VTuberなんだが配信切り忘れたら伝説になってた   作:七斗七

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ダガーちゃんの危機?6

 そして迎えた作戦決行の日――

 

「ハンバアアアアアァァァーーーーグ!!!!」

「ど、どうも、今日は記憶が戻った記念に師匠とハンバーグを作りたいと思います、ダガーです……」

「ハンバアアアアアァァァーーーーグ!!!!」

「し、師匠? 本当に今日どうしちゃったの? もう配信始まっちゃったぜ?」

 

 私はハンバーグ師匠になっていた。

 

コメント

:やっと配信キタ! ¥1000

:記憶復活後初だから楽しみ

:もうかわいい ¥20000

:かわいい(かわいい)

:もう誰もかわいい言うの躊躇しなくて草

:記憶戻ったってことは真名も思い出したのかな

:ハンバーガーちゃんだぞ

:アメリカ人かな?

:すごい人数見てる

:ハンバーグ作り……? いやまさかな……

:それで、隣のアホは何してんの?

:ストゼロ厨二ハンバーグ師匠

:はーい淡雪ちゃーん、そこにいると邪魔だから聖様の所行こうねー

:淡雪→酔うと性格が変わる、ダガー→酔うと性格が変わる

:やっぱり師弟じゃないか!

:淡雪ちゃんは性格が変わるというより終わるから

:ダガーちゃんがハンバーガーちゃんになるのは分かるけど、なんでお前までハンバーグ師匠になってんだよ!

 

「ダガーちゃん、さっきも言ったでしょう? 究極のハンバーグを作るために精神統一しているんです。大丈夫、酔ってはいないので手元は狂いません」

「それはそれで心配だって! 本当にどうしちゃったの!? 今日の師匠目も血走っててちょっと怖いよ!?」  

「かわいい後輩が私のハンバーグが食べたいと言ってくれた、それに応えたいだけですよ」

「確かに前に裏で言ったけど! これ本当に大丈夫なのか……?」

 

 ふふっ、何も心配することはないんですよダガーちゃん。

 だって――私気づいてしまったんです。

 私は今、こんなにもハンバーグに魅入られている。ダガーちゃんに食べてほしいと思っている。

 それはつまり、チョコ作りの時に渡したあのストゼロを、ダガーちゃんが飲み干し、それがダガーちゃんの体内で輪廻転生して、再びこの場にダガーちゃんにとってのストゼロとして再誕しようとしている、ということだったんですよ。

 

「ダガーちゃん、改めて、貴方にストゼロをプレゼントします」

「なんでそうなった!?!?」

 

コメント

:そんなことがあったのかw

:今日のあわちゃん相当ヤベーぞ!

:これってもしかして、激レアなストゼロ無しでキマッてるあわちゃんなんじゃね?

:まだあわの人格が残ってそうな気がするけど、それに近い状態説あるな

:ほんと面接のときに何したんだろこの人……

 

 そして、お料理配信は始まった。

 最初、お手伝い兼撮影係のダガーちゃんは不安そうであり、コメント欄も「またなんかやらかすんでしょ」みたいな反応だった。

 しかし、時が経つにつれて、そのような要素が完全に逆転することになる。ダガーちゃんは無言で息を呑むことが増え、コメント欄は驚嘆一色になっていったのだ。

 そんな中でも、私は悠々と工程をこなしていく。だって、私にとってこれは当然の事なのだ。

 このハンバーグはダガーちゃんにとってのストゼロなのだ。そう、お分かりの通り、つまり私は今、実質ストゼロを作っていることになる。

 心音淡雪がストゼロを作れないなんて、そんなわけ――あるはずがないのだ。

 

「さぁ、召し上がれ」

 

 皿という名の純白のベッドの上には、情熱の色をしたケチャップを淫靡に纏い、誘うように肉汁を垂らす、究極のハンバーグの姿があった。

 

「すげぇ……」

 

コメント

:めっちゃうまそうじゃん!

:プロ並みだろこれ

:画面越しにもいい匂いが伝わってくる……

:マジで料理うまいんだな……

:うまいのは確かなんだけど、これはうま過ぎて引くレベルだったというか……

:どんだけこのハンバーグに本気だったんだ……

:せっかくの家庭的なところをアピールできるシーンだったのに、斜め上にいって無駄にするのほんとライブオン

 

「これ、食べていいの?」

「はい。ダガーちゃんの為に作ったんですから。冷めないうちにどうぞ」

「い、いただきます……」

 

 ダガーちゃんがハンバーグをナイフで緊張した面持ちでゆっくりと一口大に切り、フォークに刺して口へと運んでいく。

 前の試作完成品よりうまく出来ているが、レシピ自体はそのままだ。調理工程が最適化されたことによる、純粋なパワーアップ品が仕上がっているはず。

 

「あぐっ…………ッ!?!?!?!?」

 

 とうとう口に含んだダガーちゃん、その輝いた眼を見るに、ハンバーグは完璧だったようだ。

 さぁ、ダガーちゃんが記憶を失ったと言えば、計画は完遂される。

 ふぅ、終わってみれば結構楽しかったけど、今回は結構疲れたな。

 

「ん~~~~~~~~!」

「……………………」

 

 あ、あの……早く言ってくれないかな?

 いや、そんな沁みるわ~みたいな反応しなくていいのよ、むしろ記憶飛ばすんだから沁みたらダメなのよ。

 

「(グッ!)」

 

 いやだからグッ! じゃないのよ! この味、一生忘れないぜ……みたいな顔しなくていいのよ! 何やってんのこの子! よりにもよって作戦の記憶が飛んでどうする!

 

「ッ! ッ!」

「??」

 

 作戦を思い出せと表情で訴える。

 

「……! あーん!」

「ちがーーーーう!!!!」

 

 私に新たにカットしたハンバーグを向けてきたダガーちゃんに、とうとう叫んでしまった。

 記憶!! 記憶飛ばすんでしょ!!

 今度はジェスチャーも交え、必死にダガーちゃんに訴えかける。

 

「ッ!? うっ!? あ、頭が!?!? お、俺は一体!?」

 

 ようやく分かってくれたようだ……。

 こうして、計画通りダガーちゃんは最も都合の良い、記憶を取り戻す前の状態に戻ることに成功した。

 

コメント

:はああああああああ!?!?

:本当にやりやがったwwww

:クッソワロタwww

:おいおいおいおいちょっと待ててえええぇぇ!!!!

:やっぱりライブオンじゃないか!

 

 勿論その後、このようにコメント欄が荒ぶったりもしたのだが、最終的には皆微笑ましく笑っていたのは、流石はダガーちゃんというべきだろう。

 これにて究極のハンバーグ計画、完遂である。

 

 ……………………。

 

 ……………………。

 

 ……………………やっぱこの子普通じゃないわ。




後一話でダガー編終わりです。
また、その次にやる予定のマシュマロ返答ですが、最初は聖からやろうと思います。
ライバーへの質問やネタなど、マシュマロ募集中です!

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