もし一夏が最強だったら   作:猫林13世

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今回は千冬戦。
すっごい疲れました・・・


模擬戦開始VS織斑千冬

ナターシャさんをピットに抱えていったら、そこには千冬姉が仁王立ちで待ち構えていた。

 

「一夏!お前はお姉ちゃんを差し置いて、何でナターシャをお姫様抱っこしてるんだ!」

 

「色々ツッコミたいが、ナターシャさん動けないからピットまで運んだに過ぎないだろ。」

 

「大体、実戦経験のあるナターシャがあれくらいで足が震えるなんて情けないぞ!」

 

「経験あるからこそ動けなかったんだろ。」

 

「さすが一夏君。あれは実戦だったら死んでたかもしれないわよ。」

 

 

実戦なら相手は容赦しない。

エネルギーが切れたからと言って攻撃を止める訳ないし、相手が無防備ならなおの事だ。

 

「実戦を知っているからこそ、一夏君の動きが恐ろしかった。」

 

「だが、ISを使っての戦闘は中々起こらないだろ。」

 

「その中々が起こりそうだから訓練してるんだろ。そもそもISだって万能じゃ無いんだろ?」

 

「まあエネルギーが切れたらただの鉄の塊に過ぎないからな。」

 

「そのエネルギーが尽きたら終わりの訓練とそれでも終わらない実戦じゃ感じる恐怖が桁違いだろうしな。」

 

 

だからこそ俺の動きはあれだけナターシャさんを恐怖させたのだろう。

敵が視界から消える、これは相当な恐怖だろう。

零落白夜だって実戦で使えば十分な殺傷能力を持つ技だ。

実際バリア無効攻撃な訳だし、訓練でも注意しなければ怪我を負わせる可能性だってある攻撃だ。

 

「兎も角、ナターシャさんを送り届けるために抱えただけだ。ナターシャさんに不快な思いをさせたかもしれませんが、この方法が一番手っ取り早かったので。」

 

「いえ、私は別に///」

 

「そうですか?なら良かったです。」

 

「一夏!」

 

「何だよ?」

 

「次は私と模擬戦だ。」

 

「順番的にそうだろうよ。」

 

「ならさっさと自分のピットに行け!時間は有限だぞ!」

 

「何怒ってるだよ・・・」

 

 

急激に機嫌が悪くなった千冬姉に追い出される感じで、俺は自分のピットに向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて、ナターシャよ。」

 

「な、何ですか千冬さん。」

 

 

一夏君か居なくなってすぐ、私は千冬さんに詰め寄られた。

まだ足が震えているために、この場から逃げ出す事は出来なかった。

いや、例え動いたとしても逃げる事は不可能だっただろう。

何故なら、私に詰めよる千冬さんの姿はさしずめ冥府の御使いの様な恐怖感を与える感じだった。

 

「貴様、私の一夏に随分優しくされているじゃないか。」

 

「そ、そうですか?一夏君は基本的に優しい男の子ですよね?」

 

「当たり前だ!一夏は優しい子だ!」

 

「なら問題ないのでは・・・」

 

 

せっかく一夏君から感じた恐怖が引いてきたのに、また違う恐怖で足が震えてるよ。

戦闘で感じる恐怖ではなく、ただプレッシャーを与えるだけで恐怖させる千冬さんは、やっぱり人間では無いのかもしれない。

 

「問題大有りだ!」

 

「ヒィ!」

 

「何で一夏はお姉ちゃんには厳しくて他の女には優しいんだ!」

 

「思春期の男の子なら普通では・・・」

 

「私はたった一人の家族だぞ!なのになんで一夏は私にカミナリばっか落とすんだ!」

 

「それは自業自得では・・・」

 

「一夏のカミナリは怖いんだぞ!」

 

「ですから自業自得・・・」

 

「だが、病み付きになる不思議!」

 

「・・・・・」

 

 

この人は大丈夫なのだろうか。

急に恐怖感が霧散し、変わりに呆れが私の感情を支配した。

 

「・・・は!今のは聞かなかった事にしてくれ。」

 

「ですが・・・」

 

「良いな!」

 

「はい!」

 

 

再び私に迫る千冬さんのプレッシャー、聞かなかった事になど出来るはず無いのだが、私はその事を忘れるように努力しようと思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「一夏様、次はいよいよ千冬様との模擬戦ですね。」

 

「三人の中では間違いなく一番厄介な相手だろうな。」

 

「どれだけ人数が居ても、一番厄介だと思いますよ?」

 

「・・・そうかもな。」

 

 

何て言ったって世界最強の称号を持つIS乗りだ。

ISの世界大会であるモンド・グロッソで無傷で連覇を達成してそのまま現役を引退。

公式戦、模擬戦で負け無しの伝説を打ち立てたすべてのIS乗りの憧れの存在のはずなのだが、その実態はとても残念なのだ。

その事から、俺はイマイチ千冬姉の強さが分からない。

実際強いから無敗で連覇など出来たのだろうが、生憎その試合を見る事無く誘拐されたからな。

決勝での千冬姉は今迄で最高のパフォーマンスをしたと評されていた。

映像は残ってるのだろうが、実際に見るのと、映像で見るのでは感じ方が若干違ってくるから見る事は無かった。

 

「一夏様なら平気ですよ。幾ら千冬様が無敗だろうと、一夏様だって無敗記録をお持ちじゃないですか。」

 

「俺のは精々学生の試合だ。世界最高峰で無敗なのとは凄さが全然違う。」

 

「ですが、楯無様は国家代表ですし、簪様や布仏姉妹だってかなりの実力を有していますよ?」

 

「本気で戦えば勝てるか如何か・・・俺の戦い方は半分自爆みたいなものだからな。」

 

「その作戦が有効な内に経験を積めば良いんですって!」

 

「でも、一番はこの力が必要なければ良いんだがな。」

 

「私の存在を否定するんですか!?」

 

「束さんの暇つぶしが今の世の中の根源だからな、ISもその一つだろ。あの人が別な暇つぶしを見つける前に世の中が安定するのが一番良いんだ。ISを兵器として使わない今の現状を恒久的に出来れば最高なんだが・・・」

 

「一夏様って本当に15歳なんですか?」

 

「何だいきなり。」

 

「だって何処かの思想家のような事を言い出すんですもの。一介の高校生が考える事じゃ無いですって!」

 

「元凶が身近に居るとこう言った考えになるんじゃないか?」

 

「それは・・・」

 

 

俺の考えはそんなにおかしいものなのだろうか。

大天災と知り合いで、ISを世界的に有名にした世間的には正体不明の白騎士が実の姉なのだからこれ以上酷い世の中に成らない事を願うのは普通だろ。

 

「兎も角、大きすぎる力を持ったからと言ってその力を使わないのが一番良い事なのは変わりない事実だし、もし使う事になっても、その一回で終わるのが好ましいんだよ。」

 

「やっぱり普通では無いですね。」

 

「今更だな。」

 

 

俺が普通では無い事くらい出会った頃から分かりきった事だろうが。

女性にしか使えないISを男の身で使えている時点で普通では無いのだ。

あと何個の普通じゃ無いがあってもおかしくは無いだろ。

 

「さて、そろそろ時間だろ。須佐乃男、エネルギーは回復してるか?」

 

「え、ええもちろんです。」

 

「それなら準備するぞ。相手はあの千冬姉だ。」

 

「姉弟対決ですね。」

 

「まともに勝負するのは初めてか?」

 

「一方的にカミナリを落とすだけですからね~。」

 

「剣道でもないかもしれん。」

 

「小学校の時の話ですよね?確か一回だけ試合をしたって・・・」

 

「あれはまともな試合じゃない。そもそも始めて数日の子供と師範代クラスの実力を持った高校生じゃ試合にならないだろうが。」

 

「でも善戦したんですよね。」

 

 

それはまあ・・・

そもそも千冬姉は本気じゃ無かったし、俺もあれが本気だと思ってなかったからこそ相手にならないと言ってるんだ。

試合の内容は兎も角、実力ではまったく相手にならなかっただろう。

ある程度実力のある人間があの試合を見ればそう判断するだろう。

 

「生身とISでの戦闘は違うだろ。引退したとは言え世界最強、油断してるとあっさり負けるぞ。」

 

「負けるのは一夏様であって私ではないですよ~。」

 

「大体一緒だ。俺が負ければお前も負けるんだ。」

 

「なら勝ちましょうよ!」

 

「善処はするが、断定出来るほど自信がある訳でも無い。」

 

「それでも私は一夏様が勝つと思いますよ。」

 

 

いらんプレッシャーをかけてくれる。

専用機であり彼女でもある須佐乃男にそう言われれば、勝たない訳にはいかないだろ。

俺は少ない勝機を見逃さないように注意しようと決心した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて一夏、お前とこうして戦うのは初めてだな。」

 

「そうだな。お互い何の因果か無敗記録を持ってるからな。その記録がどっちにしろ止まるんだ、良い試合にしよう。」

 

「一夏の記録が止まれば、私はこの後も負ける事は無いだろう。」

 

「千冬姉の記録が止まれば、俺は世界最強に黒星を付けた事になるのか。」

 

「お互い全力を尽くそう。」

 

「姉として手加減するつもりは無いのか。」

 

「加減したらこっちが危ないだろうが。」

 

「違いない。」

 

 

開始の合図を待つ間、俺と千冬姉は普段通りに会話をしていた。

手加減をしてほしいが、千冬姉が勝負事で手を抜く事は無いと分かっていた。

だが、万が一があるかもしれないから聞いたが、やっぱり断られた。

 

「(一夏様、私も出来る限りの力を尽くします。頑張ってください!)」

 

 

俺も簡単に負けるつもりは無い。

勝つにしろ負けるにしろ、無様な試合はしないつもりだ。

試合に集中するために、目を細めた。

すると千冬姉が変な動きをしている。

 

「如何かしたのか?」

 

「いや、一夏に見つめられて恥ずかしいんだ。」

 

「色々台無しだぞ・・・」

 

 

緊張感が霧散してしまった。

まさかこれは千冬姉の作戦なのか?

 

「(いえ、単純に一夏様に照れているだけかと・・・)」

 

 

だよな・・・

あの姉がこんな回りくどい作戦など使うはずが無い。

今度は変な誤解をされないように目を瞑り集中する。

余計な事は考えるな、今に集中するんだ。

雑念を頭の中から追い出し、再び集中力を高める。

 

「準備良いですか?そろそろ始めますよ~。」

 

 

山田先生の間延びした声で、そろそろ開始だと告げられる。

千冬姉の機体は打鉄だ。

今迄の二戦とは違って近距離戦になるだろう。

互いに近距離戦を得意だから間合いには入りたくない。

千冬姉も同じ事を考えているだろうな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一夏が集中しているのと同じ時、千冬の脳内はと言うと・・・

 

「(集中している一夏を見るのは良いもだ。普段の一夏や怒った一夏も良いが、やっぱり集中したり考え事をしている時の一夏の顔が一番カッコいい。)」

 

 

試合の事そっちのけで一夏の顔に見とれていた。

 

「準備良いですか?そろそろ始めますよ~。」

 

「(おっと、もうそんな時間か。一夏の間合いは私の間合いとほぼ同じ、注意してないとあっさりやられるからな。)」

 

 

真耶の合図で集中し始める千冬。

試合になれば集中出来るようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「(一夏にカッコいい所を見せるチャンスだからな!)」

 

 

集中する理由は相変わらずだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それじゃあいきますよ~。3・・・2・・・1・・・」

 

 

山田先生のカウントが減っていくにつれて、千冬姉の表情が引き締まっていく。

あの人に世代差は関係無いだろうし、実力で言えばあっちの方が数段上だ。

俺が出来るように、千冬姉も暫劇を飛ばす事が可能だ。

遠くから攻撃する事が出来るも此方だけでは無いから、此方の有利はまったく無い。

唯一有利に進める事が可能だった通信攻撃は使えない。

覚悟を決めて真っ向勝負と行きますか!

 

「(一夏様、その考え方は前向きで良いですよ!)」

 

 

須佐乃男もやる気だ。

後一つのカウントを待ち、俺は覚悟を決めた。

 

「0、模擬戦開始で~す!」

 

 

気合を削ぐような合図と共に、俺と千冬姉は間合いギリギリまで移動した。

やはり考える事は同じか。

 

「来ないのか?」

 

「そっちこそ!先手を譲ってやるから来いよ!」

 

「馬鹿言え!お前こそがむしゃらに掛かって来い!」

 

 

互いに声を張り上げ挑発する。

下手に飛び込めばやられるのは必至。

その事が互いに分かってるからこそ迂闊に攻められない。

恐らくこの模擬戦で切り結ぶ回数はそう多くないだろう。

 

「じゃあこっちから行こうじゃないか!」

 

「む!」

 

 

瞬間加速(イグニッション・ブースト)からの高速移動、この移動方法は千冬姉の得意技だ。

一気に間合いを詰めたが、同じように移動した千冬姉と衝突した。

 

「訓練機でその速度、相変わらずえげつないな!」

 

「一夏こそ、この攻撃を防いだのはお前が最初だ!」

 

 

互いに剣を展開しており、鍔迫り合いとなった。

 

「さすがにキツイか。」

 

「そのようだな。」

 

 

互いに今の状況では決めきれない。

再び間合いを取るため、互いに大げさに斬りつけた。

その結果、互いの剣が凄まじい衝撃を受ける。

 

「っ!」

 

「むぅ!」

 

 

その隙を突いて離れる。

ここで追いかければあっさり斬り捨てられると互いに分かっているので、下手な追撃はしない。

 

「中々やるな、一夏!」

 

「簡単に負ける訳には行かないからな!」

 

 

離れた事で余裕が生まれたのか、大声で話しかけてくる千冬姉。

やっぱり世界最強の称号は伊達じゃないな。

 

「それじゃあ今度はこっちから行くぞ!」

 

「そうかい・・・それなら迎え撃つ!」

 

 

再び瞬間加速からの高速移動。

意識を最大限移動に集中しておかないと大怪我ではすまないかもしれない移動方法だが、千冬姉には関係無かった。

 

「そらそら、如何した一夏!」

 

「千冬姉と比べればこっちは素人同然なんだぞ!」

 

「なら素人らしく負けろ!」

 

「素人だから負けられないんだろうが!」

 

 

二度目の鍔迫り合いは千冬姉が有利だった。

スピードの乗った一撃は、受け止めるだけで精一杯で反撃など出来ないのだ。

 

「ぐぅ!」

 

「随分と苦しそうだな!」

 

「ぬかせ!」

 

 

俺はワザと力を抜き、吹き飛ばされた。

 

「ほう、そのやり方で間合いを取るか。」

 

「下手すれば怪我したろうがな!」

 

「フ、お前なら怪我なぞしないだろ?」

 

「如何かな?結構ギリギリだったけど・・・な!」

 

 

斬撃を飛ばしながらの瞬間加速。

一瞬でも隙を作る事が出来れば上出来だ。

そもそも決まるとは思ってない攻撃なので見込み薄だがな。

 

「無駄だ!」

 

「そんな事分かりきってるさ!」

 

 

三回目の鍔迫り合い。

今回は俺が有利だ。

だが、千冬姉はさっきの場所から動かずに俺の一撃を受け止めた。

やっぱり末恐ろしい人だ。

 

「さっきまでとは随分違うじゃないか。」

 

「化け物相手だ、そう簡単に勝てる訳ないだろ。」

 

「誰が化け物・・・か!」

 

「チィ!」

 

 

一気に押し返され辛くなる。

離れていれば舌戦は此方が有利だが、近いからその場で力を発揮できる千冬姉の方が有利なのだ。

 

「おちおち冗談も言えないのかよ。」

 

「如何した一夏、もう終わりか?」

 

「さて、もう策は無いな。」

 

「なら諦めるのか?」

 

「まさか、ここからが本番・・・だ!」

 

「何!?」

 

 

後方に瞬間加速して間合いを広げてからの二段階瞬間加速で一気に詰める。

これは高度な技術で、まさかぶっつけ本番で使うとは思ってなかったのだろう。

千冬姉は隙だらけだった。

 

「まず一発!」

 

「く!」

 

 

この模擬戦で初めてのクリティカルヒット、手応えはあった。

 

「だが、次は効かないぞ!」

 

「だろうな、俺だって二度使えるなんて思ってないさ。」

 

 

既に万策尽きているのだ。

ここから先は流れを掴まなきゃあっさり負けかねない。

 

「何故零落白夜を使わなかったんだ?」

 

「千冬姉の技で勝っても嬉しくないだろ?」

 

「お前はそう言うやつだったな。」

 

 

 

呆れながらも納得顔の千冬姉、珍しく姉らしいじゃないか。

千冬姉の姉らしい所なんて何年振りだ?

 

「考え事か?随分と余裕じゃないか!」

 

「馬鹿言え、手一杯だっての!」

 

 

さすがに試合中に思い出せないか。

一気に間合いを詰めてきた千冬姉と鍔迫り合いをする。

この状態の千冬姉なら尊敬してやるのに、何で普段は残念なんだか・・・

 

「そろそろ決めるぞ!」

 

「なら、俺も決めに行く!」

 

 

互いに集中して剣を鞘に納めているように構える。

同じ流派で剣術を学んだ姉弟だ、構えが同じなのは当然だろう。

篠ノ乃流剣術奥義居合いの太刀『隼』俺と千冬姉が使おうとしている技の名前だ。

精神を集中して、相手の出方を伺う。

 

「!」

 

「!!」

 

 

ヒュン!

互いの太刀が機体に襲い掛かる。

IS戦なら兎も角、剣術なら千冬姉より俺の方が実力は上だ。

千冬姉の太刀は、俺の太刀に弾き飛ばされた。

無防備な打鉄に俺の攻撃が決まる。

 

「そこまで!勝者一夏君!」

 

 

まだエネルギーは残ってるが、千冬姉がホールドアップして模擬戦が終わった。

 

「おい、如何言う事だ?」

 

 

俺としては納得出来ないのだが。

 

「私は今の一撃で決めるつもりだったんだ。それを防がれたら負けを認めざる得ないさ。それに武器が限界だ。」

 

「何情け無い事を。」

 

「一夏、一対一ならお前に勝てる奴は居ないだろう。」

 

「俺としては納得出来ないんだがな。」

 

「昼休憩をしたら次は一対三だからな。」

 

「勘弁してくれ・・・」

 

 

甚だ不本意だが、俺は世界最強のIS乗りに勝利した。

潔いと言えば聞こえが良いが、俺はもっと千冬姉と戦っていたかったのだ。

幕切れは納得出来ないものだったが、この模擬戦は楽しかった。

自分の未熟さと相手との実力差も分かったし、この模擬戦を糧に俺はまだ強くなれるはずだ。

 

「(お疲れ様です、一夏様。凄かったですね、さすがです。)」

 

 

馬鹿言え、終始押され気味だったろうが。

俺が勝てたのは偶然だ。

俺自身は勝ったなんて思ってない。

 

「(一夏様が如何思おうとこの模擬戦は一夏様の勝利ですよ。)」

 

 

・・・あれで勝ってもな。

最後のアレはISじゃなくて剣術だったからな。

 

「(兎も角三戦三勝、これは自信を持って良い結果ですよ!)」

 

 

そうかもな・・・

世代差や偶然も重なったが三連勝したのだ。

少しは自信を持っても良いのかもな。

俺は自分自身に言い聞かせるようにそう思った。




駄目姉にも尊敬出来る部分がある事に気付いた一夏。
でもそれは限定された場面でしか見られないのがまた残念。
次回は休憩中の話ですね。

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