No side
ユーノチーム対なのはチームの陸戦試合が始まって僅か数分……にも関わらず、ステージの至る所では、ポジション同士の激しい戦いが早くも繰り広げられていた。
その内の一つである、アインハルト対ヴィヴィオでは……
「ソニックシューター!アサルトシフトッ!」
「覇王流『旋衝波』」
自身の周りにいくつかの魔力弾を生成するヴィヴィオと、ただ静かに構えを取るアインハルト。
「ソニックシューター! ファイアッ!」
そして一斉に放たれるヴィヴィオの魔力弾。それに対し、アインハルトはゆっくりと動き始める。
「(よし! アインハルトさんが受けに入る!足を止めてくれれば、着弾の隙に回り込める!)」
そう考えたヴィヴィオは、発射した魔力弾とほぼ同時に走り始める。
しかし、そんなヴィヴィオの予想に反して、アインハルトはその全ての魔力弾を素手で受け止めた。
「いっ!?(受け止めた!?
驚愕するヴィヴィオをよそに、アインハルトは受け止めた魔力弾をスッと振りかぶり……
「覇王流……」
「(これってまさか!?)」
「旋衝波!!!」
そのまま全ての魔力弾をヴィヴィオに投げ返した。
ヴィヴィオ
LIFE:2600→1800
「
まさかの反撃に戸惑うヴィヴィオ。その隙に、アインハルトが一気に距離を詰め、そのままヴィヴィオに渾身の拳を叩き込んだ。
ヴィヴィオ
LIFE:1800→700
それによりビルの地面に思いっきり叩きつけられるヴィヴィオ。しかし……
「っ……!」
アインハルト
LIFE:2600→2300
突然アインハルトのバリアジャケットの肩の部分が爆ぜ、ライフにダメージが入る。
実は先ほど、アインハルトが拳を叩き込むその瞬間に、ヴィヴィオも同時にカウンターの拳を放っていたのだ。もし当たり所がズレていたら、結果は逆だったかもしれない。
「(あのタイミングで、あのカウンター。ヴィヴィオさんはやっぱり──)」
そんなヴィヴィオにアインハルトは胸の高まりを覚え、そのまま彼女に追撃を行おうと走り出そうとするが……
《アインハルト! ちょっと待って!》
ユーノからの念話でそれを止められた。
《ヴィヴィオのライフは残り三桁、これならヴィヴィオは一旦下げられるハズだ。だから深追いはせずに、そのまま先陣突破で斬り込むんだ! ちょっと厳しいかもしれないけど…
「──はいっ!!」
ユーノの指示を聞いたアインハルトは、そのままなのはに向かって走り出したのであった。
◆◇◆◇◆◇◆◇
その頃、ディアーチェとコロナの方は……
「創主コロナと魔導器ブランゼルの名のもとに! 叩いて砕け『ゴライアス』!!」
コロナがそう言うと、彼女が作り出した岩の巨人……ゴライアスがディアーチェに向かって拳を振るう。
「ふん…
しかしディアーチェはそれを難なくかわすと、エルシニアクロイツを掲げる。
「貫け! ドゥームブリンガー!!」
そしてそのままエルシニアクロイツを振るい、紫色の魔力で生成されたいくつもの刃がゴライアスを襲う。
「ゴライアス!」
しかしゴライアスは、その巨大な拳を思いっきり振り回し、全ての魔力刃を払い落としてしまった。だが、それもディアーチェの計算の内。
「後ろがガラ空きだ!! 消し飛ぶがいい!!」
コロナとゴライアスの背後を取ったディアーチェは、そのまま砲撃魔法を放とうとした。しかし……
ビキビキビキ……ゴキッ!
「なっ!!?」
なんと、ゴライアスは体の腰の部分を砕き、そのまま回転しながらディアーチェに拳をぶつけた。
「ぐあああ!!」
ギリギリでシールドを展開し、直撃を避けたディアーチェだが、勢いまでは止められずにビルの壁に叩きつけられた。
「こ、このパンチは乗ったままだと危ないかも~?」
因みにコロナは先ほどの回転パンチの際に振り落とされそうになった為、必死にゴライアスの体に引っ付いていた。その結果、目を回している。
「ククク……ようやく面白くなってきおったわ」
「っ!?」
コロナは声がした方へ視線を向けて見ると、そこには微笑を浮かべながら立っているディアーチェの姿があった。
ディアーチェ
LIFE:2500→2000
「どれ……今度はこちらの番だ」
そう言うとディアーチェは、ゆっくりとエルシニアクロイツをコロナに向ける。
「破壊の剣! アロンダイト!!」
そしてそのまま漆黒の砲撃を放つ。
「ゴライアス!!」
それを見たコロナはすぐにゴライアスへ指示を出し、それを受けたゴライアスは巨大な腕で砲撃を受け止めた。
「受け止めたか。いつまで防げるか見物だな」
そう呟くとディアーチェは再びエルシニアクロイツを掲げる。
「インフェルノ!!」
そして今度は、いくつもの巨大な魔力球がゴライアスに降り注ぐ。
「た…耐えてゴライアス!!」
コロナの指示通り、降り注ぐ魔力球を両腕でガードしながら耐えるゴライアス。
「ほう…これも防ぐか」
「止まった! 反撃するなら…今! ゴライアス!!」
降り注ぐ魔力球が止んだのを見計らって、ディアーチェに向かって反撃の拳を振るうゴライアス。しかし、ディアーチェはそれを高く飛翔する事によってかわした。
「うはははは! こうやって高い所へ行ってしまえば、貴様のその木偶人形の攻撃は当たるまい!!」
ディアーチェの言うとおり、コロナとゴライアスに空を飛ぶ手段はない。なので、空へ逃げれば反撃の心配がなくなる。ディアーチェはそう考えていた。しかし……
「だったら……ゴライアス! パージブラストッ!!」
コロナがそう叫ぶと同時に、ゴライアスは腕をディアーチェに向け、拳を激しく回転させる。そして……
「ロケット・パーーンチ!!!」
なんと…そのまま拳を螺旋回転させながらディアーチェに向かって発射したのだ。
「なぬーーーーっ!!?」
予想だにしない攻撃にディアーチェは驚愕する。
「ぬおぉぉおおっ!!!」
そして、大慌てで急降下してギリギリでロケット・パンチを避ける事に成功した。
「い…今のは流石に……肝を冷やしたぞ……!」
額に冷や汗を浮かべながらそう呟くディアーチェ。
「中々やるではないか、コロナ」
「まだまだこれからだよ!」
「ふん…よかろう。ならば我も全力で相手をしてやろうぞ!!」
◆◇◆◇◆◇◆◇
「おお、コロナもディアーチェも凄い!」
一方、なのはチームの
「うう、ルールー! 回復早く早く!」
そのルーテシアの後ろでは、アインハルトに大ダメージを負わされたヴィヴィオが回復魔法を受けていた。
ヴィヴィオ
LIFE:700→1200
「慌てない慌てない。再出撃はちゃんと全快してから!」
そう言うとルーテシアは通信モニターをエリオへと繋げる。
「エリオ! こちらルーテシア。そっちはどう?」
『ねえ! この子本当に10歳!? 結構全力でやってるのに、全然クリーンヒットが取れないんだけど!!』
「頑張って! ヴィヴィオの回復まであともう少しだから、何とか持ちこたえて!」
『了解!』
エリオからの返事を聞いたルーテシアは、今度は通信モニターを全員に繋ぐ。
「チーム一同、ヴィヴィオが復帰したら例の作戦に移ります。いつでも動けるようにお願いします♪」
『『『了解!』』』
◆◇◆◇◆◇◆◇
《父上、あちらのチームは何かを企んでいるようです。どうしますか?》
「うーん……あの子の悪巧みは洒落にならないからなぁ」
シュテルから敵チームの状況を聞いたユーノは、困ったように呟く。
「じゃあ…ここは正攻法で、まずは敵の頭脳を叩くとしようか。ディアーチェ、聞こえる?」
ユーノはそう言うと、念話をディアーチェへと繋ぐ。
《どうした父上? 作戦か?》
「うん。悪いけど、戦いながらコロナを僕の近くに誘導してもらえるかな?」
《承知した。任せるがいい》
「それじゃあ次は……アインハルト!」
《はい!》
ディアーチェとの念話を終えると、今度はアインハルトに念話を繋いだ。
「向こうの作戦の要はおそらく、なのはとルーテシアの二人だ。僕がルーテシアの方を何とかするから、アインハルトは全力でなのはを止めてもらえる?」
《承りました!》
「よし……シュテルはその場で待機。全体への射砲支援を維持しながら、例の作戦に備えて!」
《了解です》
そこまで言うと、ユーノは一旦念話を切って、軽く息を吐いたあと、小さく呟いた。
「さて……あっちはどう出るかな?」
◆◇◆◇◆◇◆◇
そして、ユーノからなのはの相手を頼まれたアインハルトは、既になのはの眼前へと迫っていた。
「ヴィヴィオさんのお母様! 一槍、お願いいたします!」
「私でよければ、喜んで!」
アインハルトの挑戦を、なのはは笑顔で受け取った。
「各員に報告。まもなく、敵チーム
『『『了解!』』』
通信で全体にそう報告し、なのはは改めて向かってくるアインハルトと向き合い、レイジングハートを構える。
「アクセルシューター! 弾幕集中! シュートッ!」
そしてそのまま、いくつもの魔力弾を発射する。
しかしアインハルトは特に慌てることもなく、向かってきた魔力弾を全て受け流して避ける。
「ファイアッ!」
それを見たなのはは、すぐに切り替えて砲撃を放つ。
だがそれも、アインハルトが振るった拳によって打ち消された。
「あらっ? パンチで相殺!?」
さすがに予想外だったのか、なのはは少し驚いた表情を浮かべる。
そこへすかさず、アインハルトの拳が襲い掛かり、なのははそれをレイジングハートで受け止めた。
「っと」
アインハルトのパンチの連打を、なのはは受けたり避けたりしながら冷静に彼女の力量を分析する。
「(うん──まだ荒削りだけど、土台がすごくしっかりしてる。きっと凄い量の基礎トレをやってるんだろうな)」
対するアインハルトも、パンチの連打を繰り返しながら、なのはの隙を窺っている。
「(読まれているみたいに防がれる──だけどこのまま攻め続ければ──)」
そう考えながら再び拳を振るうと、その拳はなのはのレイジングハートを左手ごと弾いた。
「(開いた! 右拳廻打、入るっ!)」
その隙を見逃さず、渾身の右拳を叩き込むアインハルト。
しかし、拳に走った感触は相手を殴ったモノではなく、何かに防がれる感触と、何かが巻きつくような感触だった。
「っ!!」
見ると、アインハルトの拳はなのはの魔法陣で防がれており、さらにその魔法陣から発生したバインドで腕を絡み取られていた。
「(これは……ユーノさんと同じ──!!?)」
そう…その魔法は、つい先日の鬼ごっこでユーノにやられた捕縛盾(バインディングシールド)だった。
「(
「く……!!」
アインハルトが捕まったのを確認したなのはは、後ろに大きく跳んで距離を取り、レイジングハートを構える。そしてその先端に、先ほどとは比べ物にならないほどの魔力が収束される。
「(砲撃…避けられない! 防御!? 無理───どうすれば!!?)」
段々と収束される魔力を見て、焦りの表情を浮かべるアインハルト。その時……
《落ち着いて、アインハルト》
「(っ…ユーノさん!?)」
ユーノからの念話が聞こえてきた。
《よく聞いて。
「(ノーヴェさんから……!!)」
その言葉を聞いて、アインハルトは昨日の川遊びの際に行った、水斬りを思い出した。
「エクセリオン──ッ!」
なのはの方は、ついに魔力集束が完了し、今にも砲撃を放とうとしていた。
「(脱力した静止状態から、足先から下半身へ、下半身から上半身へ、回転の加速で拳を押し出す!)」
ノーヴェから学んだことを復習しながら思いっきり拳を打ち出すアインハルト。その瞬間……発生した拳圧がバインドを砕き、そのままなのはを襲った。
なのは
LIFE:2500→2000
攻撃を放った本人であるアインハルトを含めた全員が唖然とする中、いち早く復活したなのはがアインハルトに向けて砲撃を放つ。
当然アインハルトはすぐにそれを回避するが、その間になのはに背後を取られ……
「ストライク・スターズ!!」
強烈な砲撃を喰らって地面に叩きつけられてしまった。
アインハルト
LIFE:2300→40
(ライフ100未満のため、治療が行われるまで活動不可)
「(受け流すどころか完全に飲み込まれた。あれが本物の砲撃──でもその前に、私が撃ったあの一撃──)」
地面に倒れながら、先ほどのことを思い出すアインハルト。
「びっくりしたぁ。打撃の威力でバインドを砕いちゃった」
そう言うなのはの表情は驚いたモノだったが、それはすぐに嬉しそうな表情へと変わった。
「(凄い子だな──なんだか嬉しいな!)」
なのははそう思いながら、再びレイジングハートを構え直そうとしたその時……
「油断大敵──です」
「えっ──あいたっ!」
突如なのはの背後に現れたシュテルが、炎の魔力を纏ったルシフェリオンで彼女を殴り飛ばした。
なのは
LIFE:2000→1100
「いっ…たぁ~!! って、シュテル!? どうして砲撃魔導師の君がこんな前線に!!?」
「確かに私は砲撃型ですが……実は、接近戦もそれなりに得意なんです」
なのはの問いにそう答えると、シュテルはルシフェリオンの先端をなのはに向ける。
「私のオリジナルである貴女とは、一度戦ってみたいと思っておりました。申し訳ありませんが、お相手願います……タカマチ・ナノハ」
◆◇◆◇◆◇◆◇
「お疲れ、アインハルト」
「あ…ユーノさん……」
その頃…なのはに行動不能にされたアインハルトはユーノの転送魔法により彼のもとへと戻ってきていた。
「すぐに回復させるから、今はゆっくり休んでて」
「あ…はいっ!」
そう言うと、ユーノは魔法陣を展開してアインハルトのライフを回復させる。
アインハルト
LIFE:40→540
「あの、ユーノさん…先ほどは、ありがとうございました」
「え?あぁ、気にしなくていいよ。僕にはあれくらいしか出来ないからさ」
「いえ…ユーノさんのアドバイスがなかったら、私は何も出来ずに戦闘不能にされていました。僅かにライフが残ったのは、ユーノさんのおかげです」
「……そうかな?」
「そうですよ!」
「あははっ…ありがとう」
力強く言い切るアインハルトに、ユーノは笑顔を浮かべながらそう言った。
「あ…い、いえ……」
その笑顔を見た途端、アインハルトは恥ずかしそうに顔を俯かせた。すると……
《父上、聞こえるか?》
「っ…ディアーチェかい?」
ユーノにディアーチェからの念話が入った。
《父上の指示通り、着実にコロナをそちらに誘き寄せておる。このペースだと、あと数分でそちらに着くだろう》
「わかった。こっちも準備が整い次第そっちに向かうから、もうちょっとコロナを引き付けておいてくれる?」
《了解した》
その言葉を最後に、ディアーチェとの念話を終える。その後、ユーノ小さく息を吐きながらメガネのブリッジを軽く押し上げ……
「さて……上手く食いついてくれるかな?」
と…呟いたのだった。
◆◇◆◇◆◇◆◇
No side
陸戦試合が始まってそれなりの時間が経とうとしている。それぞれのポジション同士の戦いも変化を見せ始め、均衡が崩れ始めている。
そしてその頃…レヴィとエリオの
「とりゃーー!!」
「おっと」
レヴィのバルニフィカスによる一撃を、余裕の表情で軽々と避けるエリオ。
「もー!! 何で当たらないんだよー!!」
攻撃を避けられた事でムキーっと怒るレヴィ。
何故なら、先ほどエリオがルーテシアとの通信を終えたあたりから、彼女の攻撃がまったくと言っていいほど当たらなくなったのだ。
当然それには理由がある。
「(ふぅ……ようやくあの子の攻撃に慣れてきた)」
そう…簡単に言えば、エリオはレヴィの不規則な攻撃とスピードに慣れてしまったのだ。
レヴィの攻撃は最初こそは戸惑い、圧倒されるものの、慣れてしまえば意外と冷静に対処出来てしまうのである。
そしてそこからエリオの反撃が始まり、現在の両者のライフは……
レヴィ
LIFE:2800→2300
エリオ
LIFE:2500
となり、レヴィはあっさり逆転されてしまった。
「もうこうなったら本気でいっちゃうもんねーー!!」
そう言うと、レヴィはバルニフィカスを大きく振りかぶる。
「光翼斬!!」
そしてそのまま思いっきり振るい、エリオに向かって魔力の刃をまるでブーメランのように飛ばす。
「ハァァ!」
しかし、エリオはそれをストラーダの一撃で粉々に粉砕する。
「くっ……電刃衝!!」
それを見たレヴィは負けじと、数発の魔力弾を放つ。
「ストラーダ!!」
[Sonic move]
しかし、エリオはソニックムーブを使って高速で移動しながら全ての魔力弾を掻い潜り、一瞬でレヴィの目の前に現れた。
「紫電……」
そしてエリオは拳の電気の魔力を纏わせ……
「っ……くぅっ!」
「一閃!!!」
そのままレヴィに向かって振り下ろした。
「うわぁぁぁぁああああ!!!」
バルニフィカスの杖の部分でギリギリ防御したレヴィだったが、完全に防ぐことが出来ずに、レヴィは吹き飛ばされてビルの屋上に叩きつけられた。
レヴィ
LIFE:2300→1300
「ちょっと……やり過ぎたかな?」
レヴィが飛んでいった方向を見ながら呟くエリオ。
「…………(ムクリ)」
すると、倒れていたレヴィはゆっくりと上半身を起こす。
「……………」
「?」
しかし、起こしたの上半身だけで立ち上がる気配はなく、レヴィは俯いたまま座り込んでいた。そんなレヴィの様子に、エリオは首を傾げる。
「……うっ……ひっく……」
「え……?」
すると、レヴィはなにやら小さな呻き声を上げる。そしてそれを聞いたエリオは嫌な予感がして顔を引きつらせる。そして次の瞬間……
「うわぁぁぁぁぁぁぁああん!!!」
「(泣いたーーー!!!)」
レヴィは大声を上げて泣き始めた。
「なんだよ! なんでボクをイジメるんだよー!!」
「えぇ!!? い…いや……イジメてるわけじゃ……」
「お前なんかキライだ! キライだーー!!」
「え…ええっと……」
泣き喚きながらメチャクチャな言い分を言うレヴィに、エリオはただ戸惑い、オロオロするしかなかった。
「おとーさんに言い付けてやるーー!!」
「ユーノさんに………………ハッ!!」
その瞬間、エリオの脳裏に昨夜の出来事が蘇る。
それは……娘を泣かされた事により、鬼のような気迫と尋常ではない殺気を身に纏いながら凍て付くような冷たい眼差しで相手を睨みつける……キレたユーノの姿であった。
それを思い出したエリオは小刻みに震え始める。
「(こ…殺される……! ユーノさんに殺される!!)」
その瞬間、己の命の危機を悟ったエリオ。だがその時……
「スキあり♪」
「へ?ぐはっ!!?」
エリオは思いっきりバルニフィカスで殴り飛ばされた。
エリオ
LIFE:2500→1800
「やーい! 引っ掛かった引っ掛かったー!」
「う…ウソ泣き!!?」
してやったりと言いたげなレヴィを見て、先ほどの泣き声がウソ泣きだと言うことが分かり、エリオは愕然とする。
「ひ…卑怯だよ……」
「だって、こうでもしないと攻撃が当たらないんだもん……」
エリオはレヴィの行為を軽く非難するが、彼女は拗ねたように頬を膨らませながらそう言い返す。そんなレヴィにエリオが苦笑いを浮かべていると……
《レヴィ、聞こえる?》
「あ、おとーさん!」
「っ!!(ビクッ)」
ユーノから念話が入り、嬉しそうに応答するレヴィ。その際に、エリオが少し怯えたように体を震わせて硬直したが、レヴィはそれに気づく事なく念話を続けた。
「どーしたの?」
《いや、レヴィのライフが結構減ってるのを確認したから、そっちの状況を聞こうかと思って……そっちは大丈夫?》
「うん! だいじょーぶ! ヨユーOK♪おとーさんの方は?」
《僕達の方は、そろそろ作戦を始動させる所だよ。今ディアーチェがその下準備をしてくれてる》
「ボクもなにかやりたい!」
《えっと……それじゃあエリオの足止めをお願い。敵チームでなのはを抜いたらエリオが一番強いからね、自由に動かれると厄介なんだよ。これが出来るのは、僕達の中で一番強いレヴィだけだね》
「ボクが……一番強い?」
《そうだよ。レヴィが一番強い!》
「ボク、強くて凄くてカッコイイ?」
《強くて凄くてカッコイイよ、レヴィは!》
ユーノのその言葉を聞いて、レヴィは嬉しそうに満面の笑顔を浮かべた。
「わかった!! ボクに任せて!!」
《うん。頑張ってね、レヴィ》
「頑張るよ! おとーさん!!」
その言葉を最後に、ユーノとの念話を切った。
「よーし! 勇気百倍!! 元気千ばーい!!! もう誰にも負けないもんねー!!!」
先ほどのユーノの応援で気合が入ったのか、レヴィは大声でそう叫ぶ。
「(何の話をしてたんだろう……?)」
会話方法が念話だった為、会話の内容を知らないエリオは首を傾げていた。そして実は内心、ウソ泣きとはいえレヴィが泣いた事を言われなくてよかったと安堵していた。
「いっくぞーー! フルドラーイブ!!」
レヴィが高らかにそう叫んだその瞬間、彼女の体が水色の魔力に包み込まれる。そして……
「スプライトォオ~~~~ゴォーー!!!」
次の瞬間…レヴィのバリアジャケットがレオタードのような薄いモノへと変わり、そして彼女の四肢には魔力で生成された水色の羽がついていた。
これがレヴィの高速戦用形態…《スプライトフォーム》であった。
「見せてあげるよ!!ボクの…本気の本気をね!!!」
つづく