美少女戦士セーラームーン☆太陽の戦士   作:Doc Kinoko

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【act.034】もうひとつのスターシード

 

『私は、光に捨てられたの。

…私は…闇の存在でしかないの…』

 

ガイアがチカラなく語った彼女の出生の秘密。その身体に無数の傷を纏う彼女にはもう、星を飲み込む力など残っていないかもしれない。

そんなガイアの憐れな姿に、セーラー・スター・ファイターが語りかける。

 

「あなた…寂しいのね。かわいそうな人。でも、なぜメイカーたちを飲み込む必要があるのっ!?答えなさいっ!」

 

セーラー・スター・ファイターは拳に再び輝きを宿し、ガイアに詰め寄る。

 

「私は…光を持たない闇の存在。光のない闇はなく、闇のない光もないわ。闇しか持たない私が住む世界は…どこにもないの。私が私でいられるためには、銀河のすべての光を消すか、銀河のすべての闇を消す以外に方法はないの…」

 

「だから?だから飲み込んだの?メイカーたちをっ!自分の欲する世界のために…っ!そんなの勝手過ぎるわっ!」

 

ガイアの言葉に、思わず彼女に掴みかかったセーラー・スター・ファイター。もはやガイアには、抵抗する力もないようだ。激しい痛みに耐え歪むガイアの顔、喉から必死に搾り出す声が、ファイターに語りかける。

 

「セーラー・スター・ファイター…あなたにだって…守るべき世界があるでしょう?欲する世界があるでしょう?それと同じ…。私は…私の住む世界が欲しいだけ…。私の望む世界には、光も闇もない。『痛み』も『悲しみ』もない素晴らしい世界よ。だから…あなたも共に行きましょう…。」

 

そう言って、胸元を掴むファイターの手にそっと触れ、闇の力を解放しようとするガイア。

 

「っ!?…やめてっ!!」

 

セーラー・スター・ファイターは、輝く拳を振り下ろし、ガイアを突き飛ばした。全身を襲う激痛に、息も荒く、何度も顔を歪めるガイア。

 

「そう…。やはり…光の者が…私を拒む…。私の住む世界など…結局どこにもないのね…。この身体が滅びても、私はまた生まれ変わる。いつまでも、いつまでも…私の悲しみは終わらないのね…。

こんな私のスターシード…いっそ…消えてしまえばいいのに…。」

 

ガイアの瞳から、涙がこぼれた…次の瞬間、力強く高らかな声がガイアを捉えた。

 

「いいえっ!あなたの住む世界はここよ、ガイアッ!」

 

眼下に広がるクリスタルガーデンから響く声に、思わずそれを見下ろしたガイアとセーラー・スター・ファイターの瞳に、銀色に輝く美しい女王と、戦士たちの姿が映る。

 

「セーラームーン…なぜシールドの外へ…?」

 

セーラー・スター・ファイターの呟きを掻き消すネオ・クィーン・セレニティの第二声が響く。

 

「私はネオ・クィーン・セレニティ。クリスタルトーキョーの女王。ガイアッ!あなたは、地球の民!あなたがいる場所は、ここにあるのよっ!あなたは、決して一人じゃないのよっ!誰もあなたを傷つけない、あなたを守ると約束するわっ!だからお願い…スターシードを解放して頂戴っ!その身体に、あなた自身の光を取り戻すのよっ!絶対にできるわっ!だって、あなたは私達と同じ、人間なんだものっ!」

 

叫び声と共に、その手に携える、ネオ・クィーン・セレニティのエターナルティアルが、クリスタルトーキョーの空に、美しい銀色の陣を描く。

 

 

シルバー・ムーン・クリスタルパワーッ!

 

 

高らかなスペルアウトに続き放たれる銀色の光が、一気にガイアの身体を包む。

 

「いやぁぁぁぁっ!…照らさないでっ!私を傷つけないでっ!痛っ…!いやぁぁっ…!!」

 

断末魔にも聞こえるガイアの悲鳴。

ネオ・クィーン・セレニティから放たれる凄まじい銀色の光が、漆黒に染まるガイアの身体を突き抜ける。

 

「大丈夫よっ!痛くないわっ!痛いと思い込んでいるだけっ!感じるのよっ!自分の中にある光の輝きをっ!」

 

激しい痛みに、息もできずに必死に胸を押さえ、身体を弓のようにのけ反らせるガイア。

 

「いやぁぁぁぁっ…っ!!」

 

ガイアの絶叫が途切れた次の瞬間、彼女の胸から光輝くスターシードがひとつ…そしてふたつ飛び出した。

 

「っ?!南の星…?メイカー…?メイカーッ!!」

 

その輝きを見間違えるはずのないセーラー・スター・ファイターは、ガイアから放たれた2つのスターシードに向かって、猛スピードで飛び出し、しっかりと両手に抱きしめた。セーラー・スター・ファイターのその姿を見届けたネオ・クィーン・セレニティは、エターナルティアルにさらなる輝きを宿し叫ぶ。

 

「あと4つ…!出るわっ!セーラーカルテットたちっ!飛んでっ!」

 

クィーンの指示に、セーラーカルテットたちがクリスタルパレスの上空へ飛び上がった瞬間、ガイアの身体から、輝く4つのスターシードが飛び出した。

 

「ウラヌス…ネプチューン…プルート…サターン…お帰りなさい…。」

 

それぞれに4つの輝くスターシードを抱えたセーラーカルテットたちの姿を見届けたネオ・クィーン・セレニティが、優しく微笑んだ次の瞬間…彼女の顔が曇った。

 

「っ…?!あと…ひとつ…?出るっ…!?」

 

ネオ・クィーン・セレニティが呟くと、茜色に輝く2つの流星がクリスタルトーキョーの夜空を流れ、彼女の足元に勢いよく舞い降りた。

 

「…プリンセス・火球…ッ?!セーラー・スター・ヒーラーッ!?」

 

叫ぶが早いか、プリンセス・火球の叫び声がネオ・クィーン・セレニティの声を掻き消す。

 

「セーラームーン!カオスよっ!カオスシードッ!」

 


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