ユーノの子育て日記R   作:ZEROⅡ

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スクライア式鬼ごっこ・前編

 

 

 

 

『ごちそうさまでしたーー!』

 

 

昼食を食べ終わった僕達は、全員総出で後片付けをしている。

 

 

「片付け終えて一休みしたら、大人チームは陸戦場ねー」

 

 

『はいっ!』

 

 

なのはの言葉に元フォワードメンバーのみんなが返事をする。なのは達、ここに来てからトレーニングしかしてない気がするけど……ま、僕には関係ないからいいか。

 

 

「ユーノ君はどうするの?」

 

 

なのは…そんな爛々とした目で見ても僕はトレーニングには参加しないからね。

 

 

「僕は子供たちと一緒にいるよ。せっかくこんないい所に来たんだから、思いっきり遊んであげないと」

 

 

「そっか。わかったよ」

 

 

なのははそう言いながらちょっと落胆してるけど、気にしない気にしない。

 

 

「おとーさんおとーさん!!」

 

 

「うわっと!」

 

 

「レヴィ、急にお父様に飛びつくのはやめなさい。お父様も驚いています」

 

 

急に僕の背中に飛びついてきたレヴィをシュテルが注意してるけど、当のレヴィは「それよりっ!」と言って話を続けた。

 

 

「お片づけが終わったら、久しぶりにアレやろうよ!!」

 

 

アレって……あぁ、アレか。

 

 

「そうだね、最近やってないし……久しぶりにやろうか?」

 

 

「でしたら、人数は多い方がいいですね。ヴィヴィオやアインハルト達にも声をかけてみましょう」

 

 

え…あまり人数を多くされると僕が大変なんだけど……まぁいいか。

 

 

「ユーノ君? なにをするの?」

 

 

僕らの会話を聞いていたなのはが小首を傾げながら聞いてきたので、僕は顔に笑みを浮かべて……

 

 

 

「鬼ごっこ♪」

 

 

 

と答えてあげた。

 

その時のなのはのポカンとした表情が印象的だった。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

「さて、集まったのは五人か」

 

 

ロッジ近くの森の中。

 

僕の目の前には、うちの三人娘とヴィヴィオとアインハルト……合計五名の子供たちがいる。

 

一応シュテルが、ルーテシアとコロナとリオにも声をかけたけど、その三人はロッジの書斎で調べることがあるからと断られたらしい。

 

 

「ユーノさん、一体なにをするんですか?」

 

 

「シュテルさんからは、鬼ごっこをすると聞きましたが……」

 

 

手を上げながら僕に質問をしてくるヴィヴィオとアインハルト。今回は初参加の二人がいるから、しっかりとルール説明をしないとね。

 

 

「厳密に言えば、普通の鬼ごっことはルールが少し違うんだけどね。今から説明するからよく聞いててね」

 

 

そう言って僕はルールの説明を始める。

 

 

①まずは鬼役と逃亡者役を決めること。

 

「これは僕が鬼役をするから気にしなくてもいいよ」

 

 

②魔法の使用はあり。

 

「ただし、集束砲とか広域魔法とかの規模の大きい魔法や、変身魔法で動物などに変身する事は禁止だよ」

 

 

③逃亡範囲は結界内のみ

 

「つまり結界の中なら、地上だろうが空だろうがどこにでも逃げていいんだよ」

 

 

④鬼役は逃亡者を捕まえる際にはバインドを使用すること。

 

「普通の鬼ごっことは違って、タッチしても捕まえたことにはならないんだ」

 

 

⑤逃亡者が捕まった場合、他の逃亡者は捕まった者のバインドを解いて、ゲームに復帰させてもよい。

 

「捕まった仲間を助けるのもあり、見捨てるのもあり……これがこのゲームの醍醐味だよ。確か地球じゃ〝ケイドロ〟とも呼ばれてるらしいよ」

 

 

⑥制限時間は30分。

 

 

⑦制限時間の間に鬼役が全員捕まえるか、もしくはタイムアップ時に半数を捕まえた状態であれば鬼役の勝ち。制限時間内に逃げ切れれば逃亡者側の勝ち。

 

「今回の場合、参加者は五人だから、タイムアップ時に二人捕まっていれば僕の勝ちだね」

 

 

ルールの説明を終えて、僕は五人に向き直る。

 

 

「とまぁ、ゲームのルールはこんな所だね。何か質問はある?」

 

 

「はい!」

 

 

「はい、ヴィヴィオ」

 

 

「魔法ありってことは、シュテル達も魔法を使えるんですか?」

 

 

あ…そっちね。できればルールに関する質問をして欲しかったけど。

 

 

「もちろん使えるよ。因みに三人共魔力ランクはAAランク」

 

 

「えーー!!? AAランク!!? すごーい!!」

 

 

ヴィヴィオのこの反応を見て、シュテルは無反応、レヴィはえっへんと胸を張り、ディアーチェは当然と言いたげに鼻を鳴らした。

 

 

「あの…私も質問いいですか?」

 

 

「はいどうぞ、アインハルト」

 

 

「もしバインドで捕まった場合、それを仲間に助けられる前に自力で逃げるのはアリでしょうか?」

 

 

「えっと…つまり自力で拘束しているバインドを引きちぎって逃げるってこと?」

 

 

僕が質問内容を確認すると、アインハルトはコクンっと頷く。

 

 

「うーん……別に構わないよ? 極端な話、さっき言ったルール以外の事なら何をしても大丈夫だからね。それこそ、鬼役である僕をノックアウトして逃げるって言うのもアリだから」

 

 

まぁ僕は戦闘向きの魔導師じゃないから、もしノックアウトされそうになったら逆に逃げるけどね。

 

 

それに元々、この遊びはシュテル達が魔法や連携などを上手く使いこなす為に僕が考えた…いわゆる訓練のようなものだからね。そこからちょっとした模擬戦に発展しても、全然ルールの許容範囲だ。

 

 

「おもしろそー! ね、アインハルトさん!!」

 

 

「えっ…あ、そうですね……」

 

 

どうやらヴィヴィオはモチベーションが上がったみたいだね。アインハルトはイマイチだけど……

 

 

「さて、他に質問は……なさそうだね。それじゃあデバイス持ちのみんなはセットアップして」

 

 

『はい!』

 

 

そう返事をすると、シュテルは紫色の宝石…レヴィは青色の三角形…ディアーチェは杖を模した首飾りと魔導書…ヴィヴィオはウサギのぬいぐるみ型のデバイスをそれぞれ構える。

 

 

「ルシフェリオン!」

 

「バルニフィカス!」

 

「エルシニアクロイツ!」

 

「セイクリッド・ハート!」

 

 

「「「「セーットアッープ!」」」」

 

 

掛け声と共に光に包まれる四人。って言うか、四人一斉にセットアップするから凄く眩しい。

 

そして光が収まると、そこにはバリアジャケット姿になった五人が立っていた。

 

 

「あ、ヴィヴィオとアインハルトは身体強化もしてるんだね」

 

 

「そうだよ!」

 

 

「一応私は武装形態と呼んでいますが……」

 

 

セットアップと同時にヴィヴィオとアインハルトは大人の姿となっていた。

 

 

「おーー! ヴィヴィオとアインハルトがおっきい~~」

 

 

「などほど、それが大人モードと呼ばれる姿ですか」

 

 

「ふむ、中々便利そうではあるな」

 

 

そう言って感嘆の声を漏らすのはバリアジャケット姿の愛娘三人。当然三人のバリアジャケット姿は、子供の頃のなのは達と酷似してる。

 

 

「さぁ、始めようか」

 

 

僕はそう言うと同時に、ここら辺一体に結界魔法を張る。

 

 

「結界の範囲はこの森の一部と、森を抜けた先の草原まで。逃げる・隠れる・飛ぶ・攻める……それは各々の自由だよ」

 

 

僕がそう言うと、五人は表情を引き締める。

 

 

「じゃあ今から、スクライア式鬼ごっこを始めます。逃亡時間は1分……1分を過ぎたら僕が捕まえに行くので、みんな頑張って捕まらないようにする事。それじゃあ、レディ…………ゴーーー!!!」

 

 

僕が合図をすると同時に、五人は一斉にこの場から姿を消した。

 

 

さて……五人か。ちょっと骨が折れるかもしれないけど、まぁ頑張ってみようかな。

 

 

 

それからしばらくして…1分が経過した。

 

 

 

「それじゃあ、探そうかな」

 

 

さっそく僕は探索魔法を使って、結界内にいるみんなの居場所を探す。

 

うーん……さすがに経験者である三人は結構遠くまで逃げたなぁ。ここから一番近いのは……あの子か。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

アインハルトside

 

 

ユーノさん主催の鬼ごっこが始まって数分。私は森の中に身を隠しています。

 

シュテルさんに誘われるままに参加してみましたけど、正直なところ私には遊んでいるヒマなんてない。私が『覇王』から受け継いだ悲願を達成させる為にも、私はもっと強くならないと。

 

ユーノさんには申し訳ありませんが、もし見つかったら全力で戦ってノックアウトして、早く終わらせて貰いましょう。

 

そんな事を考えていると……

 

 

 

「アインハルト……見ーつけた♪」

 

 

 

「っ!!?」

 

 

後ろからした声に私は慌てて振り返ると、そこには鬼役のユーノさんが立っていました。私はすぐさま覇王流(カイザーアーツ)の構えを取る。

 

 

「あれ? 逃げないの?」

 

 

逃げない私を見て、ユーノさんは首を傾げていました。

 

 

「はい、私は逃げも隠れもしません。真正面からあなたを倒します」

 

 

「あ…あはは……たくましいね。僕は戦闘タイプじゃないから、本当にノックアウトさせられそうだ」

 

 

ユーノさんは困ったような表情でそう言います。

 

 

「でも、あまりこのゲームを甘く見てると……痛い目にあうよ?」

 

 

そう言うとユーノさんは戦う構えを取りました。この方……一見するとほのぼのとした良いお父様ですけど……戦えるのでしょうか?

 

 

「行くよ! シュートバレット!! シュート!!」

 

 

するとユーノさんは二発の魔力弾を生成して、私に向かって飛ばして来ました。

 

 

「覇王流……」

 

 

私は落ち着いて、いつも通りに構えて……魔力弾を受け止めました。

 

 

「うそっ!? 受け止めた!!?」

 

 

ユーノさんは驚いてますけど、まだ終わりません。私はそのまま受け止めた魔力弾を……

 

 

「旋衝波!!」

 

 

ユーノさんに向かって投げ返しました。

 

 

「いぃ!!? ラウンドシールド!!」

 

 

それを咄嗟に魔力シールドを展開させて防ぐユーノさん。

 

 

「危な……まさか弾殻(バレットシュル)を壊さずに受け止めて、さらに投げ返すなんて……これはさっさと捕まえるに限るね。チェーンバインド!!」

 

 

今度は私に向かってバインドを飛ばすユーノさん。ですが、私には通用しません。

 

私は冷静にユーノさんのバインドをかわして、一気に距離を詰めます。

 

 

「ハァァァアアア!!」

 

 

「ぐっ……!!」

 

 

そこから私は拳の打撃のラッシュを叩きつけますが、ユーノさんは巧みに防御魔法を使って、私の拳を防ぎます。

 

今気づきましたがこの人、確かに戦闘タイプの魔導師ではありませんが、魔力運用が凄く上手い。私の拳がシールドに当たる際に、かなり絶妙なタイミングで魔力を流して、受け止めるのでなく…受け流すように防いでいる。

 

ですが、そんな戦いが長く続くとは思えません。きっとそのうち隙が──

 

 

「くぅ……!!」

 

 

っ……左側が開いた!! ここです!!

 

私は僅かに出来た隙に、渾身の拳を叩き込む。ですが……

 

 

「かかった!」

 

 

「なっ!!?」

 

 

その拳はユーノさんが発生させた魔法陣によって防がれます。しかもそれだけではなく、その魔法陣から発生したバインドが私の腕が絡め取られました。

 

 

捕縛盾(バインディングシールド)……上手くいった♪」

 

 

「っ……!!」

 

 

私は何とかバインドを引きちぎろうとしますが、バインドはビクともしません。

 

な…何て硬いバインド……!!?

 

 

「なのはやフェイトのような戦闘系魔導師はここで一気に攻めるけど、僕のような補助魔法しか取り得のない魔導師は、ここで一気に───固める」

 

 

「きゃあっ!!?」

 

 

ユーノさんがそう呟いた次の瞬間、私の体はいくつものバインドに拘束されて、身動きを完全に封じ込まれてしまいました。

 

 

「はい、まず一人目……捕獲完了♪」

 

 

ふ…不覚です……!

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

ユーノside

 

 

さて…鬼ごっこが始まってからすでに10分が経過。現在僕は森を抜けて、捕まえたアインハルトと一緒に草原に立っている。そこで何をしているかと言うと……

 

 

「それにしてもビックリしたよ。僕のシュートバレットを壊さずに受け止めて、なおかつ投げ返すんだから。その歳で凄いセンスだね」

 

 

「いえ、それほどでも……ユーノさんこそ、あの魔力運用は素晴らしかったです。私の拳がほとんど無力化されてしまいましたし、最後の捕縛盾(バインディングシールド)は本当にしてやられました」

 

 

捕まった状態のアインハルトと楽しく会話中です。バインドで縛られた女の子と普通に会話するっていう光景は、ちょっとシュールだけどね。

 

 

「あはは…僕はただ器用貧乏なだけだよ。その捕縛盾(バインディングシールド)だって、その気になれば誰だって出来るしね」

 

 

それに、今回は鬼ごっこだったからアインハルトを捕まえる事に専念できた。これが普通の模擬戦だったら、あそこまで上手くはいかなかったと思うしね。

 

 

「ご謙遜なさらないでください。このバインドだって、物凄く強固に出来ていて、今の私では自力で解けそうにありません」

 

 

うーん……確かに昔からバインドや転送魔法とかの補助系の魔法は得意だったけど、それでもやっぱり戦闘系のなのはやフェイト達には見劣りするし、補助魔法ならスペシャリストのシャマルもいるからね。

 

だから結局……僕には器用貧乏って言葉がピッタリなんだよ。

 

 

「あの……それよりいいんですか?」

 

 

「ん? 何が?」

 

 

「この鬼ごっこです。制限時間だって、もうあと約半分くらいですよね? 早く他のみなさんを捕まえないと、ユーノさんの負けになってしまいますよ?」

 

 

ああ……そのことか。

 

 

「それなら大丈夫だよ。そろそろ四人のうち一人が、君を助けに来ると思うから」

 

 

「? 何故ですか? 私一人が捕まっても、他のみなさんが逃げ切ったら私達の勝ちになるのですから、わざわざ危険を冒してまで私を助けに来る必要は……」

 

 

「うん、普通はないよね。だけどもし、あの子が彼女に影響されて似たような性格になっていたとしたら……たとえゲームでも、仲間を見捨てるような事はしないよ」

 

 

「???」

 

 

いまいちよく分かっていないアインハルトに僕がそう説明していたその時……あの子がやってきた。

 

 

 

 

「アインハルトさん!! 助けに来ました!!!」

 

 

 

 

彼女…高町なのはの娘……高町ヴィヴィオが。

 

 

「ほら……ね?」

 

 

本当……君の性格は相変わらず読みやすいよ……なのは。

 

 

いい意味でも…悪い意味でも……ね。

 

 

 

つづく


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