ハイスクールD×D~堕ちた聖女の剣~   作:剣の舞姫

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何だろう、一番書きたかった話が書けた事で力が抜けたのか、出来がイマイチ。


第二十七話 「白龍皇」

ハイスクールD×D

~堕ちた聖女の剣~

 

第二十七話

「白龍皇」

 

 具現化した奇跡の光が、古の堕天使コカビエルを跡形も無く消し飛ばした。

 この世の全ての光が、祈りが、願いが、奇跡が凝縮したかのような神々しくも儚く、そして神秘的な光景を目の当たりにした面々は誰もが言葉を失い、同時にアーチャーが叫んだ剣の正体にも呆然としている。

 当人たるアーチャーは、今も両手で握り締めている約束された勝利の剣(エクスカリバー)を見つめて、その完成度に思わず苦笑を洩らしていた。

 

「……クッ(やはり、私にはこの剣を完全に投影するなど不可能らしいな……この程度の出来で約束された勝利の剣(エクスカリバー)を名乗るのは、彼女に失礼か)」

 

 恐らく、アーチャーの知る騎士王が見れば、見事だと言ってくれるだろう。だが、アーチャーから見れば、この約束された勝利の剣(エクスカリバー)は、彼女が持っていた本物と比べるのもおこがましく、そしてあまりにも無様な出来だとしか言えない。

 

「エクス、カリバーだと……? 馬鹿な! それがエクスカリバー? そんな訳が無い!! エクスカリバーとしての能力など何も持たない、ただ光を飛ばずだけの代物が、エクスカリバーだなどと、認められるか!!」

「……ふん、どうやら貴様は見る目だけは確かなようだ。確かに、これは本物の約束された勝利の剣(エクスカリバー)ではない、所詮は出来の悪い模造品に過ぎんさ。だが、私が再現出来る限界まで真作に迫った物でもある」

「模造品だと?」

 

 バルパーの叫びに、アーチャーが懇切丁寧に説明していた。

 何故、敵にそんな真似をするのかとリアス達が疑問に思ったが、次の言葉でその理由に気がつく事となる。

 

「だが、貴様が長年研究してきたエクスカリバー……そこで折れている物やゼノヴィアの持つ物も、元々は模造品だ」

「「「なっ!?」」」

 

 驚きの声を上げたのはバルパーだけではない、イリナとゼノヴィアも、同じく模造品という言葉に驚いている。

 

「5本を統合したエクスカリバーを解析した事でようやく判った事だ。そもそも、エクスカリバーはカムランの丘の戦いのあと、湖の乙女に返却され既にこの世に存在しない剣。それがこの世に存在している時点で怪しいとは思っていたが、なるほど……天界がエクスカリバーの伝承を元に作った模造品だったとはな」

 

 それならば折れたという話にも納得出来るものだ。と、何気なく呟くアーチャーに、ゼノヴィアとイリナは確かに! という顔をしていた。

 二人ともアーサー王伝説については当然だが知っているし、アーサー王の最後とて覚えている。その最後の話には確かに出ているのだ、エクスカリバーが湖の乙女へと返却されているという事実が。

 

「そ、それでは……そのエクスカリバーは何だというのだ! 貴様は真作を再現出来る限り再現したと言ったな! 本物を見たことがあるとでも言うのか!? この世に存在しない筈の剣を!」

「それを貴様に言う必要があるのか、という疑問もあるが……まぁ、あるとだけ言っておこう」

 

 詳細を教えるつもりは無い。故にいい加減にうるさくなったバルパーを気絶させたところで、突然一誠の赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)の宝玉が光り輝いた。

 

『随分と懐かしい光景を見せてくれたじゃねぇか、弓兵』

「ど、ドライグ!? どうしたんだよ突然!!」

『いや何、さっきまで相棒がリアス・グレモリーの乳で限界を超えた事を嘆いていたんだがな、あまりに懐かしい光景を見て思わず昔を思い出していたのさ……昔の相棒が担った奇跡の輝きをな』

「ほう? すると君は、アルトリアを知っているのか」

『ハッ! 懐かしい! 懐かしいじゃねぇか! 現代でも居る所には居るんだなぁ、アイツの本名を知っている奴は』

 

 赤龍帝ドライグ、彼の言葉でアーチャーは確信していた。

 おそらく、この世界の彼女は……何代か前の赤龍帝だったのだと、一誠の先輩だったのだという事を。

 

「アルトリア? アーチャー、アルトリアとは誰なのかしら? 話から察するにアーサー王の名前みたいだけど、アルトリアって確か女性名じゃない?」

「ああ、女性名だ。当然だろう、かの騎士王は女性だったのだからな」

『しかもまだ小娘の頃に王になったとんでもねぇ女だったなぁ……女伊達らに一国の王を勤めてただけあって、並の男より男らしかったが』

 

 驚きだった。まさか誰もが男だと思っていたであろうアーサー王が、まさか女だったという歴史的事実を知って、驚くなという方が無理な話ではあるが。

 

「そろそろお話は終わったかな?」

 

 すると、突然知らない声が上空から聞こえてきて、約束された勝利の剣(エクスカリバー)の一撃で結界が消し飛んだため、何の抵抗も無く何者かが侵入してきた。

 見れば、それは純白の鎧と、鎧の一部であろう翼を持った人物、感じられるオーラは強者のソレであり、唐突の事に驚くが、全員が構える。

 

「待て、別に戦いに来た訳じゃない。勿論、強い者と戦えるのは本望ではあるが、今日はアザゼルの依頼でコカビエルとバルパー・ガリレイ、フリード・セルゼンの回収に来ただけだ……まぁ、コカビエルは跡形も無く消し飛んでしまったから、回収は出来そうにないがな」

 

 アザゼル、それは堕天使のトップであり、コカビエルの上司でもある存在の名だ。

 

「今回の一件はコカビエルの独断であって堕天使側の総意ではないとだけ伝えてほしいと伝言も預かっている。死んだコカビエルは仕方が無いとしても、バルパー・ガリレイとフリード・セルゼンだけは回収して処罰を下す事になった」

「そう、態々回収ご苦労様と言いたい所だけど、もう少し早く来る事は出来なかったのかしら?」

「それはすまんな。出来ればもっと早く来たかったのだが、何分俺自身がこちらに来るのに時間が掛かってしまった……おっと、そういえばまだ名乗っていなかったか」

 

 男は静かに一誠と、そしてアーチャーに視線を向けると、一気に急降下して気絶しているバルパーの前に降り立つ。

 

「俺は白龍皇、“バニシング・ドラゴン”アルビオンを宿す者だ……赤龍帝、君の宿敵と言えば判りやすいかな?」

「俺の、宿敵……?」

「兵藤一誠、奴は君の宿す赤龍帝ドライグの対となるドラゴン、白龍皇アルビオンを宿す者だ……この二つのドラゴンを宿す歴代達は皆、対決する宿命を持っている」

 

 宿敵と言われてピンと来なかった一誠にゼノヴィアが説明してくれた。

 赤と白、この二つのドラゴンはまだ神器(セイクリッド・ギア)に封じられる前から争い合っており、神器(セイクリッド・ギア)に封じられてからは、それぞれを宿す者が互いに戦う宿命を背負わされているのだ。

 

「まぁ、今回は先ほども言った通り、俺はアザゼルのお使いでね。君との戦いはまた今度という事になりそうだ……まぁ、そこの弓兵とも戦ってみたいがな」

「……」

「……さて、そろそろ俺は行かなくてはな……? おや? フリード・セルゼンは何処だ?」

 

 バルパーを担ぎ上げた白龍皇がフリードの姿が見えない事に気づいてキョロキョロするが、どこにも見当たらない。

 リアス達も慌てて探したが、倒れていた場所には誰も居らず、どうやらどさくさに紛れて逃げられてしまったようだ。

 

「仕方無いか……まぁバルパー・ガリレイだけでも回収出来ただけ良しとしよう。では、宿敵君……また会おう」

 

 立ち去ろうと翼を広げた白龍皇だったが、再び赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)の宝玉が輝き出す。

 

『無視か、白いの』

『ドライグか、起きていたのだな……だが、戦いたくともお互いこの状況ではな』

『いいさ、どうせ時間は腐るほどある……アルビオン』

『ああ、ドライグ』

 

 赤い龍と白い龍の対話、それが終わり白龍皇はバルパーを担いだまま飛び去って行った。

 それを見届けた一誠はいずれ戦うであろう相手の背中を見送り、さて帰ろうと皆に振り返ろうとした、次の瞬間だった。

 

「……がっ!?」

 

 ズプリ、という何かが肉を貫く嫌な音が聞こえた。それと同時に足元まで飛び散ってきた大量の血飛沫、その発生源を辿ると……背中から剣と思しき刃を生やして血を吐くアーチャーの姿があった。

 

「アー、チャー……さん?」

 

 隣で見ていたアーシアは、返り血を浴びているのも忘れて呆然とアーチャーを見上げている。

 更に、次々とアーチャーの全身から無数の刃が皮膚を貫いて血に濡れながら突き出してきて、倒れそうになる度に反対側から刃が出た反動で、そっち側に倒れそうになればまた反対からも刃が飛び出て……まるで倒れる事すら許さないと言わんばかりに幾度も刃がアーチャーを貫いた。

 

「あ……アーチャーさん!!? いやぁあああああ!!!」

 

 アーチャーの惨状にアーシアが悲鳴を挙げる。突然の事に驚いたのもあるし、アーチャーが血塗れになった事も理由のひとつだが、何より大きな理由は……その全身を剣の刃に貫かれている姿が、いつか見た夢の中で見た光景と瓜二つだったからだ。

 そして、全身を刃に貫かれているアーチャーは暗転していく意識の中で、一人の少女の姿を幻視する。

 青いドレスを纏った金髪の美しい少女の姿は、まるで……アーチャーに「仕方が無い人ですね」とでも言わんばかりに呆れた表情を見せて、それからそっと……手を差し出した。




エクスカリバーに対するほかの人の反応は次回に持ち越しです。
そして、原作とは違うイリナまでもが神の不在を知った事で起こる乖離、それもまた次回に!

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