美少女戦士セーラームーン☆太陽の戦士   作:Doc Kinoko

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【act.026】分かち合うもの

 

セーラーウラヌスとセーラーネプチューンが放つ巨大な光の力に、その身を弾き飛ばされたガイア。

 

「…くっ!私を…拒むと言うのね。セーラーウラヌス、セーラーネプチューン…。あなたたちは恐れているだけ。一人ぼっちになることを。心のどこかでいつも恐れている。いつか、彼女が自分のそばからいなくなるかもしれない、って。その時、あなたはこの世界に生きる意味を失う。それは、彼女と共にあるその命を、失うと言うこと。

今ならまだ間に合う。私の中で、共に生きましょう。そうすれば、もう一人ぼっちじゃないわ。」

 

ガイアの言葉に、ウラヌスが強く頷いた。ガイアの真意を、理解したと言うのか。

 

「わかってるじゃないか、ガイア。そうさ、彼女を追いかけるのは、いつも僕の方だ。君の中に彼女と共に入れば、僕のこの痛みは消えると言うのか。悪くないな…。だが… 気に入らないな、お前がそこにいることがっ!!」

 

「ウラヌスッ!!出てはダメッ!!」

 

ネプチューンの必死の制止を振り切り、シールドの外へ飛び出したウラヌスが、輝く拳をガイア目掛けて一気に振り下ろす。

 

ワールド・シェイキングッ!!

 

セーラーウラヌスの放つ巨大な光の球が、ガイアを一直線で捕らえ、激しい爆発音が太陽系に響く。

次の瞬間、セーラーウラヌスの足元にざわざわと伸びるガイアの影が絡みついた。

 

「しまったっ!!」

 

「ウラヌスッ!!」

 

ネプチューンの絶叫が虚しく響き渡り、セーラーウラヌスの身体が、あっという間に闇に包まれる。

 

「やめなさいガイアッ!!」

 

叫び声と共に、セーラーネプチューンがシールドの外へ飛び出した。細い両手に、すさまじい闘気を宿し、セーラーウラヌスを包む闇に目掛け、その闘気を一気に解き放つ。

 

「やめろっ!来るんじゃないッ!ネプチューン!!」

 

ディープ・サブマージッ!!

 

セーラーネプチューンが放つ大津波のような光の闘気。しかし、ウラヌスを包む闇のチカラが、消えることはない。

 

「ウラヌスッ!しっかりしてッ!!」

 

ウラヌスに駆け寄り、闇に包まれる彼女の身体を抱きしめ、必死に叫び声を上げるセーラーネプチューン。

 

「すまないな、ネプチューン。…ガイアの言うとおり…僕は、いつだって君がいなくなることを恐れていた。いつだって君の前を走っていたかった。だからシールドを飛び出したんだ。いつか君が、君だけの世界へ行くんじゃないかって…。僕を置いて、一人でどこかへ行くんじゃないか、って…」

 

「バカねウラヌス。そんなハズないじゃない。あなたはいつだってちゃんと、私の前を走ってた。だから私、いつだって必死であなたを追いかけているのよ。」

 

「ふふっ…お互い寂しがりやなんだな…僕たちは…。君のその言葉は、いつだって僕に生きる勇気を与える。でも、君のその言葉を聞くたびに、僕の心が不安になる…。少しだけ、悲しくなるんだ…。なぜだろう。君のことを、こんなにも信じているハズなのに。僕の願いは、ただひとつだけなのに…。」

 

「ええ、そうね、ウラヌス。あなたのその言葉が、いつも私を不安にさせる。悲しくさせる…。でも、信じてるわウラヌス。私の願いも、たったひとつだけ。」

 

「君とひとつになりたい」

 

「あなたとひとつになりたい」

 

心も、身体も、未来さえいらない。ただ、ひとつになりたい。私たちが分かち合うのは、時間でも、空間でもない。

 

…生命…

 

「ガイアッ!ウラヌスを連れて行くのなら、私も連れていきなさいっ!!」

 

今まさに闇に飲み込まれようとするセーラーウラヌスを抱きしめるネプチューンが、ガイアに向かって叫んだ。

 

「そう…。二人とも、孤独なのね。寂しいのね。お互いを信じ合うほどに、その心が悲しみに染まる。かわいそうな人。

もう大丈夫よ。私と、ひとつになりましょう。もう一人ぼっちじゃないわ。悲しみの世界が、間もなく終わるわ。」

 

呟いたガイアが、闇の輝きを宿した手の平をセーラーネプチューンに向けると、彼女の身体もゆっくりと闇に包まれ、宇宙の闇の中に、ウラヌスと共に溶けた。

 

 

ねえ…ウラヌス…私たち…やっとひとつになれたのね…

 

そうだな…ネプチューン…

 

 

「ほら…。言ったでしょう?セーラーウラヌス、セーラーネプチューン。もう悲しくない、痛くない。私と…ひとつになったのよ…。」

 

ガイアが呟いた瞬間、びしびし と鈍い音を立てたながら、彼女の全身に深い傷が刻まれる。傷口からはとめどなく血が溢れ出し、その痛みをこらえる彼女が初めて悲鳴を上げた。

 

「…っくっ…!なんて強い痛み…。まだよ…。まだ全部終わってないわ…。銀河に溢れる痛みは、まだ全部消えていないっ!私の身体…しっかりしなさいっ!」

 

あまりの激痛に、その場にうずくまるガイア。

 

冥王星、海王星、そして天王星の輝きを失った太陽系の闇が、彼女の全身から溢れ出る血の色を黒く染める。

 

そして彼女の真上、宿主を失った3つのタリスマンが輝きを失うと、外部太陽系に展開された巨大な光の壁は、ゆっくりと姿を消した。

 

「…わかってるわ、母さん…。地球へ帰れと言うのね…。私に『痛み』と『悲しみ』しか与えなかった…私の故郷…。やっと、帰れる…。どうか力を貸して、母さん…。」

 

全身を襲う激痛を振り払い立ち上がったガイアが、まさに地球へ向かおうと、1歩踏み出した瞬間、彼女の頭上にある3つのタリスマンが、再び輝きだした。

 

「…タリスマン…?まだ私を邪魔すると言うの?」

 

ガイアが呟いた瞬間、3つのタリスマンは輝きと共に、太陽系の中心へと向かって、その姿をかき消した。

 

「タリスマンが消えた…。あの方角は…。…土星…?」


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