美少女戦士セーラームーン☆太陽の戦士 作:Doc Kinoko
『…女神どものシールドか…。だが、そう長くも持つまい…。そなたらの輝き、すべて奪い尽くしてやろう…ククク…。』
1000年の時間を越えて目覚めたカオスの闇の輝きによって、漆黒に染まるクリスタルトーキョーの空。太陽系4戦士たちがクリスタルパレスへ展開するシールドの輝きだけが、ぼんやりと浮かぶ。
カオスの闇から逃れ、シールドに護られるクリスタルパレスへと避難したネオ・クィーン・セレニティたち。圧倒的な闇の力を目の前にして、為す術もなくその身体を闇へ溶かされたセーラー・スター・ファイターとセーラー・スター・ヒーラー。彼女たちのスターシードを抱えるプリンセス・火球。
誰もが息を潜め、ただ震えることしかできなかった。
…
『ほう…あの城の奥深くから感じる光の力…なんと強い…
幻の銀水晶…?いや違う…なんの感情も感じられぬ…冷たい光… 我が闇を…貫こうと言うのか… 』
カオスの声が響く。
『感情を感じられない光』
クリスタルパレスの奥深くに、銀水晶ではない光の力の誕生を感じたカオスは、地鳴りのような声を上げる。
『忌々しい…光の者たちよ…どこまでも…私に逆らうと言うのか…
いいだろう…その光…すべて飲み込んでくれる… 』
クリスタルトーキョーの空を包む漆黒の闇=カオス。
恐ろしく禍々しい声と共に、灰色の風が唸り声を上げると、空から伸びる無数の影が、クリスタルパレスに張られたシールドを覆い尽くす。
『…さあ…光の者よ…我が世界の糧となれ… 』
再びカオスの声が響くと、クリスタルガーデンの四方を囲む太陽系4戦士たちに、亡者の腕のごとく無数の影が襲いかかる。
彼女たちが展開する光の壁を、ゆっくり、ゆっくりと浸食するカオスの闇。目の前に迫る闇のチカラに、太陽系4戦士たちの顔が恐怖で引き攣り、ゆっくりと確実に伸びるカオスの闇の輝きは、彼女たちの足元から、ざわざわと全身を襲う。
あまりに恐ろしく強大な力に声も出せず、太陽系4戦士たちの身体は、彼女たちの輝くスターシードと共に、ゆっくりと闇の中へ飲み込まれた。
…
「…っ?!…マーキュリーたちのシールドがっ…?!」
クリスタルパレスの廊下に伏せるネオ・クィーン・セレニティたちがざわめく。カオスに覆われる闇の中で、唯一輝きを放っていた4戦士たちの光の壁が消滅した。たった今、地球は完全な闇へと染まったのだ。
漆黒の闇に染まったクリスタルパレスの廊下に、咄嗟に放ったセーラーカルテットたちの不思議な4つの球の輝きだけが、心細い光を落とす。
『…ほう…なんと小さな光…ひとつ…ふたつ…みっつ…よっつ…
そのような小さな光に興味などないが…セーラームーンの恐怖に引き攣る顔が…見てみたいものだ… 』
シールドが消滅した今、はっきりと聞こえたカオスの声。クリスタルパレスの入口から、彼女たちを目掛けて侵入する無数の闇の腕を目の前にして、セーラーカルテットたちが飛び出す。
「セレスッ!パラス!ジュノー、ベスタッ!!…ダメッ!!」
ネオ・クィーン・セレニティの制止の叫びも虚しく、クリスタルパレスの廊下を駆け抜ける彼女たちが、その手に操る光の球に輝きを宿し、一斉に叫ぶ。
アマゾネス・ジャングル・アローッ!!
凄まじい無数の光線が、クリスタルパレスに侵入する闇を切り裂き、闇に閉ざされたパレスに光が甦る。
激しい光の力の開放に、息を切らすセーラーカルテットたち。僅かに体勢が崩れた瞬間、彼女たちの首元を、無数の影が捕らえる。
「いやぁぁぁっ!!セレスッ!パラスッ!ジュノーッ!ベスタッ!!」
思わずその身を奮い立たせたネオ・クィーン・セレニティのエターナルティアルが、銀色の光を放つ。
『…ククク…無駄なことを…戦士でないお前の力など…幻の銀水晶にあらず。さあ…光の者よ…我が糧となれ… !!』
カオスの声が響いた瞬間、ネオ・クィーン・セレニティの銀色の光が虚しく掻き消え、セーラーカルテットたちの身体が、彼女たちのスターシードと共に、あっという間に闇の中へ飲み込まれた。
『ほう…この者たち…別のスターシードを持っているな… なんと…掴み取り甲斐のある…
…さあ…セーラームーン…次はお前の番だ… !』
「…ウラヌスたち…?セーラーカルテットたちが持ったまま…?なんてこと…」
銀色の輝きをあっさりと掻き消され、飲み込まれたセーラーカルテットと、彼女たちに抱かれたままの外部太陽系戦士たちのスターシード。
パレスの床に力なく膝を落としたネオ・クィーン・セレニティに、カオスの巨大な闇のチカラが容赦なく襲い掛かる。
「いや…っ!!」
…
キンモク・フュージョン・テンペストッ!!
高らかなスペルアウトと共に放たれた光の花吹雪が、ネオ・クィーン・セレニティに迫るカオスの闇を砕いた。
その輝きに驚き振り返ったネオ・クィーン・セレニティの瞳に映ったのは、茜色の輝きに包まれるセーラー戦士の姿であった。
「セーラー・火球…?!」
叫んだネオ・クィーン・セレニティの声を掻き消す、セーラー・火球の第一声が、クリスタルパレスに響く。
「カオスッ!キンモクスターの守護戦士、『セーラー・火球』が相手になるわッ!!」
茜色に輝くその戦士こそ、キンモク星系 キンモクスター 丹桂王国 第一皇女 プリンセス・火球の戦士の姿=『セーラー・火球』
『…なんと強い輝き…知っているぞ…お前の輝きも… 』
その輝きに声を荒げるカオス。
「セーラー・火球ッ!ダメっ!後は私が…私がなんとかするから…あなたは…逃げてっ!!」
セーラー・火球に駆け寄ったネオ・クィーン・セレニティは、彼女の肩を両手で掴み、必死に叫んだ。
「いいえ…私は戦う。あなたが変身できない今、もう戦士は私しか残っていない…。大丈夫、ファイターたちも、ここにいるわ…。」
セーラー・火球が胸元から覗かせた4つのスターシード。キンモク星系の名もなき南の星、ファイター、ヒーラー、メイカーのスターシード。
「忘れないで、セーラームーン…私たちが戦う意味を。
そして信じて…私たちの大切な仲間を、戦いの果てにある、希望と…未来をっ!!」
叫んでカオスの闇に向かって、身体を流星に変えたセーラー・火球の勇ましい叫び声が、クリスタルパレスに響く。
スターライツ・ロイヤルストレート・フラッシュッ!!
セーラー・火球から放たれる無数の茜色の輝きが、カオスの闇を砕く。
光の速さで前進する彼女が目指すのは、カオスの中心。カオスにその身を投げ入れ、内側から切り裂こうと言うのか。
「セーラー・火球ッ!カオスに飲み込まれるわっ!ダメッ…!」
ネオ・クィーン・セレニティの叫び声だけが、クリスタルパレスに響き渡った。