「よし、これでレヴィの方は心配ないかな?」
その頃……レヴィとの念話を終えたユーノがそう呟く。
「あの…レヴィさんは大丈夫なんですか?」
すると、未だにユーノの回復魔法を受けているアインハルトが心配そうな顔つきでそう尋ねる。
「もちろん。レヴィがこのチームで一番強いっていうのは、ウソじゃないからね」
「……私よりもですか?」
ユーノの言葉に、若干ムッとした表情でそう問い掛けるアインハルト。
「うーん…アインハルトには悪いけど、そう言う事になるかな? 親の贔屓目なしに、レヴィは本当に強い子だよ」
「そうですか……」
ユーノのその言葉を聞いて、今度はシュンッとして落ち込んだ表情になるアインハルト。それを見たユーノは……
「大丈夫…アインハルトも強い子だし、これからもまだまだ強くなれるよ。だからそんな顔しないの……ね?」
小さく微笑み、彼女に笑いかけながらそう言う。
「は……はい!」
それを聞いてアインハルトは自信を取り戻したのか、力強く頷いた。その際の顔は若干朱に染まっていたが、ユーノがそれに気づく事はなかった。
「(なんとなく……なんとなくですが、私が昨日感じたユーノさんの強さが、分かってきました)」
ユーノの背中を見つめながら、アインハルトは心の中で呟く。
「(この方と一緒に戦っていると、安堵感というか…何だか心に暖かいモノが流れ込んでくる……この人を信じてみようと心から思える。この人がバックに控えてくれているからこそ、シュテルさん達は安心して自分の役割に集中できる。これがユーノさんの持つ〝強さ〟の正体……!!)」
心の中でそう思いながらユーノの背中を見つめるアインハルトの目には、彼の背中がとても大きく見えていた。
「さてと……そろそろ頃合……かな?」
そしてユーノはそう呟くと、今回の作戦の要である彼女に念話を繋げた。
◆◇◆◇◆◇◆◇
「そらそらどうしたぁ!?」
一方その頃、ディアーチェはそう叫びながらコロナが操るゴライアスに何発もの魔力弾を叩き込んでいた。
「くっ……ゴライアス!!」
そんなディアーチェに負けじと、コロナはゴライアスの巨大な拳で彼女に殴り掛かる。
「バカめ! そんな攻撃が当たるか!」
しかしディアーチェは背中の六つの黒翼を広げて軽々とそれを避ける。すると……
《お待たせディアーチェ! 準備が整ったから、作戦を開始するよ》
ユーノからの念話が入ってきた。
「ようやくか、待ちくたびれたぞ。ではやってもよいのだな?」
《うん、回復中のアインハルトの周囲にバリアを張ったら僕もすぐに向かうよ》
「了解した」
その言葉を聞いたディアーチェはニヤリと笑い、念話切った。
「ゴライアス! パージブラスト!!」
「む?」
突然響いてきた声にディアーチェが視線を向けると、そこには彼女に向かって螺旋回転した拳を向けているゴライアスの姿があった。
「ロケット・パーーンチ!!!」
そしてコロナの叫びと共に、再びゴライアスのロケット・パンチが発射された。
「ふん…我に同じ技が二度通じると思うたか?」
しかしディアーチェは特に慌てることなく、持っている魔導書を開いた状態で飛んでくる拳に向ける。
「吸収!!」
すると…ゴライアスのロケット・パンチがディアーチェに当たる直前に、彼女の魔導書の中へと消えていった。
「吸い…込まれ……た?」
余りの出来事に呆然とするコロナ。
「そら……返すぞっ!!」
ディアーチェがそう叫んだ瞬間、なんと先ほど消えたロケット・パンチが魔導書から飛び出し、そのままゴライアスへと向かっていった。
「きゃあっ!!!」
コロナ自身に直撃はしなかったものの、その跳ね返されたロケット・パンチはゴライアスに当たり、ゴライアスの下半身の部分はほとんどが砕け散った。その姿はもはや、戦闘が出来る状態ではなかった。
「うはははは! 無敵!! 無限!!! 我こそが王よ!!!!」
それを見たディアーチェは心底楽しそうに高笑いを上げ、エルシニアクロイツを高々と掲げる。その瞬間、彼女の足元に魔法陣が展開され、魔力が集束される。
「我が闇に沈むがいい!!」
そう言ってディアーチェはコロナとゴライアスに向かって……
「エクスカリバーー!!!!」
巨大な黒い砲撃を発射した。
「きゃあぁぁあああ!!!」
「うははははははは!!!」
その砲撃の前に、コロナはゴライアスと共に飲み込まれ、ディアーチェはその光景を見て高笑いを上げていた。その姿はまさに悪役であった。
「きゅう~」
コロナ
LIFE:2500→90
(ライフ100未満のため、治療が行われるまで活動不可)
そして砲撃を喰らったコロナは目を回しながら伸びていた。それを見たディアーチェはすぐに念話をユーノへと繋ぐ。
「父上、指示通りコロナを行動不能にしたぞ」
《うん、ご苦労様。あとは僕の仕事だから、ディアーチェはそのままシュテルの援護に向かって》
「了解した」
ユーノの指示を聞いたディアーチェは、背中の黒翼を広げて、シュテルの下へと向かっていった。
◆◇◆◇◆◇◆◇
そして、その様子をモニターで眺めていたルーテシアは……
「あちゃ~コロナやられちゃったか……」
「ホントだ!」
コロナがやられた映像を見て、片手で頭を押さえていた。同じくその映像を見ていたヴィヴィオも驚きの声を上げていた。
「ルールー! こんだけ治ってれば、もーへいき! 今度はコロナを回復してあげて!」
ヴィヴィオ
LIFE:1200→2600
「うん……ディアーチェもなのはさんの所に向かってるから、状況的にはちょっとマズいね。それじゃあヴィヴィオはなのはさんの援護をお願い! 私はコロナを召喚魔法でここに呼んで治療するから」
「了解!!」
ルーテシアの指示を聞いて、ヴィヴィオは大急ぎでなのはの下へと向かって行った。そしてそれを見送ったルーテシアは、足元に魔法陣を展開する。
「彼方より此方へ──岩の創主を我がもとへ──」
詠唱を口にしながらコロナを召喚しようとするルーテシア。しかし……
「えっ!!? こ…これは……!!?」
その時、ルーテシアに想像も出来なかった自体が起こった。
◆◇◆◇◆◇◆◇
時はほんの数分遡り…ディアーチェがコロナを行動不能にしてその場を去ったあと、この場に一人の人物が現れた。
「……………」
その人物とは…チームのリーダーであり、頭脳でもあるユーノであった。
ユーノはビルの上から、ただただ無言で地面の上で伸びているコロナに視線を向けていた。まるで何かを待っているかのように……
「……来たっ」
そしてユーノが小さく呟いた瞬間、倒れているコロナの周囲に魔法陣が展開される。そう…この魔法陣は、ルーテシアによる召喚魔法陣なのである。
「今だ!!」
それを見たユーノはすぐさまビルから飛び降り、強化魔法を駆使して地面に降り立つ。そしてそのままコロナに駆け寄り、彼女の周囲の魔法陣の上に両手を置いた。
「(まずは僕の魔力を流し込んで、召喚を妨害……!)」
ユーノは魔法陣に自身の魔力を流し込み、召喚魔法を妨害する。
「(ここからが……勝負だ!!)」
ユーノは大きく目を開き、魔法陣にさらなる魔力を流し込む。
「(魔法陣の構築式を解析───完了! 続いて術式の分解───完了! そしてその分解した術式を再構築───完了! 逆転召喚魔法陣──展開完了!!)」
ユーノは額に大量の汗を流しながら魔法陣に魔力を流し込み続ける。すると、先ほどまで紫色に輝いていた魔法陣が、翡翠色に輝き始める。
「逆転──召喚!!!」
ユーノがそう叫ぶと、魔法陣がひと際強く輝くそして次の瞬間……
ルーテシアがその場に召喚された。
「………へ?」
予想外の出来事に、状況の整理が追いつかずに呆然とするルーテシア。当然ユーノがその隙を見逃すハズがなく……
「ストラグルバインド」
「えぇぇぇええ!!?」
近くで伸びているコロナもろとも、すぐさまバインドで拘束した。
「はい、コロナ&ルーテシア……捕獲完了っと」
「うっそーー!!!」
ルーテシアの絶叫に似た叫びが響き渡る。
「い…一体何が……!?」
「えっと…何て言うか……ルーテシアの召喚魔法陣に僕の魔力で直接ハッキングをかけて、召喚魔法陣を逆転させたんだよ。本来は召喚する側だったルーテシアが、今のように召喚される側になるようにね」
「ま…魔法陣をハッキングって、そんなこと……!?」
「魔法も突き詰めれば、科学データの集合体みたいなものだからね。やろうと思えば案外出来るモンだよ?」
「違う! そうじゃなくて、デバイスもなしに術式の書き換えなんてしたら、脳にかなりの負担が……!」
「あー…うん、まぁね。実際今も軽い頭痛に襲われてるよ」
と、頭を押さえながら軽い笑顔を浮かべてそう言うユーノ。
ユーノ自身、何でもなさそうに語っているが、彼がやった行為はそう簡単に出来るモノではない。魔法の術式はかなり複雑な計算式で構成されており、ハッキングを行うには、まずそれを解析…つまり理解する必要がある。そしてそれを理解すると言うことは、その複雑な計算式を一気に脳の中に叩き込むと言うことだ。それだけでも、頭が割れるような激痛を伴うのだ。
しかし常人よりも魔力運用と演算能力が長けているユーノは、余り脳に負担をかけることなく、丁寧かつスピーディに術式を解析する事が可能だった。それでも若干の負担はかかるが……
「でもまぁ、さすがに上級魔法とか、砲撃系の魔法とかの書き換えは出来ないけどね」
「うっ……!」
そう語るユーノに、ルーテシアは悔しそうな表情を浮かべる。
「(誤算だった……完全にこの人の力を甘く見てた! 私とコロナが捕まった今、数の均衡が崩れて私達が圧倒的に不利……この状況じゃあ、当初の作戦だった2on1に持っていく作戦も使えない……どうすれば……!!)」
思考を張り巡らし、何とか今の状況を打開出来ないかと考えるルーテシア。その時……
《チーム各員!作戦通達!》
なのはからの通信が入ってきたのだった。
◆◇◆◇◆◇◆◇
再び時は少々遡り、ディアーチェがコロナを倒した頃……なのはとシュテルは……
「ハァァア! 滅砕!!!」
シュテルの炎熱の魔力を纏った掌底を、レイジングハートで受け止めるなのは。
「(凄いな……私と同じ砲撃型なのに、クロスレンジでここまで戦えるなんて。それに炎熱系の魔力の攻撃力を上手く活かしてる……きっとユーノ君に教えてもらったんだろうな……昔の私のように)」
そう思いながらシュテルの攻撃を受け止めるなのはの表情は、どこか嬉しそうだった。
「この状況で笑顔とは…余裕ですね?」
「あ、ゴメン。気に障ったなら謝るね」
「いいえ……逆にそれくらい油断してくれた方が助かります」
「あはは……言うね……」
シュテルの言葉に苦笑いを浮かべるなのは。
「ですが……それもここまでのようです」
「え?」
シュテルのその言葉になのはが首を傾げたその時……
「アロンダイト!!!」
突然彼女の背後から黒い砲撃が迫る。
「っ……!!」
それに気づいたなのははすぐさま振り返り、レイジングハートを構える。
「バスター!!」
そしてすぐに砲撃を放ち、黒い砲撃を相殺させた。
「うはははは!! シュテルよ、助太刀に来てやったぞ!!」
砲撃が飛んできた方を見てみると、そこにはディアーチェが偉そうに仁王立ちをしながら飛んでいた。
「助かります、ディアーチェ」
「うむ、感謝するがよい」
「2対1……ちょっとマズイかな?」
シュテルとディアーチェの二人に挟まれる形になってしまい、流石のなのはも額に冷や汗を浮かべる。
「行きますよディアーチェ、援護を頼みます」
「任せておけ」
短い会話を終わらせ、ルシフェリオンを構えながら一気になのはに向かっていくシュテル。
「ハァアア!!」
「くっ……!」
炎の魔力を纏ったルシフェリオンの一撃をレイジングハートで防ぐなのは。
「そら、そこがガラ空きだぞ?」
しかし、ディアーチェが放ついくつかのエルシニアダガーがなのはを襲う。
「っ……!!」
それを見たなのはは、咄嗟に後ろに大きく飛んでそれをかわした。
「(……シュテルのクロスレンジをガードすれば、後方にいるディアーチェの弾速の速い誘導弾が襲ってくる。かと言ってディアーチェを攻撃しようとすれば、シュテルが襲ってくる。さすが、いいコンビネーションだよ。でも、ここからどうしようか?)」
なのははこの状況をどうしようかと考え込む。
「考える時間はやらんぞ!!」
すると、ディアーチェがなのはに向かってエルシニアクロイツを向ける。
「喰らうがいい!! アロンダイ──」
そして再び砲撃を放とうとしたその時……
「リボルバースパーーイクッ!!!」
「──トゥバ!!?」
「ディアーチェ!!?」
「ヴィヴィオ!!」
突然ディアーチェの背後にヴィヴィオが現れ、彼女の後頭部を思いっきり蹴り飛ばした。
ディアーチェ
LIFE:2000→1100
「なのはママ! 助けに来たよ!」
「っつぅ~~! おのれ貴様!! よくも我の頭を蹴りおったなこのチンチクリンめが!!!」
「チンチクリンじゃないもん!!」
そう言って軽い口論をするディアーチェとヴィヴィオ。
「……………」
そんな中、なのははそんな二人を尻目に現在の状況を確認していた。
「(状況的には、こっちが不利。でも、数の均衡が崩れて向こうが固まっている今が、逆転の一撃を撃つチャンス!)」
そう考えたなのはは、さっそく通信を始める。
《チーム各員! 作戦通達! 防戦しながら戦闘箇所をなるべく中央に集めてください!》
そしてそんななのはを、シュテルは冷静に眺めていた。
「ディアーチェ、すみませんがヴィヴィオの相手をお願いします」
「なに? 貴様はどうするのだ?」
「どうやらナノハが逆転の一撃を狙っているようです。ならば──」
「《
◆◇◆◇◆◇◆◇
「なのはの
ルーテシアとコロナの二人を捕獲したユーノは、その後シュテルからの念話により、彼女の作戦を聞かされていた。
《はい。もしタカマチ・ナノハに集束砲を撃たれれば、間違いなく私達は一網打尽にされてしまうでしょう》
「まぁ確かに、なのはの集束砲の威力はとんでもないからね。現状としてはシュテルの案が最適か……わかった、その案で行こう」
《わかりました。ではナノハが集束に入るのを見計らって、私も集束に入ります》
「了解。あんまり無茶はしないようにね」
《わかっています。では……》
その言葉を最後に、シュテルからの念話は途切れた。
「二人の集束砲の激突かぁ……どっちが勝つにしても、お互いタダじゃ済まないだろうなぁ……」
そんなユーノの呟きは、誰の耳に届くことなく、虚しく響いていった。
◆◇◆◇◆◇◆◇
そして一方……先ほどなのはからの通信を受け取ったエリオはと言うと……
「ハァ…ハァ…ハァ……!!」
「フゥ…フゥ…フゥ……!!」
レヴィから距離を取り、お互い肩で息をしながらデバイスを構えて睨みあっていた。
「テヤァァアアアア!!!」
「ハァァアアアアア!!!」
そして二人は同時に一気に駆け出し、レヴィの大剣型のザンバーフォームとなったバルニフィカスと自身の愛機であるストラーダをぶつけ合い、火花を散らせていた。
「(なのはさんは防戦しながら戦闘箇所をなるべく中央に集めるように言ってたけど、正直そんな余裕がない……!)」
そう…レヴィが高速戦用形態であるスプライトフォームになってから、彼女の移動速度と攻撃力が格段にパワーアップしたのだ。ただでさえ厄介だったパワーとスピードが強化された事により、エリオは再び苦戦をしいられていた。
しかしエリオもやられてばかりではなく、レヴィの攻撃の隙を見つけては即座にストラーダで攻撃を加えていた。それにより、お互いのライフは……
レヴィ
LIFE:1300→1000
エリオ
LIFE:1800→1100
となり、まさに一進一退の攻防を繰り広げていた。
「一・刀・両・だーん!!!」
「ぐっ!!」
レヴィが思いっきり振り下ろしたバルニフィカスの刃を、ストラーダで受け止めるエリオ。
「負けて……たまるかぁぁあ!!!」
「え!?うわぁあ!!」
エリオはそう叫ぶと、なんとレヴィのバルニフィカスを押し返してしまった。それにより、今のレヴィは隙だらけの無防備状態となってしまった。
「今だ!!」
当然エリオがそれを見逃すハズがなく、ストラーダを握る手に力を込める。
「一閃……必中!!」
エリオを今残っているありったけの魔力をストラーダに込める。そして……
「テリャアアアアア!!!」
「う…うわぁぁあああああ!!!」
そのストラーダの一撃は見事にレヴィを捕らえ、彼女のバリアジャケットを切り裂いた。
レヴィ
LIFE:1000→120
「よしっ!! これで──っ!!?」
僅かにライフが残ったレヴィにトドメをさすために、さらに追撃を加えようとしたエリオだが、その瞬間……彼の動きが止まる。
「なっ!!? バ…バインド!!?」
見ると、エリオの体には水色のバインドが巻きついていた。
「や…やったぞ…捕まえた……!」
そう言いながらボロボロの体に鞭打ち、ゆっくりと立ち上がるレヴィ。
「ま…まさか……さっきの一瞬で……!!?」
そう……レヴィは先ほどのエリオの一撃を喰らうその瞬間に、彼にバインドを施していたのだ。
「見たか……これぞ、肉を斬らせて骨を断ーーつ!!!」
「く…くそ……!!」
「むりむり。それはおとーさん直伝のバインドだからね。ちょっとやそっとじゃ抜けないよ!」
エリオは何とかバインドから抜け出そうとするが、それが叶う事はなかった。
「いっくぞーー!!! パワー
そう叫びながらレヴィはバルニフィカスを構える。その瞬間、バルニフィカスの刃に強力な電気の魔力が纏われる。
「雷刃…滅殺!!!」
レヴィはそのままバルニフィカスを思いっきり振りかぶり……
「
エリオに向かって振り下ろしたのであった。
◆◇◆◇◆◇◆◇
「(よし……タイミングは今!!!)」
現在の戦況を確認したなのはは、レイジングハートを構える。
「(私の残り魔力も多くないけど、マルチレイドで一網打尽!)」
そのままいよいよ魔力の集束に入る。
《チーム生存者一同! シュテルを中心に
通信魔法を使って自分のチームに連絡するなのは。それを見ていたシュテルも動き始める。
「(ナノハが集束に入りましたね。今の私の残り魔力では〝真〟は使えない……ならば今ある魔力でやるしかない!)」
そう考えたシュテルも、ルシフェリオンを構えて魔力の集束を始める。そしてすぐにチームメンバーに念話を送る。
《スクライア一家、及びアインハルトに連絡。これよりタカマチ・ナノハの集束砲を相殺します。相殺完了後、すぐに敵残存戦力を殲滅できるように準備をお願いします。それと───》
そこまで言うと、シュテルは一旦言葉を区切り……
《──最悪の場合も想定しておいてください》
そう言って、念話を切った。
そして……二人の魔力集束が完了する。
「モード《マルチレイド》!!」
「集え…
口上と共にそれぞれのデバイスを構えるなのはとシュテル。
「全力全開! スターライト──」
「轟熱滅砕! ルシフェリオン──」
「「ブレイカーーッッ!!!!」」
叫びと共に放たれる…紅と桜色の巨大な二つの閃光。
そしてその二つの閃光は激突し、周囲のビルなどの建築物を全て巻き込んで倒壊させていく。
これを見ていた観戦者の一人が「これ何て最終戦争?」と呟いたが、無理もないだろう。
激突した二つの閃光はやがて消えていき、その際に起こった爆風も収まり始めた。
そして……その後の両チームの状況はと言うと……
「ふにゃ~~」
「うっ…うぅ……」
レヴィ
LIFE:120→0
エリオ
LIFE:1100→0
SLB着弾前にレヴィの一撃にて撃墜
「な…何が起こったの……?」
「……………」
コロナ
LIFE:90→0
気絶からの復活直後に
ルーテシア
LIFE:2200→50
拘束中の為、身動き及び防御が出来ずにRBが直撃して行動不能
「……不覚……です」
「おのれ……塵芥め……」
シュテル
LIFE:2500→100
SLBを相殺しきれずに直撃・行動不能
ディアーチェ
LIFE:1100→0
ヴィヴィオに気を取られていたせいで防御が遅れてSLBが直撃・撃墜
「ギリギリ……かな?」
なのは
LIFE:1100→1000
RBをほとんど相殺したことにより軽傷
そして、あの男はと言うと……
「あいたた……ふぅ、何とか生き残った~」
ユーノ
LIFE:2200→1100
SLB着弾直前にシールドを展開したことにより何とか生存
「さて、残ってるのは僕となのはと……あと二人か」
空間モニターを展開して現在の両チームの状況を確認するユーノ。
「取り合えずシュテルを治療して戦線復帰を──っ!! 誰か来る!!?」
まだライフが残っているシュテルを転送魔法で自分のもとに送り、回復させようとしたユーノだが、その時モニターに誰かが自分の所へ近づいてくるのが映った。
「まさか……なのは!?」
「じゃなくてヴィヴィオですっ!!」
ヴィヴィオ
LIFE:2600→1800
その近づいてくる誰かとは、ほとんどライフにダメージを負っていないヴィヴィオであった。
「えぇっ!!? ちょっ──何でほとんど無事なの!!?」
「えへへ~運がよかったんです!」
実を言うと、なのはとシュテルの集束砲が激突する寸前……ヴィヴィオは運よくビルとビルの間に潜り込む事に成功し、衝撃のほとんどを受けずに済んだのである。
「くっ……シュートバレット!!」
ユーノはヴィヴィオに向かって数発の魔力弾を放つが、ヴィヴィオはそれを軽々と避けながらユーノに接近する。
「ユーノさん、行きますっ!!」
「いや来なくていいから!!」
ユーノのそんな言葉も虚しく、ついにヴィヴィオが眼前に迫る。そしてヴィヴィオの拳がユーノに向かって放たれようよしていたその時……
「覇王…空波弾(仮)!!!」
突然現れたアインハルトの拳圧がヴィヴィオを襲った。
「あーーー!」
それを喰らったヴィヴィオはゴロゴロと地面を転がる。
ヴィヴィオ
LIFE:1800→1100
アインハルト
LIFE:1350
ユーノが事前に張っておいたシールドのおかげで軽傷
「ヴィヴィオさん! ユーノさんはやらせません」
「た…助かったよアインハルト。ありがとう!」
「いえ……」
ユーノの感謝の言葉に、アインハルトは照れながら答える。
「ヴィヴィオさんの相手は私がします。ユーノさんは下がっていてください」
「サポートは?」
「……すみません、彼女とは1対1でやりたいので……」
「そう……わかった。じゃあ僕の相手は……やっぱり彼女かぁ」
そう言ってユーノは首だけを振り返らせて後ろへと視線を向ける。そこには、ちょうどここへたどり着いたなのはが空に浮かんで佇んでいた。
「まぁちょうどいいや。子供は子供同士……大人は大人同士で戦おうか……なのは」
「うん。久しぶりだね、ユーノ君と1対1で戦うのは……」
「勝った事は一度もないけどね。でも今日は可愛い愛娘達が見てるから、あまりカッコ悪いところは見せられないね。全力で行くよ! なのは!!」
「私も娘の前だからね、手加減なしで行くよ!ユーノ君!!」
こうして、ユーノとなのは……師弟対決が始まった。
◆◇◆◇◆◇◆◇
「ヴィヴィオさん、私が相手です」
「はい! 行きますよアインハルトさん」
そう言ってお互いに拳を構えるヴィヴィオとアインハルト。そしてしばらく睨みあったあと、最初に動き出したのはアインハルトだった。
アインハルトの一撃を、腕をクロスさせて防ぐヴィヴィオ。それを皮切りに、二人の激しい攻防戦が始まる。
「(やっぱりそうだ。相手の攻撃を覚えて対策する学習能力、速くて精密な動作、何より相手の攻撃を恐れずに前に出て撃ち込める勇気!それらが重なって出来上がる、この子の
アインハルトがヴィヴィオの戦闘スタイルを見極めたその瞬間、ヴィヴィオのカウンター攻撃が彼女を襲った。
アインハルト
LIFE:1350→750
その一撃により、アインハルトは体勢を崩した。
「(ここっ!)」
当然ヴィヴィオはそれを見逃さず、即座に拳に魔力を込め……
「一閃必中──! アクセルスマッシュ!!」
彼女の顎を撃ち抜いた。
「(当たっ──)」
それを見てヴィヴィオが気を抜いたその瞬間、アインハルトが放った最後の蹴りがヴィヴィオに直撃した。
そして攻撃を喰らった二人は、ほぼ同時に地面に倒れた。
アインハルト
LIFE:750→0
撃墜
ヴィヴィオ
LIFE:1100→0
撃墜
こうして、二人の戦いは引き分けに終わったのだった。
◆◇◆◇◆◇◆◇
「ヴィヴィオ達の方は終わったみたいだから、残ってるのは私とユーノ君だけだね?」
「みたいだね……てゆーかなのは、本当に手加減なしだね!!?」
なのはが引っ切り無しに放ってくる魔力弾を必死にシールドで防ぎながら叫ぶユーノ。
「だってユーノ君だもん。油断したらこっちがやられちゃうよ」
「買い被り過ぎじゃないかな!?」
本当に容赦のないなのはに、ユーノはすでに涙目である。
「(とか言いながらユーノ君、さっきから私の攻撃を難なく防いでるよね……結構本気で撃ってるのに……)」
そんなユーノに内心で苦笑するなのは。
「(今だ!!)」
なのはの気が緩んだその時、ユーノの目が光った。
「
そしてユーノは先ほどから張っていた普通のシールドから反射効果のあるシールドへと切り替え、なのはの数発の魔力弾を跳ね返した。
「えっ!? わっ!!」
突然の反撃に、なのはは慌てて回避行動を取るが、一発だけ肩に当たってしまった。
なのは
LIFE:1000→900
「(反撃の隙は与えない!!)シュートバレット! シュート!!」
ユーノは間髪容れずに二発の魔力弾をなのはに向かって撃ち出す。
「プロテクション!」
対するなのははシールドを張って魔力弾を防ぐが……
「プロテクション…スマッシュ!!」
「えっ!?」
体全体をシールドで覆った状態で突撃してきたユーノに、なのはは驚きながらもシールドでガードする。
「貫けぇええ!!」
「っ……きゃあっ!!」
やがて、ユーノの攻撃がなのはのシールドを撃ち砕いた。
「ここだ!!」
すかさずユーノは彼女の足元に翡翠色の魔法陣を展開する。そして……
「ウェイブゲイザー!!」
「きゃあああっ!!!」
そしてその魔法陣から魔力の衝撃波を発生させ、なのはを吹き飛ばす。
なのは
LIFE:900→500
「(ダメージが薄い……やっぱり僕は攻撃魔法はダメだなぁ)」
思ったほどダメージが通っていないことに、顔をしかめるユーノ。すると……
「ディバイン…バスター!!」
「っ!? しまっ──うわぁぁあ!!」
ユーノが一瞬だけ気を抜いたその時、なのはの砲撃がユーノを襲った。
「やった!?」
なのはは目を凝らしながら着弾の際に発生した煙幕を凝視する。すると……
「チェーンアンカー!!」
「にゃっ!?」
突然煙幕の中から翡翠色の鎖が飛び出し、なのはの片足を絡め取った。
「ケホケホ……相変わらずのバカ魔力だねまったく……でも、捕まえたよ」
そして煙幕の中から軽く毒づきながら現れるユーノ。その手には、なのはの足を絡め取っている魔力で生成された鎖が握られている。
ユーノ
LIFE:1100→450
「(僕の魔力も残り少ない……これで決める!!)」
そう決意したユーノは、自分の目の前に二つの魔法陣を展開する。
「広がれ…戒めの鎖……!」
「えっ!? わっ…わぁー!!」
するとその魔法陣から何本もの魔力で生成された鎖が出現し、なのはの体に巻き付き始める。
「捕らえて固めろ! 封鎖の檻!!」
さらにその周りにも発生した鎖がなのはを取り囲み、完全に逃げ場を奪った。そして……
「アレスター…チェーーン!!!」
そう叫びながらユーノが手元の鎖を引っ張ると、その瞬間なのはの周りにあった鎖が一斉に巻き付き、まるで翡翠色の繭のようになる。
「よしっ!これで──!!」
あとはチェーンに更なる魔力を込めて、その中心部に魔力爆発を起こさせるだけだった。しかし……
「レイジングハート! フルドライブ!!」
「なっ!!?」
そんな声が響いてきた瞬間…チェーンの中心部にあった翡翠色の繭が、突然ハジケるように砕け散った。そしてそこには……フルドライブを発動したなのはが立っていた。
なのは
LIFE:500→110
「ハイペリオン……!」
「っ……くっ!!」
レイジンハートを構えて魔力を集束し始めるなのはを見て、すぐに身構えるユーノ。そして……
「スマッシャーーー!!!」
「うわぁぁぁぁあああ!!!」
先ほどのディバインバスター以上の砲撃が発射され、ユーノは成す術なく、桜色の閃光に飲み込まれていった。
「勝っ──」
なのはが勝利を確信したその時……
パコォーーン!!
「あいたっ!!?」
なのはの額に、一発の魔力弾が直撃した。
「(今のは……ユーノ君のシュートバレット……もしかして、あの一瞬に?)」
そう…ユーノはなのはの砲撃に飲み込まれる寸前に、単発のシュートバレットを放っていたのだ。
「(あの一瞬で、あの状況判断……やっぱり凄いなぁ…ユーノ君は……)」
なのはは何故か嬉しそうな笑みを浮かべながら、墜落していった。
ユーノ
LIFE:450→0
撃墜
なのは
LIFE:110→0
撃墜
—最終戦績—
ユーノチーム
行動不能1名・撃墜4名
なのはチーム
行動不能1名・撃墜4名
試合時間
18分23秒
全員戦闘不能につき〝引き分け〟
つづく