VTuberなんだが配信切り忘れたら伝説になってた 作:七斗七
三回目のゲームセット、GMは――私だ。
GMはゲームの参加者とは違い、基本的には話し合いが始まればミュートで、あくまで進行役ではあるのだが、ルール説明の時にも触れたようにこの立場だからこその楽しみ方がある。
まずは参加者にチャット経由でお題を送る。
「クックック……さぁさぁリスナーさん方や、滑稽に転げ回る参加者達の姿を一緒に楽しもうじゃぁありませんかぁ?」
話し合い開始の掛け声前だが、一瞬ミュートしてリスナーさんに語り掛ける。
GMはゲーム開始時点で自分の配信画面に割り振ったお題の答えを表示し、リスナーさんと共有することが許可されている。
画面に出したのはこれだ――
【多数派・彩ましろ、チュリリ】→【お題・ライブイベント】
【少数派・宮内匡】→【お題・乱交パーティー】
コメント
:草
:こいつやりやがったwww
:リアルでうわぁって声出たわ……
:おぬしも悪よのぉ
:しかもよりによって匡ちゃんかよw
『――――ゴクリッ』
今かすかに聞こえた唾を飲み込む音は匡ちゃんだな? これは楽しみになってきましたなぁ!
「はい! それでは話し合いスタート!!」
私の掛け声でいよいよゲームが始まった。
さて、ここからは私はサポートが必要そうになった時を除いてミュートだ。
『これは……どうなのかしら? 先生ちょっと想像できないかも』
『僕もそんな感じだけど……うーん……僕にとっては――夢、かな』
『ん゛!?』
ましろんとチュリリ先生にとっては自然に始まったかのように思えたこのゲーム。声を抑えることはできたようだが、匡ちゃんは全く違った聴こえ方をしたはずだ。
「あぁ、来てる、来てるぞぉ!!」
『今みたいなのもいいけど、やっぱり皆で同じ場所に集まって盛り上がるってなると、なんていうか……興奮するよね』
『こ、興奮……』
『あーなるほど、私たちが開くってことね。うーん、先生は人間が嫌いだからこれはちょっと……あーいや、案外これは非日常って意味でやってみると楽しかったりするのかしら? ……ありえない話過ぎて想像できないわ』
『そう? 昔は僕も同じ意見だったけど、今なら別にありえなくないでしょ』
『ん゛ん゛!?!?』
『だってほら、某先輩がやったじゃん』
『ん゛ん゛ん゛ん゛!?!?!?!?』
「ファァァァァァァァーーーーwwwwww!!!!」
コメント
:うるっさ笑
:割と匡ちゃんからも会話に違和感無いの草
:あぁ、ましろんがド変態なこと言ってるように聴こえてしまう……
:ハレルンにとんでもない風評被害がwww
:ミヤウチィ! せめてハレルンのライブは気づけぇ!!
:本当に申し訳ないんだけど某先輩って聖様かと思ったわ
:おもろいけど最低だよこのGM!
:全方位に酷すぎてワロタ
:GM(ゴミ) ¥5353
『そうなの? 先生詳しくないから知らなかったわ』
『本当に? 僕は会場で見てたけど、いやぁすごかったよ。自分には不相応だなーとか思いつつも憧れちゃった』
『どんな感じなの?』
『すごい熱量だったよ。なんたって某先輩を中心に数千人が一つになるわけだからね』
『ん゛ん゛!? ご、ごほッ!! ごほごほっ!!』
「ぶほーーーー!! 晴先輩を中心に数千人で乱交パーティはやばい!! あひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!!!!」
コメント
:ぶほーーーー(清楚)
:こんなに清楚じゃない人初めて見た
:数千人規模は笑うwww
<朝霧晴>:崇めてくれていた後輩の変わり果てた姿に私の心がダイヤモンドダスト……
:!?
:見てるんかーい!
:あかん、これは後でタランチュラの刑ですわ
<朝霧晴>:でも面白ければOKです!
:ぇぇ……
:流石ライブオンの元祖
<朝霧晴>:同期みたいなノリ嬉しい。あと何より自分語りをイジられるより一兆倍まし
:草
:朝霧晴VA(バーチャルアカンヤツ)引退! 最初で最後のファン大感謝祭!! という文面が浮かんでしまった自分にへこんだ
:VAって言い方に悪意を感じる
:Aをせめてアイドルにしてあげて……
:ネタに出来る現在に本当によかったと思います(シュワちゃんを庇って無理やりエモ展開に)
「は、晴先輩!? いや、あのこれはですね? お分かりかと思いますが話の流れで偶然こうなったわけでありましてですね? さ、参加者の会話がよく聞こえるようにGM黙りまーす!」
さ、さぁ! 今までは声を必死に我慢して、若干漏れちゃっても喉の不調ともとれる音だったから逃げられてきた匡ちゃんだったけど、今の咳き込みは流石にまずかったんじゃないかな? 会話に交ざらない違和感もそろそろ無視できないだろうし、ここからどうなるか――