ISの世界に来た名無しがペロちゃんと命名されてから頑張る話   作:いつのせキノン

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四章、始まります。

本編の前回投稿から半年以上経過してるってそれマジ?


第4章 第二の始まり
「オペレーション はしる!」始動せよ


 

「おはよう。そして一部以外は久しぶりだな。高校生らしい夏休みを満喫できたか?」

 

 織斑千冬のその切り口で、夏休み明け最初のホームルームは幕を開けた。

 

「さて、長期休暇を通して体験しただろうが、貴様達はもうただの一般生徒ではない。IS学園という世界に二つとない学園の、特別な生徒なのだ。休み前、くれぐれも騙されるなという言葉、身に沁みたと確信している」

 

 残暑厳しい季節ながら空調の効いた一年一組の教室は、今の彼女の一言で一つ温度が下がった。生徒達の、特に専用機持ち以外や、国の運営に関わってこなかった子は特に、表情を固くしていた。

 

「兎に角、学園の生徒はトラブルに巻き込まれやすい。重々承知だと思うが、よく自分の立場を自覚するよう意識しろ。痛感したのなら尚更だ」

 

 彼女は一度そこで言葉を区切り、一度教室内を見渡した。

 

「人間、表の顔だけで生きている訳ではない。裏の顔はもっともっと意地汚く醜いものだ。皆々、ここでしかと学び、将来自身の身を守れるよう尽力せよ。幸いここのスタッフは優秀な人ばかりだ、遠慮なく貪欲に、ハングリー精神でぶつかっていけ。私からは以上だ。次は山田先生」

「はい。では私から諸々のお話でーす」

 

 千冬は教壇を降り、代わりに登壇するのは副担任の山田真耶だ。

 休み明けも変わらずほんわかとした笑顔を浮かべる彼女の表情に、教室に漂っていた緊張感は幾ばくか(ほぐ)された。

 

「――――と、以上が事務連絡です。皆さん、宿題はちゃんと提出して下さいね。……さてさて、最後は皆さんに嬉しいお知らせですっ」

 

 つつがなく事務連絡が終わり、真耶は最後、生徒達を見回して笑顔で言った。

 

 嬉しいお知らせ。そう聞いてまず「宿題の提出期限が伸びるのか」だとか「旅行のお土産だろうか」だとか、他愛もない会話がヒソヒソと飛び交った。

 基本、生徒達が思いつく嬉しいお知らせというのはその程度だ。

 そんなにわかに興奮をし始めたらしい教室の様子を満足そうに眺めた真耶は、勿体ぶった先を口にする。

 

「今日はですね、アメリカから講師の人が来られたのでその方を紹介しちゃいますよー」

 

 どうぞー、と。彼女の声の後に教室の扉が開いて人影が入ってくる。一瞬勘の良い生徒は「まさかHR前から待っていたのか?」と勘付いてしまったが、それもその人物を見て思考は彼方に追いやられた。

 

 その顔を見るのは一ヶ月ぶりくらいと言えるか。美人揃いのIS学園内であってもなお目立つ。無駄な肉がなく、かと言って細い訳ではない。整った顔立ちにスラリと伸びる四肢は実に美しかった。

 

「ナターシャ・ファイルスよ。よろしく頼むわね」

 

 名前はナターシャ・ファイルス。彼女のその姿は、一組の生徒にとって酷く目に焼き付いた光景であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやー、びっくりしましたよぉ。まさかファイルスさんが赴任されるなんて」

 

 ここは教員専用の更衣室。整然と並ぶロッカーには個人個人のものが与えられ、真耶はニコニコと笑いながらジャージに着替えていた。

 

「色々と上の方で動きがあったの。例の一件以来ね」

 

 その隣ではナターシャがISスーツの姿で肩を竦めており、その表情はどこか疲れ気味に見える。

 

「上だけではないだろう、あのバカども二人も絡んでる」

 

 二人と背中合わせになる位置では千冬が既に白のジャージに着替え終えており、顔には苛立ちの見え隠れする表情が張り付いていた。

 

「えっと、織斑君の家に今居候してる方々、ですよね?」

「あら、そうなの? てっきりあの()にIS学園が直接交渉したのかと思ったわ」

「それもバカ二人の働きかけによるものだ」

 

 半ば脅しだがな、と最後にボソッと付け加えて千冬は細く溜息を吐く。

 ナターシャ・ファイルスのIS学園講師就任には色々と厄介ごとが絡んでいる。ただでさえ例の『福音事件』の中心人物という肩書が(表沙汰になっていないとはいえ)存在している以上、彼女の取り扱いというのは難しい。

 そう言った脆さを利用して、隠しもせず工作を仕掛けてきたのは千冬の言う“バカ二人”、ウサギとかペのつくおちゃらけた人物だ。何が目的なのかは知らないが、現状出せる案としては無難であったため採用されたのが二人の出した案だったりする。

 

「夏休休業も終わりの(きわ)に無理矢理ねじ込んだんだ。酷い混乱だった」

 

 無難な策ではあったが、ぶっこまれた方はてんやわんやの大騒ぎだ。契約の関係や様々な制約が一度にIS学園に舞い込み、教職員は特に多忙を極めていた。日本が運営しているだけあって教職員の休みはお盆の数日のみ、いかに忙しかったかは総務課でもない千冬が疲れている時点で推して知るべし。

 

「ファイルスさんはIS学園まで何で来られたんですか?」

「空港には迎えが来たのよ。あの娘はPって呼んでたけど」

「ソイツとその雇い主の策略だ、今回の件はな。誰も止める術がなかった」

「あら、じゃあ彼もアナタの家に居候を?」

「ああ、と言っても今日付でまたどこかへ行くらしい。行先は私もわからん」

「わからない方が無駄に気を使わなくていいんじゃなくて?」

「さぁな。アイツらは行く先々でトラブルを起こす元凶だ。とばっちりを喰らいそうで気が休まらん」

「上辺だけの付き合いの方が楽そうね」

「だといいがな」

 

 千冬は一足先に更衣室を出る。ナターシャもISスーツの上にジャージを着込み、真耶と共にグラウンドへ向かった。

 

「ミス・マヤ。ミス・チフユのところにはドクター・タバネがいるのよね?」

「はい、そうみたいです。最初はかなりビックリしましたよぉ、普通なら篠ノ之博士は人前には出ないお人でしたから」

「そうよね、やっぱり。それでなんだけど、そのドクターのお付き人っぽいPって人に心当たりはある?」

「いいえ、残念ながら……。織斑先生もあまり触れてほしくなさそうでしたので」

 

 苦笑をこぼす真耶に、ナターシャは「それが正解かも」と深く頷く。

 

「ここだけの話、ドクターが側に置く人ってのが不気味なのよね」

「篠ノ之博士が接する人は織斑家と篠ノ之家のみですからね。全く無関係だった人な訳ですから、篠ノ之博士の興味を引く相当なモノをお持ちなのではないでしょうか」

「たしかに……」

 

 篠ノ之束に近しいであろう人物と接触した、ということ。一介の軍人でISパイロットであった自分が、と考えれば、何かしら裏があったのでは、とナターシャは考える。まだまだ記憶に新しい『福音事件』に巻き込まれた身、その処遇に興味があるのか、あるいは。

 

「ISの遠隔操作……無人で……?」

 

 歩きながら、あり得るかもしれない可能性を思い浮かべた。夏休み前にIS学園にISの襲撃があったことは当時耳に入れていたし、それが無人だったという情報も入手している。

 

「……杞憂だといいんだけど」

「? どうかされました?」

 

 一歩先を行く真耶が振り返り首を傾げるが、ナターシャは薄く笑って「何でもないわ」と返した。

 

 何でもなければ本当に良いなと思いながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 今日の天気も快晴。夏も終わりに近づいているけど相変わらず暑いなーっと。

 

 どうも、ペロちゃんです。今は北海道にいます。過ごしやすい気温で何より。

 昨日は関東でナターシャさんの送迎とかやってその次の日、今日はここでMやオータムと待ち合わせだったりする。

 よくわからんけど今朝突然依頼が舞い込んで、眠いから無理って言ったら高級寿司奢るからって来たので渋々重い腰を上げた訳だ。束さんとくーちゃんの分もお持ち帰りできるようにしておこう。

 

 今現在は北海道の……どこだろ。とにかく道路と平原しかないとこにいる。本道からわき道にそれてるから余計に人がいない。

 そうしてかれこれ一○分くらい待った。約束の時間まではあと一○分くらいあるから暇だ。座標は合ってるからここであってるはず。でも誰もいないからほんとにここでよかったのか不安になってくるまでがテンプレ。待ち合わせあるあるだと思うんだけど。

 

 とかくだらない事を考えながら炎天下に一人突っ立ってると遠くに車の影が見えた。ありゃオータムがよく乗ってる車だ。わざわざ日本に持ってきたのか?

 どこか高級車を思わせる重いエンジン音が近づいてきて、銀のBMWが目の前に止まった。運転席の窓が開くと、そこにはサングラスをかけた見知った顔が。

 

「レ○バンのサングラス?」

「出会って早々の挨拶がソレかよ」

「冗談だよ」

 

 何だか久々に顔を見たオータム。相変わらず俺の前だと不機嫌そうだ。

 

「よーマドっち。海以来だな」

「何故お前までその呼び方をするんだ!?」

 

 窓から覗き込んで助手席を見れば、大きいシートに似合わない小さな体躯のエムがいた。ちょっと日焼けしたかな?

 

「俺までってことは束さん相変わらず連絡してくるんか?」

「昼夜問わずにだ!! いい加減お前からもやめるよう説得してくれ!!」

「このままの方が面白そうだしヤダ」

「氏ね」

「あボぁッ!? ひゅーひへんひゅーふひははふんはへーほ!?」

「なんでお前銃弾口に喰らって平気なの? 鉄でも食って生きてんのか?」

 

 拳銃を突然ぶっ放すなんて常識ないぜい。あとオータム、俺の主食は普通に米とか肉とか野菜だから。

 

「ぺっ。で、依頼と聞かされてわざわざ関東から飛んできたんだけど何用じゃい」

「アメリカまで出張だ、つき合え暇人(ニート)

「ニートじゃねーし。なんですぐニートゆうの? エムってすぐそーゆーし」

「夏に遊びほうけてる場面しか見てないんだが?」

 

 会ってたね、確かに。俺普通にだらけてたわ。

 

「移動手段は?」

「正規ルートは使えねぇからISだ」

「まぁ別に俺はいいんだけどさ、エムはともかくオータムは地上戦メインじゃなかったか?」

「そこは後付武装(イコライザ)でどうにかすんだよ。お前に心配されるまでもない」

「おぶろうか? 多分俺の強すぎて装甲ごと焼けるけど」

「人が嫌がることを提案するのが好きなのかテメェは?」

「割と好きですねアベェっし!? いてぇ!?」

 

 ビンタされた……あ、マジでいてぇ……。

 

「……ふっ……」

「あー!! エム鼻で笑ったな!? 束さんに例のやつ送り付けちゃる!!」

「!? 待て!! 例のってなんだ!?」

「例のやつは例のやつだ。束さんのことだしきっと喜んであんなことやこんなことに使ってくれるだろう!!」

 

 束さーん!! 期待しとりまっせー!!

 

 

 

 

 

 ま、嘘なんけどネ。

 

 

 

 

 

 




お久しぶりです、キノンです。
やっとこさ四章投稿できました。なんとかなんとか、と言った状況です。

前回本編を投稿したのが7月とか聞いて戦慄。執筆から離れすぎた。
実は四回くらい書き直してて、書きたくもない部分無理矢理書いては納得いかなくて、最終的に全部はしょる方向で落ち着いたのがこの四章第一話です。
ナターシャの送迎は三章ラストにある通りペロちゃんが車でしました。当初はアウディあたり運転させてました。私がアウディ好きだから。
まぁ全部省略しました。ネタがなくて書けなかったんだから仕方ない。

そんな訳でナターシャはIS学園に赴任、てか就職?
そしてペロちゃんはMやオータムと一緒にアメリカへ。まだ行ってないけど。

四章からは結構オリジナル色が強くなる傾向に出てくるかと思います。
三章までが原作の裏話的な立ち位置でしたが、これからは一夏とラヴァーズの絡みも増えていく……んじゃないかなぁ。その時の気分によります。

正直な話、場面に三人以上いると書き分けできない未熟者なのであまり人は出したくないです。なるべく楽に書ける方向で調整します。



次回、再びアメリカに喧嘩を……?
なお、執筆は全く手を付けてない模様。

三月中にもう一話くらいはあげたいな。

ではまた。

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