美少女戦士セーラームーン☆太陽の戦士 作:Doc Kinoko
遥か宇宙の彼方、銀河の中心、いて座ゼロスター。星々が生まれ、星々が始まりに還る混沌の海…
『ギャラクシーコルドロン』
新たに現れた敵、カオスの子=ガイアの謎を解き明かすべく、『ギャラクシーコルドロン』の番人『ガーディアン・コスモス』を尋ねた、キンモクスターの王女『プリンセス・火球』と、その守護戦士『セーラー・スター・ヒーラー』
ガーディアン・コスモスが次々に明かすガイアの謎は、彼女たちを絶望の淵へと落とす。
「では、ガイアは銀河の光を全て飲み込み、この世界を混沌の世界に変えることが目的だと言うの?
全ての光を消し、ガイアがギャラクシーコルドロンに戻った時、あなたも消されてしまうのよ、ガーディアン・コスモス!?
彼女を倒す方法はないのっ!?お願いっ!教えて頂戴っ!」
プリンセス・火球は、その心を絶望の淵に置かれてもなお、諦めることなく、ガーディアン・コスモスに詰め寄った。
ガーディアン・コスモスも、いつかガイアに消されてしまうかもしれない。それなのに、彼女の瞳はまだ曇ることを知らず、全てを受け入れるかのようだ。
「カオスの子=ガイア。彼女もまた、その身体にスターシードを持っている。たとえ彼女の肉体が滅んだとしても、何度だって生まれ変わるわ。これは、いつか訪れる、銀河の終わりなのかもしれない。」
喜びも悲しみも感じることのできないガーディアン・コスモスの言葉に、セーラー・スター・ヒーラーが叫んだ。
「じゃあなにっ!?私たちは、黙ってガイアに飲み込まれろと言うのっ!?奴のスターシードを消滅させる方法はないのっ!?」
セーラー・スター・ヒーラーの問い掛けに、ガーディアン・コスモスは戸惑うことなく口を開いた。
「スターシードは、何人にも犯されない、永遠の魂。あなただって知っているでしょう?
そうね、ガイアが消滅する時、それは、彼女が全ての光を飲み込んだ時。光のない闇は存在せず、闇のない光も存在しないわ。銀河が闇に閉ざされた時、おそらく彼女自身の闇の輝きも消える。闇の中に、闇は存在しないもの。」
それが、ガーディアン・コスモスの答えだった。
「それじゃやっぱり、黙って飲み込まれろってことじゃないっ!?」
叫んで、ガーディアン・コスモスに掴みかかろうとするセーラー・スター・ヒーラーを制止し、プリンセス・火球が問い掛けた。
「ちょっと待って、ガーディアン・コスモス。あなたさっき、ガイアは地球人だと言ったわ。私には、地球人の友達がいるの。だからわかる。地球人が、どうしても星を脅かす存在には思えない。なぜ、地球人であるガイアが、そんなことをするのかしら?」
そう、ずっと引っ掛かっていた、『ガイアが地球人である』と聞いた時から、プリンセス・火球は、ずっと考えていたのだ。地球人がそんなことをするはずがない、と。
「ガイア、それは、孤独な闇の迷い人。間違いなく彼女は地球人、人間よ。でも、彼女から感じ取ることができるのは、深い闇の心だけ。それは『痛み』や『悲しみ』。
人間ならば誰もが持っている『幸せ』や『喜び』の感情を、一切感じ取ることのできない、深い深い闇の心…。そう、闇そのものなのかもしれない。
だから光を求めるのか、だから光を飲み込もうとするのか、消そうとするのか…。ごめんなさい、プリンセス・火球。これ以上は、私にもわからないわ。」
ガーディアン・コスモスが、初めて言葉を詰まらせた。彼女にも、全てはわからないのだ。ギャラクシー・コルドロンに、またしばしの静寂が訪れる。
…
「そう。やはり、最後まで戦うしかないのね。戦って、ガイアの肉体を壊し、スターシードにまで還元して、束の間の平和を取り戻すか…
ガイアに飲み込まれ、光も闇も、戦いもない新しい世界の訪れを迎えるしかないのね…。ありがとう。ガーディアン・コスモス。」
プリンセス・火球の独り言のような言葉が、力なく宇宙の闇に掻き消えた。
「プリンセス・火球…。あなたは…これからどこへ向かうのかしら。ここはギャラクシーコルドロン。あなたが望むのなら、その生命を始まりの海へ…」
言いかけたガーディアン・コスモスの言葉を、プリンセス・火球の力強い言葉が掻き消す。
「いいえっ!私たちは、最後まで戦う。戦って、勝って、仲間のスターシードを取り戻す!たとえまたガイアが何度蘇ろうとも、私たちは何度だって戦うわっ!
行きましょう!セーラー・スター・ヒーラー! ファイターと合流して、ガイアを倒し、メイカーのスターシードを取り戻すのよっ!」
叫んで、セーラー・スター・ヒーラーの手をとり、ギャラクシ・コルドロンに背を向けたプリンセス・火球。
彼女がこれから目指すのは、ここから遥か彼方、太陽系。セーラームーンのもとに向かった、セーラー・スター・ファイターを追うのだ。
プリンセス・火球は、今まさにギャラクシーコルドロンを飛び立とうと大きく深呼吸すると、もう一度ギャラクシー・コルドロンに向き直り、こちらを見つめるコルドロンの番人=ガーディアン・コスモスに、深く頭を下げ叫んだ。
「ありがとう。ガーディアン・コスモス。また、いつかきっと、あなたに会いに来るわ!さようならっ!」
そう言って、プリンセス・火球とセーラー・スター・ヒーラーは、遥か銀河の彼方=太陽系を目指し、ギャラクシーコルドロンを飛び立った。