ISの世界に来た名無しがペロちゃんと命名されてから頑張る話   作:いつのせキノン

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あいるびーばっく→うぇんとぅばっく

 

「うああああああちーちゃんちーちゃんちーちゃんちーちゃんちーちゃんちーちゃんちーちゃんちーちゃんちーちゃあああああああああああああああああああああああああんっっっっ!!!!!!」

「落ち着け」

「ペロちゃんとくーちゃんのシグナル見付からないよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっっ!!!!」

「知ってるから、頼むから耳元で叫ぶのはやめろ。あと肩から手を離せ揺さぶるな」

「だってだってだってだって束さんの得意分野なのに進展何もないしこのままだと2人共迷子になって帰ってこれなくなっちゃうよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっっ!!!!」

「様子を見るにあの男ならその内ヘラヘラ帰って来るんじゃないか?」

「そうだけどおおおおおおおおおそうなんだけどおおおおおおおおおおおやっぱ心配なんだよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっっっっ!!!!」

「えぇい鬱陶しい、私に構う暇があったら解析でも進めたらどうだ」

「やってる!! やってるもん!!」

「いい年こいてもんはやめろ。ぶりっ子め」

「やってられっかあああああああああああっっ!!」

「バカ、『暮桜』に八つ当たりをするな。サンドバックにでもしてろ」

「ないっ!!!!」

「ないなら自分で出せ」

「わかったっ!!!!」

「……はぁぁ、ワガママな奴だ。行方不明なのはいつものことだろうが」

「ホントそうだけど、嫌な事件だったね」

「全くです」

「本当にな。アイツにはいつも手を焼かされ…………うん?」

「うぇんとばっくだ」

「ばっくです」

「……いつ戻ってきた?」

「束さんがちーちゃんさんの名前連呼してたあたりかな」

 

 そう、最初からです。

 

 どうも、ペロちゃんです。現実世界に戻ってきました。

 ダイブ前と同じ『暮桜』保管室なんだけど、部屋の隅で束さんがサンドバックに拳やら指先やら叩き込んでるし○斗神拳とか叫んで「お前もう、死んでいる」とか言ってて、何か突然サンドバックが破裂して砂が飛び散って、たった今ちーちゃんさんがすんごい形相になって束さんに襲い掛かって行ったんだけど。

 

「お取込み中の用ですね」

「じゃあそこら辺のデスク借りてお茶でも飲んでようか。確か持ってきた奴が……あったあった」

「じゃあお湯の方を給湯室から汲んで参ります」

「おー頼むわ」

 

 緑茶の茶葉と急須を出してっと。あとは団子で良いかな。みたらしとー、粒あんとー。

 

「お兄様、お湯をお持ちしました」

「サンクス。あ、じゃあこれ団子ね」

「ありがとうございます」

 

 デスクに4人分のお茶と団子を用意。俺とくーちゃんは一足先にいただこうかね。

 俺とくーちゃんが片面に隣り合って座りモクモクと団子を食べつつお茶を飲む頃、向こうは向こうでデッドヒートだ。

 

「いつ終わるかな?」

「お二方共生身で人外並ですからね。結構長引くかもです」

「お茶はまだいいか。あって良かった魔法瓶」

「ポットって言わないんですか?」

「え、今ってそう言う時代なの?」

「魔法瓶はあんまり聞きませんね。そう仰られるのはご年配の方が殆どかと」

 

 マジかよ。歳とったな俺。

 

「あの、まだハタチですよね……?」

「ああ、俺もすっかり爺さんになっちまった……加齢臭とか大丈夫かな」

「疑いなく自分を年寄扱いしてるお兄様にクロエびっくりですよ」

 

 最近肩が凝ってて痛くてね……。

 

「あああああああペロちゃんくーちゃん!!!!」

「やっほー」

「束様、お茶とお菓子の準備が整っておりますので、どうぞ」

「いつ帰って来たの!?」

「ほんのちょっと前さね。束さんがサンドバック爆散させる前」

「お帰りいいいいいいいいいいいいいいいいいい良かったああああああああああああああっっっっ!!!!」

「おっと、団子が危ない」

「た、束様っ、くる、し……っ」

「おい束、感動の再会前に床の掃除をしろッ!!」

「やだやだやだもっとくーちゃんぎゅーってしてるのー!!」

「顔真っ青ぜよ」

「たひゅけぇ……」

「はーい束さんそろそろ話してあげましょうねー。お茶が冷める」

「ペロちゃんもっ!! 心配したんだよっ!?」

「あーうんうん。ありがとねー、それについては後で色々あったから話すからねー」

 

 くーちゃん諸共抱き着いてくる束さんの頭を撫でてなだめる。こうしてると妹やら娘やらの面倒を見てる気分だ。妹、か……全世界の俺より年下の女の子は妹とかどっかで言ってたな俺。

 さ、その不機嫌そうに頬膨らませてないで席について。ちーちゃんさんの分もあるから。

 

「……恩に着る」

「いいっていいって。さて、全員が席に着いたところでボチボチ説明会と参ろうか」

 

 簡易スクリーンをセット、プロジェクターも出してー、眼鏡かけてー。

 

「オタクみたい」

「だまらっしゃい」

 

 今は先生ですー。プレゼンターですー。はい束さん、頭くらくら揺らして行儀悪いですよ。ちーちゃんさんが今にも千切りそうな視線でウサミミを見てるよ。

 

「こほん。では説明しよう。結論から言うと、『暮桜』はまだ“死んで”ません!!」

「その心はッ!!」

「コアの子と話をしてきたんだ。刀振り回されて危うくデュラハンになるところだった。前髪は犠牲になったのだ」

「束、私にはアイツが何を言ってるのかわからない」

「大丈夫、束さんも混乱してるから」

「お兄様いっつも新キャラ持ち出して来ますよね」

 

 思ってた反応と違う。

 

「まー説明するとだ。ISには各コアに意識が存在して、今回俺は『暮桜』のソイツと会った。ちーちゃんさんみたいに刀振り回すんだ」

「こんな風にか?」

 

 どっから出したのか、刀が閃いて束さんのトレードマークが綺麗さっぱり真っ二つだ。

 

「うわあああああああああああああ束さんの箒ちゃん探知機(チャームポイント)があああああああああああああああっっ!?!?」

「こんなこともあろうかと、ここにスペアが」

「ナイスだペロちゃんッ!!」

「で、説明に戻ると、その意識……名前は“桜”だったかな。彼女曰く、起動プロセスを行おうにも何かが物理的に遮断して来るんだそうだ。ISの起動は操縦者からの命令をコアが読み取って、そっから外装に伝達するからな」

「ペロちゃんいつからそんなに頭良い事言うようになったの?」

「そんな真顔で質問しないでよ。最初からこんなだよ」

「眼鏡も合間って頭が良い人に見えますよ、お兄様」

 

 それ褒めてる?

 

「まぁともかくだ。起動プロセス時のコアと外装の間で邪魔する何かを取り除けば『暮桜』は復活します。以上」

「因みにその何かってのはわからないんだ?」

「本人からも聞いたがわからんってさ。それらしい物は俺もわからんかった」

「ふぅん……でもなぁ、具体的に何かがわからないと直しようもないし」

「話を聞いた、ということはお前は内部でアバターを形成し、現実空間と同じように接した、ということだな?」

「その通りだぜちーちゃんさん。それについて何かあるか?」

「いや、何故そうなったかは後で束あたりと調べて教えてくれれば良い。私は科学的な考察ができる程賢い訳じゃないからな。聴きたい事は、お前はそのアバターで何か見なかったか、ということだ」

「視界に映った何かがその原因かもしれないってことだね。ペロちゃん、心当たりは?」

「んー……微妙だな。そもそも電脳空間は構成言語とかで景色も変わってくるから何が正常で何が異常かってのは中々見分けるのが難しいんだ。取り敢えず俺が見た事で良ければ言おうかね」

 

 丘も谷もないサバンナ、真っ暗な空間、桜の草原、真っ白な空間、最後にくーちゃんと見た真っ暗な空間に浮かぶ水晶石の星。

 あ、俺は水晶石に刺さった状態でくーちゃんに発見された。犬神家するハメになるとは微塵も思わなかったけど。

 それに体感時間より実際に現実で経過した時間は本当に短い。俺は30分くらい話し込んでたのに、くーちゃんや束さんによると3分しか経ってなかったとか。時間の流れが違うってなんか怖い。

 

「シグナルが確認できたのは最初のペロちゃんのサバンナまでなんだよね。でもくーちゃんはきっとその時には水晶の星にいてシグナルの受信できる階層にいなかった……。その後ペロちゃんは暗いところに1回落ちて意識不明。その後は桜の草原、そこから白い空間に逃げて、またまた意識不明。気付けば水晶の星、ね。これでわかるのは束さんの感知できたサバンナの階層のその下、暗い空間に何かしらがあるんだと思う。ただまぁペロちゃんが見れてない以上確証はないんだけど」

「んじゃもっかい見てくるかね」

 

 って言ったら束さんに腕捕まれた。めっちゃ首横に振って残像が見えるんだけど首大丈夫?

 

「ぜっっっっっっっっったいダメ!!」

「なぜに?」

「またどっか行っちゃうかもしれないでしょ!? そうなったら意識が電子に紛れて戻ってこれなくなって危ないからダメなの!!」

 

「クロニクル。アイツらはいつからあんなにイチャイチャし始めた?」

「さぁ、私も把握はしておりませんので……」

 

 原因調査は束さんにより却下されますた。残念。

 

「物理的損傷だとかそんなんじゃ無さげだし、結局のところはシステムのデバッグが一番なんだろうなー。そうなると俺はお手上げだべ、システムなんて何もわからんし。束さん一択じゃろ?」

「確かに束さんはコアシステム作ったけどぉ……実はコアの中身の一部ってブラックボックスのままで解析できないんだよね」

「束様が、ですか?」

「そーなの。地球上の科学や道具だと全く。解析が出来るようになるにはどうしても暗黒物質(ダークマター)が必要になるね。コア自体がその塊みたいなモンだし。コアの構造はわかってるんだけど、コアとして完成しちゃうと突然解析不能になるって言うね。そうなったら中身わかんないからどこからエラーが出てるのかも不明なの」

 

 いつぞやの料理みたいだな。俺とくーちゃんが暗黒物質(ダークマター)を知らず知らずの内に食べていた可能性ががが。

 

「君達コアと一体化してるから食べた所で今更問題ないでしょ?」

 

 そう言えばそうだったわ。

 

「しかしどうするよ」

「いっそのことちーちゃんが中から動かした方が良いと思われ」

「コイツに行くなと言っておきながら私には行けと?」

「ちーちゃんなら搭乗者登録してるから行けるかなーって」

 

 てへっ、と束さん。呆れてモノを言えぬちーちゃんさん。眉間をしばし指で揉んで何か考えてる様子だ。

 

「……一理ある、と言いたいが試すのはやめておく。準備も何もしていないからな。またいずれだ」

 

 億劫そうに言う。嫌だけどやんなきゃならないって感じ?

 

「それじゃあちーちゃんの準備出来たら始めよっか。束さんは予定空いてるからいつでもいいよー」

「束さんに同じく」

「同じくです」

「暇人共め……。……はぁぁ、わかった。目処がついたら連絡する。取り敢えず、さっさと帰れ。一夏から夕飯の買い出しをついでにしてこいとメールが来た」

 

 後で転送しておく、とちーちゃんさん。じゃあさっさとスーパー寄りますかね。確かそろそろタイムセールの時間だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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