VTuberなんだが配信切り忘れたら伝説になってた   作:七斗七

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ママのご乱心2

「それじゃあこちらがルーレットになります!」

 

 配信画面に私達4人の名前が均等に四等分されたルーレットが表示される。

 

「針は一つしかないから、まずこのルーレットで1人目を決めた後、次に決まった人以外の3人でもう一度ルーレットを回してペアを決めようと思うよ!」

「おいシオンママ! ストゼロちゃんの名前が無いじゃないか!」

「は!? そうだ、ストゼロを足せば偶数になってママも参加できる!?」

 

 私の言った苦情に、その手があったかと衝撃を受けた様子のシオンママ。

 ふふっ、即興で思いついた苦情だったが、これはナイス発想だったのではないか? ストゼロちゃんと当たる可能性があれば、私だって企画に乗り気になれるって寸法よ!

 

「待つにゃ! ストゼロが追加されるってことは、誰かがストゼロの子を持つということになるぞ! シュワちゃんが当たる分にはいいが、それ以外もありえる、それはいいのか!?」

「私はいいっすよ、てか全員ストゼロで孕め」

「淡雪殿に同じく! ストゼロの子=実質淡雪殿の子なのであります!」

「聖様はね、淡雪君を想像してストゼロでイッたことがあるよ」

「いいのかぁ……そうかぁ……にゃにゃぁ……」

 

コメント

:多数決敗北猫

:聖様のそれは許可なの?

:え、マジで追加すんの!?

 

「うーんむむむむぅ…………き、企画が滅茶苦茶になりそうだから、今のままでやります……」

 

 くっ、シオンママにはストゼロの子を持つことに、企画の進行を守る以上の魅力を感じなかったようだ。残念……

 

「そんなわけで、それじゃあ一回目のルーレットを回しまーす! ぐるぐるぐるぐるー!」

 

 シオンママの掛け声でいよいよ回り始めたルーレット。誰もがじっとその回る針の行く末を凝視する。

 

「はい孕め♪ 孕め♪ 孕め♪ 孕め♪」

「シオンママ、生命の始まりみたいなコールはやめてもらえませんか?」

 

コメント

:どんなコールだよ

:草

:ダメだ、今日のシオンちゃん本当に凶気を感じる……

:普段冷静な人こそここぞって時にヤバイ一面があるものだから……

:シュワちゃんいるから説得力の塊

 

 ルーレットが回るに連れて再びテンションがバグり始めたシオンママに気を取られもしたが、針は徐々に勢いを失い始める。

 そして止まった先に書かれていた名前は――

 

【宇月聖】

 

「お、聖だね!」

「うげぇ」

「外れであります!」

「すみません、仮病なのでここで失礼します」

「ちょっと待とうか」

 

 結果を見たネコマ先輩、有素ちゃん、私の反応を見て、聖様がなぜか横やりを入れた。

 

「淡雪君と有素君はまぁそのリアクションでも分からなくはないよ。でもネコマ君は違くないかい?」

「にゃ? なんでだ?」

「聖様との熱い夜を過ごしたくはないのかい?」

「それはもう企画の趣旨からずれてるぞ」

「ふむ、実は企画が始まった時からの疑問だったのだが、どうしてネコマ君はそんなにこの企画に乗り気じゃないんだい? いつもは変な企画でもクソ企画と解釈して楽しんでいるじゃないか」

「いや、それとこれとは話が別だぞ、だってな――」

 

 ネコマ先輩は途中で数秒言葉を止めると、膨張し過ぎて穴が開き、地面へと墜落していく気球のような声でこう言った。

 

「恋人同士であり同期でもあるライバーがいる前で、その片割れとの子供を想像しなきゃいけなくなる可能性があるとか、誰でも嫌に決まってるだろ!!」

 

コメント

:猫草

:シチュエーションに理解が追い付かないのよ

:修羅場待ったなしなのは分かる

 

 自然と私も「あー」と声に出してしまった。そうか、もしここで聖様とネコマ先輩がペアになったらそういう状況が生まれてしまうのか。

 改めて考えてみると私と有素ちゃんも十分やばいのだが、同期という要素も含んでいるネコマ先輩はそれは切実に聖様と当たりたくないのだろう。

 

「ネコマー」

 

 シオンママも流石に不憫に思ったのか、ネコマ先輩の名前を優しく温かい声で呼んだ。

 

「私は聖とネコマーの子供、すっごく見たいかなぁ! はぁ! はぁ!」

 

 ように思えたが、興奮してニチャニチャした生暖かい声が出ただけだったようだ。

 

「おいこいつ絶対おかしいって! 聖からもなんか言ってやれ!」

「ネコマ君」

「にゃ?」

「聖様はネコマ君と体&心からヤリたいと思っているよ!」

「お前に至ってはさっきから企画勘違いしてるだろ!」

 

 このカップル、価値観が独特過ぎる……。

 

「なぁ後輩のお二人や、ネコマを助けてくれよー!」

「助けてと言われましてもルーレットだから運ですし……ストゼロ飲みますか?」

「淡雪殿と当たりたい私からしたら、むしろネコマ殿には聖殿とペアになってほしいのであります!」

「そんにゃ……はっ、今思えばストゼロを候補に加える案に賛成した方が、確率が下がるから良かったのか……」

 

コメント

:このカップル、最先端過ぎて俺からは見えない

:裏ではちゃんとラブラブなの奇跡だろ

:ネコマ不憫かわいい

:正直ネコマー当たってほしいっす

:かわいそうはかわいいという格言もあるからな

 

「もういい加減ルーレット回すよー! このルーレットで選ばれた人が聖とペアになって、残りの2人がもう一組のペアになるってことね! それじゃあレッツ子作り!」

 

 標的を3人に絞った上で、再び回り始めるルーレットの針。

 

「誰が産むかな♪ 誰が産むかな♪」

「聖様、彼女のこの姿を見てどう思います?」

「笑顔がかわいいなって」

 

 もうこの2人に関しては気にするだけ無駄な気がしてきた……。

 

「頼む! 聖だけは勘弁! 聖だけは勘弁!」

「淡雪殿がいい! 淡雪殿がいい!」

「ふっ、嫌がるライバーと強制的に子作り……興奮するじゃないか」

「正直誰でもよかったけど、今のを聞いて聖様だけは嫌になりました」

 

 それぞれの想いをかき混ぜながら回るルーレットの針――

 速度を落とし、悩みながら、彼が選んだ未来、それは――

 

【昼寝ネコマ】

 

「に゛ゃ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!!!!!!」

 

 盛大なフラグ回収だったようだ。


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