ハイスクールD×D~堕ちた聖女の剣~   作:剣の舞姫

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お待たせしました。ついにアーチャーVSコカビエルが始まります。


第二十五話 「始まる対決、アーチャーVSコカビエル」

ハイスクールD×D

~堕ちた聖女の剣~

 

第二十五話

「始まる対決、アーチャーVSコカビエル」

 

 木場祐斗は至った。神器(セイクリッド・ギア)の極致、真の目覚めたる禁手(バランスブレイカー)に。

 魔剣創造(ソード・バース)本来の進化とは違うイレギュラーな進化ではあるが、それは彼と、彼の同志達の魂の絆が生み出した奇跡。

 本来交じり合う事の無い聖魔融合の剣、聖なる魔の輝きを放つ其の名は……双覇の聖魔剣(ソード・オブ・ビトレイヤー)

 

「聖魔剣だと!? ありえない……本来反発し合い交じり合う事の無い二つの要素が交じり合うなど、そんなこと……ある筈が無いのだぁ!」

 

 目の前で起きた奇跡を目の当たりにして、バルパーが科学者らしい理屈を並べ立てているが、理屈など、時として奇跡の前には無いも同然。

 ゆっくりとエクスカリバーを構えるフリードに向かって歩む祐斗だったが、ふと隣にもう一人……否、二人が並び立って、同じ歩幅で歩いていた。

 ゼノヴィアとイリナ、二人の聖剣使いも、目の前で魅せられた奇跡に聖剣使いとしての魂が震えているのを自覚している。

 

「リアス・グレモリーの騎士(ナイト)よ、まだ共同戦線は生きているか?」

「って言っても、勝手に参戦するよ? もうすっごい奇跡魅せられて魂が疼くんだから!」

「君達がまだ共同戦線を張っていると思ってくれてるのならね」

「ならば共に破壊しよう、エクスカリバーを」

「……良いのかい?」

「勿論! ていうか、もうあんなのが聖剣だなんて認めたくないからね。聖剣っていうのは、あんな人格まで堕ちた人に使われてる時点で聖剣だなんて呼べないわ」

 

 聖魔剣を構える祐斗と、投影品の擬態の聖剣(エクスカリバー・ミミック)を構えるイリナ、そして破壊の聖剣(エクスカリバー・デストラクション)を構えているゼノヴィアがフリードと対峙する。

 だが、突然ゼノヴィアが|破壊の聖剣を地面に突き刺した。まるで自分は破壊の聖剣(エクスカリバー・デストラクション)で戦うのではないとでも言うかのように。

 

「ペトロ、バシリウス、ディオニュシウス、そして聖母マリアよ……我が声に耳を傾けてくれ」

 

 唱えられた呪文、そしてゼノヴィアが横に突き出した右手の先に魔法陣が展開され、中から光が溢れんばかりに漏れ出してきた。

 そして、その光の中から出てきたのは、鎖に巻かれた一振りの剣、その全身から発せられる聖なるオーラは鎖の封印をしていて尚、その場の全てを斬り裂かんとする程だ。

 

「この刃に宿りしセイントの御名において、我は解放する!」

 

 剣の柄をゼノヴィアが握った瞬間、巻かれていた鎖が弾け飛び、押さえ込まれていた聖なるオーラが具象化するほどの濃度で噴出してきた。

 

「聖剣デュランダル!!」

 

 聖剣デュランダル。それはフランスの叙事詩、ローランの歌において登場する不滅の刃を意味する聖剣の名だ。

 騎士ローランがシャルル王より賜った剣として登場し、柄の中に聖ペドロの歯、聖バシリウスの血、聖ディオニュシウスの毛髪、聖母マリアの衣服の一部と、多くの聖人の聖遺物が納められているが故に聖剣と呼ばれている。

 その強度はロンスヴァルの谷で敵の攻撃により瀬死の状態になったローランが敵の手にデュランダルが渡るのを阻止するために大理石で出来た岩に叩き付けた所、逆にその岩の方が真っ二つに両断されてしまったという逸話を持つほど頑丈で、絶対に折れる事も錆びる事も無いという概念を持つ概念武装でもあった。

 もっとも、アーチャーが見た所、この世界に概念武装という概念そのものが存在しない為か、ゼノヴィアの持つデュランダルも斬れ味が他の剣と比べて圧倒的に良く、そして頑丈であるという付加効果とでも言うのか、そんな解析結果が出た。

 

「馬鹿な! 私の研究ではデュランダルを扱える領域達していないぞ!!」

「悪いが、私はそいつやイリナとは違う数少ない天然物だ」

「完全なる聖剣適正者……真の聖剣使いだと言うのか!?」

 

 つまり、元々ゼノヴィアはエクスカリバー使いではなく、デュランダル使いだったという事だ。それも人工的に適正者にされたのではなく、生まれついての真なる適正者として。

 

「こいつは触れた物を何でも切り刻む暴君でね、私でも手を焼くじゃじゃ馬だ。それ故に異空間に閉じ込めておかないと危険極まりないんだ」

「クッ!? 聖魔剣にデュランダル……何ということだ……っ!? なぁ!? そ、その小娘の持つ刀は……馬鹿な!? 何故統合した筈の擬態の聖剣(エクスカリバー・ラミミック)を!!」

「あれ? やっと気づいたんだ? でも残念、これって実は複製なんだよねぇ」

「ふ、複製だと!? 馬鹿な!! 聖剣の、それもエクスカリバーの複製を出来るほどの錬金術師など聞いたことも無いぞ!!」

 

 バルパーが何を吼えようと最早関係無い。今すべき事は、目の前のエクスカリバーを、叩き折る事だけなのだから。

 

「いくぞ……!」

「ハァッ!? 聖魔剣にデュランダル、エクスカリバーの複製品? ざっけんじゃねぇっつうの!!」

 

 フリードがエクスカリバーの擬態能力で刀身を伸ばして来たが、ゼノヴィアのデュランダルに簡単に弾き返される。

 だが、今度は刀身を複数にして祐斗達を貫こうとしたが、デュランダルと擬態の聖剣(エクスカリバー・ミミック)に全て叩き落されてしまった。

 

「く、そんなのありですかぁ!」

「所詮は折れた聖剣だもん!」

「そんなもの、このデュランダルの敵ではない!!」

 

 イリナとゼノヴィアの斬撃を天閃の力による超スピードで避けたフリードだったが、その程度の速度、騎士(ナイト)である祐斗に追い付けない筈が無い。

 

「そんな剣で! 僕達の想いには勝てない!!」

 

 目にも留まらぬ速度によるぶつかり合い、互角の速度と互角の剣技、そして先ほどは負けていた剣の精度が勝った今、この勝敗を決したのは。

 

「ハァッ!? 折れたぁ!?」

 

 聖魔剣が、エクスカリバーの刀身を真っ二つに叩き折った。いや、それだけではなく、フリードの胸を袈裟一文字に斬り裂いて彼の意識を奪い去る。

 この勝負、祐斗と、聖魔剣がエクスカリバーを超えたという結果を残し、勝利した。

 

「見ていてくれたかい……? 僕らの力は、エクスカリバーを超えたよ」

 

 とうとう、過去の因縁に決着が着いた。

 忌まわしい過去を乗り越え、立ち塞がったエクスカリバーを折り、ついに祐斗は過去から続く因縁に勝利したのだ。

 

「な、なんという事だ……聖と魔の融合など理論上……ヒィッ!?」

 

 聖魔剣の刃を向けられたバルパーが尻餅を付いて情けない悲鳴を上げたが、突然何かに思い至ったのかその表情を変える。

 

「そうか! わかったぞ、聖と魔、それを司るバランスが大きく崩れているのなら、説明がつく!」

 

 ふと、嫌な予感がしたアーチャーが、アーシアをリアスに任せて駆け出した。

 

「つまり、魔王だけでなく神もブゲェッ!?」

「邪魔だ!」

 

 間一髪、アーチャーがバルパーを蹴り飛ばして上空から飛来する光の槍に対して右手を翳す。

 

「I am the bone of my sword」

 

 アーチャーの右手の掌に現れるは7つの花弁を持った巨大な花の盾。

 

熾天覆う七つの円環(ロー・アイアス)!」

 

 トロイア戦争において、大アイアスが敵の投げ槍を防ぐのに使用した盾、投擲武器に対して絶対の防御力を誇るそれは、アーチャーが持つ数少ない盾の内の一つだ。

 7つある花弁の内、3枚を破壊して光の槍が消えると、アーチャーもアイアスを破棄、槍を投げたであろう相手を見上げる。

 

「ほう、防いで見せたか……それも、私の知らぬ力だな。神器(セイクリッド・ギア)ではなさそうだが、貴様……何者だ? ただの人間にしては、その身に宿す魔力は異常と言える」

「なに、ただのしがない弓兵だ……鴉一羽程度なら、落とすのも容易な弓使いとでも言っておこうか」

「面白い……! 余興も終わった事だからリアス・グレモリーで遊ぼうかと思っていたが、気が変わった! まずは貴様を試したくなったぞ弓兵!!」

「ほう? では精々慢心しているが良い……もっとも、その代償は大きいがな」

 

 座っていた椅子を消して、翼を広げるコカビエルと、黒塗りの弓を構えるアーチャー。天と地、本来なら勝負にならないはずの舞台に立つ二人は互いに睨み合う。

 

「初撃は譲ってやろう、弓兵。貴様がこの私を落とせるのか、見せてみろ」

「ふむ……では、お望み通りしてやろう。古の堕天使よ、地に這い蹲る覚悟は十分か?」

 

 アーチャーが投影する矢、それは一本の剣だった。

 黒塗りの捩れた剣、禍々しいほどの膨大な魔力を秘めたその剣を見た瞬間、周囲の者は息を呑み、コカビエルは面白そうに口元を歪める。

 剣を弓に番え、ゆっくりと引き、弓道を知らぬ者が見ても惚れ惚れするほど綺麗な型で構えたアーチャーは、狙いをコカビエルへ向けた。

 

「我が骨子は捩れ狂う(I am the bone of my sword)」

 

 すると、いっそ暴虐とまで言えるほどの魔力を大気中から貪るように吸収した剣はまるで血に飢えた猟犬の如き唸り声とも呼べる音を発生させる。

 

「赤原を往け、緋の猟犬……! 赤原猟犬(フルンティング)!!」

 

 放たれた矢は真っ直ぐコカビエルへと向かい、対するコカビエルは冷静に障壁を展開して防いだのだが……。

 

「ぬっ……ぐっ!!?」

 

 そのあまりの威力に一瞬押され、だが直ぐに力と魔力を込める事で赤原猟犬(フルンティング)と拮抗する。

 

「ぐ、おおおおああああああああ!!!!」

 

 渾身の力を込めても押し返せない。だからなんとか矢の軌道を逸らして避けたコカビエルは息切れをしながらも余裕の笑みを浮かべてアーチャーを見下ろした。

 

「なるほど、貴様の矢……予想以上の威力に驚いたが、所詮は弓矢だ。一直線にしか攻撃できん武器など、私には通用しない!!」

「……愚か者が」

「……何?」

「不注意が過ぎるものだな、コカビエル」

「なにっ!? ガァアアアアアッ!?」

 

 避けたはずの赤原猟犬(フルンティング)が軌道を変えて再びコカビエルを襲った。

 後ろから飛来した凶刃は、何とかギリギリで反応して避けようとしたコカビエルの5対10枚ある翼の右半分、つまり5枚の翼を抉り、食い千切ってしまう。

 

「わ、私の翼を……よくもぉおおお!!」

 

 再び軌道を変えて襲い掛かる赤原猟犬(フルンティング)を光の槍で破壊しようとしたコカビエルだが、槍が剣に直撃する瞬間。

 

壊れた幻想(ブロークンファンタズム)

 

 赤原猟犬(フルンティング)に内包された膨大な魔力と神秘が大爆発を起こしてコカビエルを巻き込んだ。

 

「グガァアアアッ!!」

 

 右半分の翼を失い、ボロボロになって地面に落下したコカビエルは今までの余裕の笑みが消えて憎悪の表情を浮かべながらアーチャーを睨み付けた。

 もはやその顔に、慢心といった感情は一切見られない。

 

「殺す……! 貴様は私がこの手で殺すぞ!!」

「それは無理な相談というものだ……何せ、私は最強のサーヴァントなのだから。故に、我がマスター、アーシア・アルジェントに勝利を捧げよう」

 

 とは言ったものの、先ほどまでのように慢心してくれていたのならともかく、今のコカビエルは一切の慢心など無く、全力でアーチャーを殺そうとしている。

 はたして、全力で向かってくる古の堕天使を相手に、ここまでで随分な数の宝具を投影し、真名開放までしたアーチャーが、どれほど戦えるのか。

 

「兵藤一誠!」

「え? あ、はい!!」

「すまないが、念のため倍加を貯めておいて貰えるだろうか? 万が一の時、必要となるやもしれん」

「りょ、了解っす!」

 

 それから、リアス達も参戦しようとしたが、それは丁重に断っておいた。

 先ほどまでのコカビエルを相手にするのならともかく、今のコカビエルを相手するには彼女達では流石に力不足、魔王クラスの実力が無ければ逆にアーチャーの足手まといになってしまう。

 

「覚悟しろ弓兵……! もはや貴様を生きては帰さん!!」

「……やれやれ、これは少しばかり不味いかもしれんな」

 

 干将・莫耶を投影して構えながら、アーチャーは一人愚痴る。

 マスターであるアーシアの心配そうな眼差しをその赤い背に、両者の戦いが始まった。




初手はアーチャーの勝利。
ですが、慢心の無くなったコカビエルとの第二ラウンドは相当厳しくなるのは、もう言うまでもないですね。

次回! 第二十六話 「其は、平和を願う人々の祈りの結晶」をお楽しみに!!

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