美少女戦士セーラームーン☆太陽の戦士   作:Doc Kinoko

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【act.019】侵入者

「太陽系へ侵入者っ!?違う…これは…来るはずのない外星系のセーラー戦士っ!?なにがあったと言うのっ!?」

 

太陽系に侵入した強い力を察知し、カロンキャッスルを飛び出したセーラープルート。砂と岩ばかりの冥王星の地で彼女が目にしたのは、いくつもの激しい隕石との衝突に、闘衣をボロボロにしたセーラー・スター・ファイターの姿であった。

 

「あなたは、セーラー・スター・ファイター?!一体どうしたのっ?!何があったと言うのっ?!」

 

激しく息を切らし、地に伏せるセーラー・スター・ファイターを目にしたセーラープルート。驚き駆け寄るセーラープルートに、ファイターが叫ぶ。

 

「セーラープルート!聞いて!敵よっ!新たな敵が現れたの!

キンモク星系の星がひとつ消されたわ。今メイカーが足止めしているはずだけど…。私を追いかけて、太陽系まで来るかもしれない。セーラームーンに…早く伝えなくちゃっ…!」

 

息も切れ切れに、必死に伝えるファイターに、ただならぬ敵の存在を感じたセーラープルート。

 

銀河系のセーラー戦士の中でも、その強さは屈指のセーラー・スター・ファイターが取り乱すほどの敵。一体どんな敵だと言うのか。

 

「なんですって?!でも、あなた以外の太陽系への侵入者は今のところ来ていないわ。太陽系以外の者が近づくと、私にはすぐにわかる。大丈夫よ。そんなにもボロボロになって…。とにかく落ち着きなさい。」

 

そう言ってセーラープルートが、自身の持つガーネットロッドに輝きを宿してファイターの頭上に振り下ろすと、みるみるうちにファイターのボロボロの闘衣が再生した。

 

「…あなたの肉体の時間を巻き戻したわ。これで大丈夫よ、セーラー・スター・ファイター。教えて、一体何が起こったの?」

 

セーラープルートの持つガーネットロッドは、その力で時間を操ることができる。

 

30世紀の今でこそ、ここ冥王星で太陽系外部からの侵入者の警備の任務に就いているが、他の戦士にはない特別な力を認められ、何千年もの間、時空の扉の番人を前任してきたのは周知のことである。

 

「敵の名はガイア。自分のことを、『カオスの子』と言ったわ。闇の力で星を消し去る…。いえ、メイカーは奴の力を『星を飲み込むカオスの力』と言ったわ。私もメイカーも、奴の放つ闇の影に飲み込まれそうになったの。長い黒髪に、黒いドレス。感情のない黒い瞳の女よ。私の技が、まるで空気みたいにまったく通じなかった…。あの不気味な雰囲気は、一目見ればすぐにわかるはずよ。」

 

そう言って、唇をぎゅっと噛み締めたセーラー・スター・ファイターの拳が地面を激しく叩く。

 

「ファイター…よくここまで無事で来てくれました。本当にありがとう。メイカーやヒーラー…。それにプリンセス・火球は無事なの?」

 

地に伏せるファイターを労い、そっと抱きしめたセーラープルートは、メイカーたちの安否を尋ねた。

 

「メイカーは、私に太陽系への遣いを頼んで、ガイアの足止めを…。プリンセスは、ヒーラーが連れて、どこか安全な場所へ…。みんな無事でいてくれると信じたいわ。」

 

そう言って、悔しそうに強く首を横に振るファイター。頭から消えないガイアの闇の恐怖と絶望感を必死に掻き消そうとしているのか。セーラープルートには、そう感じた。

 

「わかったわ、ファイター。私はここから敵の監視を続けます。あなたはすぐに地球へ行って、ネオ・クィーン・セレニティに… …」

 

 

『…やっぱり…ここにいたのね… セーラー・スター・ファイター 』

 

 

「…っ?!」

 

突然声が響いた。抑揚のない、冷たい声。その声に思わず絶叫したセーラー・スター・ファイター。見なくともわかる。嫌と言うほど知っている声。

 

「来たっ!?セーラープルート!奴が来たのよっ!」

 

叫んでセーラープルートの腕を必死に掴むファイター。

 

「そんなハズないわっ!太陽系以外の者が侵入すれば、私にはすぐにわかる!落ち着きなさいファイター!きっと声だけ飛ばしているのよっ!侵入しているハズがないわっ!」

 

セーラープルートはその言葉に絶対の自信を持っていた。侵入者がこの星系へ近付くと、セーラープルートの持つガーネットロッドが警鐘を鳴らす。

 

たとえそれが味方であったとしても、セーラープルートに気づかれずに太陽系へ侵入することなど絶対に不可能なのだ。

 

激しく取り乱すセーラー・スター・ファイターを必死に落ち着かせようとするセーラープルート。

 

次の瞬間、セーラープルートの瞳の端に、ひとすじの影が揺らめいた。

 

「っ…?!誰っ!?」

 

気付くが早いか、勢いよくその影にガーネットロッドを振り下ろしたセーラープルート。

 

ガーネットロッドが虚しく空を切り、ひとすじの影がゆらゆらと動めくと、一人の乙女が姿を現した。

 

「ガイアっ…!」

 

ファイターが叫んだ。

 

「…そんな。バカな…。ガイア…侵入していたと言うの…?」

 

目の前に現れた漆黒の乙女ガイア。セーラープルートには信じられなかったが、それが現実であった。

 

 

 


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