VTuberなんだが配信切り忘れたら伝説になってた 作:七斗七
そして迎えた作戦決行の日――
「ハンバアアアアアァァァーーーーグ!!!!」
「ど、どうも、今日は記憶が戻った記念に師匠とハンバーグを作りたいと思います、ダガーです……」
「ハンバアアアアアァァァーーーーグ!!!!」
「し、師匠? 本当に今日どうしちゃったの? もう配信始まっちゃったぜ?」
私はハンバーグ師匠になっていた。
コメント
:やっと配信キタ! ¥1000
:記憶復活後初だから楽しみ
:もうかわいい ¥20000
:かわいい(かわいい)
:もう誰もかわいい言うの躊躇しなくて草
:記憶戻ったってことは真名も思い出したのかな
:ハンバーガーちゃんだぞ
:アメリカ人かな?
:すごい人数見てる
:ハンバーグ作り……? いやまさかな……
:それで、隣のアホは何してんの?
:ストゼロ厨二ハンバーグ師匠
:はーい淡雪ちゃーん、そこにいると邪魔だから聖様の所行こうねー
:淡雪→酔うと性格が変わる、ダガー→酔うと性格が変わる
:やっぱり師弟じゃないか!
:淡雪ちゃんは性格が変わるというより終わるから
:ダガーちゃんがハンバーガーちゃんになるのは分かるけど、なんでお前までハンバーグ師匠になってんだよ!
「ダガーちゃん、さっきも言ったでしょう? 究極のハンバーグを作るために精神統一しているんです。大丈夫、酔ってはいないので手元は狂いません」
「それはそれで心配だって! 本当にどうしちゃったの!? 今日の師匠目も血走っててちょっと怖いよ!?」
「かわいい後輩が私のハンバーグが食べたいと言ってくれた、それに応えたいだけですよ」
「確かに前に裏で言ったけど! これ本当に大丈夫なのか……?」
ふふっ、何も心配することはないんですよダガーちゃん。
だって――私気づいてしまったんです。
私は今、こんなにもハンバーグに魅入られている。ダガーちゃんに食べてほしいと思っている。
それはつまり、チョコ作りの時に渡したあのストゼロを、ダガーちゃんが飲み干し、それがダガーちゃんの体内で輪廻転生して、再びこの場にダガーちゃんにとってのストゼロとして再誕しようとしている、ということだったんですよ。
「ダガーちゃん、改めて、貴方にストゼロをプレゼントします」
「なんでそうなった!?!?」
コメント
:そんなことがあったのかw
:今日のあわちゃん相当ヤベーぞ!
:これってもしかして、激レアなストゼロ無しでキマッてるあわちゃんなんじゃね?
:まだあわの人格が残ってそうな気がするけど、それに近い状態説あるな
:ほんと面接のときに何したんだろこの人……
そして、お料理配信は始まった。
最初、お手伝い兼撮影係のダガーちゃんは不安そうであり、コメント欄も「またなんかやらかすんでしょ」みたいな反応だった。
しかし、時が経つにつれて、そのような要素が完全に逆転することになる。ダガーちゃんは無言で息を呑むことが増え、コメント欄は驚嘆一色になっていったのだ。
そんな中でも、私は悠々と工程をこなしていく。だって、私にとってこれは当然の事なのだ。
このハンバーグはダガーちゃんにとってのストゼロなのだ。そう、お分かりの通り、つまり私は今、実質ストゼロを作っていることになる。
心音淡雪がストゼロを作れないなんて、そんなわけ――あるはずがないのだ。
「さぁ、召し上がれ」
皿という名の純白のベッドの上には、情熱の色をしたケチャップを淫靡に纏い、誘うように肉汁を垂らす、究極のハンバーグの姿があった。
「すげぇ……」
コメント
:めっちゃうまそうじゃん!
:プロ並みだろこれ
:画面越しにもいい匂いが伝わってくる……
:マジで料理うまいんだな……
:うまいのは確かなんだけど、これはうま過ぎて引くレベルだったというか……
:どんだけこのハンバーグに本気だったんだ……
:せっかくの家庭的なところをアピールできるシーンだったのに、斜め上にいって無駄にするのほんとライブオン
「これ、食べていいの?」
「はい。ダガーちゃんの為に作ったんですから。冷めないうちにどうぞ」
「い、いただきます……」
ダガーちゃんがハンバーグをナイフで緊張した面持ちでゆっくりと一口大に切り、フォークに刺して口へと運んでいく。
前の試作完成品よりうまく出来ているが、レシピ自体はそのままだ。調理工程が最適化されたことによる、純粋なパワーアップ品が仕上がっているはず。
「あぐっ…………ッ!?!?!?!?」
とうとう口に含んだダガーちゃん、その輝いた眼を見るに、ハンバーグは完璧だったようだ。
さぁ、ダガーちゃんが記憶を失ったと言えば、計画は完遂される。
ふぅ、終わってみれば結構楽しかったけど、今回は結構疲れたな。
「ん~~~~~~~~!」
「……………………」
あ、あの……早く言ってくれないかな?
いや、そんな沁みるわ~みたいな反応しなくていいのよ、むしろ記憶飛ばすんだから沁みたらダメなのよ。
「(グッ!)」
いやだからグッ! じゃないのよ! この味、一生忘れないぜ……みたいな顔しなくていいのよ! 何やってんのこの子! よりにもよって作戦の記憶が飛んでどうする!
「ッ! ッ!」
「??」
作戦を思い出せと表情で訴える。
「……! あーん!」
「ちがーーーーう!!!!」
私に新たにカットしたハンバーグを向けてきたダガーちゃんに、とうとう叫んでしまった。
記憶!! 記憶飛ばすんでしょ!!
今度はジェスチャーも交え、必死にダガーちゃんに訴えかける。
「ッ!? うっ!? あ、頭が!?!? お、俺は一体!?」
ようやく分かってくれたようだ……。
こうして、計画通りダガーちゃんは最も都合の良い、記憶を取り戻す前の状態に戻ることに成功した。
コメント
:はああああああああ!?!?
:本当にやりやがったwwww
:クッソワロタwww
:おいおいおいおいちょっと待ててえええぇぇ!!!!
:やっぱりライブオンじゃないか!
勿論その後、このようにコメント欄が荒ぶったりもしたのだが、最終的には皆微笑ましく笑っていたのは、流石はダガーちゃんというべきだろう。
これにて究極のハンバーグ計画、完遂である。
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……………………やっぱこの子普通じゃないわ。
後一話でダガー編終わりです。
また、その次にやる予定のマシュマロ返答ですが、最初は聖からやろうと思います。
ライバーへの質問やネタなど、マシュマロ募集中です!