灰色ドラム缶部隊   作:黒呂

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オッゴは永遠に不滅です


エピローグ 0081

宇宙世紀0081年……一年戦争と呼ばれる凄惨な戦争が終結してから早くも一年が経過した。しかし、総人口の半分以上を失った戦争の傷跡を癒すには一年では足らず、本格的な再興はまだまだ先になりそうだ。

 

戦争を引き起こしたサイド3のジオン公国も以前のジオン共和国へと名前を戻し、政治体系もザビ家の滅亡により独裁政治から民主政治へと移行していった。

公国軍も軍縮を兼ねて解体され、サイド3を守るのに必要最低限の戦力を保持した共和国軍へ再編された。因みにア・バオア・クー戦での撤退に成功した空母ドロスも軍縮の対象と見做され、戦後は連邦政府の命令に従い解体処分されている。

 

地球連邦政府との停戦協定の中でジオン共和国は自治権の獲得に成功した他、一年戦争で発生した戦争責任もザビ家に帰結させる形で決着が付いた。

 

その代わりに地球連邦の復興支援を得られず、翌年のコロニー再生計画の参加で得られた助成金を事実上の復興予算として宛てている。連邦政府の嫌がらせのようにも見えるが、実は地球連邦の受けた損害の方がジオンよりも遥かに凄まじく、正直に言えば敗戦国相手に救済の手を差し出す余裕などなかったのが実情だ。

 

他にも問題は山積みだ。その中でも特に深刻なのは、生き残ったジオン公国軍のゲリラ化である。

戦争が終結する直前、ア・バオア・クーから撤退した残存部隊、グラナダやサイド3に残っていた宇宙軍は連邦軍への投降を良しとせず、アクシズや暗礁宙域へ逃げ延びていった。地球に取り残されたジオン公国地上軍も共和国の投降勧告を拒否し、アフリカを中心にゲリラ戦を繰り広げながら地下に潜伏し続けた。

宇宙と地球でジオン残党軍は地下勢力化への道を辿り、何時かまたジオンが再起する日が来るのを夢見ながら長い年月を待ち続けるのであった……。

 

まだまだ前途多難のように見えるが、それでも人々の足は着実に再生に向けて歩み始めていた。その中にはオッゴを生み出し、オッゴと共に戦争を駆け抜けた特別支援部隊の姿もあった。

戦後、嘗てジオン公国軍に属していた者達は再編された共和国軍に残るか、除隊して新たな生活を生きるかの二つの生き方を選ばされた。特別支援部隊のほぼ全員は後者を選択し、新しい人生を一からスタートされた。

 

戦争が終わったばかりで不安定な情勢の中、そう簡単に手に職を得られるのだろうかと言う不安は誰もが持っていた。が、予想外にも除隊した早々にコロニーの製造・修理を担う大手企業からスカウトの声を掛けられたのだ。

だが、これは決して不思議な事ではない。一年戦争によって多くの貴重な人材が失われ、何処も彼処も人員不足であるこの世の中、機械に精通し、尚且つ大型作業機を操れる人間は重宝される存在であった。

特に特別支援部隊は後方任務の修理や補給活動、衛星ミサイルの製造やミサイル砲台の設置などで豊富な経験と実績を持った集団だ。コロニーみたいな大型の物を扱う企業にとっては、喉から手が出る程の人材の塊だったのは言わずもがなだ。

 

特別支援部隊の殆どはこのスカウトに対し二つ返事でOKを出し、軍人から大手企業の社員として新たな人生を歩み始めたのであった。

 

世界各地では不安定な情勢が続き、漸く手に入れたこの平和が何時崩れてしまうのではないかと不安に駆られる日もある。それでも彼等は今の世界を受け入れ、少しでも良くなる事を祈り、また少しでも良くしていこうと思いながら日々を生きている。

 

それがあの凄惨な戦争を生き延びた彼等が出来る、この世界に対するせめてもの償いなのだから……。

 

 

 

特別支援部隊に関して明らかとなっている記述は此処までだが、部隊に所属していた一部の隊員達、そして部隊の関係者のその後は以下の通りとなっている。

 

ダズ・ベーリック:特別支援部隊の母艦メーインヘイムの元艦長。戦後は某コロニー建設会社にある輸送部門の責任者となり、持ち前の指揮能力を遺憾なく発揮し、機材の運搬に努めている。因みに彼等の母艦であったメーインヘイムも建設会社に所有権が移り、今もコロニー建設に必要な機材を運搬する輸送船として使用され続けている。

 

ボリス・ウッドリー:特別支援部隊の母艦メーインヘイムの元副艦長。ザビ家の私刑によって特別支援部隊に左遷されていたが、ザビ家の支配が終わったのをきっかけに共和国の呼び掛けに応じ、共和国軍の重役に就く。戦前から有していた高い後方支援能力を活かし、共和国再建の為に力を注いでいる。

 

エド・ブロッカ:特別支援部隊に所属していたオッゴ隊の一員。戦後は多くの仲間と共にスカウトを受けたコロニー建設会社に就職する。そこでも彼は愛用のオッゴに搭乗し、コロニーの建設と修理に専念する日々を送る。因みに作業中に人の声が聞こえるなどという発言もあり、NTではないかとも言われているが、その詳細は謎のままである。

 

ヤッコブ・ブローン:特別支援部隊に所属していたオッゴ隊の一員。エドと同様にコロニー建設会社に就職する。以前から個人商売をやっていたという実績を買われ、エド達の居る建設部ではなく、営業部の方で充実した日々を過ごしている。時折、オッゴに搭乗し、エド達と肩を並べて仕事する日もあるようだ。

 

カリアナ・オックス:義体部隊の整備士として特別支援部隊に編入された技術士官。戦後は彼女が所属していたツィマッド社に戻ったものの、間も無くして本社がアナハイム・エレクトロニクス社に吸収合併されてしまう。またビグ・ラングを操縦していた経歴を買われ、技術者兼テストパイロットとしてアナハイムから正式にスカウトされると、それに応じて本社が置かれてある月面のフォン・ブラウン市へ移り住んでいる。

 

カナン・チェコノフ:突撃機動軍に所属していた将校。特別支援部隊に対し高圧的な態度を取っていたが、戦後のサイド3で彼女の姿は確認出来ていない。恐らくア・バオア・クーからサイド3へ撤退した後、連邦軍の本土侵攻を危惧し、サイド3に駐留していた防衛艦隊の半数と共に連邦軍の手が届かない暗礁宙域かアクシズへ逃げ落ちたものと思われる。消息及び安否は不明のままである。

 

オッゴ:戦争終結をきっかけに数多くのジオン製MSや試作兵器が連邦軍に接収されていく中、唯一共和国の手元に残り生産が許された。これは同期のボールよりも一回り性能が高いだけで、MSに比べれば脅威は低いと連邦政府が判断したからだ。武装の代わりに作業用アームを増設し、優秀な作業機として戦後もコロニー修復などの作業で活躍している。また生産された一部は武装を施され、共和国軍の戦力として使用され続けている。

 




長い間、ご愛読して頂き誠に有難うございます。このエピローグをもちまして、灰色ドラム缶部隊は完結となります。最後まで書けるだろうかという不安もあり、スランプもありで四苦八苦でございましたが、こうやって最後までやり遂げる事が出来て一安心でございますw
個人的に各キャラのその後とかを考えるのが楽しくて仕方がありませんでした(笑)

では、改めて本当に有難うございました!!

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