ユーノの子育て日記R   作:ZEROⅡ

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陸戦試合・前編

 

 

 

 

 

 

温泉騒動から一夜明けて、旅行二日目の朝。

 

 

「ん……ふわぁぁ……」

 

 

窓から差し込む朝日の眩しさに、目を覚ました僕はベッドから上半身を起こして軽く伸びをする。そして周りを見るとそこには……

 

 

「スゥ…スゥ……」

 

 

「くー…くー……」

 

 

「ん…むにゅ……」

 

 

僕の愛娘達が可愛らしい寝息を立てていた。いつもなら僕と娘達は別々に寝るんだけど、今回は娘達の強い要望もあって一緒に寝ることにしたんだ。その際になのはとフェイトが複雑な表情をしていたけど気にしない事にした。

 

あぁ…それにしても三人とも相変わらず寝顔が可愛いなぁ、まるで天使だ。

 

 

「んん……おとうさま?」

 

 

僕が娘達の寝顔に見とれていると、シュテルが目を覚ました。

 

 

「う~ん……」

 

 

「むっ…朝か……」

 

 

そんなシュテルに続くようにレヴィとディアーチェも目を覚ました。

 

 

「おはよう、三人共」

 

 

「おはようございます、お父様」

 

 

「おふぁよ~」

 

 

「うむ、おはよう」

 

 

三人は寝起き顔も可愛いなぁ。

 

と…僕が今度は三人の可愛らしい寝起き顔に見とれていると……

 

 

「ユーノ君、起きてる?」

 

 

なのはが部屋に入ってきた。

 

 

「あ、なのは。おはよう」

 

 

「うん、おはよう。朝食の準備出来てるから早く来てね、みんな待ってるから!」

 

 

それだけ言うと、なのはは部屋のドアを閉めて戻って行った。

 

 

その後…僕は娘達を連れてリビングへと行き、みんなでメガーヌさんが用意してくれた朝食をいただいたのだった。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

さて、今日で旅行二日目だが…僕達スクライア一家は特にコレといって決まった予定はない。なので、この緑溢れる世界を娘達と散歩、もしくは昨日約束していた翠屋特製ケーキを作ろうと思っていた。

 

 

そう……思っていたんだけど……

 

 

 

 

 

「お父様、やるからには勝ちますよ」

 

 

「どんな相手だろうと、ボクがカッコよく襲撃(スラッシュ)してやる!」

 

 

「我らスクライア一家の力を見せ付けてくれるわ!!」

 

 

「あの…よろしくお願いします!」

 

 

僕の周りには、バリアジャケット姿でそれぞれのデバイスを構えて意気揚々とする娘達+アインハルト。そして目の前には……

 

 

「ユーノ君と一緒の模擬戦、久しぶりだなぁ」

 

 

「よし、やるぞ!」

 

 

「今度は負けないよ! ユーノさん!」

 

 

「頑張ろうね、ブランゼル」

 

 

「うふふ……面白くなってきた♪」

 

 

同じくバリアジャケット姿でデバイスを構えて意気揚々としているなのは、エリオ、ヴィヴィオ、コロナ、ルーテシアの四人。

 

 

察しのいい人はもうお分かりだろう。そう……僕らはこれから5対5の陸戦試合(りくせんエキシビション)をするのだ。

 

 

とりあえず、一言だけ言わせて欲しい。

 

 

 

──どうしてこうなった!?

 

 

 

とは…言ってみたものの、実はこうなった理由は大体分かっている。って言うか、なのはから聞いた。

 

 

まず原因としては、昨日の鬼ごっこだ。

 

どうやら昨夜ヴィヴィオが昨日の鬼ごっこのルールや出来事などを、全て母親であるなのはに話してしまったらしい。

 

スクライア式鬼ごっこは子供達から見れば、ただの魔法ありの鬼ごっこだ。だけど大人から…それも教導官と言う立場の人から見れば、チームプレイ等を重視した立派な訓練となる。

 

で…それを聞いたなのはがフェイトやノーヴェ達などと相談した結果、僕達もこの練習会に参加して欲しいと頼まれた。

 

もちろん最初は丁重にお断りしたよ? でも、その話を聞いていたうちの3人娘がやりたいと言い出してしまった。当然僕は3人にやめとくように言い聞かせようとしたけど……

 

 

『お父様……お願いします』

 

 

と…シュテルにウルウルとした目と上目遣いでお願いされてしまった。

 

そしてその結果……僕の方が折れました。娘に弱い父親です。

 

でも、こちらもその代わりとして二つの条件を提示した。その二つの条件とは……

 

 

①子供4人・大人1人のチームで戦うこと。

 

②なのは達が事前に決めていたチーム分けを一旦白紙に戻して、クジ引きでチームを決めること。

 

 

この二つだ。

 

これら条件を提案した理由は多々あるが、もっとも大きな理由は……なのはやフェイト等の戦い慣れた面々と僕らのような喫茶店の店主とその娘達で相手になるわけがないからだ。

 

なのでチーム構成を子供たちで固めてしまおうと考えた。これならばそこまで偏った戦力にはならないだろう。

 

そして『子供達に少しでも多くの経験を積ませた方がいいと思う』等のもっともらしい理由を並べて、何とか僕はなのはの説得に成功した。

 

でもエリオとルーテシアが『子供』として参加するのは予想外だった。

 

 

とまぁ、色々長くなったけど……そんなこんなで、今にいたるというわけだよ。

 

 

「ハァ……」

 

 

「元気だしてください、お父様」

 

 

「そーそー! 勝てばいいんだよ勝てば!」

 

 

「よう言うたレヴィ! その通りだ!!」

 

 

「あのレヴィさん、ディアーチェさん……そういう問題ではないと思いますが」

 

 

……ま、いつまでもヘコんでるわけにもいかないよね。僕も腹を括ろう…やるからには勝つ!

 

 

「ゴメン、もう大丈夫。それじゃあポジション分けをするよ」

 

 

「「はい!」」

 

「うん!」

 

「おう!」

 

 

そして5人で話し合った結果、ポジションはこの通りになった。

 

 

僕→FB(フルバック)

LIFE:2200

 

シュテル→CG(センターガード)

LIFE:2500

 

レヴィ→GW(ガードウィング)

LIFE:2800

 

ディアーチェ→WB(ウィングバック)

LIFE:2500

 

アインハルト→FA(フロントアタッカー)

LIFE:3000

 

 

「こんなところかな。次は作戦なんだけど……」

 

 

と…僕はここまで言いかけて、小さく嘆息しながら説明した。

 

 

「ゴメン、急に決まったことだから作戦らしい作戦は考えてないんだ」

 

 

「それは仕方のないことだと思いますよ」

 

 

シュテルがそうフォローしてくれるけど、さすがに無策で挑むと言うのは無謀過ぎる。なので、僕は一つの考えを口にした。

 

 

「だから、僕が戦況を見ながら作戦を立てて、逐一みんなに指示を出すよ」

 

 

「そんな事が出来るのですか?」

 

 

「うん、何とかやってみるよ。だから戦いながらでも指示が聞けるように、常に念話の回線は切らずに保って欲しい。いいね?」

 

 

僕がそう確認をすると、四人はしっかりと頷いてくれた。

 

 

『みんな準備はいい?』

 

 

すると、僕らの目の前にメガーヌさんからの通信モニターが現れた。

 

 

「はい、大丈夫です」

 

 

『なのはちゃん達も大丈夫ね?それでは、みんな元気に……試合開始~!』

 

 

ジャアアアアン!!

 

 

メガーヌさんの開始宣言と共に、スタートを告げる銅鑼の音が鳴り響いたのだった。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

No side

 

 

陸戦試合開始と同時にユーノチームからはディアーチェとアインハルトが……なのはチームからはヴィヴィオとコロナが動き出した。

 

 

「ディアーチェさん、コロナさんの相手をお願いしても?」

 

 

「我に指図するか? だがまぁよい、任されてやろう!」

 

 

「行くよコロナ!」

 

 

「うん、ヴィヴィオ!」

 

 

アインハルト&ディアーチェ

    VS

ヴィヴィオ&コロナ

 

 

そこから少し離れた場所では……

 

 

「行くよストラーダ! 年下だからって、手加減なしだ!」

 

 

「よーし! それじゃー元気に行ってみよーー♪」

 

 

エリオVSレヴィ

 

 

そしてチームの最後尾では……

 

 

「さて、FBとしてどっちがチームをしっかり支えられるか?」

 

 

「ハァ…どうしたものかなぁ」

 

 

ユーノVSルーテシア

 

 

そしてさらに、チームの中盤辺りには……

 

 

「(タカマチ・ナノハに集束砲を撃たれたら、恐らくチームは全滅するでしょう。となれば勝負所は──)」

 

 

「(ヴィヴィオの話だと、シュテルは炎熱系の魔力変換資質を持っている。それに加えて、私と同じ砲撃型魔導師……撃たせたら味方も私も危ない。必勝の一撃は──)」

 

 

「「(数の均衡が崩れた瞬間!)」」

 

 

シュテルVSなのは

 

 

上記のように…それぞれのポジションが、すでにそれぞれの戦いを始めようとしていた。

 

 

そんな中、一つのビルの上では二人の少女……ヴィヴィオとアインハルトが相対していた。

 

 

「(立ち合うのはこれで三度目)」

 

 

「(格闘技ではまだまだアインハルトさんには敵わないけど、魔法もありなら!)」

 

 

心中でそう呟き、片手に魔力を集めながらアインハルトに向かって走り出すヴィヴィオ。それを見て、アインハルトも構えるが、ヴィヴィオはいくつかのフェイントをいれた後、彼女の頭上へと飛び上がる。

 

 

「一閃必中! ディバインバスター!!」

 

 

彼女の拳から放たれた砲撃に、アインハルトは後ろに飛んで何とか回避する。だが少し掠ったのか、ライフが僅かに減っていた。

 

 

アインハルト

LIFE:3000→2700

 

 

「(高速砲──!)」

 

 

「(掠っただけでも上出来! まだまだここから!)」

 

 

ヴィヴィオの砲撃を回避し、地面に着地するアインハルト。その瞬間、彼女の周りにバインドが出現する。

 

 

「(っ…バインド!? でもユーノさんのに比べたら、遅い!!)」

 

 

バインドに捕まるまいと、アインハルトは再び空中へと飛び上がる。

 

 

「はーーーっ!!」

 

 

しかしその隙をついて、ヴィヴィオはアインハルトに向かって鋭い蹴りを放った。空中にいるため回避の出来ないアインハルトは腕でそれをガードした。

 

 

アインハルト

LIFE:2700→2600

 

 

「っ!!」

 

 

「あらっ!?」

 

 

ガードした事により腕に走る衝撃に、アインハルトは歯を食い縛りながら耐える。そしてすぐさま、ヴィヴィオの軸足を蹴って彼女のバランスを崩した。

 

そしてそのままヴィヴィオの胸部に思いっきり拳を叩き込み、それを喰らったヴィヴィオは隣のビルの屋上に叩きつけられた。

 

 

ヴィヴィオ

LIFE:3000→2600

 

 

「(なるほど…ヴィヴィオさんは魔法もまっすぐだ。だけど覇王流に生半(なまなか)な射砲撃は通じない)」

 

 

ヴィヴィオをまっすぐ見据えながら、ゆっくりと構えるアインハルト。

 

 

「(構えた──アインハルトさんにも中距離(ミドルレンジ)が!? でも、魔法の撃ち合いなら──!)」

 

 

それを見たヴィヴィオも、魔力を放出しながら構える。

 

 

「ソニックシューター!」

 

 

「覇王流『旋衝波』」

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

一方…アインハルトにコロナの相手を任されたディアーチェは、背中の六つの黒翼を広げて空を翔け、魔力弾を放ちながらコロナを追いかける。

 

対するコロナもディアーチェの魔力弾を回避しながらビルの合間を駆ける。すると、ディアーチェの魔力弾を避け切ったコロナが逃げる足を止めた。

 

 

「む? なんだ、追いかけっこは終わりか?」

 

 

「飛んだり跳ねたりはちょっと苦手……だからここで戦うよ」

 

 

「ふん…よかろう」

 

 

そう言ってディアーチェがエルシニアクロイツを空に向かって掲げると、彼女の足元に魔法陣が展開される。

 

 

「何をする気か知らんが、貴様を我が闇の深淵に沈めてやろうぞ!!」

 

 

それに対しコロナも、自身のデバイスであるブランゼルを構える。

 

 

「(私は格闘技も魔法戦もそんなに上手くないけど、一つだけあるんだ。昔ヴィヴィオに褒めてもらって、嬉しくてそれからずっと練習してたこと)」

 

 

コロナは心中でそう呟き、魔力を解放する。

 

 

創成起動(クリエイション)──」

 

 

コロナがブランゼルに軽いキスを落とすと、彼女の足元が盛り上がり、巨大な岩が出現する。

 

 

「(端末(クリスタル)を核に魔力を込めて練った物質を、望む形に変えて自在に操る。それが私のゴーレム創成(クリエイト)!)」

 

 

そして次の瞬間、巨大な岩の巨人へと姿を変えた。

 

 

「ほう…岩の巨人・ゴーレムか。レヴィが見たらさぞ喜ぶであろうな」

 

 

それを見たディアーチェは冷静にそう呟き、静かにゴーレムに乗ったコロナを見据えた。

 

 

「行くよディアーチェ!! 正々堂々!!」

 

 

「おもしろい! その木偶人形もろとも、闇へと葬り去ってやろうぞ!!」

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

そしてもう一方……レヴィとエリオの方は……

 

 

「うりゃうりゃうりゃーーー!!!」

 

 

「ぐっ…くぅ……!!」

 

 

レヴィはサイズフォームのバルニフィカスを振り回し、それを防ぎながら顔をしかめるエリオ。

 

なんと、レヴィ以上に戦闘経験があり、それなりに場数を踏んできているハズのエリオが防戦一方であった。当然……それには理由がある。

 

 

「(この子の攻撃……メチャクチャ過ぎて動きが読めない上に、一撃一撃が重い!!)」

 

 

そう……レヴィは考えて戦うタイプの魔導師ではなく、直感…さらにはその場のテンションで戦法を変えるタイプの魔導師である。ゆえに攻撃パターンに統一性がまったくないのだ。それに加えて、レヴィはその華奢な体からは想像できないほどの怪力の持ち主である。純粋な力だけなら、スバルのバカ力にも匹敵するだろう。

 

読めない攻撃と怪力……この二つがエリオの戦闘リズムを狂わせて、彼を追い詰めていた。

 

 

「だったら!!」

 

 

「およ?」

 

 

突然エリオは大きく後ろへ跳んでレヴィの猛攻から抜け出し、攻撃をかわされたレヴィは目を丸くした。

 

 

「(悔しいけど、パワーじゃこの子には敵わない……だったらスピードで勝負だ!!)」

 

 

地面に着地したエリオはすぐさまソニックムーブを発動させ、一瞬の内にレヴィの背後を取った。

 

 

「(もらった!!)」

 

 

そしてそのままレヴィに向かってストラーダを振り下ろすエリオ。

 

 

しかし、その攻撃は当たることなく……空を切った。

 

 

「え?」

 

 

突然目の前から姿を消したレヴィに呆然とするエリオ。だがそれも一瞬で、彼はすぐに『ある事』に思い至った。

 

 

「(しまった……僕はバカか!! レヴィは、あのフェイトさんが基になってるんだ……という事は──)」

 

 

そこまで思い至ったエリオは、ほとんど直感でストラーダを盾のように構えた。その瞬間……

 

 

「ぶっ飛べーーー!!!」

 

 

彼の右側からレヴィのバルニフィカスが襲い掛かった。

 

 

「(スピードも……あるって事じゃないか……!!)」

 

 

何とかガードはしたものの、エリオは大きく吹き飛ばされ、地面に叩きつけられた。

 

 

エリオ

LIFE:2800→2500

 

 

「くっ……!」

 

 

ストラーダを杖代わりにして立ち上がるエリオ。

 

 

「どーした? もう終わりか?」

 

 

クルクルとバルニフィカスを振り回しながら問い掛けるレヴィ。

 

 

「(パワーとスピードの両方を兼ね揃えた…フェイトさんとも、シグナム副隊長とも違うタイプの魔導師……こんな相手とは戦った事がない)」

 

 

エリオは心中でそう呟くと、その顔にゆっくりと笑みを浮かべた。

 

 

「でも……負けるわけにはいかないよな!」

 

 

そう言ってストラーダをしっかりと構え直すエリオ。

 

 

「にひひ♪そうこなくっちゃ!!」

 

 

それを見たレヴィも嬉しそうにバルニフィカスを構える。そして……

 

 

「うりゃーーーーー!!!」

 

 

「ハァァァアアア!!!」

 

 

雄叫びを上げながら、互いの武器を激しくぶつけ合った。

 

 

 

 

 

まだ試合は…始まったばかり……

 

 

 

 

 

つづく


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