美少女戦士セーラームーン☆太陽の戦士 作:Doc Kinoko
セーラーウラヌスとセーラーネプチューンが放つ巨大な光の力に、その身を弾き飛ばされたガイア。
「…くっ!私を…拒むと言うのね。セーラーウラヌス、セーラーネプチューン…。あなたたちは恐れているだけ。一人ぼっちになることを。心のどこかでいつも恐れている。いつか、彼女が自分のそばからいなくなるかもしれない、って。その時、あなたはこの世界に生きる意味を失う。それは、彼女と共にあるその命を、失うと言うこと。
今ならまだ間に合う。私の中で、共に生きましょう。そうすれば、もう一人ぼっちじゃないわ。」
ガイアの言葉に、ウラヌスが強く頷いた。ガイアの真意を、理解したと言うのか。
「わかってるじゃないか、ガイア。そうさ、彼女を追いかけるのは、いつも僕の方だ。君の中に彼女と共に入れば、僕のこの痛みは消えると言うのか。悪くないな…。だが… 気に入らないな、お前がそこにいることがっ!!」
「ウラヌスッ!!出てはダメッ!!」
ネプチューンの必死の制止を振り切り、シールドの外へ飛び出したウラヌスが、輝く拳をガイア目掛けて一気に振り下ろす。
ワールド・シェイキングッ!!
セーラーウラヌスの放つ巨大な光の球が、ガイアを一直線で捕らえ、激しい爆発音が太陽系に響く。
次の瞬間、セーラーウラヌスの足元にざわざわと伸びるガイアの影が絡みついた。
「しまったっ!!」
「ウラヌスッ!!」
ネプチューンの絶叫が虚しく響き渡り、セーラーウラヌスの身体が、あっという間に闇に包まれる。
「やめなさいガイアッ!!」
叫び声と共に、セーラーネプチューンがシールドの外へ飛び出した。細い両手に、すさまじい闘気を宿し、セーラーウラヌスを包む闇に目掛け、その闘気を一気に解き放つ。
「やめろっ!来るんじゃないッ!ネプチューン!!」
ディープ・サブマージッ!!
セーラーネプチューンが放つ大津波のような光の闘気。しかし、ウラヌスを包む闇のチカラが、消えることはない。
「ウラヌスッ!しっかりしてッ!!」
ウラヌスに駆け寄り、闇に包まれる彼女の身体を抱きしめ、必死に叫び声を上げるセーラーネプチューン。
「すまないな、ネプチューン。…ガイアの言うとおり…僕は、いつだって君がいなくなることを恐れていた。いつだって君の前を走っていたかった。だからシールドを飛び出したんだ。いつか君が、君だけの世界へ行くんじゃないかって…。僕を置いて、一人でどこかへ行くんじゃないか、って…」
「バカねウラヌス。そんなハズないじゃない。あなたはいつだってちゃんと、私の前を走ってた。だから私、いつだって必死であなたを追いかけているのよ。」
「ふふっ…お互い寂しがりやなんだな…僕たちは…。君のその言葉は、いつだって僕に生きる勇気を与える。でも、君のその言葉を聞くたびに、僕の心が不安になる…。少しだけ、悲しくなるんだ…。なぜだろう。君のことを、こんなにも信じているハズなのに。僕の願いは、ただひとつだけなのに…。」
「ええ、そうね、ウラヌス。あなたのその言葉が、いつも私を不安にさせる。悲しくさせる…。でも、信じてるわウラヌス。私の願いも、たったひとつだけ。」
「君とひとつになりたい」
「あなたとひとつになりたい」
心も、身体も、未来さえいらない。ただ、ひとつになりたい。私たちが分かち合うのは、時間でも、空間でもない。
…生命…
「ガイアッ!ウラヌスを連れて行くのなら、私も連れていきなさいっ!!」
今まさに闇に飲み込まれようとするセーラーウラヌスを抱きしめるネプチューンが、ガイアに向かって叫んだ。
「そう…。二人とも、孤独なのね。寂しいのね。お互いを信じ合うほどに、その心が悲しみに染まる。かわいそうな人。
もう大丈夫よ。私と、ひとつになりましょう。もう一人ぼっちじゃないわ。悲しみの世界が、間もなく終わるわ。」
呟いたガイアが、闇の輝きを宿した手の平をセーラーネプチューンに向けると、彼女の身体もゆっくりと闇に包まれ、宇宙の闇の中に、ウラヌスと共に溶けた。
…
ねえ…ウラヌス…私たち…やっとひとつになれたのね…
そうだな…ネプチューン…
…
「ほら…。言ったでしょう?セーラーウラヌス、セーラーネプチューン。もう悲しくない、痛くない。私と…ひとつになったのよ…。」
ガイアが呟いた瞬間、びしびし と鈍い音を立てたながら、彼女の全身に深い傷が刻まれる。傷口からはとめどなく血が溢れ出し、その痛みをこらえる彼女が初めて悲鳴を上げた。
「…っくっ…!なんて強い痛み…。まだよ…。まだ全部終わってないわ…。銀河に溢れる痛みは、まだ全部消えていないっ!私の身体…しっかりしなさいっ!」
あまりの激痛に、その場にうずくまるガイア。
冥王星、海王星、そして天王星の輝きを失った太陽系の闇が、彼女の全身から溢れ出る血の色を黒く染める。
そして彼女の真上、宿主を失った3つのタリスマンが輝きを失うと、外部太陽系に展開された巨大な光の壁は、ゆっくりと姿を消した。
「…わかってるわ、母さん…。地球へ帰れと言うのね…。私に『痛み』と『悲しみ』しか与えなかった…私の故郷…。やっと、帰れる…。どうか力を貸して、母さん…。」
全身を襲う激痛を振り払い立ち上がったガイアが、まさに地球へ向かおうと、1歩踏み出した瞬間、彼女の頭上にある3つのタリスマンが、再び輝きだした。
「…タリスマン…?まだ私を邪魔すると言うの?」
ガイアが呟いた瞬間、3つのタリスマンは輝きと共に、太陽系の中心へと向かって、その姿をかき消した。
「タリスマンが消えた…。あの方角は…。…土星…?」