美少女戦士セーラームーン☆太陽の戦士   作:Doc Kinoko

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【act.033】大切な仲間

セーラー・スター・ファイターの背後に迫る影は、彼女の叫び声と共に広がる凄まじい閃光によって、一瞬にして振り払われた。

 

「随分と動きが鈍くなったのね、ガイアッ!!」

 

ファイターの声に、ひとすじの影が揺らめくと、全身傷だらけのガイアがそこに現れた。傷付いた身体を、震える両手で必死に庇いながら、セーラー・スター・ファイターをじっと見つめ、何も語ることはない。

 

「あなた…傷だらけじゃない。そんな身体で、私と戦うつもり?舐められたものね。」

 

握り締める拳に、再び輝きを宿したセーラー・スター・ファイターの一撃がガイアを一直線に捉える。

 

スター・シリアス・レイザーッ!!

 

放たれた凄まじい光線がガイアを貫き、彼女の身体を遥か後方まで弾き飛ばす。その間合いを一瞬にして詰め寄るセーラー・スター・ファイターにガイアが叫ぶ。

 

「っ…。なぜっ…?!なぜ光の者は戦いを望むのっ…?!」

 

全身を襲う激痛に、その場にうずくまるガイア。それを目にしたセーラー・スター・ファイターは、ガイアのあまりに痛々しい姿に、輝く拳を力なく降ろし叫んだ。

 

「あなた…動けないほど傷ついているじゃないっ!!私達は、無駄な戦いは望まないわっ!飲み込んだスターシードを解放しなさいっ!そうすれば、あなたをもう傷つけない。」

 

そうガイアに語りかけるセーラー・スター・ファイター。

ガイアは激しく首を横に振り叫ぶ。

 

「イヤッ!光に照らされるのは、もうたくさんっ!!

光が、銀河に輝く光が…いつも私を苦しめる。だから…だから飲み込んだの…。光のない世界なら、闇のない世界なら、みんな一緒にいれば…もう…誰も傷つかずに済むものっ!!」

 

 

 

---

 

「エンディミオン。様子がおかしいわ。敵…いえ、ガイアには…戦意がないように見える…。」

 

王の間の窓から、セーラー・スター・ファイターを心配そうに見守るネオ・クィーン・セレニティが呟いた。その隣で共に見守るキング・エンディミオンは、彼女の声に静かに頷き、後ろに控えるセーラー戦士に振り向き叫ぶ。

 

「セーラーパラス!二人の会話を聞くことはできないか?」

 

スモールレディを守護する太陽系小惑星4戦士=セーラーカルテットの一人、導きの戦士=セーラーパラス。キングの命令に、すっと立ち上がり、水色の美しい髪をなびかせ涼しげな声を上げ答る。

 

「おやすい御用ですわ。キング・エンディミオン様。」

 

彼女が胸の前の両手に力を込めると、水色に輝く水晶玉ほどの輝きが生まれる。そこに映るのは、クリスタルパレス上空で対峙するセーラー・スター・ファイターとガイア。驚くことに、セーラーパラスが操る不思議な球は、2人の姿だけでなく、その声すら響かせるのだ。

 

セーラーパラスの光の球を通じて、王の間にガイアの声が響く。その声はか細く、今にも消えてしまいそうな、チカラない声であった。

 

 

 

… … …

 

「私が生まれたのは…想像を絶するほどの昔。神々の時代…。この地球が、『ゴールデン・キングダム』と呼ばれるもっと前のこと…。

私は…人間だった。いいえ…今でも人間よ。

でも、私は捨てられた…。ある日突然、目の前が眩しく光ったかと思うと…私は意識をなくした。

そして…私が目を覚ますと…そこは、宇宙の闇の中だった…。

振り向いたら、地球が見えたわ。

私にはすぐにわかった…。『捨てられた』んだ、って…。 何事もなかったように、その輝きを湛える地球の光が、痛かった…悲しかった…。

私は、光に捨てられたのよ。」

 

セーラー・スター・ファイターに、自らの出生の秘密を明かそうと言うのか。ガイアは、全身に広がる無数の傷に、息も切れ切れに、震える唇から必死に言葉を紡いだ。

 

「それからは…わかるでしょう?暗い宇宙の闇の中を独り彷徨い、私は何度も命を落としたわ。

そして、何度も生まれ変わる…。

でも、何度生まれ変わっても、私は独りぼっちだった。無数の星の光が溢れる銀河に、たった独り…。

このスターシードがある限り、私は何度だって生まれ変わる。」

 

そう言って、彼女の胸から現れたのは、漆黒のスターシード。セーラー・スター・ファイターに見せようと言うのか、それとも独り言なのか、ガイアはさらに語り続ける。

 

「でも…。見て…私のスターシード…こんなにも黒い。私は人間よ。人間なのに、私のスターシードは…光を持たない…。

私は知ってる。この銀河に生きるすべての者は、その内にスターシードを持っている。

そして、どんなに闇の力に染まる者であっても、そのスターシードは星の光の輝きを持っているの。

でも…私のスターシードが、光り輝くことはなかった。

私は、光の力を持たないの。私は、闇の存在でしかないの。

なぜかわからないけれど、私は、光の輝きを持たないの。」

 

---

 

『私は、光に捨てられたの。

 

…私は…闇の存在でしかないの… 』

 

---

 

ガイアのその言葉が、王の間に響いた瞬間、先ほどまで、じっとそれを聞いていたスモールレディが、突然すっと立ち上がった。

 

「スモールレディ?どうしたの?」

 

声をかけるネオ・クィーン・セレニティの声が聞こえていないのか、王の間に佇むスモールレディの両脚は、がくがくと震えている。

 

「お母様…。私…行かなきゃっ…!行かなきゃいけない気がするのっ!」

 

スモールレディの取り乱した様子に、ネオ・クィーン・セレニティが急いで駆け寄り、彼女の肩を抱きしめる。

 

「行く…って?どこへ?落ち着きなさいスモールレディ!今外へ出ることは絶対に許しません!」

 

クィーンが見つめるスモールレディの瞳が、涙で滲む。彼女の震える唇が、ゆっくりと動いた。

 

「エリュシオン…。私、すぐにエリュシオンへ行かなければ…。エリオ スに言わなくちゃいけない気がするのっ!私にもよくわからないけれど、でも…お願い…お母様…。今すぐエリュシオンへ行かせて!」

 

頬を涙で濡らし、ただ必死に叫ぶスモールレディに、エリュシオンのただならぬ秘密を予感したネオ・クィーン・セレニティ。

 

「何か…知ってるのね?スモールレディ。そんなに悲しい顔をしてはダメ。

わかりました。行ってきなさい。その代わり、帰ってきたら、全部教えて頂戴。いいわね?」

 

ネオ・クィーン・セレニティは人差し指で、スモールレディの涙を拭いた。

 

「ありがとうお母様。それから、彼女…ガイアをもう傷つけないで!助けてあげて!!お願いよ、お母様。私を信じてっ…!」

 

スモールレディの言葉に、ネオ・クィーン・セレニティは大きく息をすると、優しい笑みを浮かべ答えた。

 

「もちろんよ…。彼女は地球人。私たちが守るべき、大切な仲間よ。」

 

ネオ・クィーン・セレニティは、優しくスモールレディの頭を撫でる。優しい母の眼差しに、大きくひとつ瞬きをしたスモールレディ。

 

「ありがとう、お母様。では、スモールレディ、ただ今より、エリュシオンへ行って参りますっ!」

 

深く一礼したスモールレディは、エリュシオンへ向かうべく、王の間を飛び出した。

 

… … …

 

王の間に再び訪れた静寂を破るのは、女王の凜とした声。

 

「エンディミオン、セーラーカルテットたち…私達も行きましょう。これから、プルートたちを救出します。そして…ガイアも…!」

 

女王の言葉に、その場にいる誰もが強く頷いた。

 

「君なら必ずそう言うと思ったよ、セレニティ。そうさ、ガイアは地球人。俺たちが守るべき、大切な仲間だ。さあ、行くぞ!」

 

朝焼け色のマントをひるがえすキング・エンディミオンの高らかな声に続き、それに答えるセーラーカルテットたちの凜とした声が響く。

 

窓の外に見えるセーラー・スター・ファイターとガイア。その二人をもう一度ゆっくりと見つめ深呼吸したネオ・クィーン・セレニティは、左手に携えるエターナルティアルを強く握り締め、クリスタルパレスの外へと、銀色のドレスの裾をひるがえした。


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