ISの世界に来た名無しがペロちゃんと命名されてから頑張る話 作:いつのせキノン
旅行2日目。完全オフの日ということで我々一行海にやってまいりました。ペロちゃんです。
旅館から然程遠くない浜辺。日も徐々に天辺へ近づく頃合、気温も寒すぎず丁度良い。海水浴日和という訳だ。
適当な位置にシートを敷いてる間、くーちゃんは早速波打ち際へ。束さんが保護者で後ろをついて行っている。
ザァァァ、と波が迫り、慌てて下がるくーちゃん。波が引き返すのに連れてまた前に出て、打ち返すのに合わせてまた下がる。可愛いなあれ、小動物か。和む。束さんも面白可笑しそうにくすくすと肩を震わせていた。
「うしっ、こんなもんか」
シートとパラソル設置完了。どうやって持ってきたかって? あれだよ、量子化。めっちゃ便利だよねこれ。クーラーボックスも一応あるんだぜ。中身カラだけど。因みに言っておくと俺が準備したとかじゃなくて既にインストールされてた。何が言いたいかというと束さん本当に何でもかんでも俺のISに入れてたってこと。もう呆れを通り越して笑うしかないね。
タオルとかの荷物を置いてどっかり座り込む。俺は大体が荷物番だ。盗まれて困るようなものなんてないんだけど、取り敢えずは必要ということでここは1つ。
浜辺には他にも観光客がいくらかいるが、いやはやくーちゃんと束さんは否応なしに目立つ。現在は2人ともまだ上にパーカーを羽織って水着を着用しているが、下半身は眩しいくらい白い生足が覗いてる。眼福です眼福。加えてくーちゃんはここ日本の住民からすれば外国人で花がある。銀髪も本当に可憐だ。更に束さん、パーカー越しだというのに自重しないプロポーション、本当にごっつぁんです。もう相乗効果で人目を集めて憚らない。いやぁ、これが知り合いと思うと何て優越感でしょうね。いかん、顔がニヤける。
「お、ペロちゃん設置終わったみたいだね」
「おうよー。まぁ好きに泳いできてくれ。パーカーは預かっておくさ」
「ではお兄様、お願いします」
浜辺から一旦帰ってきた2人がパーカーを脱ぐ。2人とも昨日購入したばかりの水着を着ていた。何となく周りにいた観光客からの視線も増えたように思える。
くーちゃんのは昨日言った通りモノクロの水着。ジグザグのボーダーラインが入ったセパレートの水着だ。腰にはふりふりとしたスカートもあってより可憐さが引き立てられてる。
束さんの方はビキニタイプ。白を基調としたカラーで肩紐は青。ところどころに入っている黒のアクセントが良い色合いで、後ろ腰には大きな黒のリボンがついていた。歩くたびにフワフワしてて目で追ってしまいがちだ。
「……似合ってんなぁ……、」
いやもうホント、眼福過ぎて。ニヤケそうになる顔を取り繕うのに必死なんだ。束さんっていう美人さんにくーちゃんという可愛い子連れてるんですぜ? 嬉しい上に自慢したくなるのは当然のことでしょう、ねぇ? 俺は幸福です、本当に。
水と戯れる様子を見てほっこり。初海でちょっとオロオロしていながらはしゃいでるくーちゃんと完全に保護者な束さんは見てて非常に画になる。カメラ持って来れば良かったな。……え、ある? マジで? あ、あるじゃん、インストールされてんじゃん!! 流石だぜ束さんよくもまぁISにいらなそうなものをこうもたくさん入れてるとはね……。
ふっふっふ、今日の俺はカメラマンなんだゼ。夏の思い出いっぱい撮ろうじゃありませんか。表情豊かなくーちゃんを写真に収めないなんて有り得ない!!
……あれ、このカメラめっちゃええやつじゃないの。一眼レフって言うの? 高級感漂うんですけど……いいのかな気安く使っちゃって。でもこれ以外カメラなさそうだし……。まぁいっか。調べてたらウン十万するとかあったけど俺は見てないよ!!
適当に鞄の中へ手を突っ込んで中で量子状態から取り出す。いかにもそこに入ってました感を装ってカメラを鞄から出してみると、意外にも重い。これが高級製品のオーラか。自分で言っててあれだけど何言ってるんだ。海でテンションちょっと高いのかも。
潮風から保護する為に
気付いたら300枚以上撮ってたみたい。メモリの中を軽く見通してみての感想はとにかく良いものばかりでしたってところか。2人ともいい表情してる。
写真を1枚1枚見ながらほくほくしてると2人が帰ってきた。時間を確認すればもう昼飯の時間だ。ぼちぼち買いに行こうかねぇ。
「荷物番ありがとね、ペロちゃん」
「いや何、写真撮ってたから暇でもなかったさ。ま、昼飯買ってこようかね。適当に焼きそば辺りでオーケイ?」
「何でもいいんじゃないかなぁ。くーちゃんは?」
「私も特に注文の方はありません」
という訳で俺のおまかせに全てが委ねられた。さて何を買おうか。焼きそば、唐揚げ、たこ焼き……なるほど、海の家に行くという手もあったか。
取り敢えず無難にいくつか見繕って選んでもらおうかな、俺は余り物食えれば大体大丈夫だし……。よし、じゃあ屋台を一通り回ろうか。
購入品目。焼きそば2パック、唐揚げ2人前、たこ焼き1皿、お好み焼き1皿、フランクフルト2本。ちと両手塞がったのでここまでで1回帰ろう。後でデザートにかき氷あたり買いに行かないとな……。
なんて思いつつシートの場所に帰るとですね、いたんですよ、男の集団。派手なパンツとアロハシャツ……すっごく漫画とかに出てきそうな程の典型的なナンパ集団。いるんだ、ああいうの。まぁ確かに美人さんを誘いたくなるのもわかるがね。
「海の家とか一緒にどうよ? 全部奢るぜ?」
「………………………………………………………」
男の人達の話なんて最初から聞こえてませんとばかり、束さんはタブレットをいじってるしくーちゃんはタオルにくるまって荷物をごそごそと漁ってた。完全に相手にされてないねあれ。ざまぁないぜ。
「束さーん、くーちゃーん、お昼買って来たべー」
「おー、お帰りー」
ピクピクと頬を引きつらせて固まる集団の横を素通りしてシートへ上がる。突然の俺の登場で彼ら完全に面食らってます、傑作の表情だ、カメラに撮ってレス画像に加工したいくらい。
取り敢えず勝ち誇ったような人の悪い笑みを向けてあげると男達は渋々引き下がってどっかへ消えた。終始俺を睨んでたが痛くも痒くもないね。これが持つ者と持たざる者の違いなのだよ……。
「してあのナンパ達いつからいたの?」
「あー、アレ? ペロちゃんがいなくなって結構すぐだったよ。狙ってきたってワケじゃないだろうけど、たまたまいなかった時に来たからねぇ。ここに来る前も色々と声かけまわってるの見たし」
「正直不愉快でした。あんなに軽そうな男は嫌いです。似合ってない金髪と日焼けなんて醜態を晒してるだけなのに、可哀想な方ですよね」
不機嫌さ丸出しのくーちゃん。まさかカバンを漁ってたのは武器を取り出すためじゃないよな……?
くーちゃんが頬を丸く膨れさせているのを束さんが指で押して遊んでいる様子を尻目に戦利品を並べる。
「身体も全然鍛えてないです。お兄様と比べるまでもありません」
いやだなくーちゃん、照れる。
「そう言えばペロちゃん当初よりガッチリしてるもんねー」
「それほどでも。おかげで腹筋も割れたぜい」
「見して見してー」
と俺のパーカーのジップをあっさり開けちゃう束さん。結構鍛えてるから体脂肪率は1ケタ代が普通だし摘むような肉もない。筋肉はそんなに膨れないから服の上からじゃわからないけど、結構自信はあるのだ。
「さ、触っていいですか……?」
何故かくーちゃんが目を輝かせて恐る恐る触ってくる。こそばゆい。ぺちぺちと触ったりなぞったりしながら「お、ぉぉぉぉ……」と感動してる様子に思わず微笑ましくなってしまう。
「むぅぅぅ、やっぱり筋トレしないと筋肉はつかないか……」
フランクフルトを頬張りながら観察する束さんがチラチラと自分の腕と俺の腕を見比べている。いや、女性はね、鍛えるにしても女性らしさが残る方が良いと思うのですよ俺はね。
「てか束さん筋力もうカンストしてるんでね?」
「まぁ現段階ではそうなんだけどさ……」
悲しそうな流し目をされてもねぇ。
「(束様。二の腕は引き締めないと……)」
「(そんなことわかってるよぅっ!!)」
どうやら俺には聞かせられない話らしい。
取り敢えずお昼ということで俺はお好み焼きをもらうことにしようか。
うむ、やはりただのお好み焼きでも雰囲気が変わればまた美味しく感じる。熱いけど。まぁでも出来立てだしいいよね。
「お兄様が食べてる物はなんですか?」
「お好み焼きー。くーちゃん知らないんだっけか」
「見たのも聞いたのも初めてです」
「食べる?」
って言ったら頷いて口を開けた。一口サイズに区切って食べさせてあげる。
「ほれ、あーん」
「はむっ…………ちょっと熱いです」
はふはふと可愛らしく咀嚼してる。後で気付いたが、これってば彼の有名な「あーん」のあれですよね……くーちゃんは気付いてないけど……何だろう、むず痒い。顔がにやけそうだ。
「ヘイ、仲睦マジイネェ、ペロチャン」
「…………なんでそんなに不機嫌なんでせう?」
「ナンデダロウネェ?」
束さんの笑顔が怖いです。
「束さんもお好み焼き貰っていい?」
「ほい」
「フンッ!!」
「ほげぇ……!?」
パックごと渡したら腹パンされた。
「察し悪いよ!!」
「り、理不尽……」
大丈夫、レバーだから、リバースはなしだ……。
「ご、ご要望とは一体……?」
「……………………せて」
「はえ?」
「…………食べさせて」
「…………………………………………、」
……………………うん?
「…………なんでペロちゃんが照れてんのさ」
考えても見てくれ束さんだぜこの世でも絶世の美人でっせそりゃもう嬉しい反面申し訳ないと言うか俺なんかがこんなことして許されるのかっていうか何故束さんそんなことをご所望されてしかもそれが俺で」
「お兄様、考えてること全部口に出てます」
ウェーイヤッチマッタ。
「…………あー、どぞ」
「う、ぁ、うん……、」
自棄になってもう何も考えないようにする。一口サイズに分けたお好み焼きを持って行き、控えめに開いた口に入れる。
「…………ありがと」
「どういたしまして…………、」
束さんの顔が真っ赤だった。多分、俺も真っ赤だった。くーちゃんは蚊帳の外で美味しそうにふらフランクフルトを食べていた。
それはもう、気まずかった。中から色々込み上げてくるくらいに。
もっと上手くイチャラブ書きたいんじゃあ~。誰か指南してくだち