ユーノの子育て日記R   作:ZEROⅡ

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リリカルテイルと平行してやっていけたらと思っております。

感想お待ちしております。


日常編
消えたユーノと喫茶店


 

 

 

 

 

いつからだろう?

 

 

やりがいのあった仕事に、苦痛を感じるようになったのは……

 

 

いつからだろう?

 

 

この職場に希望が持てなくなったのは……

 

 

そして…いつからだろう……?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

空を飛ぶことをやめ……この無限書庫と言う名の穴倉に篭るようになってしまったのは……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

始まりは10年前……僕が9歳の頃だ。

 

 

遺跡の発掘を生業とするスクライア一族だった僕はある日……遺跡でロストロギアと呼ばれる危険な宝石、〝ジュエルシード〟を発掘した。

 

 

けど、その時に起こった事故で、ジュエルシードをばら撒いてしまった。

 

 

当然僕は責任を感じて、一族を飛び出してジュエル・シード回収する為に『地球』と呼ばれる世界に赴いた。

 

 

だけど……ジュエルシードの力は想像以上で、当時は何の力も無かった僕は封印に失敗して重傷を負ってしまった。

 

 

その時……一人の女の子が僕を救ってくれた。

 

 

その女の子こそ、現在は管理局のエース・オブ・エースと呼ばれている『高町なのは』だ。

 

 

この出会いこそが…全ての始まりだった。

 

 

彼女は凄かった……僕がばら撒いてしまったジュエルシードをめぐる『PT事件』や、ジュエルシードより危険なロストロギア〝闇の書〟が関係する『闇の書事件』。そして最近だと二年前の大規模テロの『JS事件』。これら三つの事件解決に、彼女は大きく貢献した。

 

 

そしてその事件の際に知り合った彼女の親友……『フェイト・T・ハラオウン』と『八神はやて』

 

 

この二人も、現在は管理局で大きな実績を残している。

 

 

フェイトは管理局の本局所属の執務官。

 

 

はやては三人の中では最も出世頭で、古代ベルカの稀少スキルを持つ最後の夜天の書の主と呼ばれている。

 

 

それに比べて、僕は無限書庫と言う名の穴倉に篭って本を探す事くらいしか出来ない。

 

 

僕に彼女たちのように前線で戦うような力は……ない。

 

 

それが僕にはどうしようもなく悔しくて…虚しくて……羨ましかった。

 

 

いつの日だったか、なのはが僕に言ってくれたあの言葉……

 

 

 

『ユーノ君…いつも私と一緒にいてくれて、守っててくれたよね? だから戦えるんだよ!! 背中がいつも暖かいから!!』

 

 

 

それを言われた時、僕は心の底から嬉しかった。こんな僕でも、なのはの背中を守れるんだって……

 

 

でも……今は違う。

 

 

彼女の周りには、フェイトやはやてを初めとした、多くの仲間達がいる。特にフェイトは長年なのはと共に戦ってきたゆえに、今もっともなのはが背中を預けられる相手と言えば彼女しかいないだろう。

 

 

だからこそ……僕は気づいてしまった。

 

 

もう管理局(ここ)に僕の居場所なんてない。

 

 

無理にしがみついた所で、未来も何も無い。

 

 

待っているのはただの……〝孤独〟だけだと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから数日して、僕は無限書庫司書長の座から退き、退職届を提出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから二年後……第一管理世界〝ミッドチルダ〟の中心都市『クラナガン』

 

 

その街に存在する、とある喫茶店。

 

 

その店の中で、テーブルなどを掃除している一人の青年……

 

 

「うん…今日もいい天気だ♪」

 

 

僕の名前は『ユーノ・スクライア』

 

二年前に長年勤めていた管理局を退職して、今はこの小さな喫茶店で、しがない店長を勤めています。

 

喫茶店での仕事は結構大変だけど、それでも、あの穴倉での仕事よりはとてもやり甲斐を感じている。

 

あ、もちろん働いているのは僕一人ではないですよ? ちゃんと仕事を手伝ってくれる『家族』がいます。

 

 

「お父様、表の掃除、終わりました」

 

 

おっと、噂をすれば。

 

 

箒とチリ取りを持った小さな女の子……この子がさっき言った家族で……僕の〝娘〟だ。

 

 

「ご苦労様、シュテル」

 

 

「いえ…それほどでも」

 

 

そう言って僕は娘であるシュテルの頭を撫でてあげるけど……相変わらず無表情な子だ。

 

 

「…………♪」

 

 

……と思ったら僅かに口角が上がっている。うーむ…もう少し感情を表に出して欲しいんだけどなぁ。

 

 

この子の名前は『シュテル』

 

三人いる僕の娘の一人で、三人娘の中では次女にあたる。

 

落ち着いた性格で、常に無表情の女の子。さっきも言ったけど、父親としてはもう少し感情を見せて欲しい。三人娘の中では一番のしっかり者だけど、実は結構な甘えたがりでもあるんだよね。

 

 

「どーーーん♪」

 

 

「うわぁっと!」

 

 

すると、突然僕の背中に誰かが勢い良く飛びついて来る。こんな事をするのは一人しかいない。

 

 

「こらレヴィ! 後ろから飛びついたら危ないっていつも言ってるだろ?」

 

 

「え~別にいいじゃんか~♪」

 

 

そう言って僕の背中にグリグリと頬ずりをしてくるレヴィ。ああもう可愛いな! 思わず許しちゃいそうになるじゃないか! でも父親としてそう言う訳にはいかないので……

 

 

「言う事を聞かない子にはオヤツ抜きだよ」

 

 

「ごめんなさいおとーさん!!!」

 

 

「うん、よろしい」

 

 

この子の名前は『レヴィ』

 

シュテルと同じく、僕の大切な娘の一人で、三人娘の中では末っ子にあたる子だ。

 

長い青色の髪をツインテールにしており、シュテルとは対照的に活発で、なおかつ行動的な子。でもこの子ちょっと…いや、かなり抜けてるんだよなぁ。それはもう父親として心配になるくらい。シュテルいわく『アホの子』らしい。

 

 

「おとーさん! 抱っこして抱っこ!!」

 

 

「えっ!? 今!? お店の開店準備とか色々やること残ってるんだけど」

 

 

相変わらず突拍子の無い子だ。

 

 

「そうですよレヴィ。お父様は忙しいのです」

 

 

おお、この辺はさすが(シュテル)だ。いけない事はいけないとキッチリと(レヴィ)に言い聞かせている。これも僕の育て方が──

 

 

 

「それに……先にお父様に抱っこしてもらうのはこの私です」

 

 

 

──育て方……間違えたかな?

 

 

「ズルイぞシュテるん! ボクが先に言ったんだからボクが先だ!!」

 

 

「いいえ。積極的にお父様の手伝いをしている私こそ、優先されるべきです」

 

 

「ほらほら喧嘩しない。あとで二人ともちゃんと遊んであげるから…ね?」

 

 

口喧嘩を始めた二人の頭を撫でながら僕はそう言い聞かせる。

 

 

「……は~い」

 

 

「お父様がそうおっしゃるなら」

 

 

うんうん、二人共素直でよろしい。

 

そう思いながら二人の頭を撫でていると……

 

 

「あーーーっ!!! 何をやっとるか貴様ら!!!」

 

 

突然部屋に響く怒号。見るとそこには、僕の最後の娘が立っていた。

 

 

「我を差し置いて、父上に頭をなでなでされるなど! 羨ま──ゲフンゲフン! けしからん!!!」

 

 

「ディアーチェ、あまり叫ばないの。近所迷惑になるでしょ?」

 

 

「しかし父上よ! 我は先ほどまでずっと家の掃除と洗濯をしていたのだぞ! それなのに!!」

 

 

「うん、そうだったね。ありがとうディアーチェ。助かってるよ」

 

 

そう言って僕は二人と同様にディアーチェの頭を撫でてあげた。

 

 

「う…うむ! わかればよいのだわかれば!」

 

 

この子は『ディアーチェ』

 

三人娘の中では一番上…つまり長女にあたる子だ。

 

『俺様系』の子で、大の負けず嫌い。プライドが高くて常に威張り散らしてるけど、根はとても優しい女の子だ。

 

因みにディアーチェは他の二人に比べて、料理や洗濯を含めた家事全般が得意。一応家事は親である僕がこなしているのだが、僕が他の事で手が離せない時はディアーチェが代わってくれるのでとても助かっている。

 

 

「さて、そろそろ開店準備をしないと」

 

 

ふと時間を見てみると、開店時間まであと少し。早くしないと間に合わないな。

 

 

「じゃあみんな! 今日も一日がんばろう!!」

 

 

「「「おーーー!!!」」」

 

 

僕の号令と共に、娘達はそれぞれ自分のやるべき仕事に取り掛かる(約一名やる事がわからずにオロオロしてたけど……)。

 

 

「っと、そう言えば看板を出すの忘れてた」

 

 

僕は『今日のオススメメニュー』などが書いてある看板を表に出すため、一旦お店の外に出る。

 

 

そしてふと、この喫茶店の名前が刻まれている看板を見上げる。

 

 

「…………よし」

 

 

不思議とそれだけで、何だか気合が入ってきた。

 

 

二年前までは、特にこれと言った目標もなく…ただの機械のようにあの穴倉で働いていた。

 

 

だけど今の僕には、愛する三人の娘がいる。彼女達の為に、頑張って働こうと言う気持ちになれるんだ。

 

 

そう気合を入れなおした僕は、娘達が待っている店の中へと戻った。

 

 

あ、そうそう……因みにこの喫茶店の名前は……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『翠屋・ミッドチルダ店』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく


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