VTuberなんだが配信切り忘れたら伝説になってた   作:七斗七

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三期生対抗体力バトル2

「第一競技は――筋力を競う『腕相撲』だね」

 

 発表された競技に、少し私達の間にどよめきが走る。

 

「意外と普通……ローション相撲とか来ると思ってました」

「淡雪ちゃん!? さっきと言ってること違うわよ!?」

「よっしゃあ! これは光が1位貰っちゃうよ!」

 

 体力的にも全然楽な競技だし、ライブオンにもまだ良心があったか。

 

「えっと、運営さんから一言メモ『合法的に手を繋げるっていいですよね』だってさ」

 

 ただのキモい趣味かよ。

 

「よかったねあわちゃん」

「え、なんで私に話振るんです?」

 

コメント

:淡雪ちゃん競技見た!?

:あわちゃん、実質SEXおめでとう!

:プシュ!

:悪意のある祝福が清楚(酒)を襲う

:日本酒かな?

:あわちゃん、オフでセクハラは牢獄行き案件だから気を付けてね

 

「コメ欄も悪ノリしない! 捕まらないですよ聖様じゃあるまいし!」

「そうだよ、あわちゃんにそんなこと言わないであげてほしいな」

「おや? なぜか原因から救いの手が」

「刑務所に就職するだけだもんね」

「本当に言い方だけかよ」

 

 そんなこんなで2人でトークを繋いでいる間に、運営のスタッフさんとちゃみちゃん、光ちゃんの協力で腕相撲の準備が整ったようだ。

 

「細かなルールの説明に入るね。相手の拳を、机の上に左右に置いたクッションの内、相手側のクッションに着けたら勝ち。肘を机から離すのは禁止。総当たりだと時間がかかるから、トーナメント戦でやるよ」

 

 ふむ。まず二組に分けて各勝負、次にそこで負けた者同士2人で3位決定戦、最後に勝った者同士2人で決勝戦をする形式のようだ。

 なるほど……これは一回戦で当たる相手から結構重要だな。

 

「組み合わせはグッパで決めて、だって」

 

 ちゃみちゃんとましろんは何とかなりそうな気がするけど、恐らく強いであろう光ちゃんと初戦から当たるのはまずい。1位は厳しいとしても2位でポイントを稼ぐんだ!

 このグッパから勝負は始まっている、気合い入れていくぞ!!!!

 

 

 

 

「うん、あわちゃんは光ちゃんと、僕はちゃみちゃんとだね」

「ワ〇ピースの正体私だったりしないかな」

「ほらあわちゃん、ふてくされてないでこっち来て。一回戦はあわちゃん対光ちゃんだよ」

 

コメント

:やったぜ

:ちゃみちゃんとましろんは一安心って感じやな

:それふてくされてるんだ……

:俺は全巻セットのことだと思ってる(ひとつなぎだけに)

:絶望する淡雪ちゃんの陰で光ちゃん妙に艶っぽい声出てたけど大丈夫かな……

 

 お祓いとか行った方がいいかもしれない……。

 くっ、もうこうなったものは仕方がない! 全力で光ちゃんを倒しに行くぞ! ここで勝てばその分リターンだって大きいんだから!

 気合いを入れ直してポジションに着く。

 

「あの……淡雪ちゃん」

「はい?」

 

 勝負前だというのに、らしくないやけにしおらしい態度でちょこちょことポジションにやってきた光ちゃん。

 そして視線が床と私の顔を行き来した後、はにかみながら頬を赤らめ、媚びるような上目遣いで、これから訪れるナニカを想像したのかゾクゾクと体を震わせながら、私に手を差し出した。

 

「よ、よろしくお願いします///」

「大変です!! 光ちゃんがメス豚の顔になってしまいました!!」

「すごいたとえするね」

「どんな顔よ……」

 

 だっておかしいもん! ただのメスの顔とかだったらまだかわいいけど、この光ちゃんはなんか危ない雰囲気がするんだよ!

 そもそもさ! いつもの光ちゃんだったら「負けないぞー!」とか言ってるところじゃん! 私は一体何をよろしくされてるんだよ!

 くっ、まずい、勝負前から取り乱され過ぎだ、集中しないと! ここで勝たないと本当に光ちゃんによろしくするハメになるかもしれないんだから!

 …………うん、オーケーオーケー。落ち着いた。

 勝負開始前まで誘導される。どうやら審判役もましろんが務めるようだ。

 

「ヨーイスタートで始めるからね。さぁ、手を組んで」

「…………」

「ぁっ///」

 

 気にするな気にするな気にするな! いっそのこと目を閉じてやる!

 

「ヨーイ…………スタート!!」

「ふぐぐぐぐぅぅぅぅ!!!!」

 

 開幕から渾身の力で相手の腕を倒しにかかる。

 おお? すぐに負けちゃうかもとか正直少し思ってたけど、十分戦えているぞ! いや、むしろ押している!!

 いいぞいいぞ! どんどん倒してる! あと少し! あと数センチ倒せば私の勝ち!

 実況役になっているましろんとちゃみちゃんも言ってるから間違いない!

 

「ふぐぐぐぅ!!」

 

 あと少し! あと少し!

 ……………………あれ?

 本当にあと少しのはずなのに、そこから先が全く倒れないぞ?

 不審に思い、私は目を開けた――

 そう開けてしまった――

 

「あっ、あぁん♡ あ、淡雪ちゃん、もっと、もっとぉ! あはぁ♡ もっと力こめないとぉ光は倒せないよ? そ、そうだ、爪を食い込ませるのとかどうかな? それくらいしないと光は倒せないんじゃないかな? はぁ! はぁ!!」

「い゛や゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ーーーー!!!!!!!!」

 

 その後、筋力でも精神面でも完敗した私なのだった。 


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