コードギアス 反逆のルルーシュ Request C.C.   作:グリムゼン

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お付き合いいただければ幸いです。


第五十九話 導きはきたる 純粋な悪意が巡る

あれからピザは無事に焼け、そしてまさかのその場にいたユーフェミアが手ずから配るイベントに発展した。

まぁお祭り娘的には、成功したし、何より皇族がそれを認めたことをさらに喜んでいた。

テレビにも大々的に広まったわけだしね。

ちなみにC.C.は髪形を変えて何度も並んだのは見ていてほほえましかった。

人数が足りなくなってたから必ずしもユーフェミア本人が配るわけじゃなかったしね。

行列は本当に長かった。学園祭は事実上ユーフェミアに乗っ取られた感じだ。スザクもいたし。

まぁ、テレビ的にはそのあとのネタの方が大きすぎたんだけどね。

 

行政特区日本

この事が発端になって、それ以降テレビではこの話題一色だ。

どのチャンネル見てもこの話題か、それを無視した子供向けアニメくらいだ。

シャーリーもわざわざこの事について、通信じゃなくてホテルに来るくらい心配してる。

 

「エイス君、これって、黒の騎士団は・・・」

「黒の騎士団だけじゃなく、エリア11全部のテロ組織が壊滅することになるね」

「当然だな。キョウトからの資金提供も無くなるだろうし、加えてイレブンからの助けも得られなくなる」

「私・・・どうしたら」

「それなら、今回は休んだら?」

「えっ!?」

「もともと無理をさせる気はないんだよ。ここ最近色々あったし、武力介入ができない以上、僕たちは必ずしもこれにかかわる必要はないよ」

「でも」

「まぁ、ルルーシュが心配なのはわかるんだけどね」

 

通信機が受信を伝える。

噂をすればルルーシュからのチャンネルだ。

 

「・・・エイス」

「ああ、みんないるよ。行政特区日本についてかい?」

「・・・ああ・・・知っていたか?」

「どうかな。だけどあそこまで突拍子もないことはね。可能性は考えていたんでしょ?」

「ユフィなら、やりかねないとも思ったが。やはり」

「ルル」

「シャーリー・・・」

「私・・・」

「大丈夫、大丈夫だから」

「困ったこと、って言っても今困ってると思うけど、何でも言ってね?私頑張るから」

「ありがとう、シャーリー」

「頼み事でもするか?私たちならできるだろうことを」

「いくつか考えた。だがそのどれもユフィに関わることだ」

「誘拐、殺人、おおよそこれだろうが、お前が取れる手段ではないな」

「そのとおりだ」

 

誘拐になった場合は、こいつの意志にかかわらずブリタニアがエリア11を全面的に押し潰す口実になる。

当然行政特区日本が成立しなくなる以上黒の騎士団に味方する奴らも軒並み消え、日本人らしい判官びいきで黒の騎士団に反旗を翻しブリタニアにつくことになるだろう。

どこまで日本人として生きていくかは別だが。

皇族がした事だから後で将軍等が引き継ぐなぞできるはずもない。

そしてブリタニア皇族が来て代理をするなんてなおありえない。

魔女の窯の底、そして自分から皇族を降りようとしている奴に手助けをする人間なんてあそこにはいない。

 

殺人も大して変わらない。いや、結果的には両方の火種を作った理由が過去のユーフェミアに死だったが。

しかし、いたたまれない。つらく魔王としてあろうとそこにいても、変えられないのはルルーシュだ。

苦肉の策。だが身を切るのはルルーシュと枢木とナナリーだ。訳を知ってしまえばな。

 

「私たちがやったと公にしても無駄だな。世論はすでにそちらに傾いてしまっている」

「黒の騎士団が合流する手もいくつか考えた。そうすれば、エリア11は日本を残して生きていける」

「だが、お前の望みは潰える」

「・・・」

「僕たちが提案できる手段はない。僕たちもそうするしかないと思っていたし」

「分かった。頼むのは、万が一に備え特区日本の周りに伏せていてほしいと思うだけだ」

「死ぬ気か?」

「えっ!?」

「・・・なぜわかった」

「取れる手段がそれくらいなのだろう?それほど切羽詰まっているのもよくわかる」

「だめだよっ!死ぬなんて、ナナちゃんはどうするの!?」

「撃たれる場所によっては」

「撃たれる場所より撃たれたと思う私たちの気持ちを考えてよ!」

「それが、狙いだね?今のシャーリーの動揺が黒の騎士団はじめ日本人全員に伝播すれば、黒の騎士団は正当な大義名分を手に入れる。ゼロがユーフェミアに撃たれた事による弔い合戦になるって」

「それでもっ!」

「シャーリー」

「エイス・・・君」

「死なせるつもりは初めからない。僕たちはそれができるでしょ?」

「でも、でも・・・」

「・・・すまない、シャーリー」

「っ!知らないっ!」

 

シャーリーはそのまま部屋を出て行った。

ホテルを出ていくわけじゃなさそうだけど、それでも許せない事はあるよね。

 

「エイス」

「フォローはしておくよ、ただ、いつかそのしっぺ返しを受けることは覚悟しておいてね」

「シャーリーは・・・あれでいて、力が強いからな。俺も少しは鍛えておいたほうがいいか?」

「さぁね。ともかく、特区日本周辺で待機しておくのはわかった。黒の騎士団との合流は、その万が一が起きてからにするね」

「わかった。頼む」

「わかった、任された」

 

通信機が切れて、部屋にシャーリーが戻ってきた。

泣きはらした目が、もう雄弁に物語ってる。

 

「やるよ」

「いいの?」

「やる。私はゼロのリーシャだから」

「リート、食事の用意だ」

「えっ!?」

「戦前だ、食べるぞ!」

「・・・はーい、手伝ってもらっていい?」

「もちろんだ!」

 

ここから一気に場があれる。

ルルーシュのギアスの暴走が起こるのかは今の私にはわからない。

私に聞いてもいいが、確かあの時は式典の最中に痛みが走った。

つまり、今聞いたとしてもわからないだろう。

なら、今の私たちならこうする。

あのピザではないが、精一杯大きくはらせてもらおう。

食べるぞ!リートのご飯なら食べ放題だっ!・・・ダイエットはしておくか?

 

 

 

翌日、朝早くに起きた。

昨日は私たちは大いに食べた。

リートも一生懸命作って私も隣で料理をして、それを物欲しそうな目で見るシャーリーを見て、

それを後ろでほほえまし気に見ているマオを見て。

先日の学園祭ですこし、すこ~しはしゃいだのもそうだが、楽しかった。

おや、今日もいつもどおりか。

 

「エイレイン様」

「いつも助かる。ん?どうかしたか?」

「いえ、何もございません」

「ほぼ毎日顔を合わせているのがエイスだけだと思ってくれるな。感謝しているんだぞこれでも」

「それは、大変恐縮でございます」

「なにかあったのなら言ってくれ。こちらで改善するようなことならすぐにでも」

「いえ!そのような事は・・・実は、本国から通知がまいりまして」

「ん?このホテルは」

「はい、クロヴィス殿下肝いりのホテルではございますが、ブリタニア本国がお客様の事でお聞きになりたいことがあると仰せになりまして」

「なるほど、マリアンヌ・・・殿下・・・についてか・・・」

「はい、その事をお知りになっておられるお方は一握りでございます」

「だが、その肝心のクロヴィス殿下がまだお目覚めになっておられないと聞くが」

「さようでございます。そこで皇帝陛下御自らお会いになりたいと仰せに」

「な、んだと・・・」

「命令ではございません。その書状をお渡しするか否か、迷っておりまして」

「それは・・・お前たちに迷惑がかかる。そこまでしてもらうわけには」

「大変失礼な物言いになりますが、ご愛顧いただいて、貴族様らしからぬお振舞い。先日のダンスホールにつきましても、お問い合わせがひっきりなしでして。ホテルといたしましてはとても感謝しているのです。当ホテルは、お客様のプライバシーを第一に考えているので、お客様の情報を流してしまったのは不徳の致すところ。すでにチェックアウトなされましたとご連絡すればそれで済むと・・・思いまして」

 

老齢のホテルマンが目じりに涙を浮かばせながら、私に謝罪をする。

だが、シャルルがわざわざこのようなことをするか?

周りの・・・いや、それならその可能性が高い。

 

「いや、いい。よく言ってくれた。近々お伺いいたしますと伝えてくれ」

「!?よ、よろしいのですか!?」

「これからも世話になるつもりだ、チェックアウトはもう少し先にさせてくれないか?」

「かしこまりました。改めまして、こちらが、書状に、ございます」

 

そういうとうやうやしく箱を取り私に渡した。

この手の物は、大体使者が来て儀礼的に伝えるものだ。

だが、国からまして皇帝陛下自身が一般通知の手紙をホテルにながすか?

普通なら大問題だ。普通、ならな。

 

「確かに受け取った。後程確認させてもらう」

「はい」

「決してお前たちの責任ではない。その事もしっかりと伝えさせてもらう」

「恐悦至極に存じます」

「では、朝食をいただかせてもらおう。今日もおいしいのだろう?」

「はい、本日も自慢の朝食でございますれば」

 

リートとマオはちょうどよく寝ていた。

これを伝えるのはリートだけでいい。

マオにはまたやってもらわなければいけないことがある。

 

朝食を食べた私たちはホテルを出て一路富士山へ向かった。

今日は行政特区日本の発足日

できうる手段は『とある偶然』のおかげで何とかなった。

 

「リート」

「ん?なにC.C.」

「シャルルからの手紙だ」

「えっ!?なんで?」

「さぁな、それこそお前がナナリーやルルーシュに会いに行ったときにでも話したんじゃないか?」

「予感に近い?」

「私もどうだかな、と言ったところだ」

「どちらにしても確定しているからね、それならそれで別にいいよ」

「そうだな」

「エイス君、セレスさん」

「おっとリーシャ、ここではヴィエルだぞ?」

「あ、すいません」

「で、どうした?」

「伏せてて、って言われましたけど、私たちならステルスで見えませんよね?」

「そうだな。それがどうかしたか?」

「それなら式典会場に行きませんか?上空からそれを見てみたいです」

「ほう、どうする、リート」

「そろそろ僕たちが飛行できるのを隠さなくてもいいとおもうし、それでいいよ」

「ゼロが心配なんだろう?リーシャ」

「えっと、まぁ、その・・・はい」

「まぁまぁC.C.僕としてもその方がやりやすいからそれでいい?」

「わかった。マオお前は使うつもりか今回」

「しかたないと思うしね。耳障りな声は聴きたくないけど」

「分かった。逐一伝えてくれ」

 

シャーリーからのわがままというかお願いで僕たちは式典会場上空に陣取った。

辺りはほとんど日本人。

式典の壇上には幾人かのVIP。将軍ダールトン。

あっ、ルルーシュもガウェインに乗ってC.C.と一緒に来た。

見そびれたけど、ユーフェミア・・・も・・・そこに・・・

えっ?

 

「・・・マオ」

「・・・うん」

「・・・シャーリー」

「・・・そうだよね」

「・・・C.C.」

「・・・ああ、リートもそうか?」

「・・・うん」

 

世界は私たちに明確な宣戦布告をしてきた。

そのうえ、私とリートにしかわからないやり方で。

マオとシャーリーは違和感を覚えているが、あくまでそれだけだ。

そしてリートは知識でしかそれをしらない。

当時の当事者だったのは、私だけだ。

辛く葛藤するルルーシュはよく覚えている。

だが・・・世界はここまでやさしくなかったのか。

それとも私が、過去を変えたいとリートに願ったからなのか。

悪辣すぎる。まさに人間がやることではないな。

そうまでして、その名前を、世に知らしめたいのか。

 

僕はリートやC.C.ほど物を知らない。

でも今、僕が感じている違和感はシャーリーも感じている。

そしてその違和感に二人は・・・激しい憎悪。

ギアスが効かなくても、画面で見なくても言葉でわかってしまう。

この二人がここまでの感情を表に出すのは、まずないから。

 

画面越しで、このなんていうんだろう。

その人がなんかこう、違うっていう感じ。

でも、参加している人は気づいてないってことはやっぱり。

 

僕たちは、歴史を壊す決心をした。だから今ここにいる。

現実を見ろってよくルルーシュに言った。

だからこそ僕たちは現実を見なきゃいけない。

だけど、だけどさぁ、そんなのってない・・・

 

 

 

表情が抜け落ちる。

一瞬誰ともわからない、明確な悪意の仮面をかぶり、それを乗っ取る。

その醜悪な笑みは、きっと・・・誰も気づいてない。

 

 

―――――――――あれは、誰

 

―――――――――役者はそろいましたね。では、

         日本人を名乗る皆さん。

         お願いがあります。死んでいただけないでしょうか?




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