美少女戦士セーラームーン☆太陽の戦士   作:Doc Kinoko

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【act.ETERNAL】いつまでもずっと

 

クリスタルパレスの王の間に、いつもと変わらぬ銀色の木漏れ日が差し込む。

 

「セーラー・アテナ…?あなた、本気でそれを言ってるの?」

 

ネオ・クィーン・セレニティが呟き、視線を向ける先に佇む太陽の戦士=セーラー・アテナの固く結ばれた唇が解かれる。

 

「はい。たとえ太古の神々によるものであったとしても、今回の件…すべての責任は、この私。私は、地上に残ることは許されません。

聖地エリュシオンの光の巫女として、太古の昔よりその使命を負ってきましたが、もう、聖地エリュシオンに、光の巫女は必要ありません。

この地上には、あなたがいるのだから…。

どうかお願いです。私を、聖地エリュシオン『祈りの塔』の神官として、その任を負わせて下さい。それに…」

 

セーラー・アテナがネオ・クィーン・セレニティを見つめ語り、そっと視線を移した先に佇むスモールレディと、聖地エリュシオンの神官エリオス。

 

スモールレディは王の間の壁にもたれ唇を結び、エリオスは真剣な眼差しで、女王を見つめている。

 

ネオ・クィーン・セレニティの大きなため息が、王の間へ響く。しかしその顔には、穏やかな笑みを湛えていた。セーラー・アテナの真意を、理解したのか。

 

「…わかりました、セーラー・アテナ。では、本日よりあなたは、聖地エリュシオン=祈りの塔の神官として、その任に就いて頂きます。あなたはこれから先、決して聖地を離れることは許されません。いいですね?」

 

ネオ・クィーン・セレニティの凜とした声。高貴なる眼差しが、セーラー・アテナをしっかりと捉える。

 

「はい。仰せのままに。」

 

そう言って、王の間に すっとひざまづいたセーラー・アテナ。

訪れる短い静寂を、エリオスの声が遮る。

 

「そんなっ!ネオ・クィーン・セレニティ…!私は…私はどうすればよいのですかっ!?」

 

王の間に佇み、セーラー・アテナの願いをじっと聞いていたエリオスであったが、ネオ・クィーン・セレニティの決断に、思わず声を荒げ、玉座へと歩み出た。

 

驚きに曇るエリオスの瞳を、じっと見つめるネオ・クィーン・セレニティは、穏やかに微笑んでいる。

 

「エリオス…。あなたは本日より、ここクリスタルパレスの司祭として、その任に就いて頂きます。王家のすべてのまつりごとを司る司祭として、あなたの祈りの力を、存分に発揮して下さい。断ることは、許しませんよ。いいですね?」

 

ネオ・クィーン・セレニティの言葉に、エリオスは息を呑み、壁にもたれるスモールレディの瞳が、大きく瞬きをした。

 

「では私はここで…地上にこの身を置くことを、許されると仰るのですか…?」

 

エリオスの瞳が、キラキラと輝く。高鳴る胸の鼓動を抑えるように、胸の前に置かれた手を、固く握り締める。

 

ネオ・クィーン・セレニティは、瞳を輝かせ再び口を開く。

 

「いかがかしら?スモールレディ?」

 

突然母に呼び止められたスモールレディ。思わず息を呑み、身体がわずかに震える。

 

「そんな…。私に聞かれても…困るわっ!」

 

白く輝くドレスの裾を、荒げた声になびかせるスモールレディ。

黙って下を向くスモールレディに、エリオスがゆっくりと歩み寄り、彼女の目の前で、そっとひざまづいた。

 

「いけませんか…?スモールレディ?」

 

エリオスの青い瞳に見つめられるスモールレディの顔が、みるみる赤く染まる。

 

「そんなっ!私に聞かないでよ!エリオスったら…。もう…っ!お母様っ!?」

 

玉座に腰掛け、娘の驚く顔に涼しげな微笑みを浮かべるネオ・クィーン・セレニティ。

 

「あなたがいいと言うなら、エリオスには、パレスいてもらおうと思っているのだけど…。だめだったかしら?」

 

ネオ・クィーン・セレニティは、わざとらしく大きく首を傾げ、眉を顔いっぱいに寄せる。普段このような場面では見せることのない彼女の表情が、周りにいる城の者たちの笑い声を誘う。

 

「お母様っ!!もうっ!わかったわよっ!エリオスもっ!早く立ってっ!」

 

スモールレディは拳を握り締め、真っ赤になって叫ぶ。

そんなスモールレディの手を、エリオスがそっと握る。

 

「ありがとうございます、スモールレディ。本日より、クリスタルパレスの司祭、わたくしエリオスは、どんな時も、あなたのそばで、この祈りを捧げることを約束しましょう。

いつまでも…ずっと…。」

 

そう言ってエリオスは、スモールレディの手の平にそっと口づけた。

 

… … …

 

銀色の光が差し込む王の間、白いドレスに輝くプリンセスにひざまづき手を差し延べる銀色の髪の青年。

 

ドレスの裾を片手でふんわりとつまみ、差し延べられた手をそっと握るプリンセス。

 

銀色の光の中にきらきら輝く二人の姿はまるで、太古の昔に女神が置き忘れたガラスのオルゴール細工のようであった。

 

… … …

 

「見て、エンディミオン。スモールレディの幸せそうな顔。」

 

銀色の光に揺れる二人に、目を細めるネオ・クィーン・セレニティは、隣でそれを見つめるキングエンディミオンにそっと寄り添った。

 

「ああ。本当だね、セレニティ。それにほら、見てごらん、皆の嬉しそうな顔。」

 

王の間に集まり、スモールレディとエリオスを笑顔で見守る戦士たち。

そこにいる誰もが皆、手を取り合う二人に、歓喜の声と共に祝福の手を叩く。

 

「私、いつまでもこうしていたいわ。愛する者たちと、いつまでもずっと。ね、エンディミオン」

 

すべての愛する者たちの幸せな笑顔に、ネオ・クィーン・セレニティは、心穏やかに呟いた。

 

 

 

 

『…愛する者たちと、いつまでもずっと…』

 

 

 

 

 

----------

 

☆おしまい☆

 






これにて、『美少女戦士セーラームーン☆太陽の戦士』完結致しました。【活動報告】に、あとがきも兼ねて、このお話の解説やら、私なりのセーラームーン愛を語っておりますので、お時間の許す方はご覧下さいませ。
ここまでおつきあい頂いた皆様、本当にありがとうございます。
ぜひとも、一言でも構いません。ご感想などいただけましたら幸いです。何卒よろしくお願いいたします。

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