ハイスクールD×D~堕ちた聖女の剣~   作:剣の舞姫

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あとがきにて、私のこの作品においての見解を述べます。
ハイスクールの世界にFate世界のランクの設定を持ち込むのはどうか、という意見がありますが。

あ、十九話の方に修正入れました。アーチャーのセリフに違和感があるからと、アドバイスを書いて下さった親切な方が居ましたので。


第二十話 「弓兵VS聖剣」

ハイスクールD×D

~堕ちた聖女の剣~

 

第二十話

「弓兵VS聖剣」

 

 初手を放ったのはゼノヴィアだった。

 破壊の聖剣(エクスカリバー・デストラクション)を上段から振り下ろし一撃でアーチャーを仕留めようとしたが、対するアーチャーは身体を半歩横にずらしながら右手の干将で破壊の聖剣(エクスカリバー・デストラクション)を受け流す。

 だが、ふと危険を察知してその場を飛びのいたアーチャーは、地面に叩きつけられた破壊の聖剣(エクスカリバー・デストラクション)がクレーターを作っているのを見て感心していた。

 

「ほう……」

 

 それに、見れば受け流す際に破壊の聖剣(エクスカリバー・デストラクション)の刃にぶつけた干将には罅が入っており、そのまま霧散して消えてしまった。

 冷静に新しく干将を投影し直し、改めて構えたが、その内心は破壊の聖剣(エクスカリバー・デストラクション)を侮っていた事を恥じている。

 

「まさかランクこそ低いが、曲りなりにも宝具である干将を破壊するとは……なるほど、破壊の名は伊達ではなかったようだ。侮っていた事を謝罪しよう」

「ふん、そのまま貴様の身体も破壊されていれば苦しまずに済むのだがな」

「ふむ……確かにその破壊力であればサーヴァントの身体に傷を付けるのも容易かろう。だが、それは破壊の刃をこの身に届かせられれば、の話ではあるが」

「すぐに届くさ……勝つのは私なのだからな」

 

 また迫ってきたゼノヴィアの斬撃を避け、受け流しては壊れた干将・莫耶を投影し直して再び受け流す。

 既に7度、壊れた干将・莫耶を投影し直しているが、今のところアーチャーから攻める様子は無く、ゼノヴィア優勢かと思われるものの、それは大きな見当違いだ。

 

「はぁ、はぁ、はぁ……」

「どうした、息が上がっているようだが?」

「抜かせ! この程度、丁度良いハンデだ!」

 

 何度も大振りの攻撃を繰り返してあっという間にスタミナを減らし、息を切らしているゼノヴィアに対し、アーチャーは何事も無かったかのように戦う前と変わらず冷静に構えている。

 

「では、今度はこちらから行かせて貰うが……簡単に負けてくれるなよ?」

「なっ……!?」

 

 アーチャーの言葉に反論しようとしたゼノヴィアだったが、そんな暇は無かった。

 一瞬で目の前に現れ、干将の刃を振り下ろしたアーチャーに対し、慌てて破壊の聖剣(エクスカリバー・デストラクション)で受け止めたのだが、受け止めた瞬間に干将が折れて安堵した時、下から莫耶の刃が破壊の聖剣(エクスカリバー・デストラクション)の柄尻を叩き、その衝撃で手を離してしまった結果、破壊の聖剣(エクスカリバー・デストラクション)は宙を舞い、足払いされたゼノヴィアはその場で尻餅を付いてしまう。

 

「っ!?」

 

 起き上がろうとしたゼノヴィアだったが、彼女の鼻先に破壊の聖剣(エクスカリバー・デストラクション)をキャッチしたアーチャーがその切っ先を突き付けた事で勝敗は決した。

 

「中々の重量だ……なるほど、刃に破壊の概念が施されているが故に触れた物を問答無用で破壊出来るのか。宝具ほどのレベルは無いが、概念武装としての側面で言えばそれなりの武器だな」

 

 破壊に特化した概念武装、そう思えばエクソシストが使う武器としては上々。そう結論を下したアーチャーは地面に破壊の聖剣(エクスカリバー・デストラクション)を突き刺し、それが原因で若干のクレーターが出来た事に頬を引きつらせつつ残った莫耶を消してアーシアの下へ歩いていった。

 残されたゼノヴィアは、明らかに手加減されたのが判り、屈辱感を感じて身体を震わせるものの、負けたのは事実であるが故に何も言えず、ただ無言で俯くだけだ。

 

「お疲れ様です、アーチャーさん」

「ああ」

 

 アーシアの労いを受けて笑みを浮かべつつ、アーチャーは祐斗はどうなっているのかが気になり、そちらへ目を向けると、その表情が一気に険しくなった。

 

「アーチャーさん?」

「ん、ああ……木場祐斗め、随分と無様を晒しているな」

 

 アーチャーの視線の先、そこには擬態の聖剣(エクスカリバー・ミミック)を刀の形状にしたイリナが光喰剣(ホーリー・イレイザー)を構える祐斗に軽快な身のこなしで斬り掛かり、祐斗はその手から魔剣を弾き飛ばされては新しく剣を創っている。

 だが、一向に攻撃が届かないのか苛立ちを隠せずにいる祐斗はだんだんと創る魔剣の精度が低下していって、仕舞いには破壊に特化しているわけでもない擬態の聖剣(エクスカリバー・ミミック)でも簡単に折れるほど軟弱な剣を創るようになっていた。

 

「ほらほら、そんな魔剣じゃ擬態の聖剣(エクスカリバー・ミミック)の相手にならないよ~!」

「くそっ! なんで、何で僕は……っ!」

 

 苛立ちがピークに達したのか、祐斗は軽い身のこなしが特徴のイリナに対し、彼自身の持ち味である筈のスピードを殺してしまう巨大な魔剣を創造して、その重量から今までと比べて明らかに鈍重な動きで剣を振り下ろす。

 しかし、そんな遅すぎる攻撃がイリナに通じるはずも無く、簡単に避けて見せたイリナは峰打ちで擬態の聖剣(エクスカリバー・ミミック)の刃を祐斗の首に叩きつけ、勝負を付けた。

 

「グッ!? が、あっ!」

「切ってはいないけど、聖剣の刃に触れたからそれなりのダメージでしょ? 諦めなよ、君じゃ勝てないから」

「く、そぉ……っ!」

 

 擬態の聖剣(エクスカリバー・ミミック)を紐状態に戻したイリナは、それを腕に結んでゼノヴィアの所に歩み寄った。

 負けたことで俯くゼノヴィアの様子を覗き込んで苦笑したイリナは、その相手をしたアーチャーの方を向くと頭を下げる。

 

「それじゃあ、ご迷惑をお掛けしました~」

 

 ゼノヴィアを強引に引っ張って去っていくイリナを見届けた後、リアス達は祐斗の下へ駆け寄った。

 幸い、祐斗は斬られたわけではないので、擬態の聖剣(エクスカリバー・ミミック)で峰打ちされた所をアーシアの聖母の微笑(トワイライト・ヒーリング)で簡単に治せた。

 だが、憎むべき聖剣に負けた事がショックだったのか、祐斗は俯いたまま一言も話す事は無い。

 

「祐斗、大丈夫?」

「……ご心配、かけました」

「いいのよ、それより……」

「すいません、少し……一人にしてください」

 

 この場合は仕方が無いと、思ったのか、リアスは祐斗を一人にしてあげようと部員達を伴って部室に戻ろうとしたのだが、それに待ったを掛けたのがアーチャーだった。

 

「木場祐斗」

「……なんですか?」

「先ほどの紫藤イリナとの試合を見せてもらったが、何だあの無様な剣は」

「っ!」

「ちょっとアーチャー!」

 

 流石に不味いと思ったのかリアスが制止の声を上げるも、アーチャーは無視して祐斗を見下ろす。

 

「私が貴様に教えた剣製は、あのような無様な剣を作る事だったのか? だとしたら、随分と私も舐められたものだな。聖剣への憎しみから冷静さを欠き、剣製の精度が甘くなった、などと言い訳をするなよ? それは敗者の戯言だ、剣製の師として、貴様の言い訳など聞く耳持たん」

「……あなたに、何がわかるんですか? あなたみたいに! 強くて、守るべきものを簡単に守れて、いつも冷静で、そんなあなたに! 僕の何がわかるんですか!!」

「たわけ、ならば貴様は誰かに解ってもらおうと思ったのか?」

「そ、れは……」

「貴様一人で抱え込んでいる問題を、何故理解してやろうと思える? 吐き出そうともしない、聞いてもらおうともしない貴様が、随分甘ったれた事を口にする……今の無様な貴様に言って聞かせるべきことは何一つとしてありはしない、少しは頭を冷やせ愚か者」

 

 これ以上、今の祐斗と向き合うつもりは無いのか、アーチャーは霊体化してその場から消える。

 残された祐斗は悔しそうに俯き、振り返ってその場から立ち去った。追いかけようとした小猫を朱乃が止めて、振り返って何故止めるのかという顔をする小猫に首を振る朱乃は、どうやらリアスと同じで彼を一人にするべきだという意見なのだろう。

 

「木場……」

「イッセー、戻りましょう。祐斗なら大丈夫よ、あの子は何があろうと、私の可愛い下僕なのは変わらないから」

「はい……」

 

 アーシアもリアス達に連れられて部室に戻った。

 部室に戻って見れば、既にアーチャーが先に戻ってきており、人数分の紅茶を用意していたので、それを朱乃が受け取って皆に配る。

 アーチャーはいつもの定位置であるアーシアの後ろに立ち、自分で淹れた紅茶を片手に何やら思案顔だ。

 

「アーチャーさん? どうかされたんですの?」

「む? ……さて、先ほどの話の中で気になる点があってな」

「……気になる、点ですか?」

 

 アーチャーの言葉にアーシアの隣から彼を見上げた小猫が首を傾げた。

 

「聖剣エクスカリバー、伝説の騎士王アーサー・ペンドラゴンが担いし最強の聖剣が、何故この世界に存在しているのか、ということだ」

「何故も何も、さっき説明しなかったかしら? エクスカリバーは元々天界が所持していたのが戦争の際に折れて、その後7本に分割して打ち直された物を教会に保管していたって」

「そこだ、そもそも何故天界にエクスカリバーがある? それがまずありえない」

 

 何が言いたいのか、誰もが首を傾げていたのだが、ふとアーシアが「あ!」と何かを思い出したのか大声を出して、皆の注目を受けたため真っ赤になっている。

 

「流石に欧州人のアーシアは気づいたようだな」

「はい、あの……確か伝承ではエクスカリバーはカムランの丘での戦いの後、アーサー王が亡くなる前にベディヴィエールという騎士によって湖の乙女に返却されているはずなんです」

「あ……」

「ようやく気づいたかリアス・グレモリー。つまり、湖の乙女によって返却され、既にこの世に存在しないエクスカリバーを、何故天界が所持していたのか、という話だ」

「そっか、聖剣だからってエクスカリバーを天界が所持していたのを当たり前に思ってたけど、変な話よね」

 

 考えられるのは、天界側のエクスカリバーは、アーサー王が持っていたエクスカリバーそのものではなく、それを模して天界が作った贋作だということだ。

 

「でも、たとえそうだとして、今回の話に何か関係あるの?」

「いや、実は何一つ関係無いが……まぁ、ただの拘りだと思ってくれれば良い」

 

 何の拘りなのだろうかと、全員が首を傾げる中、アーチャーは静かに紅茶を飲み干すのだった。




では、私の見解です。
全くの別の世界なのに、ハイスクールの世界にFate世界のランクの設定を持ち込むのはどうか、という意見がありますが、そんなことしたらクロスさせる意味が無くなるというのが私の考えです。
ただハイスクールD×Dの世界にアーチャーを登場させただけ、武器や宝具のランクは一切当てはまらない、アーチャーにのみ適用される設定です、なんてあまりに簡単すぎるというか、安易すぎる。それじゃあ設定としてあまりにも面白くないでしょうし、態々アーチャーを使う必要もクロスさせる意味も無いわけで、それなら初めからハイスクール世界出身のオリキャラを用意してアーシアと絡ませれば済む話です。
せっかくクロスさせるのにオリキャラで良くね? なんて設定で話を書いても面白くないでしょう。

次にエクスカリバーについてですが、まぁ本来ならネタばれになるので話したくはなかったのですが、後々になって本来考えてた設定を出して今更?って言われるのもアレなので、ここで話します。
私の作品においてハイスクールD×Dの世界のエクスカリバーは天界が本物のエクスカリバーを模して作ったレプリカです。
本物のエクスカリバーは既に伝承通りカムランの戦いのあと、湖の乙女に返却され、この世には存在しません。
んで、その湖の乙女へと返却されたエクスカリバーというのが、この世界における(・・・・・・・・・)約束された勝利の剣です。
因みにオリジナルのエクスカリバーであればランクはA++ですが、現在7分割されてるレプリカエクスカリバーは分割前ならランクがB+といったところで、7分割された後は一度折れた事で神秘性が薄れたのもあり、宝具としてのランクに届かないか、ギリギリEあるかといったところです。
勿論、破壊の聖剣は破壊力だけならランクD~Cの、本気を出せばBの宝具並にはありますが。

アーチャーはこんなに喧嘩っ早くないという意見ですが、そもそもアーチャーが怒るのはアーシアのため、アーシアへ悪意や害意を向けられれば当然ですが怒りますけど、それ以外であれば表には出さず内心に留めるだけです。
まさか、アーチャーだって気に食わないことだって時にはあるでしょうし、それを内心怒るのはアーチャーじゃなくても普通でしょう。一切怒らない人なんて居ないでしょうし。
まぁ、アーチャーの場合、エクスカリバーに対してはどうしても思い出補正が掛かっていますので、若干の違和感を感じられたかもしれませんが、そこはエミヤシロウにとってエクスカリバーという剣が嘗ての相棒たるアルトリアが担い、憧れたものだからこそ、嘗て自身に埋め込まれていた鞘の半身だからこそ、というものです。
たとえ磨耗しようともエミヤシロウにとってアルトリアという英霊は特別なんです。

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