旧都の料亭にて鬼の四天王こと...星熊勇儀との酒の飲み比べ勝負に大神家は見事に撃沈した...
しかし...勝負には負けたものの勇儀から地霊殿の情報を手に入れ、満身創痍のまま現地へ向かうこととなった...
地底の奥深くに存在する宮殿...
そこにはどのようなトラウマがあるか...彼女達は知らない...
side暦
「...うぷっ!!!...死ぬ...胃が焼け付く...」
旧都を越え地霊殿とやらへ私は歩を進める...
しかし足がおぼつかないし、視界は何重にも歪んで見えるし...もうどうすればいいのか...
(母さん?大丈夫か?)
(ほらほら!!早く終わらせて屋敷に帰りましょう!)
前には華楠と境奈達が私を道案内してくれるけど...この子達が何匹にも見える...
「あれ?私ってこんなに子供いたっけ?」
(幻覚症状...とうとうアルコールが脳まで来たかな?)
(銖理たちは5人ッスよ!!)
(...お酒臭い)
煌炉・銖理・潤香が苦言を放つ...好きでこうなったわけではないのに!!
「て言うか!!!何で貴女たちは平気なのよ!!一応泥酔してたじゃない!」
(そりゃ...早いうちに庭での地獄を経験したからな)
(まだ余裕だけど~?)
(お酒は当分いいかな...)
(銖理はこういうの慣れてるッス!)
(別に酔ってはいませんし...)
...私だって善処はしたはず!!...できることならこんなになるまで飲みたくはなかったわ!!
「もう!!...今までで一番辛い異変だよ...」
(気持ちは察する...だが目的地についたぞ?)
華楠が言うと私達の目の前には巨大な館が眼前に映る...
青い屋根の目立つ...洋館といったところかしら?
紅魔館に負けない程の立派な造りだけどここまでね...泥酔で観察するほど...私にも余裕がない!
「ねぇ...本当に私が行かなきゃダメ?霊夢いるじゃん!魔理沙がいるじゃん!私いる意味ないじゃん!!」
(行かなきゃ...霊夢が怒るぞ?)
「何で?充分!頑張ったよ?私は!!押し付けられた鬼との...宴会...充分仕事したと思うけどなぁ~」
(まぁ...せっかく来たんだし...やるフリでもいいじゃん!)
(ここまで来たんだし...最後まで行こうよ)
(銖理達をここまで連れて来たんだし!最後までやろうッス!!)
(...私としては早く帰りたいですが)
娘達からの催促...やらないといけないみたい...
はぁ...最後まで...責任もってやりますか...
私は洋館の戸に手をかけて内部へと潜入する...
洋館に入ると長い廊下が眼前に映る...
両側の壁にはステンドグラスが貼られており中々の雰囲気を醸し出している...
綺麗な場所だ事...酔っていなければ...心の底から思えたと思う...
「おじゃましまーす...」
内部には人の気配はなし...
しかし...何だろ?...勘だけど嫌な予感しかしない...
(無人のはずはないな...目標は奥にいるだろ?)
華楠は臆せずに進んでいく...
私のペースに合わせてほしい...まだ回復しきってしないというのに!
「...はぁ...しかし?霊夢と魔理沙に追いつけないな...」
(そりゃそうでしょ?鬼との宴会してたんだし?)
(あれ?そういえば...何で...宴会したんだっけ?)
(霊夢と魔理沙にあの鬼を押し付けられたんですよ...思えば...彼女達にスケープゴートにされたんですよね...私達がうまい具合に使われたというべきでしょうか)
(スケープゴートならぬ!スケープフォックスッスね!!)
「...はぁ...ついてない」
「...ぎゃあああああ!!!」
私達が談笑していると奥から悲鳴が響く...
どこかで聞いたような?
「あの声...まさか」
(魔理沙だな...母さん...彼女が危ない!)
「分かってる!!」
今の声...彼女の身に危険が迫っているはず!
私達は奥の部屋へと走り扉を開ける
...奥の部屋は広い空間になっており、辺りの壁と天井には更に大きなステンドグラスがはめ込まれている...
外からの光が部屋を照らし部屋の中央には彼女達がいた...
「うああ...」
「ふふふ」
部屋の中央には床で這いつくばっている魔理沙とその横で笑みを浮かべて魔理沙を眺めている少女...
少女の方は薄紫色のショートヘアをしており、水色の上着とピンク色のセミロングスカートを身に着けている...
そして胸のところには赤いコードで巻かれた目のようなものがついている...
妖怪なのは確定だけど...魔理沙と戦ったはずなのに...お互いに傷一つない?
しかし魔理沙の方は見た限り満身創痍だというのに...何故?
遠くから観察していると少女の方は私達に気づいていないのか魔理沙の周りをまわってはある言葉をつぶやく
「うふふふ...うふふふ...」
笑っているの?しかし顔は全く笑っていないが魔理沙は恐怖の表情を浮かべている...
「やめろー!!!私の黒歴史!!!!」
「貴女の心は崩壊間近...これで最終パート...うふふふふふふふふふふふふふふふふふ...」
少女は魔理沙に向けてうふふと連発していく...そして次第に魔理沙の顔が青白くなってくる...
「げふ!!!!!」
魔理沙はそのまま昏倒し広い空間にピチュン音が響く...
「何故か知らないけど魔理沙負けちゃったね...」
(精神に揺さぶりでもかけたみたいだね...向こうは見た限り戦えそうにないのにね)
(霊夢がいないけどー...この先に行ったのかしらね~?)
私達が話していると少女の方が私達の存在に気づいてこちらへやってくる...
あの姿の魔理沙を見て酔いがさめてしまった...
今度は私達が相手か...やるしか...ないよね!!
side?
...とりあえずは1人の始末は完了したわね
私の能力を持ってすれば心を折ることなぞ容易いもの...紅白の方は奥に進んでしまったけど...とりあえずは保留でいいでしょう...地上の人間が進行してきたよりも解決しないといけない問題がありますし...
「...はぁ...あの子はちゃんと躾けておくべきでした...只でさえおバカだというのに...あら?」
入り口を見るとこちらを見ている女性が一人...そこの白黒の仲間でしょうかね?
...暗がりで姿は確認できませんが心をへし折れば問題はありませんね
「次は貴女かしら?...そこで折れている白黒の仲間みたいですね」
「...そうだけど?魔理沙に何したの?」
震えたようなやや高い声がする...
白黒の名前を言ったあたり仲間であることは確定ね...
「ええ...少しトラウマを見てもらっただけですね...」
「トラウマ...」
しかし女性の方は所定位置から...近づいてこない...性格からして慎重なのかしら?早くも私の能力を警戒している...
距離があっても見えるというのに...
私は位置を変えて女性の方を向く...
ここからなら光の差し込み姿が丸わかり...さて...どんな姿をしているのかしら?
「っ!!」
私の目に映るのは...長い金髪に白と黒の着物を身に着けた女性!!
四本の巨大な金色の尾を持ち...頭には狐耳!!
まさか!夢にまで見た妖狐!?外見からして天狐!!
「...これは...行幸です...」
昔から一度でもいいから妖狐の尾をブラッシングしたいと思っていました...これはチャンス!!
この子も心を破壊して屈服させてあげましょうか...
私はサードアイを彼女へ向ける...
彼女の心の奥のトラウマは...どんなものかしら?
「...ん?」
彼女を見ても...全く心が読めない?こんなこと...生まれてからあったかしら?
「どしたの?」
「いえ...なんでも...」
再び彼女を見つめるが...結果は同じ!!心が読めない!!何かが私の能力を遮断している?
まさか...この狐の能力?
「!!???」
「...精神を揺さぶりをかける能力といったところかな?でも?私達にはその類の力は効かないんだよね...」
狐は笑みを浮かべて距離を詰めてくる...
...まずい!!彼女の能力は分かりませんが心が読めない以上!!私はか弱い悟り妖怪です!!!この戦いは何としてでも避けていかなくては!!!
「待ってください!!私は戦う気などありません!私は古明地さとり!!この館の主です!!貴女は!?」
「...大神暦だけど...そうなの?でも...そこに倒れている魔理沙は...」
暦と名乗った狐は白黒を見る!!言い訳を...言い訳を考えなくては!!!
「...屋敷に侵入して暴れていたので少しお灸をすえただけです」
「...そうなの?それは失礼したよ」
「...いえ...お気になさらず」
...本当は屋敷が壊れるのが嫌だったし...私から奇襲をかけたのですがね...
だが...これで話を広げられるというもの!!
「あ...貴女の目的は...そこの白黒と同じですか?貴女の事...仲間とか言ってましたし...」
「ああ...うん...そんなところ...地上に間欠泉が噴き出てさ...それの調査に来たってわけ...」
軽くハッタリをかましましたが...やはり...あの問題が原因ですか...
あの紅白も向かったことですし...この子にも行ってもらいますか...
「...その原因は私のペットがしたことです...彼女はこの奥にいますので...止めてもらえますか?」
「...ん?黒幕とのご対面かな?」
暦はランランと目を輝かせる...
そして尾からは色とりどりの子狐達が頭を出す...
な...何ですって?...小さいのもいたのね!!!これはこれで楽しみが増えたというものです!!
この子達もブラッシングしたい...だけどそれは後回しです...今は目先の問題を解決しなければ...
「...ええ...紅白が向かったので問題はないと思いますがね...」
私が返答すると暦はそのまま奥へと駆け抜ける...
「情報提供感謝するわ!!んじゃ!またねー!!」
彼女はそのまま屋敷の奥へと消える...
何か急いでいたみたいですが...とりあえずあの子のことは任せましょうか...
「また...お会いしましょうか...今度は正式に地霊殿にご招待しますからね...ふふっ!!さて...特注にブラシを発注しなくては...」
私は発注書を取りに自室へ向かう...
ふふ!!長年の夢が叶いそうだわ!!大神暦ね...次回会うときが楽しみです...
というわけで...さとりんです!
彼女の出番は...異変後になります
ではこれにて