ここら辺から徐々に物語をリメイクしていきたいと思います。
感想お待ちしております。
「それでは皆さん!」
『お疲れ様でしたー!』
僕のチームとなのはのチームとの陸戦試合は、全員戦闘不能で引き分けで終わった。それにしても……
「みんな、大丈夫?」
「少し……ツライです」
「ボクもクラクラする~」
「うむ……我も少々疲れたな……」
僕の愛娘達は慣れない実戦形式の試合に既に疲労困憊だ。特にレヴィはフルドライブまで使ったから辛そうだ。まぁ、かく言う僕も久しぶりの実践でだいぶ疲れてる。
でも確かこの後、休憩と陸戦場の再構築をしてからまた2戦目のハズだけど……この様子じゃ無理そうだ。
「なのは、悪いけど2戦目から僕達は見学でいいかな? シュテル達がもうくたびれちゃってて……」
「あ、うん、わかった。ゴメンね? 無理を言って参加してもらっちゃって……」
「いいよ。僕も楽しかったし、娘達にもいい経験になったと思うから」
頑張ったご褒美に、あとで特製ケーキを作ってあげるとしようか。
「ほらみんな、一度ロッジに戻るよ」
「おとーさん! ボク動けないからおんぶ!!」
「あー!! ズルイぞレヴィ!! 父上におんぶしてもらうのは我ぞ!!」
「いいえ、お父様におんぶしてもらうのは私です」
そう言って僕の背中を巡って、僕の体をよじ登りながら争う三人。
君達……本当は元気でしょ?
結局……レヴィは肩車、シュテルは抱っこ、ディアーチェがおんぶと言う形に落ち着いた。その際になのは達からの微笑ましいものを見る視線を向けられてたけど、気にしない事にした。
そしてそれから……2戦目の試合は当初の予定通り、赤組と青組に分かれて試合を行ない……その後の3戦目はチーム構成もトレードで入れ替わって、熱く激しく陸戦試合は過ぎて行った。
まぁ僕達一家はずっと見学だったけどね。
◆◇◆◇◆◇◆◇
シュテルside
全試合が終了し、ホテル・アルピーノに戻ってきた私達は思い思いの場所に居ます。
ナカジマ姉妹とティアナさんは露天浴場へ……
レヴィのオリジナル……フェイト・T・ハラオウンは部屋でエリオさんとキャロさんの三人で一家団欒。
お父様とナノハとメガーヌさんはキッチンで何かを作っている。そしてディアーチェはその手伝い。
そして私達子供組とルーテシアは……
「うう…う、腕が上がらない…」
「起きられないー…」
「……動けません……」
「ほ、ほんとに……」
「限界超えてはりきり過ぎるからだよー」
途中で抜けた私とレヴィ、そしてルーテシアさん以外はベッドから起き上がれないほど疲労していた。
「みなさん、見事にクタクタですね」
私はヴィヴィオのデバイスであるクリスを撫でながら呟く。クリスは可愛いですね……私もルシフェリオンをこういう風に改造してもらいましょうか?
「でもルールーはどーして平気なの?」
「そこはそれ、年長者なりのペース配分がね」
レヴィがベッドでゴロゴロしながら質問し、得意気に答えるルーテシアさん。
「そういえばアインハルトとシュテル達はこういう試合って初めてだよね、どうだった?」
「そうですね。熱く滾る…いい試合でした」
「ボクもすっごく楽しかった♪」
「私も……とても勉強になりました」
「スポーツとしての魔法戦競技も、結構熱くなれるでしょ」
スポーツ? あれは完全にスポーツの領域を超えている気がするのですが……まぁ口には出さないでおきましょう。
「はい……色々と反省しましたし、自分の弱さを知る事も出来ました。私の世界は…見ていたものは本当に狭かったと」
「今日の試合が良かったんなら……この先こんなのはどうかな~って」
そう言うと、ルーテシアさんは空間モニターを展開して、何かの映像を表示しました。そこにはどこかの競技場のようなものが映っていた。
「あっ! ボクこれ知ってる! |DSAA《ディメンション・スポーツ・アクティビティ・アソシエイション》の会場だよね!?」
DSAA……確か、ハリーさんやジークさんが出場する魔法戦の大きい大会でしたね。
「そうだよ。出場可能年齢10歳から19歳。個人計測ライフポイントを使用して、限りなく実践に近いスタイルで行なわれる魔法戦競技。全管理世界から集まった若い魔導師たちが魔法戦で覇を競う、インターミドル・チャンピオンシップ」
ルーテシアさんの言葉を聞いて、アインハルトの鼓動が跳ね上がったのが見てとれました。
「私達も今年から参加資格があるので…出たいねって言ってたんです」
「そうなんです!」
「全国から魔法戦自慢が続々集まってくるんです!」
「数は少ないですが、格闘型の人も!」
「自分の魔法、自分の格闘戦技がどこまで通じるか、確かめるのにはすごくいい場所だよ。因みに今年は私も出る!」
ルーテシアさんも出場ですか……私は世界一に興味はありませんからいいですが、問題なのは……
「いいなぁ~ボクも出たいなぁ~」
そう……この子です。
「レヴィ達は出場しないの?」
「出たいんだけどね、おとーさんが許してくれないんだー」
確かに、お父様は私達が
「はぁいみんなー」
「栄養補給の甘いドリンクと……」
「約束してた翠屋特製ケーキだよー」
「順番に取りに来るがいい!」
すると、先ほどまでキッチンにいたお父様たち四人がケーキとドリンクを持ってやって来ました。それを見て、ヴィヴィオ達はケーキとドリンクを受け取っていきます。もちろん私も。
因みに翠屋特製ケーキは、みなさんに大好評でした。
「あら懐かしい。インターミドルの映像?」
「そー、今アインハルトとシュテル達に出場の勧誘してたの」
「懐かしいわねー、昔を思い出すわー」
「もしかしてメガーヌさんも参加されてたんですか?」
「ええ、学生時代にクイントと一緒にね」
あとで聞いた話ですと、クイントさんはナカジマ姉妹のお母様のようです。
「少女らしい青春時代を熱い戦いに燃やしたものよ。都市決勝でクイントと戦ったりもしたっけ」
「そうなんですかー」
少女の青春時代が『戦い』と言うのはどうなのでしょうか? と…思いはしましたが、空気を壊さない為に黙っておきましょう。私は空気が読める子です。
「インターミドルで強い子って、実際ホントに強いよねぇ」
「そーなの! 都市本戦の上位あたりからは、プロ格闘家に進む子もよくいるんですよ」
「そうなんですか……」
「そう言えばコロナよ、貴様のゴーレムは大会規定には引っ掛からんのか?」
「持ち込みはダメだけど、毎回その場で組み上げるのはオッケーだって」
インターミドルの話に盛り上がる私達。すると、レヴィが意を決したような顔つきで、お父様にあの話を切り出しました。
「おとーさん! やっぱりボクもインターミドルに出たい!!」
「ダメ」
しかしその頼みはバッサリと切り捨てられました。
「うぅ~~~!」
唸りながらお父様を睨むレヴィですが、お父様は何処吹く風といった表情です。
「ユ…ユーノ君、もうちょっと考えてあげても……」
「いや、これは前々から言ってることだから。インターミドルへの出場は、絶対に認めないよ」
ナノハが助け舟を出しますが、それでもお父様の返事は変わりません。
「レヴィよ、もう諦めろ。父上は何と言おうと、我らのインターミドル参加は認めてくれぬだろう。我は興味がないから別によいがな」
「ちぇ~」
ディアーチェがそう言うと、レヴィは諦めたように息を吐きました。
「あ、そう言えば参加資格の方は……」
「年齢と健康面は問題なくオッケーよね」
「コーチとセコンドはノーヴェが全員分引き受けてくれるそうです!」
「ノーヴェ師匠なら安心ですよね!」
「はい」
「あともう一つ…これ今も変わってないわよね?『安全のためCLASS3以上のデバイスを所有して装備する事』」
それを聞いて、アインハルトの表情が固まりました。
「デバイス……持ってないです」
「じゃあ、この機会に作らなきゃね。でも、確かアインハルトの魔法って……」
「はい…
「フッフッフ。私の人脈、甘く見てもらっちゃー困りますねぇー」
突然ルーテシアさんが得意気に語り始めます。
「私の一番古い親友とその保護者さんってば、次元世界にも名高いバリッバリに
「八神はやて──ディアーチェのオリジナルですね」
「ん? あぁそうだな。確かに奴ならば
「ダメだよディアーチェ、そんな事言ったら。否定はしないけど」
否定はしないんですねお父様。しかし取り合えず、これでアインハルトのデバイスの問題は解決のようですね。
その後…ケーキを食べ終えた私たち子供組は、それぞれのお部屋で眠りにつきました。
◆◇◆◇◆◇◆◇
アインハルトside
「ん……」
まだ月が綺麗に輝く夜……私は目を覚ましました。周りではヴィヴィオさん達が気持ち良さそうに眠っています。
もう一度眠ろうかと思いましたが、妙に目が冴えてしまい、私はボーっと窓の外の月を眺めていました。
そしてふと…近くのテーブルに置いてあった、ルーテシアさんの本……『覇王』イングヴァルトの回顧録の本に目が止まりました。
私はその本を手に取り、適当にページをペラペラと捲る。そして、私の祖先である…クラウス・イングヴァルトの挿絵のページで手が止まります。
クラウス……ずっと昔に生きていた覇王で、私に大切な記憶と覇王流を残してくれた人。
ヴィヴィオさんと会って以来、悲しい夢はあまり見なくなった。代わりにこの本にあるような──オリヴィエ聖王女殿下との、短かったけど暖かな日々の夢を見るようになった。
幸せだった日々……だけど思いは変わらない。
彼の悲願……私の願い……覇王流の強さを証明すること。
彼のように命を懸けた戦いでなければ辿り着けないと思っていたけど、そうじゃなかった。ヴィヴィオさんや皆さんが教えてくれた公式魔法戦の舞台。
「クラウス──私はそこで戦ってきていいですか?」
気づけば私は、本の中のクラウスにそう語りかけていました。
「いつか貴方に追いついて…いつか貴方を追い越して…あの日のオリヴィエ殿下より強くなって……私たちの悲願を叶えるために──」
答えが返って来るわけがないのは分かっていますが、私はそう語りかけずにはいられませんでした。
「……そろそろ、寝ましょうか」
私は本を元の位置に戻して、再びベッドの方へと向かいました。
ガチャ……
「?」
すると、窓の下から、何か物音が聞こえました。気になった私は窓の外を覗き込んで、その原因を確かめます。そこには──
「……ユーノさん?」
ロッジから外へ出て、どこかへ向かおうとしているユーノさんの姿がありました。
◆◇◆◇◆◇◆◇
結局……私はユーノさんの跡をつけてきてしまいました。私は木陰に隠れながらユーノさんの様子を窺います。
「さてと……」
すると、ユーノさんは足を止めて立ち止まりました。そこは、今朝方ヴィヴィオさんのお母様たちが使用していたアスレチックフィールドでした。
何故ユーノさんはこんな夜更けにこのような場所に……?
「1…2、3…4……2…2、3…4」
私が疑問に思っていると、ユーノさんは準備運動を始めました。因みにですが、今のユーノさんの服装は…動きやすそうなジャージ姿でメガネを外している状態です。
あのメガネは伊達メガネだったのでしょうか……? いえそれより、準備運動を始めていると言うことは、まさかユーノさんはこのアスレチックに挑戦するつもりなのでしょうか?
「……よしっ」
準備運動を終えたユーノさんは、静かにアスレチックの方を見据えます。そして……
「よーい……ドンッ!」
ユーノさんはそのままアスレチックフィールドへと、駆けて行きました。
それを見た私は、急いでアスレチック全体が見渡せる丘の上へと走って向かいました。
そしてそこで私が見たものは……
「よっ…はっ……ほっと……」
身軽な動きで、次々とアスレチックを駆け抜けていくユーノさんの姿でした。
「……すごい……!」
私は思わずそう口にしてしまいました。
ユーノさんの動きは、ついつい見取れてしまうほど軽やかで、まったく動きに無駄がありませんでした。とても喫茶店の店長さんだとは思えません。
ヴィヴィオさんの話では、昔は管理局の無限書庫の司書長を務めていらしたそうですが……それを聞く限りでは、失礼ですが運動が出来なさそうなイメージがありますが……
「ハッ…ハッ…ハッ……!」
私のそんなイメージを覆すように、ユーノさんは息を切らしながらも着々とアスレチックをこなして行きます。
そして……
「よしっ! ゴールだ!」
スタートから僅か十数分で、ユーノさんはアスレチックをゴールしました。
「ハァ…ハァ……やっぱりちょっと…キツイな……」
滝のように溢れ出る汗をジャージの袖で拭いながら呟くユーノさん。すると……
「さてと……そろそろ出てきたらどう? アインハルト」
「!!」
突然名指しで呼ばれ、木の影に隠れていた私は思わず肩が跳ねました。
「き…気づいていらしたんですか?」
「あはは……まぁね」
おずおずと木陰から出てくる私を見て、微笑むユーノさん。
「子供が夜更かしなんて、感心しないよ」
「すみません、どうにも寝付けなくて……ユーノさんはどうしてこんな夜更けにアスレチックを?」
「あぁ、日課だよ日課。夜中に運動して汗を掻くって決めてるんだ。いつもは軽いランニングだけど、今日はアスレチックがあったからチャレンジしてみただけだよ」
「なぜ夜中なのですか?」
「朝はお店の準備をしなくちゃいけないし、お昼は喫茶店の営業で忙しいからね。子供たちも見てなくちゃいけないし」
そう言うとユーノさんは、近くの木を背もたれ代わりにしてその場に座り込みました。それを見習って、私もユーノさんの近くに座ります。
「それにしても、アスレチックって初めてやったけど、結構キツイね。こんなに疲れるとは思わなかった……僕もまだまだだね」
は…初めて!? あんな軽やかな動きをしていたのに……!!?
「初めての割には、随分と身軽な動きでしたけど……」
「え? そうかな? まぁ確かに、遺跡発掘の時に比べたらたいぶマシだけど……」
「遺跡発掘……ですか?」
遺跡発掘とアスレチックに、一体なんの関係が?
「あぁゴメン、僕達スクライア一族は遺跡発掘を生業にした一族でね。中には、造りがもの凄く複雑で迷路みたいな遺跡や、色々な罠が仕掛けられた遺跡とかもあるんだ。それこそ、あのアスレチックよりも険しい遺跡とかもね」
「そうなんですか……」
そう言う事なら、あの軽やかな動きも納得です。ユーノさんは昔からアレ以上に厳しいことをやっていたのですね。
「でもやっぱり…まだまだかな……もっと強くならないと……」
「……………!」
そう語るユーノさんの眼は、私と同じ強さを求める者の眼でした。
「ユーノさんは、どうして強さを求めるのですか?」
気づけば私は、ユーノさんにそう問い掛けていた。
「んー……別に何か目的があるとか、目標があるとか、そんな大層な理由じゃないんだけどね。僕はただ……守りたいんだ」
ユーノさんは、グッと強く握った拳を見つめながら、そう語ります。
「大切な娘たちの幸せと…あの娘たちの未来を……守れるようになりたいんだ」
そう語るユーノさんの表情は、メガネをしていない事も相まってとても凛々しく……私は思わず、見惚れてしまいました。
「……アインハルト?」
「えっ? あ…はいっ!!」
いけない……見惚れ過ぎてボーっとしてしまいました。
「あはは! やっぱり眠たいよね、こんな夜中じゃ。そろそろ戻ろうか?」
ユーノさんは何か勘違いをしていましたが、さすがにユーノさんの顔に見惚れていたとは言えませんので、そういう事にさせて頂きましょう。
「そうですね、戻りましょう」
私がそう言ってゆっくりと立ち上がったその時……
「アインハルト、ちょっとゴメンね?」
「え──きゃっ!?」
一瞬…私は何が起こったのかわかりませんでしたが、すぐに理解しました。
いつの間にか私は、ユーノさんにおんぶをされていました。
「あ…あの……ユーノさん!?」
「アインハルト、眠たいんでしょ? 無理しないで休んでていいよ」
「で、ですが…悪いですよ……!!」
「いいのいいの♪子供が遠慮しないの」
「うぅ……」
ユーノさんに優しい笑顔を向けられ、私は何も言えなくなってしまいました。
そして私は、多少の気恥ずかしさを覚えながら、ユーノさんの背中に身を預けました。
ユーノさんの背中……広くて大きいです。それに……暖かい。
「あ…ちょっと汗臭いかもしれないけど、我慢してね?」
そんな事ありません。何だかとても……安心する匂いです。
「んぅ……」
ユーノさんの背中の温もりと優しい匂いを感じていると、本当に眠くなってきてしまいました。
結局…私はその眠気には勝てず、まどろみの中……ユーノさんの温もりを感じながら意識を手放しました。
◆◇◆◇◆◇◆◇
ユーノSide
アスレチックでの自主練を終えて、僕の背中で眠ってしまったアインハルトを子供たちの寝室へと運んであげた。
眠っているヴィヴィオたちを起こさないように静かに部屋の中に入り、背中で眠っているアインハルトをこれまた起こさないようにベッドの上に寝かせて、そっと掛け布団をかけてあげる。
そして役目を終えた僕はゆっくりと部屋から出て行き、そっとドアを閉める。
「ユーノ君」
「!!」
すると突然後ろから名前を呼ばれ、つい驚いてビクッと肩を跳ね上がらせてしまった。
「あ…なのは」
そして声の主を確認するためにそちらへと顔を向けると、そこにはなのはが笑顔で立っていた。
「はいコレ」
そう言ってなのはが僕に手渡してきたのは、ボトルに入ったスポーツドリンクだった。
「さっきまで外でアスレチックをやってたでしょ?」
「あはは……見てたんだ」
「うん、サーチャーでね。ユーノ君が夜中に抜け出したのが気になって……」
一応覗き行為のような事をしたからか、申し訳無さそうな顔で「ごめんね」と謝罪してくるなのはを、僕は「気にしてないよ」といって許してあげる。
「そうだ、ユーノ君。このあと、まだ起きてる?」
「え? うーん…そうだね、汗かいちゃったからシャワーを浴びるつもりだったし」
「それじゃあ、シャワーを浴び終わったらリビングにまで来てくれないかな?」
「いいけど……どうして?」
なのはの頼みに対して僕がそう問いかけると、彼女は薄く微笑み……
「夜は大人の時間なの♪」
と…思わず見惚れてしまいそうなほど可愛らしくそう言ったのだった。
つづく