ISの世界に来た名無しがペロちゃんと命名されてから頑張る話 作:いつのせキノン
会長も好きよ?
取り敢えず、お互いに無気力になって落ち着いたところで話し合いとなった。
「君、名前は?」
「わすれました、テヘペロ。――あ、ごめんなさい変なのコッチ向けないで。でも結構ガチで忘れtあばばばばばばばばばばばばばば!?」
「あれ、ホントに記憶に入ってないみたい」
「いきなり何するん!? 痛いよ!!」
「いや、嘘発見器を試す良い機会だと思ったから」
でもいきなりはないでしょいきなりは。
「よし、じゃあ君は今日からペロちゃんだ」
「スゴい適当感。てかそれペットだよね!?」
「束さんは彼の天才こと篠ノ之束さんだよ」
話聞いてよぉ!!
「で、ペロちゃん」
あ、それもう確定なのね。
「君の中に、束さんの開発途中だったISのコアが入ってる。その所為で今の君はPIC制御と高い演算能力、反重力行動が可能になってるみたいなんだ」
「何言ってるかさっぱりわかりません……と、言いたいんだけど、何で俺はそれを理解できてるんだ?」
「……もしかして、ISという単語自体を知っていなかった?」
「初耳だ。少なくとも、アンタと会うまで知らなかった。けど、今は記憶にない知識として知ってる」
「多分、それはさっき言った通りコアが君の中に入り込んでいるから。普通アレが物理的に入るってなると人体的に不可能なハズなんだけど……不思議と溶け込んでるみたいだね」
「今単語がパッと浮かんだんだけど、粒子化ってやつ?」
「恐らくは」
なにそれ、ドラゴン●ールすげぇ。ソレから送られてくる情報量がどんどんと辺りを明確にしていく。床の材質、現在の座標、人体のバイタル、篠ノ之束のスリーサイズ……うん?
「ッ、人の体眺めるとか、やっぱり変態だね」
「ちゃうねん」
ちゃうねん。視界に映るもの全部情報が出るねん。
「えーっと、……お、こうか」
意識すると視界に映っていた数値などが全部消える。なるほど、意識するだけで表示非表示が切り替えられると。
「スゴいなコレ。よくまぁこんなモン作れたな」
「人に溶け込むなんて想定してなかったよ。粒子化とかそういうのは大前提だけど」
「あー、なるほど」
ISは人体よりよっぽど体積的に大きいが、それを小さな粒子として保存することで物理的な大きさの問題をクリアしているらしい。持ち運びに便利だ。
「え、でも待って。そうなると俺の体、兵器と同じなん?」
「そうなるね。まだスロットには何も装備積んでないけど、やろうと思えば乗せられる」
正に人間火薬庫じゃないですか。
「しかしね、」
ニヤリと篠ノ之束が笑う。え? 何?
「機械が相手なら、束さんはいくらでも相手ができるッ。つまりッ、君の頭の中は覗き放題な訳だよ!!」
「な、なんだってぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」
プライベートもクソもないじゃないか!?
「ほら、君は今『プライベートもクソもないじゃないか!?』って思ってる」
「なん……だと……」
筒抜けかよ……。拙いな、妄想少年にとっちゃ黒歴史晒すと同じじゃないか……。
……あ、こうなったら。
「…………あれ、なんか変わった場面が……にゃ!? 何これッ、やっ、束さん!? 待って、ダメッ!! その妄想はダメだからぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!! にゃぁぁぁぁぁああああ、何してんの!? 束さんそんなことしないから!! 止めて、早く止めてってばぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
ガクガクと頭を揺さぶられた。ハッ、俺は一体……。
「何してんのさ!?」
「いや、こうすれば羞恥心で見なくなるかなぁって」
「ッ、頭の中記憶全部抜き出すよ!?」
「………………………………」
「わぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!! ごめんなさいっ、謝るッ、謝るからぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
ヒステリックに叫んで俺の妄想を邪魔する。流石に頭ん中書き換えられるのは勘弁です。
「……えっち」
「はい、チョーシ乗ってすんませんでした」
素直に謝っておこう。少々やり過ぎた。顔真っ赤だし。可愛いけど。
「ッ、かわ……!?」
「む?」
「な、なんでもないッ!!」
頬叩かれた。なんでや。
「でだ、束さんや。ワシ帰りたい」
「え、無理」
「なんでや」
「だって、君IS知らないとこから来たんでしょ?」
「うん」
「じゃあこことは別の平行世界だよ。服装とか言語で君は日本人だとわかるけど、そんな人がISを記憶として知らなかったってことは、この世界じゃ有り得ないことなんだ」
「えー。じゃあ俺異世界トリップしちゃったってことです?」
「端的に言えば」
マジかー。あれ、今更になって未練タラタラなんだけど。アルバイト頑張ってお金貯めて京都一人旅の予定が……。
「うわー。なんかショック。あ、目から汗が……」
「そんなに?」
「ああ、うん。ちょっと努力してお金貯めてきたのに、それが全部水の泡でさぁ。あーあ、どうしよ」
……待てよ?
「あれ、空飛べるならどこでも行けるじゃん。そうだ、京都行こう」
「待てい」
「ぐぇ」
襟掴まないでよ。苦しいです。
「そうか、俺お金ないから京都行ったところで何も出来ないじゃん」
財布は……、あるけどあれからお金おろすとこだったから中に500円しかないし。
「いや、そういうことじゃなくてさ。ペロちゃんはしばらく束さんの元で暮らしてもらうよ」
「なにそれ初耳」
「今初めて言ったからね」
えー。
「ともかく、君は非科学的にしか思えないことをしてくれたからね。それを解明させてもらうために、しばらくバイタルチェックを定期的にさせてもらうよ」
「あれか、健康診断的な?」
「そう思ってくれて構わないよ。採血とかさせてもらうけど」
「あれなー。気持ち悪いよな、なんか自分の血がどんどん抜かれてくって」
「いや、束さんしたことないからわかんない」
「束さん大丈夫なん?」
「まぁまぁ、自分の作ったやつでどうとでもなるし」
羨ましいなそれ。
「でだペロちゃん」
「ペロちゃん言うなし」
「早速バイタルを確認させてもらうよ」
「手ワキワキする必要なくね? ないよね? ……ない、よね……?」
束さん曰く個人ラボの癖にCTスキャンとかあった。ここ大学病院以上にすげぇ施設だ。
たっぷり一時間かけて色々と検査をし、現在は結果待ちである。束さんが空中ディスプレイ(最初は出た時は驚いた)を弄っている間、俺はすることがないので狭い部屋の中でふよふよと空中遊泳してる。これが中々新感覚で楽しい。無重力空間にいるようで、俺はその中を自在に飛び回れる。
「ペロちゃん結果出たよー」
「お、どれどれ」
天井スレスレから体を翻して束さんの近くに着地。ほいっ、という掛け声で空中ディスプレイが飛んできたのでそれを受け取った。
「見る限り体に異常はナシ。血液検査も何も無かったし、異物も見当たらなかったよ」
「はぁぁ、つまり俺はサ●ヤ人になっちゃったのか」
戦闘民族やばい。気とか使えないけど。尻尾ないし。
「飛べるだけだけどね。体に不調は?」
「全くさね。今までより軽い気はするけど悪くない気分だ」
慣れればどうってことない。なんくるないさー。
「束さんや束さんや」
「その“婆さんや婆さんや”みたいな口調やめよ?」
「ここどこでせう?」
「知らない。知ってるけど教えない」
「あれですか、守秘義務的な?」
「束さんが逃亡中で身を隠してるのわかる?」
「初耳」
「隠れてるんだから、ペロちゃんみたいなぽっとでの人にこの現在地教えられるわけないでしょ」
「そっかー。取り敢えず銀行行きたいんだけどなー」
「でもペロちゃんの口座無いでしょここ」
「あ、異世界やん。思い出した。え、じゃあ俺これから一生500円で生活? 一生涯500円生活!?」
なんて無茶な。プロデューサー、自殺しても良いっすか?
「いやほらそこは束さん何とかするよ」
「でもそれって理想的なヒモじゃないですかー、やったー」
「“やだー”じゃないのかい」
「えっ、だって楽して生きてけるんだよ? メッチャ嬉しい」
「やっぱ捨てるか」
「スンマセン、家事とか頑張るんで置かせてください」
「よろしい」
一瞬「何でもしますからっ」って言いそうになったけどやめた。ネタがわかる人にはわかる。束さんはわかっていなくても理解しそうだから怖い。
「しかしだ束さん」
「何?」
「俺ここで何すれば良か?」
「家事全般をやって束さんに感謝しなさい、いいね?」
「アッハイ」
乗せられた気がするけど気の所為気の所為。頑張ろ。
部屋整理しようとして服に触ろうとしたら金的蹴られた。死にたい。
NG
ペロちゃん
「住まわせてください何でもしますからっ」
束
「ん? 今、何でもするって、言ったよね?」
ホモは帰って、どうぞ。