VTuberなんだが配信切り忘れたら伝説になってた 作:七斗七
「さて、最初に一応確認するのである。素直に宮内の意見に従うつもりはないか?」
「当然ありえないよ。この自由さこそがライブオンの魅力だからね!」
「ふむ、分かってはいたが、シュワちゃん先輩とは一戦を交えるしかないか……晴先輩はどうだ?」
「うーん…………」
「「晴先輩?」」
晴先輩は、なぜか匡ちゃんの問いに答えず悩んでいるような唸り声を繰り返していた。
ま、まさかここにきて裏切り!? 晴先輩がそっちサイドに付いたら本当にライブオンがクリーンになっちゃうよ!?
「……ん? あ、ごめんごめん! 匡ちゃんのニックネームどうしよっかなーって悩んでた!」
「な、なーんだ、よかった……」
「どうしようかな? シュワッチなんかいいのある?」
「えー突然言われても……匡ちゃん……匡……ただす……ただ……す……」
「お、おい! やめろよシュワちゃん先輩!」
「へ?」
普通に匡ちゃんの名前から良いニックネームを考えていただけだったのに、なぜか非難の声をあげられてしまった。
「どうせ今、宮内をベッドに押し倒して、シュワちゃん先輩になら……匡の体はただっすよ? とか言わせようって考えていたんだろう!? なんて卑猥なんだ、規制しなければ!」
「考えるわけねぇだろ!? っすよとか言うキャラでもないでしょあんた!? というかもうそれはギャグだろ!」
コメント
:出たよ伝統芸www
:1を与えられて10を知って9間違える女
:そんなこと言われたら逆に萎えるわ
そう、これだ。最近匡ちゃんがファンを増やし続けている理由の一つ、それがこの圧倒的な妄想力である。
デビュー配信の最後らへんでもその片鱗が見えたが、どうもこの子はエロ漫画で義務教育を終えたのかと聞きたくなるくらい頭の中がピンク一色である(正確に言うとエロ以外もやばい)。
その逞しさはライブオンで恐らくトップだ、私よりすごい。なんで規制を訴える当の本人が一番その方面でやばいんだよ!
まぁつまり、隠されフェチな部分とこの妄想力が交わった結果生まれた、彼女の面白キャラとしての魅力に惹かれてリスナーになった人が多くいるわけだ。
当初は規制を訴える真面目な人みたいな第一印象だったから、そこに面白キャラとしての親しみやすさが周知され始めたのが良かったんだろうなぁ。なに言ってるのかはさっぱり理解はできないけど……。
「んーどうしよっかな、匡ちゃんなんか希望あるー?」
「ふっ、好きに呼ぶがいいのである。敵になんと呼ばれようがなにも思わんさ」
「そっか! じゃあ『敵』って呼ぶね!」
「ぉぅえ?」
匡ちゃん、どこからそんな声出したの?
「へ? え、敵? 宮内のニックネーム敵!? いやいや、それはもうニックネームではないだろう!」
「えー? でもだよ? 匡ちゃんにとって私は敵なら、私から見る匡ちゃんも敵であっていいわけだ」
「そ、そうではあるが……」
「じゃあ問題ないよね?」
「ええ? いや、問題云々ではなく」
「敵だよね?」
「…………」
「じゃあ敵だね?」
「ぅぅぅぅ……はい、敵でいいでしゅ……」
言い争いよっっっっっっっわ!?!?
「こらこら晴先輩、後輩いじめるのはだめですよー」
「おっといけねぇいけねぇ、反応がかわいすぎて調子に乗っちまったぜ」
「シュワちゃん先輩……感謝なのである」
「いや感謝以前にね、完全にぼろ負けしてたことの方を気にしなさい! 威圧感だけで屈しちゃってたじゃん! よくそんなクソザコメンタルで晴先輩相手にしようと思ったね!? 私でも圧倒できるわ!」
「く、クソザコではない! 今のはあれだ、不意打ちをくらったから驚いただけだ! 信念の為であれば宮内は誰にも負けない! 偉大なる宮内家の一員として、敗北などありえないのである!」
「ほんとかぁ?」
「ニックネームどうしよっかなぁ……誰もまだ呼んでない呼び方がいいなぁ……」
コメント
:ミヤウチィ! クソザコだなオマエェ!!
:ハレルンから敵って認識されたらこの世に安息の地なくなりそう
:竜に噛みついた子犬
:もう空間がライブオンに支配されてるから勝ち目なさそう
「あっ! そうだ、匡ちゃんって生徒会長やってるんだよね? じゃあ『会長』だ! 生徒会長と言えばこの呼び方っしょ!」
「ん……そうだな、それなら全然いいな。ふふっ、よく分かっているではないか! 宮内家にふさわしい権威ある呼び名だ!」
「意外と王道なやつで来ましたね。でもいいんですか? 会長なんて上の立場に対する呼び名にしたら、これからの討論が不利になるのでは?」
「いいんよいいんよ。ただでさえ一期生なんて大層な肩書があるせいで新人ちゃんに壁を感じさせちゃうんだから、こういうところからその壁を壊していかないと。私制服着てるからその点でもマッチしてるしね、学校は違うけど」
「……まさか、エーライちゃんをボスって呼んだのもそれが理由?」
「いや、それはあの子がボスの器だから」
「なんやねん!」
「組長は盗られたから会長はもらうよ!」
「盗りたくて盗ったわけじゃないんですけどね……」
相変わらず自由な人だ……。