美少女戦士セーラームーン☆太陽の戦士   作:Doc Kinoko

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【act.024】光の壁

太陽系第8惑星 『海王星』

 

『冥王星』が忘れられた30世紀の今では、太陽から最も遠い太陽系の惑星として、その存在は周知されている。

 

冥王星と同じく、太陽の輝きをわずかに映すだけの薄暗いその星には、海神トリトンが住むと言われ、その星に近づく者は、神の怒りに触れ、深い海の底へ引きずり込まれと言う。

しかし、その星の中心『トリトンキャッスル』の玉座に本来腰掛けているのは、海神ではなく、美しき乙女。透き通るほどの美しい肌、蒼い瞳には深海を映し、淡い水色の肩丈の髪は、打ち寄せる波のように上品な曲線を描く。

 

彼女が手にする魔具(タリスマン)は、『ディープ・アクア・ミラー』と言う美しい鏡。セーラープルートと同様、地球から遠く離れたこの場所で、太陽系外部からの侵入者を見張る任務に就いている、孤独な番人。

 

『深海の星=海王星』を守護にもつ

 

『抱擁の戦士=セーラーネプチューン』

 

遥か遠くに見えるクリスタルトーキョーに思いを馳せ、1000年の時間を、ここ海王星で、たった一人で過ごしている。

 

トリトンキャッスルの玉座に腰掛けるセーラーネープチューン。その手に持つ『ディープ・アクア・ミラー』へ彼女が語りかけた。

 

「ウラヌス!気付いてる?プルートのスターシードと冥王星が消えたわ。そして先ほど、私のタリスマンを通じて、ネオ・クィーン・セレニティから外部太陽系シールドの展開の要請を受けたわ!敵の侵入よ!幸いガーネットロッドは、ここにあるわ。プルートが消える直前に、彼女がここへ転送させたのよ!すぐに始めましょう!」

 

彼女はその手に持つ美しい鏡に『ウラヌス』と言って呼びかけた。

 

『ウラヌス』

 

太陽系第7惑星『天王星』

 

『海王星』より少し地球に近いその星の中心、『ミランダキャッスル』の玉座に腰掛ける孤独な番人。女性にしては高い背丈と、短く切り揃えられた薄黄色の髪。男勝りな口ぶりに、鋭く研ぎ澄まされた瞳には天を映し、その顔立ちは、美しい乙女にも、少年のようにも見える。

 

『天界の星=天王星』を守護にもつ

 

『飛翔の戦士=セーラーウラヌス』

 

彼女が手にする最後の魔具(タリスマン)は『スペース・ソード』と呼ばれる神秘の剣。太陽系のセーラー戦士の中でも、最も高い戦闘能力を持つ彼女にこそ相応しい、太陽系最強の剣。

 

セーラーネプチューンと同じく、1000年もの時間をたった一人で、遥か遠くの地球を見守り続けている。

 

「二人だけでシールドを張れとは…。相変わらず僕らのお姫様は無茶苦茶だな。ふふっ」

 

お互いのタリスマンによって通じ合うウラヌスとネプチューン。

 

「あらウラヌス。自信がないの?それとも、私と二人きりでは不満なのかしら?」

 

聞き慣れたネプチューンの皮肉混じりの声が、スペースソードを通じて、ミランダキャッスルの玉座に響く。

 

「とんでもない。1000年ぶりに君に会えるんだ、これほど嬉しい日はないさ。敵に感謝しなくてはな。」

 

「ふふっ。そうねウラヌス。では、すぐに始めましょう!プルートのガーネットロッドを持って、今からそちらに向かうわ、中間のC地点で会いましょう。」

 

そう言って、セーラーネプチューンは、遥か向こうの天王星を目指し、トリトンキャッスルを飛び立った。

 

星が消えるほどの緊急事態であっても、冗談混じりに言葉を交わす二人の戦士。彼女たちが戦いの果てに求めるものは、セーラープルートたちとは少し違うようにも思える。

 

---

 

広大な太陽系の片隅、海王星と天王星の中間、C地点。宇宙の闇の中を、流星のように駆ける二つの輝きが交わる。1000年ぶりの、孤独な二人の戦士の再会。

 

「久しぶりね、ウラヌス。私の方が、早く着いていたみたい。…少し太ったんじゃなくって?」

 

先に口を開いたのはセーラーネプチューン。美しく透き通る、上品な声。その手に握られる彼女のタリスマン『デープ・アクア・ミラー』と、今やセーラープルートの形見とも言える、プルートのタリスマン『ガーネットロッド』。

 

そんな彼女を見つめるセーラーウラヌス。

 

「君を追いかけるのは、いつも僕の方だからね。少し太ったかな?じゃあ、後でゆっくりご覧いただこうかな。」

 

スラリと佇むセーラーネプチューンに歩み寄ったセーラーウラヌスは、彼女の耳元に囁き、肩をそっと抱きしめると、彼女の瞳を見つめた。そして近づくウラヌスの唇は、ネプチューンの指先によってそっと塞がれた。

 

「ふふっ。その気もないくせに。あなたって口ばっかり、おかげで私は、いつも一人ぼっち。追いかけているのは、私の方よ。」

 

戦士の絆は、空白の1000年の月日など一瞬にして埋められるのだろうか。それとも、この二人だけが特別なのだろうか。1000年もの間、違う場所で違う時間を過ごした二人。時間と空間を共にするのが、家族や恋人だと言うのなら、この二人は、一体何を共有していると言うのか。この二人から感じられるのは、1000年前と同じ、変わらない空気。変わらない強さであった。

 

 

「…っ!?来るわっ!!さぁ、急いで始めましょうウラヌス!」

 

消えた冥王星の方角から、こちらに近づいてくる闇の脅威。先に気づいたのはネプチューンであった。

 

「まったく…。デリカシーのない奴だ。一体どんな顔してるんだろうな。さあネプチューン!プルートのガーネットロッドをっ!!」

 

ウラヌスの呼びかけに応えたセーラーネプチューンが、その手に持つセーラープルートのガーネットロッドを放り投げると、その輝きが太陽系の宇宙空間に、真紅の陣を描く。

 

太陽系の3つのタリスマンは、持つ者を選ばない。その強力なチカラ故、悪しき者によって何度もその存在を狙われ続けてきたのだ。本来セーラープルートが持つことで、そのチカラを十分に発揮できるが、セーラープルートが消滅した今、彼女の代わりに、セーラーネプチューンがそれを扱うことは、造作もないことである。

 

「さすがだな、ネプチューン…。さあ…我が魔具『スペース・ソード』よ!!

外部太陽系戦士 セーラーウラヌス の名において命じる!

何人をも切り刻む 光の刃を…っ!!」

 

ウラヌス・クリスタル・パワーッ!!

 

セーラーウラヌスの高らかなスペルアウトと共に、『スペースソード』から放たれる巨大な光の柱が、ガーネットロッドの輝きに共鳴する。

 

「我が魔具『ディープ・アクア・ミラー』よ!!

外部太陽系戦士 セーラーネプチューン の名において命じる!

何人をも跳ね返す 光の鏡を…っ!!」

 

ネプチューン・クリスタル・パワーッ!!

 

セーラーネプチューンのタリスマンから放たれる光の柱が、ガーネットロッドとスペースソードの輝きに共鳴する。

 

「さあ!一気に行くぞ!ネプチューンッ!!」

 

外部太陽系 シールド 展開 !!

 

セーラーウラヌス、セーラーネプチューンのチカラによって、3つのタリスマンから放たれた巨大な光の壁は、瞬く間に太陽系を包み、そこから先へ侵入しようとする者を拒む無敵の壁。

 

---

 

「…そう。光の壁が、私を拒む…。私には…故郷に帰ることすら、許されないのね…」

 

太陽系に出現した巨大な光の壁を目の前にして呟いたのは、ガイア。指先の傷、唇の傷。胸から流れる血をそっと手の平で押さえる姿は、静かに痛みを訴える孤独な少女のように見える。

 

 


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