは、仕方がない。

 実体化したアーチャーはいつもの戦闘服ではなく、黒いジーンズに黒いワイシャツ姿で、更に両手には投影したデッキブラシ二本を構えている。

 

「水を抜け、リアス・グレモリー」

「え、ええ……?」

「オールシーズンで水を張っていたからここまで汚れたのだ、後で生徒会には苦情を入れるべきだろうが……まぁいい、始めるぞ」

 

 水を抜いたプールは、余計に汚れが酷く見えて、とてもではないが足を踏み入れるには抵抗があるのだが、靴を脱いだアーチャーは何の躊躇いも無くプールの底へと飛び込み、両手のデッキブラシを回転させた。

 

「行くぞ頑固な汚れ共よ……染みの数は十分か!」

 

 

 10分後、たった一人の男の手によってプールが見事に……それこそ新築時よりも綺麗なのではないかと思わせるくらい綺麗になった。

 ただし、それを行ったのが自分のサーヴァントだという事に、マスターである少女はどこか頭痛を感じていたのは、仕方が無いのだろう。

 

 

 「私の仕事はこれで終わりだ」と言って満足そうな表情で霊体化した弓兵は無視して、早速だがオカルト研究部は更衣室に入って水着に着替えていた。

 皆が着替えている間、アーチャーは更衣室の屋根の上に霊体のまま待機して誰も近づかないよう見張っている。

 

「あらアーシア、学校指定の水着じゃないのね?」

「はぅっ!? えっと、その……この前、クラスメートの桐生さんと一緒にお買い物に行って、そこで買ったんですけど」

 

 アーシアが着替えた水着は普段の彼女から見れば少し大胆な薄桃色のパレオ付きビキニだった。

 胸は標準サイズより小さいアーシアだったが、それでも多少なりとも膨らみはあるのでビキニでも十分彼女の胸を大胆に見せており、色合いが彼女の魅力にピッタリとマッチしている。

 

「あらあら、少し冒険しましたのね」

「はぅぅ」

「へ~! もしかして、アーシアさんってばアーチャーさんに見せる為に買ったとか?」

「はぅっ!?」

 

 図星である。

 因みに、購入の際のお金はアーチャーから毎月渡されるお小遣い(何処から資金を得てるのかは不明)から何とかやり繰りして購入したので、実はちょっとアーシアの財布が寂しくなっているのは内緒だ。

 

「ふむ、アーチャー殿か……イリナ、あの事をアーシアに話すべきではないか?」

「あ、そうだよね」

「? えっと……」

 

 まだ体操着姿のままのゼノヴィアが何やらイリナにアーシアへの用事らしき話をした。

 何事かと思っていると、白のビキニに着替えたイリナが唐突にアーシアに頭を下げてきて、同じくゼノヴィアもアーシアに頭を下げている。

 

「お願い! アーチャーさんに剣の修行を付けてもらえるように頼めないかな?」

「この通り、頼む」

「剣の修行……ですか?」

「うん、聖剣使いとしてそれなりに修練や実践も経験してきた私とゼノヴィアだったんだけど」

「アーチャー殿とコカビエルの戦いを見て、見事に自信を打ち砕かれた。まぁ、私の場合はその前に彼に敗れているのもあってな、剣士としての実力不足を実感しているんだ」

「はぁ……」

 

 そういう事なら別にアーシアから頼むのも吝かではない。

 それに、悪魔に転生してから先日の一件を謝罪してしてくれて、そして友人になってくれたゼノヴィアとイリナの頼みは出来るだけ聞き入れてあげたいという思いもある。

 

「わかりました、アーチャーさんに聞いておきますね」

「ありがとうアーシアさん!」

「流石は元聖女、優しき心に感謝を」

「感謝を」

 

 馬鹿二人、ここに居た。

 目の前で感謝の祈りを捧げた事で頭痛に見舞われているイリナとゼノヴィアに苦笑しながらアーシアは髪を三つ編みに結ってアーチャーが作ってくれた赤い聖骸布製リボンで先を結ぶ。

 

「ほら、馬鹿やってないで行くわよ」

「遅いです……」

 

 既に他のメンバーは着替えを終えているらしく、アーシア達も急いで着替えを終えて更衣室を出て行った。

 プールでは数分前に着替え終えた一誠と祐斗が待っており、朱乃が魔法で水を張ったプールの前で準備体操をしている。

 

「お待たせイッセー、祐斗」

「お、おお! おおおおおお!!!」

 

 着替え終えた女性陣を見てやはりというか、一誠が大興奮している。当然だろうか、女性陣は全員美少女ばかり、特にリアスと朱乃は歳不相応の我侭ボディに大胆すぎる水着を着用しているのだから、興奮しない青少年は居ないだろう。

 まぁ、祐斗は紳士なのでそんな愚は犯さないのだが。

 

「あら? アーチャーさんはいらっしゃいませんの?」

「アーチャーさんでしたらまだ更衣室の屋根の上に居るみたいですよ?」

 

 アーシアが視線を向けた先、そこには誰も居ないように見えるが、そこにアーチャーが居るのがアーシアの感覚で判る。

 

「そう、アーチャー! ちょっと来てちょうだい」

「……何事だ?」

 

 リアスに呼ばれ渋々という表情で彼女たちの前に下りてから実体化したアーチャーは、先ほどと変わらない私服姿、水着に着替えた様子も無い。

 

「あのねアーチャー、せっかくなのだし貴方も遊ばないのかしら?」

「遠慮させてもらおう、私の仕事はマスターの安全を守る事だ。故に無粋な邪魔者が侵入して来ないよう見張っている」

「それは使い魔にやらせてるから、貴方も水着に着替えてきなさいな。アーシアだってそれを望んでいる筈よ?」

 

 ねぇ? とリアスがアーシアに伺うと、アーシアもアーチャーを見上げて頷いた。

 

「……仕方が無い」

 

 更衣室を借りるぞ、と言い残してアーチャーが中に入り、一分ほどで出てきた。

 褐色の肌に鍛え抜かれた筋肉が美しい上半身と、下半身には黒い海パンを履いたアーチャーの姿に、女性陣が思わず頬を赤らめてしまうのは無理も無いだろう。

 

 

 プールでは早速だが一誠と祐斗、アーシア、が泳ぎを楽しんでおり、朱乃は小猫に泳ぎを教え、リアスはプールサイドに用意したビーチチェアに横になって日光浴をしている。

 残るアーチャーはプールに入らずリアスとは反対側のプールサイドに座り、楽しんでいるアーシアを眺めながらも意識をプール敷地内に向けて警戒を続けていた。

 

「あの、アーチャーさん」

「む? どうした、マスター」

「えっと、泳がないんですか?」

「私の事はいいから君は遊んでくると良い」

「いえ、それは……」

 

 着替えこそしたものの、一向にプールに入る気配の無いアーチャーにアーシアが心配そうに近付いてきた。

 プールから上がって水に濡れた身体からは水滴が滴り落ちて少女に淫靡な色気を醸し出している。

 

「えっと……どうでしょうか?」

「?」

「似合い、ますか?」

「ああ、その水着の事か……ふむ」

 

 改めてアーシアの全身を上から下まで見つめて、一つ頷く。

 

「良く似合っている、まるで君の為に作られた水着であるかのようだ。流石はマスター、何を着ても似合うというのはサーヴァントとして鼻が高いというものだな」

「はぅ……」

 

 ところで、先ほどからイリナとゼノヴィアの姿が見えないのだが、どうしているのかとアーチャーがプールを見渡すと、ゼノヴィアは一誠を連れて何故か更衣室に入っていくのが見えて、イリナは潜っていたのか、丁度出てきた時にアーチャーと目が合ってニッコリと笑顔を向けてきた。

 

「アーチャーさ~ん! アーシアさ~ん! 一緒に遊びましょうよ~!」

「あ、は~い! アーチャーさん、行きましょう?」

「……いや、私はここで見ているから、マスターは気兼ねなく遊びたまえ」

 

 気兼ねするから誘っているというのに、この男は一切取り合わなかった。

 折角プールに来て、ようやく水着にも着替えてくれたのに、一度も水に入らないなどと、それではここに居る意味が無い。

 

「えい!」

「む? ぬぉ!?」

 

 座ったままのアーチャーの腕を、アーシアがその華奢な腕で引っ張り、そのまま彼をプールに引き摺り落とした。

 どうやら強化の魔術を使って筋力を強化したらしく、それでアーシアの華奢な腕でもアーチャーを引き摺り落とす事が出来たようだ。

 

「プハッ! ……魔術の腕が上がった事を褒めるべきか、悪戯が過ぎるマスターを叱るべきか、悩む所だな」

「あはは! アーチャーさんもアーシアさんの前だと形無しだね!」

「紫藤イリナか……やれやれ、うちのマスターも随分と過激になったものだが、一体誰の影響なのだろうな」

「私達のクラスの桐生さんじゃないかなぁ? アーシアさんと一番仲が良いし」

「桐生……ああ、あの」

 

 アーシアに碌な事を吹き込まない小娘、それがアーチャーの桐生という少女に対する認識だ。

 勿論、転入してからずっとアーシアの面倒を見てくれて、今では時々一緒に出かけたりする程の友人になってくれた事は感謝するが、ある意味ではエロ三人組と呼ばれる一誠と、その友人である元浜、松田の三人と同様に警戒はしている。

 何故なら桐生という少女、純真無垢なアーシアに色々と……そう、エロ方面の知識を植えつけてくれて、しかもそれが間違った知識ばかりではなく、時には正しい知識まで吹き込むから性質が悪い。

 

「マスター……頼むから君は悪女にならないでくれ」

「?」

「えっと……多分大丈夫だと思うかなぁ? だってアーシアさん、根本的に天然で純真無垢なままだし」

 

 だからこそ性質が悪い場合もある。

 真っ白な心の主が、変な色(主にピンク方面)に染まらぬ事を祈りながら、アーチャーの一日は過ぎ去っていく。

 だが、今はまだ平和をかみ締めていられるだけ良いだろう。この数日後には、再び彼らに厄介事が舞い込んでくる事になるのだから。




次回は再び訪れる諏訪部ワールド。

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