美少女戦士セーラームーン☆太陽の戦士   作:Doc Kinoko

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【act.013】戦いの予感

「あなた方『セーラー・スター・ライツ』に、あの星の調査を要請します。」

 

プリンセス・火球の言葉に、勇ましい返事で応えたセーラー・スター・ファイターは、勢いよく城を飛び出した。

 

「メイカー!ヒーラー!緊急出動よっ!すぐ来て!」

 

セーラー・スター・ファイターが、口元にある通信機のマイクに向かって叫ぶと、丹桂王国の茜色の空に、二つの輝く星が流れた。その流れ星が音も無くセーラー・スター・ファイターの足元に舞い降りると、二つの輝きは美しい二人の戦士へと姿を変えた。

 

「いったいどうしたの?ファイター?」

 

先に口を開いた彼女の名は、『セーラー・スター・メイカー』

栗色の長い髪を、首の後ろで一つに束ね、セーラー・スター・ファイターよりも頭半分ほど高い背丈である。スラリと伸びる手足には、黒いエナメルに輝く闘衣を纏い、高貴な瞳には、戦士の鋭い輝きを映す。

 

彼女もセーラー・スター・ファイターと同じく、丹桂王国のプリンセス・火球を守護する屈強なる戦士。女性にしては低い声を持つ彼女は、高貴な立ち居振る舞いも手伝ってか、美しい紳士のようにも見える。

 

「メイカー、ヒーラー。よく聞いて。南の星が、消えたの。」

 

「はぁっ?…星が消えた?!」

 

セーラー・スター・ファイターの言葉に、声を荒げて驚いた彼女の名は、『セーラー・スター・ヒーラー』

顔の半分ほどある銀色の長い前髪を風に揺らし、少年のような顔立ちをしている。くりくりとした深碧色の瞳には、好奇心に溢れた冒険者のような強さを映す。

 

セーラー・スター・ファイター、メイカー、ヒーラー。彼女たちが、『丹桂王国』の『プリンセス・火球』を守護する三人のセーラー戦士『セーラー・スター・ライツ』。

 

「詳しいことはプリンセスにもまだわからないけれど、私達セーラー・スター・ライツに、南の星の調査の要請があったわ。すぐに向かいましょう!」

 

セーラー・スター・ファイターの報告に、鋭い眼差しを浮かべ、黙って頷いた二人。こうしてセーラー・スター・ライツの三人は、遥か向こうの空を見上げ、身体を1点の輝きに変えると、流れ星のように宇宙へと飛び立った。

 

---

 

「…来る。光が3つ…。強いわ。私達を、まだ傷つけようと言うの…?」

 

自分の行く先から、こちらに向かってくる三つの光に気づいたガイアは、先ほど傷つけた自身の指先を見つめ呟いた。

 

「…丹桂王国…?そう。彼女たちは、セーラー・スター・ライツと言うのね?」

 

驚いたことにガイアは、丹桂王国の名と、セーラー・スター・ライツの名を口にした。

 

「…来るわ…」

 

セーラー・スター・ライツとの対峙を予感したガイアの目の前に、茜色に輝く三つの流れ星が辿りつく。

 

宇宙の静寂の中対峙した、漆黒の乙女=ガイアとセーラー・スター・ライツ。その静寂を一番始めに破ったのは、セーラー・スター・ヒーラーである。

 

「ねぇ、なにアイツ?なんか変な格好だね。服、全身真っ黒だし…。」

 

「ヒーラー!…静かに…っ!」

 

ガイアのただならぬ気配にいち早く気づいたセーラー・スター・メイカーが、彼女の声を鎮める。二人の会話を背に、セーラー・スター・ファイターが、ガイアに声をかけた。

 

「あなた誰?ここで何をしているのか知らないけれど、さっきこの先でよくないことが起こったの。私達にもよくわからないけれど、今この辺りは、あまり安全とは言えないわ。すぐに避難しなさい。」

 

セーラー・スター・ファイターの言葉を聞いていないのか、ガイアは宙に踊る長い黒髪を、戯れるように指で遊ばせている。

 

「ちっ…ちょっとアンタっ!聞いてんのっ…?」

 

ガイアの態度に、思わず詰め寄ったヒーラーの腕を、メイカーが力強く掴んで制止する。

 

「痛っ…なによメイカー…」

 

メイカーは真剣な眼差しで、ヒーラーに大きく瞬きすると、ファイターの前を通り過ぎ、ガイアの目の前まで歩み寄ると、ゆっくりと訪ねた。

 

「私は、セーラー・スター・メイカー。もう一度聞くわ。あなたは誰?ここで、何をしているの?」

 

自身の黒髪に視線を遊ばせていたガイアは、視線をメイカーへ移し、囁くように口を開いた。

 

「私はガイア…カオスの子…。」

 

その言葉に、スターライツは驚愕した。

 

「カオス」

 

今から1000年前、銀河の運命をかけた、セーラーギャラクシアとの闘い。セーラー・スター・ライツは、「カオス」をその身に取り込んだセーラーギャラクシアに、母星を奪われた丹桂王国の一族の生き残りであった。

 

命かながら太陽系へと逃げ出したスターライツとプリンセス・火球であったが、銀河の果てまで追いかけてきたセーラーギャラクシアに、無惨にもそのスターシードを奪わた。

ギャラクシーコルドロンの海で、絶望と悲しみに震えていたところを、セーラームーンと、幻の銀水晶によって救われ、すべてを元通りにすることができたのだ。

 

「カオス…?!どうして今更っ!?カオスのスター・シードはあの時消えたはずでしょうっ!?1000年も前の話よ!その子供があなただと言うの!?おかしなことを言うと、ただじゃ置かないわっ!!」

 

ガイアの言葉に、喉が枯れるほどの大声で叫んだのは、ファイター。

 

カオスは消えたはず。1000年も前に葬った、史上最大にして最悪の敵。絶望の記憶。ガイアの言葉が、たとえ冗談だったとしてもファイターには許せなかったのだ。

 

「…本当よ。セーラー・スター・ファイター。あなたの名前だって聞いたもの。母さんと、あの星に…」

 

呟いたガイアは、自身の傷ついた指先と、胸のクリスタルを見つめ、チラリと後ろに目をやった。さきほど彼女が、闇の中に消した、あの星の方向。

 

「まさか…あなたが…消した…?あの星を…?なんてことを…許せないわっ!!」

 

じりじりと拳を握り締めるファイターの瞳は大きく見開き、額には汗が滲む。脚はがくがくと震え、瞳に涙すら浮かべているように見える。カオスの存在を語る漆黒の乙女に、絶望の記憶が甦ったのだ。

 

自分たちの名前も、消えた星の存在も知る、カオスの子と名乗る漆黒の乙女=ガイア。セーラー・スター・ライツが、新たな戦いを予感するには、その事実だけで十分であった。

 


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