ISの世界に来た名無しがペロちゃんと命名されてから頑張る話 作:いつのせキノン
この話、IS関係ないよね……まぁ書きたかったから仕方ないね♂
世の中6月。日本じゃそろそろ梅雨入りかなぁ、と根拠のない曖昧な思考をしつつイギリスの曇り空を見上げる。
ナイーブな雰囲気からどうも、ペロちゃんです。イギリスは最近雨続きでさぁ。寒いのなんのって。湿気があるって訳じゃないからまだマシかもしれんけど。
ここ最近は特に大きな動きもないまま日々が過ぎている。アレサがこちらに来た後、
その間は時間を有効利用ということで普通車と大型2輪車の免許をとってた。晴れてマニュアル免許取得である。そんでここしばらくはカタログ見つつ4輪と2輪何乗ろうかなぁ、なんて考えてたら束さんが「自作するから期待して待ってて」と言ってたので待ってた次第。
…………そして飛び出すモンスターマシン。いや、何となく予想はしてたよ? そりゃあ束さんだもの。でもさ、オフロードまで想定した上に最高速が時速250km超えるってどうなのよ。そんなトンデモ技術が必要な場所なくね?
今手元にあるのは2輪だけだが、4輪の方はどうなるのやら……。機動装甲車モドキにならないことを祈ろう。流石に楽しそうに構想を練る束さんは止められん。作ってもらっている以上文句は言えない。流石に性能のおかげで事故ったら文句言わせてもらうけど。
今はバイクの試乗を兼ねて散歩中だ。なるべく人の少ない場所を選んで走ってる。いつかは
町を出発して森を1周するコースを通り、ついでにグラスゴーに寄ってアレサの様子でも見てみよう。どうせ暇だし。
天候は曇りだが衛星情報によれば雨が降ることは無いとのこと。あくまで束さんの推測だが信頼して良し。外れた試しがない。
少々の肌寒さは我慢の上、交通量の増え始めた道を走る。重いエンジン音が道路を駆け抜けて空気を震わせる。この音も中々、乙なものだ。ISを使って飛ぶのとはまた違った走りが心地良い。
しばしバイクを走らせグラスゴーの街へ。英国らしいというか、欧州らしいというか、ともかく日本とはかけ離れた景色を流し見つつ中心街を南下して少し路地へ入りとある事務所前に横付けする。ご丁寧に2輪車用の駐車スペースもあるようで助かる。
「ちわー。アレサー、いるかー?」
中に入ってみるが……返答なし。アレサだもんな、俺に返事を返してくれることなんてそうそうない話ではあるが。いや、でもセンサーに反応もないし……、レーダーにも異常は見受けられない。こりゃお仕事で出張中だったかな。
「あれ、じゃあ何で正面玄関が開いてんの?」
几帳面なアレサが鍵を閉め忘れる筈もない。裏口はわざわざ生体認証セキュリティーシステム(束印の自作製品)があるから破れないとして……建造物に破損も無いとなれば、こりゃあいよいよ空き巣かな。正面扉は普通に鍵だしピッキング技術でもあれば開くだろ、多分。
対応止むなし。ハイパーセンサーのみシステムを起動しておく。1階部分に気配だとか人影はない、とすれば2階か。エレベーターはなく事務所は折り返し階段で上へ登る設計だ。降りてくるとすればここか、あるいは窓ガラスを開けるか。
思うに確か事務所は正面扉を除いて全てが生体認証がアンロックされない限り窓だとかそういうのは一切開かない仕組みになっている、ってくーちゃんから聞いた希ガス。開けれないなら……破るよな、そりゃそうか。
ともかく1階に下ろすのは下策。上下階で二手に分かれられたら対応しきれないので、2階で拘束して警察に突き出すのがいいだろう。よっしゃ、待ってろ犯人。
「オータムのウソつきっ、資料なんて何一つ無いじゃん!?」
「……リネ、声が畜生並に騒音でふぁっく」
時間は僅かに遡り事務所2階。小さな部屋にデスクが4つだけ押し込まれた事務室には事務員でもない2人の人影があった。
見覚えのある茶色のゴーグルを着けたリネと、小さな体躯の無表情なフーコである。彼女らは現在上司にあたるオータムの指示によりアレサの事務所へ侵入していた。表向きは単なるアレサ自身の調査だが、
「……リネ、どいて。解析してる暇は無いから吸い出して支部でログを調べる」
「暇って、アイツは今依頼でいないんじゃ――――っ!!」
遠くから聴こえたバイクであろうエンジン音が事務所前で止まる。窓のブラインドの隙間から視線を覗かせれば、正面玄関前にバイクが止められて男らしき影が降りたところだった。
「最悪だわ、……追手?」
「……か、もしくは別の、私たちと目的だけは一緒の敵」
フーコは既に恐ろしい程のタイピングの速さで備え付けのデスクトップパソコンをハッキング中。リネは横目でその様子を見つつ腰のホルスターからサプレッサー付きの拳銃、コルトガバメントを取り出して入口の横の壁に背を預けて廊下を睨んだ。
「フーコっ」
「……残り20秒。時間稼ぎ」
「了解」
床を蹴り廊下へ躍り出る。人影なし、素早く確認を終えて階段へ足音もなく駆け寄る。顔は出さず聴覚だけに意識を集中すれば階下の音がよく聴こえる。コツコツとブーツの踵が鳴らす音も逃さない。
2人目の侵入者は落ち着いた足音で徐々に階段を登ってくるのがわかる。
「覚悟ぉ!!」
「っ、」
フルフェイスのヘルメットを被った男が階段を登りきる、その直前にリネは角から飛び出し飛び蹴りを放つ。突然の事態に僅かに上体を反らせる男。辛うじてリネの脚を避けるが彼女は更に追撃、重力を気にすることもなく回し蹴りを繰り出した。
「足癖が悪いな」
「なッ!?」
しかし男はあっさりと片腕で蹴りを防ぎ、あろうことか脚を掴んでリネを逆さまに持ち上げてしまったのだ。
「離、せ……ッ!!」
「あ、バカ」
逆さまの平衡感覚の中、男にコルトガバメントを向けて撃つ。弾丸が飛び出し、男の右肩に辺りリネを持っていた右腕が揺らぎ、
「痛いじゃないか」
「なん、で……!?」
しかし弾丸は男の肩を貫くことなく地面に落ちた。至近距離なら、貫通しなくとも弾丸は肩に食い込む筈だ。
「そこを動くな、動けばどうなるかわかるな?」
「……っ、」
男が抜き放ったデザートイーグルが2階奥から出てこようとしていたフーコに向けられる。
男に銃は効かない。リネは自由を奪われた。フーコは銃を向けられ動けない。詰みだ。
「……と、まぁこれで制圧か。俺じゃなかったら逃げ切れてたのに、残念だねー」
「うわぁ!?」
片手だけで男がリネを放り投げお姫様だっこ、2階に上がりきって床に立たせた。
そこでようやく男がヘルメットを脱ぎ、見知った顔に2人は驚愕の声をあげた。
「な、な、なん……何でアンタがここにいるのッ!?」
「何でってそりゃあよ、ここのスポンサーだぞ? 来ないと思うか普通」
素顔を表したのは
「普通考えないわよ!! しかもアンタがこんなジャストなタイミングで来るなんて微塵もね!!」
「対策がなってない、不合格」
「……ドンマイ、リネ」
「アンタも同罪でしょフーコ!!」
「……誰も来ないとは言ってない。寧ろ言ったのはリネの方」
「言ってないわよ!! って言うかアンタが言った罪を擦り付けようとしてるんじゃないでしょうね!?」
「……事実を言ったまで」
おいおいおいおい勘弁してくれ。喧嘩だろ、絶対喧嘩だろこれ。特にリネ、喧嘩腰が過ぎる。顔真っ赤だし。あとフーコ、表情に陰りが見える。絶対無言の怒りとかいうのでしょ。雰囲気やべーよ。てかここですんなよ。
「毎回毎回思うけどアンタっていっつもそうよね、こっちが悪いって言って責任逃れ仕様としてさ!!」
「……現場での経過と結果を踏まえた上での評価を口にしたまで。悪いのはリネ。これは普遍の答え」
「いい加減にしなさいよ!? こちとら聖人君子じゃないしストレスだって溜まるのッ!!」
「……じゃあ勝手に発散でもしてればいいっ、こっちは関係ないしっ……」
「発散してるじゃない、アンタに向かってね!! 元々はフーコが原因なんだから!!」
…………………………………………………………………………、
「…………あのさ、」
「何よ!?」
「……何」
「もうアレサ戻ってきてるんだよ?」
と、階段下に目を向ければ冷めた目でこちらを見上げるアレサがいた。完全に怒ってるアレですわこれ。
「…………P」
「何かな。嫌な予感しかしないけど」
「部外者は、排除する」
「よぉぉぉぉしお前らさっさと逃げちまえよバッキャロウ!!」
首根っこ掴んで窓の外に無理矢理投げた。悲鳴上げてたけど、大丈夫だろ。いざって時はISあるし。
「やぁアレサ。様子見に来たら空き巣がいたから追い払っておいたぞ。知り合いだったけど」
「余計なことを。こちらの業務に支障を出すようなら排除しなければ今後不利になるのはこちらだ」
「お堅いこと言うなって。俺にとっちゃあの子らは後輩みたいな奴なんさ。目の前でやられちゃ胸糞悪い」
「……チッ…………、」
うひゃあ、メッチャ不機嫌。青筋立ってるし。
「ま、まあここは免除してくれ。埋め合わせをまた今度、な?」
「…………………………………………、」
「……えと、またアニメのBDボックス買ってくるから……」
「なら不問とする」
あ、ええんですか。
以前にわかったことだけど、アレサって実はジャパニーズアニメーション大好きな子だったらしい。たまたまパソコンでアニメ見てるところに出くわしてだね……滅茶苦茶気まずかった。
いや、慌てふためくアレサも中々に見物でしたよ。後でぶたれたけど。それ以来アニメの調達は仕事で忙しいアレサに代わって俺がやってる。可愛い部分もあるんだなぁなんて思いつつやってます。微笑ましいことだと思います、はい。
今じゃすっかりこっちにも伝播しましてね。アレサにこっそりオススメを教えてもらって見てたりする。
「あ、多分ダミーのパソコンの中身コピーされてるけど大丈夫かね」
「問題ない。入っているのは仕事に無関係のデータやダミーだけだ」
「なら大丈夫か。じゃあ俺帰るわ。泥棒さんにはキツく言っておくから、2度と来ないようにね」
「当たり前だ。次は問答無用で排除する」
…………ここだけの話、既に何人かが被害にあってるらしいです。全部くーちゃんが管轄しててそこから情報が流れてくるんだ。御愁傷様です、来る場所を間違えた人達。
「殺す気か!!」
事務所を出てバイクの準備中、リネとフーコがおこだった。
「おいおい、あれ以上遅かったら2人ともアレサに排除されてたよ? アレサは少なくとも10人くらい引き連れてリンチにするつもりじゃないと
実際足りないだろうね。いつだったか襲撃があっても組織1つ壊滅させたらしいし。
「はいじゃあ帰りましょ。いつまでもここにいると気分変えて襲ってくるかもしれないから」
「……了解した」
「ぬ、ぅ……わかったわよ」
「よろしい。命大事にねー。じゃ、俺はこれで」
またなー、と手を振りバイクを発進。さて、また会えるのはいつになるかね……。