魔人~Turns out the deviL~   作:askdoa

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プロローグ

                ~ああ、何だ・・・これは・・・~

 

燃える町並み、崩れたビル、悲鳴をあげ逃げ惑う人々・・・まさに地獄絵図だ。

青年は一人、ただ目の前の状況に絶望するしかない。

 

                ~ああ、何だ・・・これは・・・~

 

炎に紛れ飛び交う影が青年に迫る、それも凄まじい速さで。

影が降りた時、目に映ったのは鎌を持った醜悪な怪物-悪魔-がこちらに鎌を振り上げた瞬間であった。

そのまま目の前が真っ赤に染まる、自らの血肉飛び散る様はさぞ残酷で哀れだろう。

青年は倒れ伏す、何も出来ずに、何も成せずに・・・。

 

             ~なぜ、どうしてこうなってしまったのだ・・・~

 

身体が燃えるように熱くなり、意識が遠のいていく中、無力な自分を呪った。

 

             ~俺が強ければ・・・もっと力があれば・・・~

 

死に行く彼に無情にもとどめの鎌が振り下ろされようとしたその時。

雷鳴の如くあらわれたそれに周囲の悪魔が全て散らされた。

 

                「・・・遅かったかな・・・?」

                 ~! あの娘は・・・!~ 

 

そこにいたのは美しい少女だった。

外観としては年が15にも満たないような幼さに、和服に黒い柄の小太刀、長い黒髪を垂らし

青い瞳が炎に照らされ煌いていた。

 

              「いや、まだ息・・・あるみたいだね・・・」

 

倒れる青年に近づく少女は青年に話しかける。

 

  「ね、言ったとおりになったでしょう?忠告どおりに逃げればこんな目にあわなかったのに」

                  ~・・・・・・~

        (この町は危険になるから早く逃げたらいいよ、これ一飯のお礼ね)       

 

たまたま救った行き倒れの少女の言葉はほんの冗談としか思えなかったのだが

それは現実となってしまった。

青年はうまく出せない声で絞り出す。

                 

              ~俺・・・死ぬんだな・・・~

                「このままならね」

                 ~・・・え?~

 

少女は問う。

  

    「貴方には覚悟がある?例えどんなに辛く厳しい道でも進み切り開き生き抜く覚悟が」

         ~俺は・・・生きたい・・・!まだ死になくない・・・!~

             「・・・・・そう・・・ならっ・・・」

 

少女が自らの胸に手をかざすと、少女の身体から光の塊が出てきた。

それを青年の胸に押し込むと突如青年の身体が跳ね上がる。

鼓動が速まり、痙攣し、何かが身体を暴れまわる。

 

   ~うっ!、おおおおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉ!!!!!!!!!!!~

 

瞳が赤い光を放ち、髪は白く染まる。

飛び上がり、牙は剥き出し、吹き上がる力、今にも暴れだしそうな青年に少女はどこからともなく

槍を取り出し青年に思い切りよく突き投げる。

近くの壁に串刺しになりながら貼り付けられる青年。

 

「さあ!目覚めなさい!!・・・もう貴方は人間じゃあないんだから、それくらい大丈夫なんだから」

             「・・・ん?・・・はぁぁ!?なんだこれ!!?」

 

少女は驚愕と戸惑いと恐怖に入り乱れた青年に説明する、ストレートに。

 

                「貴方はね、悪魔になったんだよ。」

               「悪っ・・・魔ぁ・・・・!?俺がぁ!?」

  「そ、私のおかげだよ?悪魔狩りで貯めてた魔力だいぶ貴方にあげたんだから感謝してね?」

               

あまりの事態に青年は混乱しそうになるが、ふと冷静になると本来死んでいるであろうところを

自分は今生きているのだ・・・他に何が文句があろう。

 

                「そ、そうか・・・悪魔ねぇ・・・」

                「ん、思いのほか冷静だね?」

           「いやほら・・・生きてるだけめっけもんだろ?」

           「へぇ、意外だね。もっと責めてくると思ってた」

     「ここで君のせいにしたら罰が当たるだろ。悪いのは忠告無視した俺だからさ」

                「・・・そっか、ならよかった」

 

少女は責めてこない彼を怪訝に感じたが、理由がわかり少し安堵した。

しかし。

 

   「・・・どうするかな・・・これから、家も家族も住んでた町もめちゃくちゃだ・・・」

             「ねね、貴方さ・・・私と一緒に来ない?」

                   「え?」

 

少女は寂しげな瞳で青年を見つめる。

 

「貴方は悪魔、外見は人っぽいけどもう人じゃないの。だから同類の私と一緒の方が良いよ・・・?」                  「・・・・・」

 

青年は思った、もしかしたら彼女はずっと一人だったのではないか。

一人孤独に悪魔と戦い続けている彼女を想像すると、とても・・・。

 

           「うん、そうしようかな。行く当てないし、うん」

                「・・・あはっ、本当!?」

                  「ああ、本当本当!」

                 「やったぁ!いぇい!」

 

喜び舞う彼女は先ほど悪魔を蹴散らした存在とは思えないほど可憐だった。

状況は最悪だったはずなのに思わず微笑んでしまう。

 

                   「あ、そうそう」

                     「ん?」

                「貴方の名前!聞いてないよ!」

                  「それは君もだろ?」

                「いや、先に言って!貴方が先!」

 

意外と外観相応な我侭に苦笑する青年。

 

             「わかったよ、俺からだな。俺の名前は・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

???「・・・・ん?」

 

眠気のある目を擦り目覚める。

 

???「随分懐かしい夢だったな」

 

彼は仮眠用のベッドから起き上がると洗面所で顔を洗う。

そこには白髪に赤い瞳の自分が映っていた。

 

???「改めてみると・・・不気味だよなぁ、俺」

 

自分の外観を見て、自分は人間ではないのだと今更ながら再確認した青年。

 

???「ま、今更か・・・」

 

一人呟きながら自らの店のカウンターに入り、適当にサッと拭く。

そのとき、-カランカラン-と鈴の音が鳴る。

青年は瞬時に自らを切り替える。

 

   「いらっしゃいませ、人と魔が交わる憩いの場-喫茶魔人(マト)-へ・・・」

   「私はここのマスターを勤めます-マト-と申します、どうぞお見知りおきを」

 

(なにその名前?贅沢だなぁ・・・なんてねっ!一度言ってみたかっただけだよ)

(でもそうだなぁ、もう貴方はそれじゃないんだし名前変えたらいいと思うよ)

(えっ?ええと・・・じゃあ貴方はマト!人から悪魔になったから魔人(マト)ね!決定!)

 

マト「(ったく・・・ひでえネーミングセンスだよな、ホント)」 




初めましてaskdoaです
オリジナルの小説を書くのは初めてですが出来るだけ更新していきたいです
今回はプロローグです、暇なら明日一話を投稿しようかなと思います

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