かなりムチャクチャ&グダグダな内容となっておりますが、ご容赦ください。
感想お待ちしております。
「と……言う訳で、今日からこの家で家族として暮らす事になった……」
「ユ……ユーリです!!!」
そう言って僕の背中に隠れながら自己紹介をするウェーブのかかった長い金髪をした小さな少女……ユーリ。
グランツさんからの連絡から一夜明けてお昼頃。喫茶店を臨時休業して家のリビングに3人娘を集めて、今朝引き取ってきた新しい家族…ユーリを紹介してあげたんだけど……
「「「…………」」」
まぁ当然のごとく、3人娘はフリーズしちゃってるんだけどね。
「……とりあえず父上、説明を頼む」
「だよねー」
ディアーチェの言葉に同意しつつ、僕は娘たちに説明を始める。
「まぁ早い話が、昨日グランツさんにこの子を引き取って欲しいって頼まれてね」
「ハカセから?」
「エルトリアのグランツ博士か……その名を聞くのは久しいな」
「今朝からどこに出かけているのかと思えば、エルトリアに行っていたのですね」
研究者であるグランツさんは、レヴィを筆頭に娘たちから『博士』と呼び慕われている。
「そっ。そしておそらくこの子は……たぶんシュテルたちと同じような存在だと思う」
「「「!!?」」」
僕のその言葉に、3人娘は目を見開いていた。
「私たちと同じ存在……という事は……」
「その子も……ユーリもボクたちと同じ人造魔導士ってこと!!?」
シュテルとレヴィの問いかけに、僕は頷きながら答える。
「グランツさんの話だと、この子が倒れていた所を保護したらしいんだけど……その近くに、割れた生体ポッドが転がっていたらしんだ。おそらく何処かの研究所にいた彼女が、何らかの事故で生体ポッドごとエルトリアに飛ばされちゃったんだろうね」
「ふむ……ユーリと言ったな? 貴様、その研究所に居た時の記憶はあるか?」
「い…いえ……ありません。気がついたら博士に拾われてて……あうぅ」
ビクビクと僕の服の裾を掴み、背中に隠れながら答えるユーリの姿を見て、ちょっとだけトキめいてしまったのは内緒だ。
「つまり、父上の予想が当たっていると仮定すれば、こやつは生まれて間もないという事だな」
「そう言う事になるね」
ディアーチェの言葉に頷いていると、シュテルがとある事に気がついた。
「それにしてもお父様……今日が初対面なのに、えらくユーリに懐かれていますね」
「あ…やっぱりそう思う?」
その通りだ。僕がエルトリアに赴いて、ユーリと出会ったのはほんの1時間前だ。その時から彼女は何故か初めて会う僕に寄り添ってきて、服の裾をギュッと掴んだまま話さないんだ。
その光景を見ていたグランツさんが言うには……
『思ったとおり、君は子供にとても懐かれやすい体質らしいね。いやぁやっぱり私の予想通り、君に頼んで正解だったよ。はっはっは!!』
との事らしい。そしてユーリ本人は……
『何だか……安心します』
と言っていた。うーん……本当に僕って子供に懐かれやすいんだろうか?
「ねぇねぇおとーさんおとーさん!!」
「ん? なんだいレヴィ?」
「ユーリがボクたちの
「んー……まぁそう言う事になるかな?」
見た目的にもユーリはレヴィたちより年下っぽいし、この家でのユーリの立ち位置は末っ子で問題はないと思う。
その事をレヴィに伝えると、レヴィは物凄く目をキラキラさせていた。
「わーい!! ボクの妹だー!!!」
「いや…我らの妹であって、貴様1人の妹ではないのだが……」
ディアーチェのそんな言葉も耳に入らないほど大喜びしているレヴィは、ずいっと僕の後ろに隠れているユーリに迫る。
「ボクはレヴィ! レヴィ・スクライア!! 今日からキミのおねーちゃんだよ!!!」
「ひう……」
そんなレヴィの勢いにすっかり気押されてしまっているユーリは僕の後ろに隠れようとするが……
「ダメだよユーリ。相手が自己紹介をしてきたら、自分も自己紹介し返さないと」
「は……はい」
僕がそう注意すると、ユーリは恐る恐るといった様子でレヴィと向き直る。
「え…えっと…初めまして……ユーリ…です」
「違うだろっ!」
「へ?」
するとレヴィは突然怒鳴り、それに対してユーリは呆気に取られてしまった。
「いいか? 今日からキミはこの家で暮らすボクたちの新しい家族なんだ。だから、ちゃんと家族らしい自己紹介をしないと」
レヴィはそう言うと、もう一度ユーリに自分の名前を告げた。
「ボクはレヴィ・スクライア。キミの名前は?」
「あ……」
レヴィの言いたい事がわかったユーリは気恥ずかしそうにモジモジとしたあと、やがて意を決したように自身の家族としての名前を告げた。
「ユ…ユーリ・スクライアです!!!」
さっきまでとは違う……スクライア一家としての名前を。
「うん! オッケー♪よろしくユーリ!!」
「は…はい! よろしくお願いします……レヴィお姉ちゃん」
「!!」
ユーリがレヴィの事をそう呼ぶと、レヴィは何故かジーンと感動し始め、そして……
「妹よーーー!!!!」
「ひゃあっ!!?」
思いっきりユーリを抱き締め始めた。
「何か困った事があったら、レヴィおねーちゃんが助けてやるからな~♪」
さっそくお姉さん風を吹かせてるなぁレヴィ。ただレヴィ、ユーリを抱き締めて頬擦りするのはいいけど相手の事も考えようね? 今のユーリ、状況についていけずにアワアワしてるから。
「いい加減離れてあげなさい、レヴィ」
「あーん!」
それを見かねたシュテルが、レヴィを引き剥がしてユーリを助けた。
「大丈夫ですか?」
「あ…ありがとうございます……えっと……」
「初めましてユーリ、私はシュテル・スクライア。この家では次女……レヴィのお姉ちゃんに当たります。今日から家族として、よろしくお願いしますね」
「は…はい、よろしくお願いします、シュテルお姉ちゃん」
「………………」
ギュム
「はわっ!?」
レヴィと同じく突然ユーリを抱き締め始めるシュテル。
「……はっ!? 私はなにを!?」
どうやらシュテル自身無意識だったようで、自分で自分の行動にビックリしていた。
「まったく…うぬら2人は揃いもそろって何をしておるか」
「だって王様!! ボクにとって初めての妹なんだよ!!!」
「すみませんディアーチェ……この子がぬいぐるみのように可愛らしくてつい……」
「ハァ……もういい、下がっておれ」
ディアーチェは溜息混じりにそう言って2人を下がらせると、ユーリと向き直る。
「我はディアーチェ・スクライア。シュテルとレヴィの姉で、この家では父上の次に偉い存在と言っても過言ではない」
いや、この家では偉いも何もないからね。
「我ら一家の新しい家族となったうぬを歓迎するぞ、ユーリよ」
「あ、ありがとうございます…ディアーチェおねーちぇ……はう~」
あ…噛んだね。まぁ確かに『ディアーチェ』と『お姉ちゃん』を合わせるにはちょっと語呂が悪いしね。
「む…呼び辛いか? ふむ……ならばいっそ、我らの事は普通に呼び捨てで呼んでみてはどうだ? そもそもこ奴等2人も、我の事を姉とは呼んではいないのだからな」
「それはいい考えですね」
「えぇ~!!」
ディアーチェの提案にシュテルは賛同し、レヴィは不満げな声を上げている。
「ボクはおねーちゃんって呼ばれたいよ~」
「ではこれから、うぬは我とシュテルの事を姉と呼ぶのだぞ」
「わかった!! 王様おねーちゃん!! シュテるんおねーちゃん!!!」
「……前言撤回だ。今までと同じように呼べ」
「右に同じです」
「あれー?」
口には出さないけど、僕も心の中で賛同しておく。
「そう言う訳だ。これから我らの事は呼び捨てで構わん」
「は…はい! えっと……ディアーチェ…シュテル…レヴィ」
「うむ」
「はい」
「おー!」
ユーリが呼ぶ名前に、3人は笑顔を浮かべて返事をし、それを見たユーリも自然と笑顔になっていた。
「それじゃあ、最後は僕だね」
そう言って僕は膝を折ってユーリと目線が合うようにして屈む。
「僕はユーノ・スクライア。スクライア一家の家長であり、今日からキミの父親だよ」
「あ…えっと…あの…ほ、本当にいいんでしょうか?」
「? なにがだい?」
「私は人の手によって造られた存在だと聞きました……私自身、その記憶はありませんが…こんな得体の知れない私が家族になっても──ふみゅ!?」
とりあえず僕は何かゴチャゴチャ言ってるユーリの両頬を引っ張ってみた。
「にゃ…にゃにをふるんですか……」
「この期に及んでそんな事を言う悪い子へのオシオキだよ」
僕はユーリの両頬を一しきり引っ張った後、すぐにパッと放して解放してあげた。
「あう~……」
「まったく……いいかいユーリ? 造られた存在だとか、得体の知れないだとか、そんな事僕たちは微塵も思っていないよ。そもそもそんな事はどうでもいいんだ。だってキミはユーリ・スクライアで、シュテルとレヴィとディアーチェの妹で、僕の大切な娘で、家族なんだから」
「!!」
僕の言葉を聞いて、目を見開いて呆気に取られるユーリ。
「いいんですか……? こんな私が娘で……あなたを父と呼んでも……」
「もちろん、大歓迎だよ♪」
続けてそう言うと、ユーリは声を震わせながら言葉を発した。
「父…さま……?」
「うん」
「父様……!」
「なに?」
「父様!!!」
そしてユーリは、僕を父と呼び、嬉しそうに彼の胸に飛び込んできた。
こうして、僕らスクライア一家に新たな住人……末っ子のユーリ・スクライアが加わったのであった。
◆◇◆◇◆◇◆◇
「さて……それじゃあ今から出かけようか」
「「「「え?」」」」
僕がそう言うと何故か新たらしくユーリが加わった4人娘に驚かれた。
「だってほら、ユーリの服とか色々日用品を買いに行かないとダメでしょ?」
ユーリの身長は出会った頃のシュテルたちより小さいので、3人が着れなくなったお下がりの服でもサイズが合わないだろうしね。
「今日の営業は臨時休業にしてあるし、それなら今日のうちに色々買い揃えておこうと思ってね」
「やったぁ!! おでかけだー!!」
「ふむ…ならばついでに新しい料理本を買うか。そろそろレパートリーを増やしたいと思っておったからな」
「でしたら、ユーリの服は私が見繕いましょう。貴女に似合う可愛い服を選んであげますよ」
「本当ですか? ありがとうございます、シュテル。おでかけ楽しみです♪」
娘たちも乗り気みたいだし、そうと決まればさっそく準備しないとね。
「それじゃあみんな、さっそく身支度してきて。今から大体15分後には出発するよ」
「「「「はーい!」」」」
元気よく返事を返してくれる子供達。
「ユーリ、お部屋に案内しますよ」
「今日から4人部屋だね」
「そうさのう。改めて歓迎するぞ、ユーリよ」
「ありがとうございます♪」
そんな会話をしながら部屋へと向かって行く娘たち。
よかった、どうやらもうユーリと3人はほとんど打ち解けたみたいだね。急な話だったからどうなるかと思ったけど、これで一安心だ。
「さて、僕も準備しないとね」
それから15分後……身支度を終えた僕らは予定通り車でクラナガンのデパートへと向かった。
◆◇◆◇◆◇◆◇
家から車を走らせて約30分。僕たちは以前来た場所と同じ大型デパートへとやって来た。
そして今はユーリの服を買う為に子供服売り場へとやって来ている。
「わぁ~! 服が一杯です!!」
「服売り場だからね」
目をキラキラと輝かせて店内を見渡すユーリを見て、僕は思わず微笑んでしまう。
「それでは、まずは普段着からですね。ユーリはどういう服がいいか希望はありますか?」
「えっと……私はこういう事は初めてですので、お任せします」
「そうですか。では、私がユーリに似合う服を選んできましょう」
「あっ! ボクもボクも!! ボクもユーリの為にカッコイイ服を選んであげるー!!」
「我もだ。我はこういうセンスはあると自負しておるからな」
そう言って散り散りにユーリの服を選び始めるシュテル、レヴィ、ディアーチェの3人。
3人ともやる気満々みたいだし、ユーリの服選びは彼女達に任せよう。
それから数分後……
「決まりました」
「決まったよ!」
「決まったぞ」
それぞれ服を選び終えた3人が戻ってきた。しかもよく見ると3人が持っている服は1着や2着だけじゃなかった。
「とりあえずユーリに似合うと思った服を何着か纏めて持ってきました」
それからはもうユーリのちょっとしたファッションショーみたいになってしまった。ユーリは試着室を出たり入ったり大変そうだったけど、表情を見る限りとても楽しそうだったので、僕はあえて止めずにそのファッションショーを見守っていた。
シュテルが選んできたのは…ピンク色などを強調したフリルのついた服や、動物の着ぐるみパジャマなどの可愛い系の服。
レヴィが選んできたのは…短パンやジーンズ、Tシャツやパーカーなどを中心にしたボーイッシュ系の服。
ディアーチェが選んできたのは…黒を強調したちょっと大人っぽくみせるダーク系の服。
明らかに3人ともそれぞれ個人的趣味が入ったチョイスだが、ユーリはそれら全てを見事に着こなしていた。特にウサギの着ぐるみパジャマはヤバかった……可愛すぎて思わず写真撮っちゃったよ。
「どうユーリ? この中で気に入った服はあった?」
ファッションショーが終わったのを見計らって、僕がユーリに問いかけると、ユーリは困ったような顔をして答える。
「3人が選んでくれた服がどれもとても素敵で…どれにしようか迷います……」
うーん…だったら……
「全部買っちゃおうか」
「えっ!?」
服は全部で10着以上あるし、どれもそこそこの値段を張る服だけど……まぁ問題はないかな。
「ま…待ってください父様!!」
「ん? なに?」
「こんなに沢山の服を買ってもらうだなんて……申し訳ないです。せめて2着くらいに……」
……ハァ~…まったくこの子は……
「いいの、元々これくらいは買うつもりだったんだから。それにこれは、新しい家族であるキミへのプレゼントでもあるんだから、遠慮しないの」
「で…でも~……」
「ユーリ、お父様は1度言った事は決して曲げませんよ」
「そーそー! おとーさん頑固だからねー♪」
「それに今日はユーリの為の買い物だ。今日くらいは父上の厚意にぞんぶんに甘えよ」
姉3人にそう言われ、ユーリは若干迷ったような素振りを見せたあと……
「あ…ありがとうございます! 父様!!」
と……満面の笑顔でそう言ってくれた。
その答えに僕は満足してユーリの頭を撫でつつ、彼女の服を持ってレジへと向かった。
◆◇◆◇◆◇◆◇
「んー…こんなもんかな?」
娘たちによるファッションショーに思いの外時間がかかったが、ユーリの日用品とその他諸々を一通り買い終えた僕たち。時計を確認してみると、丁度6時を回ったところだった。
「うーん、今から帰って夕飯の支度をするとなると結構時間かかっちゃうなぁ……しょうがない、今日はここで食べて帰ろうか」
「そうですね、それがいいと思います」
「賛せーい!!!」
「さんせーです♪」
「まぁ、たまには外食もよいか」
娘たちの了承も得たので、さっそくファミレスへと向かった。
「「ごっはん♪ごっはん♪」」
よっぽど外食が楽しみなのかレヴィは楽しそうに歌っていて、それに便乗してユーリまでも歌っている。
「いらっしゃいませ。5名様ですか?」
「はーい♪5名でーす!」
「5名です♪」
すっかり仲良くなっているレヴィとユーリ。うん、これなら今後もうまくやっていけるね。
その後店員さんに案内され、席に着く僕ら。そして、今はそれぞれ注文した物を食べている。
「ほらユーリ、あーん」
「あーん……おいしいです~♪」
一口サイズに切ったハンバーグを、僕の膝の上に座っているユーリの口元へと運んであげる。
なぜユーリが僕の膝の上に座っているかって? 実は今ファミレスが少々込み入ってて、4人がけのテーブルしか用意できないらしく、仕方ないので一番小さいユーリを僕の膝に座らせる事になったんだ。
ちょっと行儀が悪いかもしれないけど、まぁユーリは大人しい子だから別にいいか。
「このハンバーグという食べ物、気に入りました♪」
どうやらユーリはハンバーグがお気に召したようで、彼女の大好物に認定されたらしい。
「ならばユーリよ、今度我がこれよりもっと美味いハンバーグを作ってやろうか?」
「本当ですか!?」
「あぁ、とびっきり美味なハンバーグを食わせてやろう」
「楽しみにしてますね、ディアーチェ!」
「うむ」
レヴィに続いてディアーチェも、ユーリとは仲良くやっていけそうだね。
「ユーリ、口元にタレがついていますよ。拭いてあげますからジッとしてください」
そう言ってナプキンでユーリの口元を拭いてあげるシュテル。いつもならその役目は僕なんだけど、今は膝にユーリが座っている状態だから思うように動けない。
「ありがとうです、シュテル」
「いえいえ」
シュテルは……元々面倒見のいい子だから言うまでもなく仲良くやっていけそうだ。
「そうれはそうとレヴィ……いい加減落ち着いて食べる事を覚えようね?」
「ふも? むぐむぐ……」
◆◇◆◇◆◇◆◇
それからファミレスでの食事も終わり……車に乗って自宅へと帰ってきた僕たち。
「ただいまー!」
「ただいま帰りました」
「ただいま帰った」
「ただいま」
お決まりの台詞を言いながら家に上がったあと、僕らは最後尾を歩いていたユーリに視線を向ける。
「ほらユーリも。自分の家に帰ってきた時はなんて言うの?」
「あっ……!!」
僕の言いたい事がわかったユーリは嬉しそうな笑顔を浮かべて、大きな声で言い放った。
「ただいまです!!!」
「「「「おかえり、ユーリ」」」」
つづく
前話の時点で誰が登場するのか皆さんにバレバレだったため、無駄に溜めたりせずに初っ端からいきなり登場させてみました。
因みにマテリアルズ&ユーリの私服は『リリカルなのはINNOCENT』に登場するカードイラストを参考にしてください。