ISの世界に来た名無しがペロちゃんと命名されてから頑張る話 作:いつのせキノン
現在、北海上空。2機のIS相手に俺奮闘中。今思うとロクに対等なワンオンワンやったことないなぁと思う。一番最初は訓練とか練習を全くしてなかったし、2戦目は俺が1で向こうは2、数的不利ってやつだ。
状況は互角。向こうはとにかく俺の拠点を調べたいから消耗させて逃れたところを追跡するんだろう。長期戦を挑んでくるのは必然。ここで俺を落としても向こうにメリットは発生しない。
中距離に待機していた黒いISに向かってジグザグにサイドブースターを噴かしながら接近。銃を振り回している間に真上からフランベルジェを叩きつけた。避けきれないと見たのか咄嗟に肩にマウントしていた盾を割り込ませてくるが、ここまでは予測済み。衝撃で動きが鈍ったところへ、更に太刀を振り下ろした。盾すらも切り裂き、直接黒いISを斬り付ける。呻き声を上げて北海に突っ込むISだった。俺そんなに勢いついてたかな。
ああでも、俺の戦闘速度は常時音速を超えるとか言ってたな束さん。じゃあ勢いもつくか。俺が音速について行けてるのはシステムのおかげってね。
『(ペロちゃん、スパイクシステムの起動を)』
【スパイクシステム、起動します】
HMDに映されるロックオンサイト。なる程、一点を狙って叩き込めって訳ね。
俺は音速超過の戦闘機動だが、向こうはその3分の2程度の速度でしかない。それでも攻撃を当てきるのは至難の技だ。多分これは相手の移動する先を予測したロックシステム。
『そこッ』
左手のフランベルジェを示す位置へ投合すると見事そこを通りがかった緑のISに直撃しかける。向こうは辛うじてかわしていたが無理な機動を取ったのか少し動きが鈍る。いいシステムだこれ。
今度は
残心を解いてクイックターンを織り交ぜ横にスライド、俺がさっきまでいた場所を弾幕が駆け抜け、その波がすぐさま俺を目掛けて迫ってくる。鋭角に斜め下へ、ほぼ垂直に落ちるように弾幕から遠ざかり、海上付近でマシンガンを構える黒のISを正面に捉えた。俺が飛び出し、向こうが下がる。やたらと弾丸をばら蒔かれては左右に身体を振っても避けきれないので仕方なく俺はソイツの周りを大きく周回して再び緑のISに太刀を持って迫る。
だが、斬りには行かない。半ばで太刀を振り被って投合、同時に両手にレールガンを呼び出して二人へ向けて引き金を引いた。黒のISは余裕をもって回避するが、俺の手放した太刀に意識を避けれていた緑のISはそれをモロに喰らっている。体勢が整う前に
そんな呑気な考えは捨ててすぐに舞い上がる。実はさっきから黒のISによって地味に背中に弾丸を浴びてたのでちょっとヒリヒリする。流石に味方ごと攻撃する気は無かったのか。確かに北海は監視が充分に行き届く場所であるが故にこの騒ぎももうすぐ気付かれる。悠長に仲間を助けてからトロトロと俺を追ってたら軍の厄介になりかねないし。
空になったマガジンが自動的に吐き出され新しいマガジンがすぐに装填された。スパイクシステムのロックオンを併用して狙い、行動する先に弾丸を撃ち込む。回避されるがそれでも5割は当たる。無論俺だってずっと被弾しなかった訳じゃないが、それでもダメージはかなり少ない。
『(ペロちゃん、まだ全力出してないでしょ?)』
『(まだ力を見せる時じゃない。真に敵対する輩が来たら出すさ)』
まだこの人達は味方に近い関係になれる。ならばまだいい。
『(音速下の戦闘でこの程度なら、全力でやるのなんざ相当先になりかねないな)』
その言葉に束さんも『そうだねぇ』と返した。
これが組織のIS乗りの実力なのだろうかと疑問が浮かぶ。
空に昇った後は急速旋回、今度は追いかけてくる黒のISへ向けて全力で降下。レールガンを両方放り投げて量子化させて再び右手に太刀を呼び出した。黒のISも近接用のダガーナイフを展開させていた。
このまま行けばすれ違い様に斬り付けるしかあるまい。俺はひたとその瞬間にかけて集中力を高めた。
落ちる白のISと昇る黒のIS。
黒のISはラファールリヴァイブのカスタム機、
「奴が太刀なら、懐に入れれば……!!」
Aを駆る彼女はPの乗るISの正体を見極めようと必死だった。今、あの白い機体は右手に太刀を持ち急降下してくる。対し、こちら側は両手にダガーナイフだ。向こうの攻撃を片方で受け流し、もう片方を本命の一撃にする。倒さないまでも、手痛いダメージには繋がる筈だ。
接触まで、もう間もなく。
先に動いたのは、白。右手の太刀を逆手にこちら目掛けて刃を振り抜く。彼女はそれにダガーナイフで対応、片方で完全に受け流した。後は、全力でもう片方を振り抜くだけ――――!!
『残念』
短く、彼が呟いた。右手の太刀は完全に受け流した筈なのに、
驚愕した彼女が見えた景色は、自分に迫り来る、ナイフを一刀両断した太刀の刃だけだった。
『中々面白い賭けだったねぇ、楽しかった』
俺は両手に持った全く同じ太刀を量子化してしまいつつ独り言。
『見てたよペロちゃん。とても2戦目とは思えない手際だったね』
『サンクスだよ束さん』
俺が彼女に向かって行ったのは単純なことで、右手に展開させた太刀を見せつけて斬るぞ斬るぞと脅し、逆の左手を本命にしただけのこと。手品師が右手で魅せている間に左手でマジックのタネを作るのと同じだ。
『相手が熱中する人で助かった。初見だから呆気ないくらい見事に引っ掛かってくれたよ』
くはは、と笑う。ここまで上手くいくとは拍子抜けな感じがして笑えてくる。
ただ、今回はマグレだし初見というハンデもあった。それに向こうは俺を落とそうとした訳じゃない。相手が全力でやりあってきてたら変わったかも。
『しばらくは向こうの出処を調べる。また何かあったら連絡してくれ』
『りょーかい。今度くーちゃんにも連絡してあげてね』
通話終了。
俺は成層圏から更にその上、また更に上の熱圏に退避。ここまでくればまず追ってこないだろう。追ってきたらまた突き落とすだけだが。
俺はというと接敵時に付けたマーカーの行く先を観察してる。ナノレベルで小さいやつなのでまず簡単には見つけられない。それをわざわざ装甲の関節部の奥に仕込んでやったのだ。簡単に取れることはない。
しばらくして漸くマーカーが二つ動き出す。片方がもう片方に合流したみたいだ。
それと、これまたISの反応が二つ近付いて来ている。今度は歴とした正規ドイツ軍だろう。俺が以前相手にしたのと酷似した反応もある。
ドイツの第三世代型ISはシュヴァルツェアシリーズだったか。万能機ポジションだとあったね、確か。
しばらくマーカーとドイツ軍の動きを見ていると、どうやら追跡者組は軍をやり過ごして撤退していた。元来たドイツ方面ではなく、ノルウェーの方向へ。支部か何かあるんだろうか。取り敢えず今度は俺が追跡してみることにした。
『クソッ、あの男強すぎるでしょッ!?』
『翻弄されっぱなしだよ、やる気失せる……』
『よくよく考えてみりゃ左手見えないようにしてたのはその為じゃないッ!! だぁぁぁぁぁっ、もうっ、クソッ!!』
『うぅ、まだアザ出来てないから良いけど……今日は何も食べないでいいや……』
『なんだ、二人共帰ったのか』
『あ、オータム……』
『ただいま、帰りました……』
『お前らやけに意気消沈してんな』
『スコールさんから聞きませんでしたか? 二人目の男性操縦者』
『Pとか言う奴だろ』
『捕獲しようとしたら、』
『失敗したわ……』
『はぁ? 二人掛りで仕留められねぇとか……お前らよくISなんか使わせてもらえてんな』
『『うぐっ……、』』
『ISあるからって息巻いてるからそォなるんだよ。ケッ』
『……オータムさん、スゴい不機嫌だった……』
『マズったなぁ……スコールさんになんて報告されるか……、』
『そう言えば、オータムさんはスコールさんと仲良いんだっけ……?』
『これよこれ。抱き合ってんでしょどうせ。女同士で気持ち悪いったらありゃしないわ』
『……聞かれてても、知らないよ……?』
『大丈夫よ。ハイパーセンサーにも映ってないし』
残念ながら、盗聴者が一人いることを彼女達は知らない。
『アタシ、逃げようかな……』
『死にたがり……?』
『死にたかないわよ。もっと平和なとこにでも行ってみたって悪くないかと思っただけ』
『無理だよ。ナノマシンがあるし……』
『内側から殺されるのってどんな痛みなのかしら』
『知りたくはない、かな……』
何でこの人達はそんなグロい話をするのだろうと思う。
『さっさとシャワーでも浴びましょ。これが最後の清めかもね』
『そういうのは思ってても口には出さないで欲しかったなぁ……』
御愁傷様です。さて、支部の場所もわかったし、腹へったから任務中断しましょうかね。ノルウェーって何か美味い物あるかな?
次回とかさぁーまだ投稿できる気配がないんたけどさぁー……。
ごめんなさい、1ヶ月くらい待って下さい……リアルの仕事を片付けてしまわなければ何ともできません故……。