もし一夏が最強だったら   作:猫林13世

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今日は時間があったので早めに投稿出来ました。


模擬戦開始VSナターシャ・ファイルス

「一夏様、大丈夫ですか?」

 

 

横になっていたら須佐乃男に話しかけられた。

 

「ん?ああ、まあ体力的には問題ないかな。」

 

「やはりGはキツかったですか?」

 

「少し気持ち悪いくらいだ、休めば問題ないさ。」

 

 

正直に言えばかなりキツイ。

瞬間加速(イグニッション・ブースト)からの最高速度での継続移動。

体が引き千切れるかと思うくらいの衝撃だ。

しかし、これを使わなければ技術的に劣る俺が勝てる確率は相当低いものになるだろう。

なら、慣れるしかない。

何の嫌がらせか知らないが、この後まだ二戦も残っているのだ。

 

「一夏様、三戦ですよ。最後に一対三で模擬戦をすると言ってました。」

 

「ああ、そうだったな。しかし須佐乃男よ、また思考を読んだな。」

 

「一夏様が無理してるのはバレバレでしたからね。そこまで顔色悪い一夏様は初めて見ましたよ。」

 

「・・・そんなに顔に出てるか?」

 

「ええ、普段の一夏様からは想像出来ないくらいに。」

 

 

須佐乃男でも分かるなら、絶対千冬姉はモニター越しでも分かるだろうな・・・

それを理由に模擬戦止めれないかな?

 

「恐らく無理かと。千冬様の事ですから、『弱ってる一夏、あり!』とか何とか言いますよ、絶対。」

 

「・・・言いそうだな。」

 

 

否定したかったが出来なかった。

弟として長年千冬姉を見てきたからこそ否定出来ないと気付いた。

あの人は絶対疲れてる俺を見たら興奮するだろう。

いや、表面こそ心配していう風を装ってるが、内心興奮しているような光景が簡単に想像出来てしまう。

 

「千冬様はそう言った方ですからね。」

 

「身内として恥ずかしい限りだ・・・」

 

「でも一夏様なら、弱っていても千冬様にカミナリを落とせますよ!」

 

「・・・慰めのベクトルが違うだろ。」

 

 

そんな風に慰められても嬉しくないし、余計に疲れる。

 

「そう言えば、須佐乃男はもうエネルギー回復したのか?」

 

「ええ。私は殆どエネルギー使ってませんし、第四世代の回復力をなめないでください。」

 

「いや、自慢されても第三世代の凄さも分かってないんだから。」

 

「一夏様は基本的な知識はありますが、専門的な知識はいまひとつですからね。」

 

「他のISを使えないからな。お前の凄さがイマイチ分からん。」

 

 

恐らく凄いんだろうが、それを実感する事が出来ない。

最初から第四世代のISを使用している俺にとって、第三世代の知識など皆無に等しいのだ。

授業でもそこまで詳しい事はまだ扱ってない。

 

「束様に一夏様でも使えるISを作ってもらえば如何でしょう?」

 

「如何でしょうって、俺が使えるのはお前だけなんだぞ?そもそも、何でお前が俺に反応したのかすら分かってないんだ。いくら束さんでも分からない事は出来ないぞ。」

 

「ですからそれは、私が一夏様に惚れたからですって。」

 

「・・・それはもう良いから。」

 

「本当ですってば!」

 

「それじゃあ何か。お前はISのコアを俺に惚れさせてISを作らせる気か?」

 

 

それこそ、また人の姿になどなられたらたまったもんじゃない。

織斑家の家計は今までに無いくらい切迫してるんだぞ。

 

「・・・一夏様も心配のベクトルが違いますね。」

 

「?お前以外のISがそうなったら、同じように小遣いを要求してくるかもしれないだろ。その心配をして何が悪い。」

 

「そうじゃなくて、一夏様に惚れるコアを作るくらい束様には余裕なのかも知れないんですよ?その事を心配した方がよろしいのではないのですか?」

 

 

・・・確かにそうだな。

もしそんな事になったらそのコアをめぐって国際戦争にでも発展しかねない。

第三次世界大戦の原因になぞなりたくない。

 

「一夏様にしか反応しないものなら平気ですよ?」

 

「そのコアを研究するために奪い合う可能性だってあるだろ。それを解析出来たらISを兵器として大量に作る事だって出来るんだ。俺にしか反応しないからって安心は出来ない。」

 

「一夏様って考え方が独特ですよね。普通ならそこまで考えませんよ。」

 

「自分に襲い掛かる火の粉は襲い掛かってくる前に消したいからな。」

 

「そんな考えを持ってるのに、普段は問題山積みの生活をしてるんですよね~。」

 

「その問題の何割かはお前だろうが。」

 

 

これ以上問題を抱え込みたくないから色々考えるんだ。

それで結局回避出来なかったものだけを抱え込んでるのだが、これが結構な量なのだ。

 

「一夏様の周りには問題を持ち込む方が多いですから、私だけ注意しても意味無いですよ。」

 

「そうなんだがな・・・」

 

「一夏、そろそろ時間だ。準備しろ。」

 

「ああ、分かった。」

 

「ん?随分顔色が悪いように見えるが平気か?」

 

 

やっぱりモニター越しでも分かるんだな。

 

「問題ない。少し気分が優れないだけだ。」

 

「そうか・・・調子の悪い一夏、大いにありだ!」

 

「・・・・・」

 

「やっぱり言いましたね。」

 

「何だ?そんなに見つめられると、恥ずかしいぞ。」

 

「もう切るぞ。」

 

 

プライベートチャネルを切り、盛大にため息を吐く。

こんな予想は当たらなくて良い!

しかもその後の勘違いっぷりは酷いな。

 

「一夏様、模擬戦の準備をしましょう。」

 

「・・・そうだな。模擬戦中なら、余計な事を考える暇は無いだろうからな。」

 

「では!」

 

 

須佐乃男がISの姿になって俺に纏わる。

さてと、次は誰だ?

順番的にナターシャさんだろうが、山田先生が使用したラファール同様、ナターシャさんのIS銀の福音(シルバリオ・ゴスペル)は遠距離攻撃が主な機体だ。

そう考えると、もしかしたら打鉄の千冬姉の可能性も無きにしも非ずだ。

 

「(一夏様、余計な事は考えずにアリーナに出ましょう。そうすれば相手が誰だか分かりますよ。)」

 

 

そうだな。

須佐乃男に言われて余計な事を考えていた事に気付いた。

誰が相手でも関係ない。

相手と戦って、そこから勝機を見出すのに変わりは無いのだ。

 

「(その調子です!)」

 

 

よし、行くとするか!

須佐乃男に背中を押され、俺は覚悟を決めアリーナへと飛び立つ。

そこには予想通り銀の福音が待っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まったく、一夏の奴。あんなに見つめて、そんなにお姉ちゃんに会えたのが嬉しいのか?」

 

「恐らく違うかと・・・」

 

「何が違うんだ?一夏はお姉ちゃん大好きっ子だぞ。」

 

「何時の話ですか・・・」

 

 

そうだな・・・大体十年くらい前か?

真耶に聞かれ、私は一夏が私の甘えていた時代を思い出していた。

あの時の一夏は本当に可愛かったな。

しかし今の一夏も良い。

私に対してあそこまで強気で物を言える人間など今迄居なかったからな。

強く物を言われるのが、あそこまで良いとは思わなかったぞ。

 

「織斑先生?如何しましたか?」

 

「なんでもない。少し昔を思い出してただけだ。」

 

「それで何で嬉しそうなんですか?」

 

「一夏の成長を感じてただけだ。」

 

「はあ・・・」

 

 

イマイチ納得していない真耶を放っておいて、モニターに注目する。

やっぱり何処疲れているような一夏の表情。

何時ものしっかりとした表情もたまらないが、この表情も非常に良い。

この表情で怒られたらどんな気持ちなのだろうか。

思考がそっち方向にしか働かない自分を認識して、私は気合を入れなおす。

今から一夏は第二戦目の模擬戦を始めるのだ。

データ収集と戦法の確認をしっかりしておかねば、次は自分が一夏と戦うのだから。

 

「織斑君は平気そうですね~。」

 

「そう見えるか?」

 

「ええ、疲れなどまったく感じさせない雰囲気と変わらない表情。いったいどれ程努力すれば、あのような体力がつくのでしょうか。」

 

「真耶、お前はやっぱり一夏の事を分かってないな。」

 

 

精々四ヶ月弱の付き合いじゃ所詮そんなものか。

私は自分が一夏の事を理解している優越感に浸っていた。

 

「千冬さんには如何見えてるんですか?」

 

「一夏は少し体調が優れないそうだ。それでも顔に出さないように勤めてるが、私には分かる。普段からしっかり一夏の事を見ていれば、小さな変化でも気付けるものだ。」

 

「それは、姉弟と教師じゃ付き合いの長さが違いますよ。それに、私は一夏君とそこまで親密にお付き合いしてませんし。」

 

「ああん?一夏君だと?馴れ馴れしくその名で呼ぶな!」

 

「でも、一夏君は好きに呼んで良いって言ってくれますよ、きっと。」

 

「一夏は優しいからな!」

 

「それに、真耶さんと呼んでくれましたし。」

 

「お前が強要しただけだろうが!一夏は私の弟だ!誰にもやらんぞ!」

 

「おい千冬姉!合図はまだか!?」

 

「ああすまない。つい無駄乳女と話し込んでしまった。」

 

「無駄乳!?酷いですよ千冬さん!」

 

「その乳で一夏を誘惑しようとしても無駄だ!」

 

「何の話ですか!」

 

「・・・いい加減にしろよ。余計な事してる暇があるならさっさと準備しやがれ!」

 

「はい!すぐに準備します!」

 

「千冬さん!?何なんですか、その物分りの良さは!?」

 

 

馬鹿言え、一夏に命令されたらこうなるに決まってるだろうが。

度重なる一夏からのカミナリを受けて、私は一夏に逆らえなくなった。

寧ろ怒られるのが快感にすら思えるほどだ。

真耶よ、お前も一夏に怒られ続ければこうなるぞ、絶対に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「次はナターシャさんですか。」

 

「お手柔らかにお願いしたいわね。一夏君は予想外の戦術で戦いますからね。」

 

「そこまで型破りな戦法は取ってないつもりなんですがね。」

 

 

アリーナに出て、俺はナターシャさんと軽く話していた。

もうそろそろ合図があるだろうし、そうなったらオープンチャネルもプライベートチャネルも使えなくなるからな。

会話できる間に出来るだけ相手の考えを知っておきたい。

 

「福音と戦うのは二回目ですね。」

 

「その節はご迷惑をおかけしました。」

 

「ナターシャさんのせいではありませんよ。あれはいろんな思惑が交じり合った結果福音が暴走してしまっただけです。それに福音はナターシャさんを守るために俺たちと戦ったんです。」

 

「そお言ってくれると助かるわ。この子の事は大切にしてるからね。ISにもその気持ちが分かってるのかしら。」

 

「そうだと思いますよ。須佐乃男みたいに明確な意思は無くとも、ISにだって感情や意思はあるんですから。」

 

「そうかもね。」

 

 

福音は遠距離型ISだ、レーザーやミサイル、それにナターシャさんは偏向射撃(フレキシブル)を会得している。

ピッドは無いがレーザーでそれが出来る分、セシリアのブルーティアーズより数倍厄介だ。

そもそもセシリアはまだ偏向射撃をまともに使えない。

狙いが視線でバレバレのセシリアと完璧に予測不能で曲げてくるナターシャさんとでは比べもにならないか。

 

「一夏さんの戦術は、凄く楽しみなのよね。」

 

「そうですか?」

 

「ええ。自分には出来ない戦術だからね。さっきの移動手段だって、私じゃ途中で意識を失ってるもの。」

 

 

確かにあれはキツイだろうな。

しかし、合図はまだか?

相当しゃっべてるんだが・・・

不審に思いモニター室と通信を繋いだ。

そこで聞いたものは、俺の頭痛を加速させるものだった。

まったく、あれが自分の姉だと思うと恥ずかしくなってくるぞ。

 

「一夏君、大丈夫?何だか一気に疲れてるみたいだけど。」

 

「ええまあ・・・模擬戦が始まれば気合が入るので平気です。」

 

「それなら良いけど・・・」

 

 

模擬戦までに回復した体力を使ってしまった気がするんだがな。

 

「それじゃあカウントを開始する。3・・・2・・・1・・・0、模擬戦開始!」

 

 

合図と共に俺は一気に距離を詰める。

恐らくは意味を成さないだろうが、先制攻撃を仕掛けようとしたと思わせるだけで良いんだ。

案の定、ナターシャさんは大げさに後方に距離をとった。

 

「(性格悪いですね~。)」

 

 

五月蝿い。

そんな事言ってる暇があるんなら攻撃に備えろ。

 

「(了解です。それで、一夏様は何の武器を使うんですか?)」

 

 

当分は銀で良い。

暫撃を飛ばして牽制している様に思わせる事で相手の攻撃の手を鈍らせる。

 

「(レーザーやミサイル相手なら鉄の方が良い気がするんですけどね~。)」

 

 

それで戦法を変えられたら厄介だ。

ナターシャさんには自分が優位だと勘違いし続けてもらわないと駄目だからな。

こっちもそうやって動くから、多少のダメージは覚悟してもらうぞ。

 

「(そう言って無傷で勝ったのは誰でしたっけね~?)」

 

 

さあな。

戦闘中にそんな余裕なら大丈夫だろ。

・・・来る!

俺は襲い掛かってくるレーザーから逃げ惑い、少しずつナターシャさんに近づいていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いきなり突っ込んでくるとは思ってなかった。

一夏君の前の戦闘を見ている限り、こんな無謀な攻めはしてこないものだと思っていたからだ。

そのせいで、私は必要以上に距離を取ってしまった。

一夏君は一振りの剣を構えている。

何でこの距離で剣を?

などと考えていたら、私のすぐ横を何かが通りすぎた。

 

「な!?」

 

 

シールドエネルギーを確認したら、今の衝撃で少し減っていた。

つまり今の衝撃は攻撃だったのだ。

一夏君の方を見ると、あの場で剣を振っている。

その一振りでもの凄い衝撃を此方に飛ばしてきている。

本当に人間なの、彼は!?

遅い来る衝撃を避け、私は反撃を試みる。

レーザーを一夏君に向けて放ち、避けられたら偏向射撃である程度追いかける。

深追いすると隙が出来てしまうので、ある程度で良いのだ。

案の定一夏君はレーザーを完璧に回避して、追いかけてくるレーザーで私のもう一発のレーザーを相殺した。

でも、まだまだ一夏君の間合いではない!

私は引き続きレーザーで一夏君に攻撃を続ける。

レーザーを放ち、その後でミサイルで追い討ちをする。

ミサイルは予想してなかったのか、一夏君は大げさに回避をしてレーザーに対しての意識を手放していた。

今だ!

隙が見えたので、私は偏向射撃で一夏君に攻撃を向かわせる。

 

「あれ?」

 

 

完璧なタイミングのはずだったのに、その場に一夏君は居なかった。

・・・しまった!

一夏君はこのタイミングを狙っていたのだ。

私は咄嗟に背後を振り返った。

だが、それがいけなかった。

 

「さすがに反応しますね。ですが、ハズレです。」

 

 

振り返った背後、つまり元々向いていた方向から一夏君の声がした。

ああ、これは終わったかもね。

慌てて振り返った時には、一夏君の攻撃が目の前まで迫ってきていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さすがに厄介だな。

迫り来るレーザーから逃げながら、俺はナターシャさんのある行動を待っていた。

さすがに実戦経験で劣る俺が、簡単に勝てる相手ではないのだ。

隙を突いて一発、ないしは二発でしとめなきゃ勝機は無い。

 

「(一夏様、来ます!)」

 

 

須佐乃男にナターシャさんの行動を分析させていたので、攻撃方法は分かっていた。

後はどれだけ此方が不利だと思わせるかだけだった。

待っていたミサイル攻撃に大げさに避けて見せ、偏向射撃を待った。

予想通りに偏向射撃で攻撃してきたナターシャさん。

よし、須佐乃男行くぞ!

 

「(了解です!)」

 

 

一瞬で最高速度に到達した須佐乃男で、一気に間合いを詰める。

さっきの山田先生戦を見ていたから、ナターシャさんは背後を振り返った。

ISにはセンサーがあるのを完全に忘れている。

それほどにこのスピードは脅威なのだろう。

俺は雪月を展開して、この試合を一気に終わらせる事が出来るだろう攻撃を選択した。

 

「(一夏様、行きますよ!)」

 

 

この攻撃は、こっちにもある程度の衝撃がかかる。

握る力を強めて、俺はナターシャさんと福音に斬りかかる。

 

「零落白夜使用完了」

 

 

モニターにでたその文字を確認して、俺は相手を見る。

如何やら完全に当たらなかったのか、まだエネルギーが残っているようだった。

しかし、完全に竦んでしまっているので隙だらけだった。

俺は銀を展開して暫撃を飛ばした。

 

「そこまで!勝者一夏!」

 

 

福音のエネルギーが0になったのを確認したのか。

千冬姉の終了の合図があった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お疲れ様。やっぱり一夏君は強いね。」

 

 

完全に負けちゃったけど、これは私が未熟だからだ。

一夏君の術中に嵌り、そして焦りから隙を生んでしまった。

この模擬戦は私にも得るものが多かった。

 

「いえ、偶々上手く行ったから良かったですけど、失敗すれば負けてたのは俺でした。」

 

 

一夏君は勝ったけど驕る事無く自分の反省点を見つけているようだった。

まったく、これが生徒なんだから末恐ろしいわね。

 

「ナターシャさんの偏向射撃はお見事でした。」

 

「一発も当たらなかったくせに。」

 

「何回かは当たりそうだったんですよ。」

 

「でも避け続けたじゃない。」

 

「まあ、そこは運ですね。」

 

「運?」

 

「ええ、レーザーの動きをはっきりと見る事が出来ましたので。」

 

 

それは運じゃなくて、動体視力が半端無いだけじゃ無いの?

 

「疲れていた事が、逆に良い方向に作用したようです。」

 

「如何言う事?」

 

「疲れていたからこそ、余計な事を見ようとしなかったんですよ。」

 

「なるほど・・・一夏君は何時も周りを見てるからね。それが疲れているせいで、その余裕が無かったと。」

 

 

疲れをそうやって使うとは。

一夏君は少し困って風に頭を掻いて笑っていた。

一夏君のこの表情は見るの初めてかもしれないな・・・

こうして見ると、年相応の少年なのね。

 

「一夏!終わったならすぐにピットに戻れ!次は私が相手だぞ!」

 

「分かってるよ。それじゃあナターシャさん。」

 

「あ・・・」

 

 

思わず引きとめようとしたけれど、何でそうしようとしたのか自分でも分からなかった。

 

「何か?」

 

「いや、本当にお疲れ様。」

 

「はい?・・・ナターシャさんもお疲れ様でした。」

 

 

何でまた言われたのか分からない風だったが、一夏君は自分のピットに戻って行った。

この気持ちはいったい何なのだろう。

自分の中に芽生えた気持ちに戸惑いながらも、私もピットに戻ろうとした。

 

「あれ?」

 

 

足が震えていて動けなかった。

それだけ今の模擬戦で受けた衝撃が大きかったのだ。

 

「ナターシャさん?」

 

 

不審に思ったのか、一夏君が戻ってきた。

 

「ゴメン、足が震えて動けない。」

 

「しょうがないですね。」

 

 

一夏君に抱えられ、私は織斑先生の待つピットの運ばれて行く。

これは怒られるかも知れない、でも悪く無いかな。




一応フラグ的なものを建てましたが、回収するかは未定です。
さて、次回はついに織斑千冬登場。
今迄以上に戦闘シーンが大変そうです・・・

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