東方五行大神伝   作:ベネト

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3ボスがラスボスに...


地底でのどんちゃん騒ぎ

地底の大橋を抜けた大神一行は異変の首謀者に関する情報収集のために地底の里...旧都へと足を運ぶ...

 

旧都...それは忌み嫌われた能力を持つ者達が住む大きな地下都市...

 

大神家でも勝てない者は当然存在する...

 

それは...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side暦

 

「へぇ~...ここが地底の里かぁ」

 

私の目の前には幻想郷の人里とよく似た里の風景が映る...

 

太陽の光がないのか並ぶ長屋に提灯が大量につけられており、赤い灯りがほのかに里を照らしている...

 

 

「...なんかいい感じかもね?」

 

私は娘達を地上に降ろして里を歩く...

 

歩を進めるたびに何か食べ物のいい匂いがし、そこらへんの長屋の中からは楽しそうな声も聞こえる...

 

異変の情報収集のために何か聞けたらいいけど...誰から聞けばいいのか...

 

「はぁ...それよりもお腹減ったかも...」

 

私のお腹の虫が鳴る...

 

お昼あまり食べてなかったな...ああ...お鍋...

 

 

(母さん...すごいお腹鳴ったけど~?)

 

(何か軽く食べとくか?)

 

華楠・境奈は言うがここは地底だもの...流石にもここで食事をするほど私も能天気ではない...

 

「やめとこう...無理な戦闘は避けておきたいし...」

 

美味しそうな匂いを我慢して私は歩を進める...早く帰ってご飯にしないと...

 

 

 

 

 

 

 

「おい!そこの狐!」

 

「...はい?」

 

急に声をかけられて私は後ろを向く...

 

私達の後ろには長い金色の髪をした女性...白い服に赤と青のロングスカート...普通な格好だけど...

 

「...」

 

彼女の額には立派な星の模様が入った赤い角がある...角...角...

 

(...鬼だな)

 

「...鬼だねぇ」

 

華楠のいう通り鬼だ!!やばいのに目をつけられたかもしれない!!

 

鬼...伊吹萃香との勝負を思い出す!!

 

 

(くらえー!)

 

「...げふ!」

 

 

以前...萃香の一撃を食らったとき...やせ我慢して痛みを堪えていたというのに!!屋敷に帰った後悶絶していたというのに!!!

 

只でさえこの鬼は萃香と比べて体に恵まれている!こんなのと喧嘩をしたら私はっ!!

 

私は鬼と反対方向へと走る!!こんなところで!死んでたまるか!!!死んでたまるかぁ!!!!!!

 

 

 

 

「まぁ!待て!」

 

「へぶぁ!!!」

 

鬼に尾を掴まれ顔から盛大にこける!!

 

「痛い!!痛い!!何なの!!」

 

「まぁ...そういきり立つな大神の...せっかく旧都に来たんだゆっくりしていけばいいだろう?」

 

「...あれ?私は名乗った覚えはないんだけど?」

 

鬼は不思議そうに私を見つめる

 

「あ?さっきの紅白と白黒が(私達より強い大神ってのが来るからそっちを相手にしろ)って?」

 

霊夢ー!魔理沙ー!!私を売りやがったなぁ!!!いくら温厚な私でも怒るよ!?

 

鬼は私の姿を観察している...

 

「...」

 

「...何?煮るなり焼くなり好きにして」

 

鬼は私を起こして着物の汚れを優しく叩く

 

「!?」

 

「...お前...手負いだろ?幾ら鬼でも手負いの相手はやらねえよ」

 

...彼女の目は何か可哀想な者を見るような目だ

 

 

「...情けは受けないよ...仮にも地上のパワーバランスだから」

 

「飯くらいはごちそうするぞ?せっかく地底に来たんだ...こっちの飯の味を覚えてもいいんじゃないか?」

 

「...」

 

確かにお腹は減っているのも事実...ここは甘えるのも手か...

 

 

「...お金は出すよ?流石にもおごりってのも気が引けるからさ」

 

「なら決まりだな大神の!私の名は星熊勇儀だ!お前の娘も案内するからな!」

 

勇儀と名乗った鬼は私の後ろで隠れている娘達を手招きし私達は彼女に手を引かれ里の奥を目指す...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

料亭...

 

「...さぁ!喰え!大神の!地底のおもてなしというやつだ!」

 

「うわぁ!!」

 

私達の目の前には数々の和食が並んでいる...

 

お刺身・鍋・すき焼き・天ぷら...etc...

 

空きっ腹の私にとっては...眩しすぎる逸品が所せましと...

 

ここにきて初めて地底に来て良かったと思う!!

 

 

「これ本当に食べていいの?」

 

「あ?構わん!好きに食べろ!」

 

勇儀は出されたお酒を啜るだけで料理には目もくれないみたいだ...

 

料理の匂いにつられてか娘達も私の周りに集まる...

 

(...私達も食べていいか?)

 

(母さんばかりずるいわ!)

 

(...地底の料理か...少し気になるな)

 

(何かお腹空いてきたッス!)

 

(せめて...このくらいは...)

 

...どうやら娘達もお腹が減ってきたようね

 

「勇儀?娘達もいいかしら?」

 

「あ?構わない...逆に数が多い方が楽しめるからな」

 

...数が多い?

 

まぁ!いいか!私は考えもせずに小鉢に娘達の分の料理を入れる...

 

 

 

 

 

30分後...

 

出された数々の和食は私達大神家によって全て完食する...

 

感想としては...美味しかった...お腹が空いてたもの!当然よ!

 

勇儀の方も私達の食べっぷりを見て笑っている...

 

 

「ははは!!これはすげぇな...流石は大神家だけはあるな!」

 

「...とりあえず御馳走様かな?」

 

ハンカチで口元を拭い勇儀を見つめる...

 

彼女は何やら待ちきれないと言ったような顔を浮かべている...

 

やはり大神の名を知っているということは萃香と同じく彼女も戦いたいのだろうか?

 

 

 

「...その顔?私と手合わせしたいのかしら?」

 

「...あ?何で急に?」

 

「隠さなくてもいいよ?顔に書いてあるもの...」

 

勇儀はバツの悪そうな顔をする...

 

「...ちっ!本来なら確かにその通りだけどよ...さっきも言った通り手負いの相手は私の意に反するからな...」

 

「潔いよいのね?」

 

「鬼は嘘はつかん...だがせっかく来たんだ...なら趣向を変えてみるのも手だ!...女将!!」

 

勇儀は手をパンパンと叩くと戸の奥から着物を着飾った鬼たちが現れ食べ終わったものを片づけて代わりに大量の酒瓶を枡を置く...

 

 

「...趣向を変える?」

 

私の目には机一面に広がる日本酒の数々...その光景は壮大だけど...何か嫌な予感が...

 

 

「あの?趣向を変えるとは...まさかとは思うけど?」

 

「見ての通りだ...酒比べをやるぞ!私と大神との一騎打ちだ!」

 

「...」

 

机に並んだ大量のお酒...そして目の前の鬼...ああ...これだったら...素直に戦ったほうがよかったかも...

 

「本当にやらなきゃダメ?」

 

「せっかく連れてきたんだ...やらないのはダメだろ?」

 

確かにこの料理をおごってくれるとなるとやらないのは少し気が引ける...

 

私は娘達をかき集める

 

 

「...やるよ!皆!チームで勝つよ!!」

 

(私達もやらねばいけないのか?)

 

華楠は不服そうに言うがもう関係はない!!

 

幸い大神は一部を除いてお酒に強い子ばかりだもの!!相手は1人!!運と人海戦術で何とかしてやる!!

 

勇儀は私達がやる気になったことを見て手を叩いて笑い始める

 

 

「いい感じだ!!天下の大神との飲み勝負!!滅多にできるものではない!!」

 

「私たちもやるときはやるよ!?」

 

「いい感じだ!!女将!!酒をつげ!!」

 

勇儀が手を叩くと女将が現れ全員の前の一合枡に並々とお酒を注いでいく...

 

 

 

「ふふ...いい感じだ...では鬼の四天王星熊勇儀と大神家の酒宴を祝って乾杯!」

 

勇儀が枡を掲げて...

 

宴と言う名の戦争の幕が開ける...

 

 

 

 

 

 

 

15分後...

 

 

 

枡に8回目のお酒が注がれる頃...私達の陣営で異変が起きる...

 

娘の一人である華楠が体を痙攣させ始めた...

 

「...限界かしら?」

 

(もう...無理っ!!これ以上は...もうっ...うぷっ!!)

 

華楠は小さな体を震わせて辺りを不安そうにキョロキョロ見つめ、その隣で畳に置かれた枡を舐めとっている境奈は冷たい目で彼女を見つめている。

 

(吐くなら外で吐きなよ...酒が不味くなるじゃない~)

 

(もう...無理!!!)

 

華楠は口を膨らませた後に縁側へダッシュして暗い庭へと姿をくらます...

 

お疲れ様...

 

 

「はは!!一人脱落だな!!」

 

勇儀は上機嫌で庭の方を見つめている...本当に楽しそうだね...

 

「華楠は元々お酒飲めない方だもの...これくらい想定内よ」

 

私は八合目のお酒を空にして思考を巡らす...

 

...しかし鬼がお酒に強いのは理解しているけど...本当に私達が勝てる見込みはあるのだろうか?

 

まだ余裕だけど...いつかは打ち止めになるかもしれない...

 

「やれるだけやりますか...」

 

 

 

 

 

 

20分後

 

24合目...

 

2升を軽く超えてしまった頃...またもや異変が...

 

今度は銖理が嗚咽を漏らす...

 

(うっ...うっ!!!)

 

「...銖理も限界かしら?」

 

(...頑張ったッス!!銖理は頑張ったッス!!でも...限界がっ!!)

 

銖理は縁側にダッシュしてそのまま庭へと消える...

 

これで銖理もアウトか...

 

飲み歩いているからまだ余裕だと思ったけど...

 

 

「2人目だな!!残りは4人か!まだ私は余裕だが?」

 

勇儀は私達を見据える...

 

鬼に酒での勝負に勝てる生物は存在するのかしら?

 

それはどんな生物でも無理な気がする...

 

 

「...皆頑張ろう...まだ半数は残っているからね...」

 

私は25合目の酒を煽る...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

..31合目の酒を全員が飲んだところ煌炉が口を開けたまま制止する

 

 

「...」

 

「...煌炉まさか貴女も」

 

煌炉は私の言葉に黙って頷きそのまま庭へと消える

 

これで大神家の半数がリタイアか...

 

 

...まぁここまでは計算通りかな?

 

境奈と潤香がまだ残っている...

 

この子たちは大神家の中で特にお酒の強い方だ...

 

他の子とは違う...まさにこの時に関しては最終兵器に近いわ!!

 

まだ大神は余裕よ!!私達に勝てるかしら!勇儀!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

51合目...

 

 

 

 

「...」

 

そろそろ...私の方も余裕がなくなってきた...

 

全てのものがダブって見えるし...頭もじわじわと痛くなってきた...そろそろ限界かも...

 

 

「何だ?娘よりもお前の方が倒れそうじゃないか?」

 

「...ふふふ!私の方もおねむの時間かもね...でも!残った娘達はお酒に強いわ!!貴女でもどうなるかしらね?」

 

勇儀は辺りを見回す...

 

 

「...だが?そこの黒いのは限界みたいだが?」

 

「うぇ!?」

 

 

 

 

「...すぅ...すぅ...」

 

潤香の方を見ると彼女は寝息を立てていた!!

 

まずい!!寝ちゃった!!リバースする以前の問題だった!!

 

元々不眠症だった彼女には大量のお酒はきつかったか!!

 

「じゅ...潤香!!起きて!!まだ!貴女はやれるわ!!」

 

私が突っついても潤香は起きる気配を見せない...

 

境奈が私の体を前足でポンと撫でる!

 

(寝させときなよ...普段から熟睡できてないんだし...2人で頑張るよ)

 

「...うぐ」

 

...ぶっちゃけ逃げたい

 

私の方も限界だというのに!!

 

しかし境奈の奴はまだ余裕そうだ...母の分も頑張ってくれるだろうか?

 

私が嘆いていても...次のお酒が容赦なく枡にそそがれる...

 

 

 

 

 

 

 

 

58合目...

 

 

 

「...あは♪」

 

全ての物が~...二重にも三重にも見えりゅ~!

 

境奈が沢山いりゅ~!

 

あははは~頭痛い~気持ち悪い~死んでしまう~♪

 

 

「おい...大丈夫か?」

 

勇儀が心配そうに私を見つめる~

 

「あにゃたが持ち出したんじゃにゃいのよ~ほの勝負~!こんなことなら素直に戦えばよかったにゃー!うふ...うふふ...あはは...げふ...」

 

次の瞬間目の前の景色が暗転する...

 

 

 

 

 

side境奈

 

(ああ...とうとうアタシ一人かい)

 

私の目の前には目を回している母さんが...

 

呂律まわってなかったし...これ以上は無理か...

 

潤香は寝てるし他の姉妹も庭でえづいている声が聞こえるし...もう味方はいないわ...

 

「とうとうお前だけか...大丈夫か?」

 

(まだ余裕よ!)

 

私は言うが勇儀は首を傾げている...

 

獣化しているアタシの言葉が理解できないみたいね...

 

彼女は黙って枡に酒をつぐ...

 

 

「とりあえずまだ余裕みたいだな...どんどん行くぞ!」

 

(望むところよ!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

68合目...

 

「...ありゃ?まだいける感じか?」

 

(まだ平気よ!でもお腹いっぱい...)

 

68合...久しぶりにここまで飲んだかしら?吐き気はないけど...お腹が正直タプタプになってきたところかしら?

 

ああ...もう...こんな姿でなければまだ行けたのに!!

 

 

 

 

 

(あーあ...何か悔しいな...)

 

アタシは空になった枡を裏っかえしにして下げる...

 

降参宣言...それがアタシのとった行動...醜態晒すくらいなら負けた方がいいわ...

 

言葉が通じなくてもわかるでしょ?

 

勇儀はアタシのそれを見て枡を置く...

 

 

「それは降参ととっていいのか?」

 

アタシは黙ってその言葉に頷く...

 

勇儀はそれを見た後黙って酒を飲み干す...

 

さて...負けたしさっさとお暇しますかね...酔っ払いどもの回収作業はどうすればいいかな...このなりでは...母さんを運ぶことすらできないわ...

 

アタシが母さんの着物の袖を咥えると母さんはうめき声をあげる...

 

 

「動かさないでー!出るものがでちゃうっ!」

 

(...このままじゃ帰れないよー!気合いれてよ!母さん!ほら!潤香も手伝いな!!)

 

アタシは潤香を揺さぶり彼女を叩き起こす...

 

潤香はすぐに目を開けて不機嫌そうにアタシを見つめる...

 

 

(...久しぶりにいい夢みれたのに)

 

(いい夢見れたところ悪いけど...庭で酔いつぶれてる他の呼んできて!アタシ達だけじゃ母さん運べないじゃないの!)

 

(ふぁぁ...分かりましたよ)

 

潤香は庭の方へと向かい勇儀の方はまだ酒を飲んでいる...流石鬼ね...まだ余裕とは...

 

 

 

 

 

「...旧都を超えた先に地霊殿という建物がある...そこに行け」

 

(は?)

 

勇儀の言葉にアタシは言葉を失う...

 

地霊殿?まさか...黒幕の居場所かしら?

 

(...何で教えたのよ?)

 

「...只の独り言だ...とりあえずそこにいけ...私から言えることはそこまでだ...」

 

(...礼は言わないわ)

 

...負けた上に情報を貰うとは...何か惨めだわ

 

しかし...これで次に向かう場所は分かったわね

 

(...う...何だ?境奈...まだ気持ち悪いんだが)

 

庭から泥酔状態の華楠・煌炉・銖理が戻ってくる...

 

5人いれば...何とかなるわね

 

(母さんを外まで運ぶわよ!次行く場所もわかったし!!)

 

(しかし...まだ私達のコンディションが...)

 

(つべこべ言わない!!さっさと体を動かす!!)

 

アタシ達は母さんを引きずり料亭を後にする...

 

少し情けをかけられた感じだけど...楽に済んでよかったわね...

 

 

 

 




次地霊殿へ!

鬼には勝てなかったよ...

ではこれにて

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