美少女戦士セーラームーン☆太陽の戦士   作:Doc Kinoko

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【act.003】銀色の女王

ダイアナが護る時空の扉を抜け、クリスタルパレスの上階へと続く階段を上ると、銀色に輝くクリスタルで創られた長い廊下へと出る。

 

向こうに見える十字路の先を、まっすぐに突き当たると『書庫』。過去の歴史の膨大なデータを保管している。 十字路を右に曲がり、大きな『宴の間』を抜けると、パレスの外へと出られる。

空とも思えるような高い天井を見上げると、無数の光の粒がパレス全体を照らす。

エリュシオンの祈りの力で、あらゆる方向から照らされる光によって、パレスに影が落ちることはない。

 

スモールレディは慣れた足取りで長い廊下を行き、十字路を左へと曲がった。左へ曲がった先には、さらに長く続く廊下があり、左右にいくつもの扉が見える。

 

一番手前の右、水色の輝きを放つ扉は、『マーキュリーの間』。

その向かい、赤い輝きを放つ左の扉は『マーズの間』。

さらに先の右の扉が『ジュピターの間』、その向かいの『ヴィーナスの間』へと続く。

 

クリスタルパレスのキング・エンディミオンと、ネオ・クィーン・セレニティを守護する、『太陽系4戦士』たちそれぞれの部屋となっているのだ。

 

4戦士の部屋のある廊下を抜けると、『大広間』へと続く。大広間は、高い天井と、その四方を支える4本の柱、それ以外にはなにもない、静寂すら感じる大きな空間。

向こうに走る1本の長い廊下と、廊下の先に続く『王の間』の扉を映すだけである。

 

無機質にも見える巨大な空間であるが、万一の敵の侵入に備えて創られたのだ。侵入する大勢の敵を長い廊下で足止めし、正面から迎え撃つ構造になっている。

 

そんな大広間の静寂を遮るように、スモールレディの耳に、透き通る声が聞こえた。

 

「あら。お帰りなさいスモールレディ。さきほどクィーンが探していらしたけれど…」

 

大広間の向こうから、乾いた足音と共に、涼しくも上品な声が静かに響く。

 

「ただいま。マーキュリー。さっきダイアナから聞いたわ。これから王の間へ行くところよ。」

 

スモールレディが笑顔で答えた涼しげな声の主、水色の髪を短く切り揃え、膝丈ほどの白いドレスに身を包む美しい女性。髪から覗く耳には、水色の石のピアスがキラリと光る。

掛けられた首飾りの先にある水色に輝くクリスタルは、『マーキュリークリスタル』と呼ばれ、そのクリスタル=『スターシード』が彼女の戦士としての力の源となっている。

 

宇宙の全てを知り、深い知識を持つ彼女が、ひとたびその力を解放すると、空は泣き、大地に落ちる偉大な大滝が逆流する。

 

『知の戦士=セーラーマーキュリー』の称号を与えられた彼女であったが、20世紀より帰還し、急成長したスモールレディの輝きに導かれるように、より強力な力を得ることができた。

 

そして、新たな称号を授けられたのだ。

 

『ミューズ・オブ・マーキュリー』

 

スモールレディに優しく笑いかける彼女は、まさに女神のような美しさであった。

 

「そうね。明日はセーラーカルテットたちの拝命式だもの。彼女たちが正式にセーラー戦士を名乗ることが許される大切な日ね。プリンセスとして、しっかり見届けてあげなくちゃ。ね、スモールレディ。」

 

女神はスモールレディの肩を両手で優しく叩き、軽く抱きしめた。

 

「うん。ありがとうマーキュリー。」

 

スモールレディの声を背中にして、マーキュリーは自室へと向かって歩き出した。

そうしてスモールレディは、王の間へ続く長い廊下へと行き、大広間を後にする。

 

王の間へ続く廊下、クリスタルの床や壁が一層輝きを増し、その先にある扉が特別な場所へ続くことを感じさせる。静かに佇む扉の隙間からは銀色の光がこぼれ、それを開く者を優しく迎え入れる。

 

扉の前に立ったスモールレディの胸のピンクムーンクリスタルが僅かに光を放つと、それは意思を持つかのようにゆっくりと開いた。

 

目の前に広がる銀色の床、いくつもの白い柱と、淡い虹色の天井。スモールレディの足元から敷かれた真紅の絨毯の先、木漏れ日のようにきらめく銀色の光の向こう。

 

薄黄色に輝く長い髪を、スモールレディと同じく頭に2つ丸く束ね、残り髪を銀色の光の中に揺らす『銀色の女王』。青く澄んだ瞳には銀河を映し、清らかな唇は優しさと気品に満ちている。

 

「エリュシオンよりただ今戻りました。お母様。」

 

スモールレディが母と呼んだその女性こそ、クリスタルトーキョーを統治する、銀色の強く美しい女王=『ネオ・クィーン・セレニティ』であった。

 


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