ISの世界に来た名無しがペロちゃんと命名されてから頑張る話 作:いつのせキノン
ザギンでシースーしよう。
きっかけは束さんのそんな一言だった。
夕飯が都内某所高級寿司店に決まった瞬間でもある。
え? 描写? ねぇよそんなもん。
取り敢えずお寿司は高級な味がした。しかしあれだ、庶民感覚の俺にしたら恐れ多くてなんかこう、あんまり味は堪能できなかった。個人的に安い回転寿司店に行ってのんびり好きなネタ食ってる方が性に合う気がする。
「いやぁ、やっぱり日本に来たらシースーだねぇ」
「とても美味しかったです」
一方束さんとくーちゃんは堪能したみたい。まぁ2人が満足ならそれでいいっすわ。
「けふー。また大トロ食べたいなぁ」
「私はウニが美味しかったです」
「ああいう店は良いの扱ってるからね。また今度行こうか」
「はい、是非っ」
心なしかくーちゃんの声が弾んでいるような。そう言えばくーちゃんは日本に来るまで日本食と言うものを食べたことがない訳で、日本食と言えばという寿司は今回が初めてだったり。あ、俺はお茶が美味しかったです。
「さーて、じゃあ帰ろうか」
「紅茶の国に?」
「ノン。束さんはきちんと日本にも基地があるのだよ。今までもちょくちょく使ってた本命ラボがね」
ほほう、束さんの本拠地という訳かい。
「ラボ名は『我輩は猫である~名前はまだない~』」
「意味ありげだけど実はないとかそういうオチ?」
「何故バレたし」
当たっちゃったよ。
「取り敢えず、帰ったらまずは掃除から始めないとだな」
「? 何故です?」
「いいかいくーちゃん。束さんはな、まだ後片付けのできないお方なんだよ」
「ペロちゃん今私のこと馬鹿にしたな」
「後片付けできない大人って情けないですよね」
「ぐふっ」
おっとここでくーちゃんの無情な毒が束さんの心を抉るぅぅぅッ!!
「そう言うこった。束さん帰ったらお掃除なー。まぁ明日からでいいけどさ」
「そうだよそうだよ!! まずは旅の疲れを癒すのが先決!!」
逃げやがったぞこの人。咎めはしないけど。いいさ、今度きっちり働いてもらうし。
案の定ラボは散らかってた。しかも放置期間が長かったのか埃も酷い……。
「休憩は中止、掃除が先決じゃい!!」
「はい」
「えー、別に明日の朝で」
「よし、まずは束さんをあの埃の山に投げ込む作業だ。寝てて動かないからいいモップになる」
「サー!! 束さんは全力でお掃除致しますです!! サー!!」
「よろしい。全員マスク着用、必要ならゴーグルもだ。埃を除去しつつ無駄な物を取り除く。使わない部屋を1つ開けて取り敢えずいらない物は一時そこに押し込むぞ」
「了解です」
「では散開!!」
バババッ、とマンガで集団が散らばるように動き出す。何故か束さんはガスマスクを着用してたけどツッコミは入れないでスルーしておいた。
まずはいるものといらないものの仕分けをし、足の踏み場を作る。束さんの指示の下、ケーブルやら精密機器っぽいのをどかして行く。
やっぱりというか埃が舞い上がるがマスクとゴーグルで影響なし。え、ISあるから大丈夫だろって? 雰囲気だよ、雰囲気。フィルターかけると息苦しいんだもん。
「? これは何ですか?」
般若の仮面ですねぇ……何故?
「あ、それいっくんのお土産に買った奴だ。そんなとこにあったんだー」
しばし眺めているとガスマスク付けたウサ耳ドレスがやってきた。貸してー、と言うのでくーちゃんが渡すと、一瞬でくーちゃんに被せた。般若ゴスロリの完成である。
「俺の視界にシュールな人物が2人いるんだが」
「ゴーグルにマスクした不審者に言われたくないかな」
そうか、第3者視点になるとウサ耳ガスマスクドレスと般若ゴスロリとただの不審者が一堂に会してる訳だ。事案発生以外の何物でもないな。
「しかし束さん何故般若面をお土産に?」
「いやー白い奴ならいっくんに似合いそうだなーって思ってたまたま●マゾンで見付けた奴をポチッたの」
「通販かよ!! お土産じゃねぇじゃん!!」
「大丈夫、ちゃんと本格手掘りの数十万するやつ買ったから」
「放置すんなよそんな高いモン!!」
勿体な過ぎるわ!!
「まぁでも渡す時期逃しちゃったし処分でいいかなー」
「いやマジで勿体ないってそれは」
「じゃあペロちゃんいる?」
いらんわ。
「あのぅ、束様。処分するのであれば私がいただいても構いませんか?」
「別に良いけど。ギミックも何もないよ?」
普通の般若面にギミックも何もないよ……。
「いえ、大丈夫です」
と、くーちゃんが被っていた面を頭の横にずらした。うむ、顔が見えるようになったけどシュールなのは変わらんぞ。でもまぁ満足気だし気に入ったのかな。写真撮っておこう。
「って掃除しないとじゃん。続き、再開!!」
パンパンと手を叩いて散開。掃除中に埋もれてた漫画見付けて懐かしくて見たくなる気持ちはようわかるが、綺麗な寝床を確保するのが優先だ。埃屋敷にゃ住みたかない。
「ふぅ」
一室を掃除し終えた後、勢いでそのまま周りの部屋も次々と掃除を始めた俺達。束さんとくーちゃんはどんどん次々と移って行くので俺は先に寝る部屋の準備だとかそう言ったのに手を出してた。
取り敢えず各自の寝床は確保したので後は明日の為にキッチンだとかそう言った場所を整えれば良いんじゃないかと思う。
と、達成感に包まれてると遠くからガッシャンバッタンと騒がしい音が。とてもよろしくない。掃除場所が増える音がするぞ。
「何事だー。束さーん、くーちゃーん?」
部屋を出て音のする方へ。歩いて行っている間にも音はまだ続いており、これはいよいよ何かやらかしたなと確信。
と、不意に廊下の向こうから影が走って来た。正確には、ガスマスクが般若抱えて走って来た。
「ペロちゃんヘルプミー!! ハリーハリーハリー!!」
間違いなく束さんなんだが、声がいつもよりせわしない。慌ててるのが見て取れるが……。この感じ、デジャヴ。
「出た!!」
「いや、出たって?」
「お兄様、もう私は駄目です……」
「くーちゃんもグロッキーやね」
出たんだよぅ、と騒ぐ束さんにぐったりしたくーちゃん全く状況が呑み込めない。何だろう、ただ嫌な予感だけはビンビンするんだがな……。
「ん?」
ゴーグルを外してじっと束さん達が走ってきた方向を注視し、同時に耳を澄ます。何かが、来てる。
あっ、G。
「出たあああああああああああああああああああああッッ!!!!????」
「ぬあぁぁ!! 耳元でうっさい!! 大人がG1匹で騒いでどうする!?」
「あれだけじゃないの!! うじゃうじゃって!! うじゃうじゃぁってぇ……!!」
真っ青な顔してはきそうな表情で必死に状況を伝えようとする束さん。既に声が震えてる。
さて、奴等の方は……、
「…………あー……うん、きめぇ」
ガサガサしてた。何だよアレ気持ち悪いの次元じゃねぇよ……。
「ペロちゃん何とかして!!」
「あれ人がどうにかできる段階越えてると思う」
「どーにかしないといけないんだよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉッ!!!!」
せめて自分で動けって……あ、うん、束さんには酷だよね……。ちょっと肩ガクガク揺らすのやめよっか?
「あの時(Gホイホイ応用編、ナターシャ「ふぁっきん」を参照)のホイホイがありゃまだ楽なんだが……ないよね?」
「あったらとっくに設置してる……あわわわこっちくるぅぅぅぅぅぅぅぅっ!?」
「いだだだだだだだ!? たばっ、痛い!! 締め付けないで!! 俺とくーちゃんの首が絞まってるから!!」
「もうやだああぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああッッ!!!!」
ショックと束さんのチョークスリーパーでくーちゃんがますます瀕死状態に…………息できない。
「よし、逃げよう」
基地の攻略は準備をしてからだ。
引っ付く束さんをそのまま抱えて、くーちゃんの首もきちんと保護してっと。
「心苦しいけど、これも生存戦略なのよねー!!」
ISを部分展開。左腕にグレネードランチャーを構え集団目の先頭目掛けて弾を撃ち込む。床に着弾すると同時に弾が内側から爆ぜて液体が飛び散る。液体窒素だ。まぁ多分動きも鈍るだろう。
「では退却!! どっか適当に転がり込むぞ!!」
そんな訳で、束さんとくーちゃんを抱えた俺は日本に来てからロクに休めぬまま次の寝床を探しに出るのであった……。
さてペロちゃん達は一体どこへ行くのやら……。お楽しみに。
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