VTuberなんだが配信切り忘れたら伝説になってた 作:七斗七
「は!? 先生も『ピアノ』!? 私と同じじゃん!!」
「僕人狼だったんだ……ちなみに『ギター』だったよ」
「あらら、結局負けなのね……。やけにそっちの話が一致しているから先生も自分が少数派だと思っちゃったわ。全くもう、人狼に騙されたらダメじゃない淡雪さん!」
「ふざけるなああああぁぁぁーー!!」
先生の言葉に私は全力の抵抗を表した。
そして今度は私が非難する側に立つ。聞きたいことが山ほどあるのだ!
「まず、先生ピアノ持ってるの!?」
「そのものは持ってないけれど、シンセサイザーなら持っているわ。ちゃんと鍵盤も付いているし、ピアノの音もなるタイプの物よ」
「シンセサイザー……? それでも先生が持ってるの違和感なんだけど……弾くの?」
「いいえ、弾くというより創造するのよ――愛を」
「は、はぁ?」
首をかしげる私とは対照的に、先生は口調を昂らせながら言葉を続け始める。
「シンセサイザーってね、音を自分で作れるのよ。色んな波長を組み合わせて、そこにエフェクトなんかをかけたりしてね。これって……いわば愛の創造じゃない? 出来上がった音は音の両親たちの愛の結晶よね?」
「ましろん通訳たのむ」
「がおがお! 狼だから分からないがお!」
「は? キレそう」
「泣いていい? 僕突然の無茶ぶりに頑張って応えたんだよ? 内心めちゃくちゃ恥ずかしかったんだよ?」
「OK、それじゃあもう我慢しないね、ペットにして一生監禁するからね」
「訂正、もっと怒っていいから逃がして」
「話を聞きなさい!」
私たちの反応に納得いかないのか、先生が更に説明を続ける。
「あのね、分かったわ、じゃあお題のピアノで説明するわ、こっちの方が分かりやすいでしょう。ドの音があるでしょう? ミの音があるでしょう? ソの音があるでしょう? 一つ一つは簡素な音でも、同時に鳴らせばコードになって綺麗な響きになるでしょう? これはね、つまり子作りなのよ」
「ましろん通訳たのむ」
「これ以上やると身の危険を感じるからやらないよ」
「まぁ聞きなさい。無理やり人に当てはめてあげるわ。ドが男、このドがミの女と出会い、ソというストーリーを歩んでCコードという子供が生まれるの。これはメジャーコードだからハッピーエンドね。これがマイナーコードになれば美しくも悲しい悲劇に、もしくは音を間違って不協和音になればバッドエンドになるわけ。どう? 分かった?」
「ちゃみちゃん呼んでくる?」
「あの子は専門が違うから、多分この場に呼ぶと喧嘩になるよ」
「……これでも分からないなんて、人類はなんて愚かな生き物なの……」
先生があり得ないものを見たような反応を見せているが、それはこっちがやるのが正しいと思う……。
でも、まぁ実際のところは――
「実のところ、私は完全に分からなくはないど? ただ理論は分かっても理解はできないというかね……」
「あー、僕もそんな感じかも。多様性とか言ってた意味は何となく分かった」
「本当!? え、先生嬉しいわ! じゃあねじゃあね、更に分かりやすくしましょう! 曲ってあるじゃない? 曲を嫌いな人なんてそうそういないでしょう! あれはね、曲の全体像という星の下で、一つ一つの音が命を与えられ、愛に生き、物語を紡ぐ――そうして生まれた質量なき新世界なのよ!」
「なんか一周回って音楽の巨匠みたいに見えてきたど」
「この人楽器弾けないみたいだけどね」
まぁ私の中では納得がいったので、次のゲームに進もうかと思ったその時、ましろんが思い出したようにこう先生に聞いた。
「あっ、でもエッチな話題って先生言ってたよね? これエッチでは無くない?」
「ピアノのハンマーが! 弦に! 強弱をつけられながら! 音を立てて叩きつけられているのよ! なんていやらしいのかしら!? ピアノは子作り工場なのよ!!」
「「うわぁ……」」
最後にましろんと今までの理解を全て吹き飛ばすドン引きをしたところで、GMの匡ちゃんがこのゲームセットの締めに入った。
「うむっ、このくらいでこのゲームは終わりだな。ふっふっふ、どうだ? 中々面白い展開になったのではないか?」
「そうかもしれないけど、人狼だけじゃなくて各市民の思考に対する読みも必要とか分かるか!」
「ライブオンワード人狼っていう新しいゲームだねこれ。勝ったのに負けた気がするよ」
「先生はね、嘘をつきたくないだけなの。先生だけ周囲に合わせて思考全てを偽れなんてあんまりじゃない」
コメント
:おつ! ¥5000
:市民が市民に騙されてて草
:ライブオンはこうじゃないとなぁ!
:ましろんが癒し枠過ぎる
:結局シュワちゃんもイッた側だったのか
:先生がヤバすぎて目立たなかったけどシュワちゃんも言動相当やばかったからな!
さて、これでこのゲームセットは終了、GMも交代だ――