ユーノの子育て日記R   作:ZEROⅡ

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スクライア式鬼ごっこ・後編

 

 

 

 

 

 

さて……このスクライア一家式鬼ごっこが始まってから既に15分。残り時間もついに半分を切った。

 

 

そして現在僕の目の前には……高町なのはの娘である高町ヴィヴィオが拳を構えながら立っている。

 

 

「ダメですヴィヴィオさん! 逃げてください!!」

 

 

「大丈夫です!! アインハルトさんは絶対に助けますから!!」

 

 

「いえ、そういう意味ではなくて……」

 

 

面白いくらいに噛み合ってない二人の会話。

 

アインハルトは『無理に自分を助けようとせず、鬼ごっこに勝つ為に逃げてください!』って言う意味で言ったんだと思うけど、たぶんヴィヴィオはこれを『このままだとあなたまで捕まるので、私に構わず逃げてください!』って言う意味に解釈したんだと思う。一見似たような言葉だけど意味合いは全然違うね。

 

一度決めたらまっすぐ突き進むところまで、なのはに似たんだろうなぁ。

 

 

「とゆーワケで! ユーノさん、覚悟ーーー!!」

 

 

と…叫びながら僕に拳を振るってくるヴィヴィオ。

 

 

えーと……とりあえず……

 

 

捕縛盾(バインディングシールド)

 

 

「へ?」

 

 

さっきのアインハルトとまったく同じ魔法で防いで、同時にヴィヴィオの腕をバインドで絡め取る。

 

そしてそこから一気にバインドを巻き付けて……

 

 

「にゃーーー!! 捕まったーーー!!!」

 

 

はい、ヴィヴィオ捕獲完了。

 

 

「ヴィヴィオさん……口ほどにもなさ過ぎです」

 

 

「あう…返す言葉もございません……」

 

 

アインハルトの呆れ口調の言葉に、がっくりと項垂れるヴィヴィオ。

 

まぁ、さっきのアインハルトの拳に比べたらだいぶ遅かったから簡単にいけたっていうのもあるけどね。

 

 

「ともかく、これで二人。残りの13分、逃げ切れたら僕の勝ちだね♪」

 

 

でもまぁ……あの三人娘がこのまま黙ってるワケないよね……

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

シュテルside

 

 

結界内の森の中……私はそこで身を隠し、別の場所に隠れている他の二人と念話で連絡を取り合っています。

 

 

《どうやら、アインハルトに続いてヴィヴィオも捕まってしまったようですね》

 

 

《なにぃ!!? 何をやっておるのだあの阿呆どもは!!》

 

 

《このままじゃボクらの負けになっちゃうよ!! どうするのシュテるん!!?》

 

 

《落ち着いてください。このゲームの初参加者であるあの二人が捕まるのは想定済みです。当然、二人を救出し、尚且つお父様に勝つ算段は立ててあります》

 

 

《おーー!! シュテるん偉い!!!》

 

 

《さすがは我らの参謀役だな。して、その作戦とはどういったものだ?》

 

 

《いいですか、まずは───》

 

 

私は念話を通して二人に作戦の説明を始めます。

 

 

《──こんな感じですね》

 

 

《ふむ…なるほどな。となればこの作戦の要はレヴィ、貴様だ。しくじるでないぞ?》

 

 

《うん!! まっかせてー!!》

 

 

《では今から3分後……一気に仕掛けますよ?》

 

 

《おう!!》

 

 

《了解!!》

 

 

二人の返事を最後に、私は念話を切り、作戦に備えて力を蓄える事にしました。

 

 

覚悟してくださいね……お父様。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

ユーノside

 

 

「っ……(ブルッ)」

 

 

「? ユーノさん、どーしたの?」

 

 

「い…いや、何でもないよ」

 

 

なにか今……もの凄い悪寒が……

 

 

「うー……それにしてもユーノさん強いー! さすがエースオブエースの魔法の師匠……」

 

 

「いやいや、師匠ってほどじゃないよ」

 

 

「あの…エースオブエースって……?」

 

 

「あっ、うちのなのはママのことです。うちのママ、航空武装隊の戦技教導官で、管理局のエースオブエースって呼ばれてるんです。因みにフェイトママは本局の執務官」

 

 

「そうなんですか……家庭的でほのぼのとした素敵なお母様方だと思っていたのですが、まさかそんな凄い方だったとは……」

 

 

まぁ確かに……なのはとフェイトは公私の切り替えの差が激しいからなぁ。

 

 

「そして何を隠そう、こちらのユーノ・スクライアさんこそ、そのエースオブエースに魔法を教えた方なんですよ!」

 

 

「っ……やはり…只者ではないと思っていましたが、それなら納得です」

 

 

「いやあの…本当に、そんな大したものじゃないから」

 

 

だからそんなキラキラした目で僕を見ないで欲しい。

 

 

「確かに、なのはに魔法を教えたのは僕だけど…それは基礎だけだよ。あとは全部なのはが自分の力で強くなっていったんだよ」

 

 

そう……僕なんかが、手が届かないほどにまで……

 

 

「それに……僕が彼女に魔法を教えたりなんかしたから……なのはは……!!」

 

 

「ユーノさん?」

 

 

「どうか…されたんですか?」

 

 

「っ!? い…いや……何でもないよ」

 

 

危ない危ない……うっかり喋らなくていい事まで喋りそうになっちゃった。

 

 

と、思っていると……

 

 

「ブラスト…ファイヤーー!!」

 

 

「いっ!!?」

 

 

突然上空から紅い砲撃魔法が降ってきたので、ギリギリ横に飛んでかわす。

 

 

「危なっ……」

 

 

そうして安堵するのもつかの間……

 

 

「インフェルノ!!!」

 

 

今度は巨大な黒い魔力球が頭上から降ってくる。

 

 

「ラウンドシールド!!!」

 

 

僕はそれをシールドで防ぐ。でも僕のシールドじゃ完全に防ぐことは出来ないから、魔力球がシールドに阻まれて動きを止めたその瞬間に、落下地点から素早く離れることで、直撃を免れた。

 

 

「いきなりやってくれるね……シュテル、ディアーチェ」

 

 

僕は上空にいる魔法を放った張本人…シュテルとディアーチェに視線を向ける。

 

 

「ククク……不意打ちにも関わらず、今の攻撃をしのぎ切るとはさすがだ……父上」

 

 

「ですが…今日こそこの鬼ごっこで、お父様に勝ってみせます」

 

 

二人はルシフェリオンとエルシニアクロイツを僕に向けてそう言い放つ。

 

……レヴィがいないな。二人とは別行動なのか? それとも奇襲狙いか……

 

 

「ふえ~! シュテルとディアーチェすっごーい!」

 

 

「はい……強力な砲撃と魔力球でした……」

 

 

と、僕の後ろではヴィヴィオとアインハルトの二人の魔法を見て感嘆の声を上げている。

 

シュテルとディアーチェの魔法は、普通の魔法よりも威力が大きい。このまま戦ったら、二人まで巻き込まれてしまう。いくら非殺傷設定とはいえ、バインドに捕まった状態でほとんど無防備だから危なすぎる。

 

しょうがない。二人の周りにシールドを張って、距離を取ろう。

 

そう考えた僕は、即座にヴィヴィオとアインハルトの周りにドーム状のシールドを張って、飛行魔法で空へと飛んだ。

 

 

「シュートバレット! シュート!!」

 

 

僕はそのまま二人に向かって四発の魔力弾を放つ。

 

 

「パイロシューター!」

 

 

けどそれは、シュテルが放った炎熱を纏う魔力弾によって相殺された。

 

 

「ディザスターヒート!!」

 

 

でもシュテルの行動はそれでは終わらずに、続けて炎熱の砲撃を放ってきた。

 

 

「くっ…ぐぅ……!!」

 

 

僕はそれをラウンドシールドで防ぐけど、その砲撃は一発では終わらず、二発三発と連続打ち込まれた。それでも僕はギリギリで防ぎきった。

 

 

「ストラグルバインド!!」

 

 

僕はすぐさまシュテルに向かってバインドを放つけど、シュテルの余裕の動きでそれをかわされた。

 

 

「シュテルにばかり気を取られてはいかんぞ、父上」

 

 

っ、しまった!! ディアーチェがいつの間にか後ろに……!!

 

 

「破壊の剣! アロンダイト!!」

 

 

マズイ!あれは着弾時に周囲に衝撃波を放つ砲撃……普通のシールドじゃ防ぎ切れない。だったら……

 

 

「プロテクションシールド!!」

 

 

僕は自分の体を包み込むような円形のシールドを展開して、砲撃と衝撃波を何とか防ぎ切る。けど、僕の魔法はまだ終わらない!

 

 

「プロテクション…スマッシュ!!!」

 

 

僕は全体をシールドで覆ったその状態で、アクセルで一気に加速してディアーチェに突進した。

 

 

「なっ!!?」

 

 

そんな僕の攻撃が予想外だったのか、ディアーチェが驚愕の表情を浮かべる。

 

 

「チィッ!!」

 

 

ディアーチェは舌打ち混じりに僕のプロテクションスマッシュをかわして、そのままシュテルと並び立つ。

 

 

「やるな父上。今の攻撃は少々焦ったぞ」

 

 

「まさかシールドを纏って体当たりとは……さすがお父様、ものは使いようですね」

 

 

「これでも僕は二人の父親だからね。娘の前でカッコ悪いマネはできないよ」

 

 

と…軽口を叩いてみるけど、実は一か八かだったんだよね、あのプロテクションスマッシュ。

 

 

「しかし残念だが父上よ。この勝負、我らの勝ちだ」

 

 

ディアーチェのいきなりの勝利宣言。

 

残り時間はすでに5分を切った。僕はヴィヴィオとアインハルトを捕まえてるから、このまま時間が来たら僕の勝ちのハズなんだけど……

 

 

「気づきませんか? お父様。私達の目的はあなたを倒す事ではなく……お父様を捕まった二人から引き離すことです」

 

 

僕と捕まった二人を引き離す?……っ!! まさか!!!

 

シュテルの言葉の意図に気がついた僕は、すぐに視線を地上に置いて来たヴィヴィオとアインハルトに移す。そしてその二人に、水色の閃光が迫っているのが見えた。

 

その水色の閃光とは……さきほどから姿が見えなかったレヴィだった。

 

 

「ハーッハッハッハ!! まんまと引っ掛かったなおとーさん!!」

 

 

高笑いしながらも段々と捕まえた二人に近づくレヴィ。

 

 

「くっ!」

 

 

「おっと」

 

 

「行かせませんよ?」

 

 

すぐにレヴィのもとへ向かおうとする僕の前にシュテルとディアーチェが立ち塞がる。

 

 

おそらく、三人娘の考えた作戦はこうだ。

 

まず、シュテルとディアーチェが僕に攻撃を仕掛けて、戦いながら捕まった二人と僕を引き離す。

 

そしてある程度時間が経った頃に、今までずっと隠れていたレヴィが捕まった二人の救出に向かう。

 

そしてそれを止めようとした僕をシュテルとディアーチェが足止め…か。

 

たぶんこの作戦を考えたのはシュテルだね。残り時間が少なくなってきた時に作戦を実行したのがポイントだ。さすがに残り時間の3分ちょっとでまた二人を捕まえ直すことは難しい。

 

それにレヴィっていう人選も的確だ。レヴィは三人の中で一番スピードがあって、なおかつパワーもある子だ。おそらく僕が今から全速力で向かっても間に合わないだろうし、捕まった二人の周囲に張ったシールドもレヴィなら軽々と砕いてしまうだろう。

 

 

「どうやら私達の勝ちのようです」

 

 

「よーし! スクライア一家式鬼ごっこ! 我らの初勝利だ!!」

 

 

「くそっ……やられたっ!!」

 

 

この勝負……僕の負けだ───

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──とでも、言うと思ったかい?」

 

 

「「へ?」」

 

 

僕の言葉に二人が呆気に取られたその時……

 

 

「わぁーーーー!!」

 

 

「っ、レヴィ!?」

 

 

「ど…どうしたのだ!!?」

 

 

地上から響いてきたレヴィの悲鳴に視線を地上へと向ける二人。そこには……

 

 

「ごめーんシュテるん、王様……捕まっちゃった……」

 

 

僕のバインドに縛られているレヴィの姿があった。

 

 

「バ…バカな!! 一体どうやって!!?」

 

 

「あはは…こんな事もあろうかと、ヴィヴィオとアインハルトの周囲に設置型のバインドを仕込んでおいたんだよ」

 

 

そう…レヴィが捕まった理由は、僕が二人の周囲に仕掛けておいた設置型のバインド……ディレイドバインドが発動したからだ。

 

 

「私の作戦を……読んでいたということですか?」

 

 

「完璧にじゃないけどね。もしかしたらこう来るかもしれないと思って、念には念を入れておいたのさ♪」

 

 

ま…実際には十通りくらいの対策を考えておいたんだけどね。本当はそこまでする必要はないんだけど、父親がそう簡単に娘に出し抜かれるわけにはいかないでしょ。

 

 

ピピピ! ピピピ!

 

 

同時に、僕の腕時計から鳴り響くアラーム音。

 

 

「タイムアップ。残念だけど……僕の勝ちだよ♪」

 

 

こうして、スクライア一家式鬼ごっこは僕の勝利で幕を閉じた。

 

 

少し大人気なかったかな?

 

 

 

 

 

つづく


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