もし一夏が最強だったら   作:猫林13世

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いや~ついに5000字を超えてしまった。
こんなに長くなるはずではなかったのに・・・。

他の方の作品を参考に改行の仕方を変えました。
これで読みにくさはなくなったかな?
少し不安です。


私の考え、彼の考え

「おまたせしました、一夏さん。」

 

 

5分ほどしてから虚さんが俺の部屋に来た。

5分なんて待ったうちに入らない。

なぜなら彼の周りに居た人間はどうも駄目人間思考の強い人ばかりだったから一夏は待つのになれてしまっていたのだ。

 

「大丈夫ですよ、色々と考え事をしていたので丁度良いぐらいですよ。」

 

 

嘘ではない。一夏はこれから会う簪が自分にいったい何の用があるのか思案していたのだ。

一夏と簪が話した時間などほぼ無い。そんな簪が自分に話があると言ってきた。

簪の第一印象は気弱で自分のことを避けるような気がしていたので、人伝ではあるが話がしたいといってきたのは彼女のイメージからは少しかけ離れた行動だったのだ。

 

「考え事ですか?」

 

 

一夏の言葉を聴いて虚は興味を持った感じで返事をしてきた。

彼の現在の立場を考えれば考えることは、山ほどあるだろう。

つい最近までは普通の中学生、いや普通ではないだろうが別段変わった生活をしていた訳ではなかったのにいきなり他人の家に居候し、多くの大人の中で生活することになったのだ。

 

虚は一夏のことを気にかけていた。

互いに落ち着いた雰囲気を持っているために親近感を覚えたのだ。

自分の妹があんな感じなので自分と同じように身内で苦労する一夏の気持ちが解るのだ。

 

「ええ、簪さんのことで少し気になることがあったので。」

 

 

一夏の答えは虚の考えていたこととは違っていた。

虚の考えていたことは、環境の変化による不安からくるだろうものだった。

普通の中1の少年だったらそんなことを考えるのだろうが、あいにく一夏は普通ではない。

悪友とふざけたりなど普通の一面もあるが、彼の中身は中1の少年ではない。

そういった環境の変化など彼に何のダメージも与えてはいなかったのだ。

 

「簪お嬢様のことですか?」

 

 

だからこそ、虚は一夏のことが余計に気になった。

突然出来た弟のように思っていた一夏が、実は自分より精神的に大人だったのだ。

 

「(この人はいったいどのような考えを持っているのかしら。)」

 

 

虚は別の意味で一夏に興味を持った。

この男性は私たちの近くには居なかったタイプの人間だ。

彼が更識姉妹にどのような変化をもたらすのだろうか。

いや、更識姉妹だけではなく、自分たち布仏姉妹にも影響をもたらすかもしれない。

織斑一夏という人間はそういったことを起こすのだろう。

虚は一夏がもたらすであろう変化に興味半分不安半分の気持ちになっていた。

 

「はい。簪さんとはほとんど話したことがないので、どのようなことを話したいのか。またどのようなことを聞きたいのか興味があったので。」

 

 

彼は、「簪が自分に何を聞きたいか」を考えていた。

伝言を伝えた本音も話したいことがあるとしか言っていなかった。

それなのに彼は「何を聞きたいのか」と考えていたのである。

まるで更識姉妹の現状を理解しているような言い回しだった。

 

「私には分からないですね。それでは簪お嬢様の部屋に行きましょうか。」

 

 

私はこれ以上話していたらパンドラの箱を開けてしまうような気がして、話題を変えた。

急に話題変更をした私を一夏さんは訝しげにみたが、本来の目的である簪お嬢様の部屋に向かうことには賛成してくれた。

 

「・・・・解りました。では案内してください。」

 

 

彼の返事を受けて私たちは一夏さんの部屋を出て簪お嬢様の部屋に移動し始めた。

 

 

 

 

「かんちゃ~ん、少しはおちつきなよ~。」

 

 

私は少しドキドキしていた。

さっき虚さんから「これから彼をつれて来る」といったメールをもらった。

確かに話したかったがこんなにも早く機会が来るとは思っていなかったのだ。

 

「そんなこと言ったって、本音ぇ……私が苦手なもの知ってるでしょ?」

 

 

私は、異性と話すのが苦手だ。

話せないわけではない。

ただ、苦手なのだ。

早くからIS関連の施設に通っているので異性と交流することが極端に少ないのだ。

 

「だいじょ~~ぶだよかんちゃん。おりむ~はかんちゃんのことをいじめたりしないよ~。」

 

 

相変わらずの本音の話し方。

少し気が抜けるが今はありがたかった。

 

「もしいじめたらわたしが追い払ってあげるよ~~~、ビシビシ。」

 

 

ダボダボの袖口を振って効果音をつけてのジェスチャー。

私は苦笑いを堪えるのに苦労した。

ここで苦笑いをしたら、本音が気を使ってくれたのに失礼なのだとおもったのだ。

 

「じゃあ、もしもの時はお願いね。」

 

 

私は同意した、提案した本音も同意した私もそういったことは無いだろうと思いながら。

 

 

 

 

「もうすぐ簪お嬢様の部屋です。」

 

 

私たちは一夏さんの部屋からここまで無言で歩いてきた。

 

「(彼が何を考えているのかわからない。)」

 

 

さっきまで普通に話せたのに急に一夏さんが怖く感じたのだ。

こんなことを考えるのは彼に失礼かとも思ったが、中1の少年が考えることとは異なる物の見方をしている一夏さんは、何か別の生き物ではないのかと感じたのだ。

当然彼は人間だ。

そのことは解っている。

だが、少し不気味なのだ。

 

「虚さん。何か失礼なことを考えてませんか?」

 

 

彼の言葉に飛び上がりそうな衝撃を受けた。

今まさにそういったことを考えていたのだから、彼の指摘は驚くな、と言うほうが無理な話だ。

彼の勘の良さは聞いていたが、まさかここまでとは。

今度からは注意しておこう。

私は心の中でそう決めた。

 

「いえ、ちょっと一夏さんのことで気になったので。」

 

 

ごまかしてもいずればれるだろうから私は白状した。

一夏さんのことを少し不気味だと思っていた、と。

そういった後、一夏さんは少し顔をしかめ、

 

「不気味ですか・・・。」

 

 

そうつぶやいたあと、

 

「確かに不気味と感じるかもしれないですけど、これが俺なので。他の人がどう言おうと変える気は無いですし、変えられるものでもないですから。」

 

 

と言った。

確かにどんなことを考えどんな行動をとろうと、彼は彼、織斑一夏と言ったれっきとした『人間』なのだ。

私はそう言った後の彼の少し寂しそうな表情を見て、罪悪感を覚えた。

もしかしたら彼は散々私と同じようなことを思ってそのことを彼に言った人が居たのかも知れない。

そう考えると、私はなんて失礼なことを言ったのか。

言葉だけではなく、行為そのものが失礼に当たるのではないか。

そう思ったので、すぐに

 

「ごめんなさい。気を悪くしましたよね?」

 

 

と、謝ったのだ。

そうしたら一夏さんは驚いた表情をしたのだ。

私、何かおかしなことをしたのかしら。

そんなことを考えていたら、

 

「何故虚さんが謝るんですか?別に貴女は何もしてはいないじゃないですか。」

 

 

と言った。

 

「虚さんが気にすることは何もないですよ。さぁ簪さんの部屋に行きましょう。」

 

 

彼は私のことを気遣い本来の目的に流れを戻した。

 

「そ、そうですね。」

 

 

私は何とか気を持ち直していつの間にかついていた簪お嬢様の部屋のドアをノックした。

 

 

 

 

 

「簪お嬢様、虚です。入ってもよろしいでしょうか。」

 

 

虚さんがやってきたと言うことは彼も来たのであろう。

私は少しドモリながら、

 

「ど、どうぞ・・・。」

 

 

そう返事をした。

 

「「失礼します。」」

 

 

声をそろえて二人が部屋に入ってきた。

ついさっきあったばっかりではあるが彼が部屋に入ってくるのは嫌ではない。

むしろ少しドキドキしている。

恐怖からではない。

完全に異性に対して興味を持っているときに感じる感情だと思う。

思うと言ったのは、今までそのような感情には無縁だったからだ。

 

「このようにちゃんと顔を合わせて話すのは初めてですね。織斑一夏と申します。」

 

 

彼は改めて自己紹介をしてきた。

きちんとした人なのだろう。

 

 

「わ、私は簪、さささ更識簪ッ!」

 

 

またドモってしまった。

本当に嫌だ、なんでこうなってしまうのだろう。

 

 

「簪さん、いったい俺に何の話があるのですか?」

 

 

彼は私のことを簪さんと呼んだ。

別におかしくは無いのだが、なんだか嫌な気分になった。

 

「わ、私のことは簪でいい。あと敬語もいい、同い年なんだから。」

 

 

私はどうやら彼に特別な気持ちを向けていた。

呼び捨てにして欲しいなんて他の男子にはぜったいに言わないし、ほぼ初対面でタメ語でいいなんて思わない。

 

「解った。それで簪、俺に聞きたいことってなんだ?」

 

 

彼の言葉で浮かれていた私の心は現実に引き戻された。

私は彼に、一夏に強さの秘訣を聞きたかったのだ。

私にはない強さ、その現実を少しでも否定したくて一夏を呼んだのだ。

 

 

「一夏はどうしてそんなに強いの?どうやったらそんなに強くなれるの?」

 

 

私は聞いた。

知りたかった強さの秘訣を一夏に聞いたのだ。

これで少しはお姉ちゃんに近づける。

家の人間を見返せる。

私はそんなことを考えていたのだが、

 

「別に俺は強くない。」

 

 

一夏の言ったことが理解できなかった。

彼は自分のことを強くないと言った。

明らかに私より鍛えられた身体。

いきなりの環境の変化に対応する柔軟さ。

初対面の相手にも緊張することなく話せる精神力。

どれをとっても一夏は間違いなく強いはずなのに、彼は強くないと言った。

ふざけるな、自分の強さを自覚していないのか。

私は一夏に怒りを覚え、

 

「何いってるの!?君はどうも見ても強いよ!!」

 

 

私なんかより・・・。

完全に八つ当たりだ。

自分の弱さを認めたくない私にとって、強さを自覚していない一夏は許せなかったのだ。

私の態度に本音はオロオロとし、虚さんは目を見開いて驚いている。

そんな中、一夏はと言うと・・・

 

「簪だって強いじゃないか。」

 

 

と言ってきた。

強い?

誰が?

私は強くない。

お姉ちゃんには勝てないし、家の人間からは出来損ない呼ばわりされている。

 

「私は・・・強くないよ。」

 

 

こう答えるしかないじゃないか。

私は強くは無いので一夏に言ったことが社交辞令だと思ったから。

だが一夏は-------

 

「自分の弱さを素直に受け止めるのも強さだ。」

 

 

-------と言ってくれた。

 

「大体の人間は自分の弱さを認めたがらない。その点、簪は自分のことを弱いと言えている。それはれっきとした簪の強さなんじゃないか?」

 

 

一夏は、私の強さを説明してくれた。

でも、私が弱いのは本当だし、明らかに私より強い人が多いこの家では認めざるを得ないのだ。

 

「一夏の言ってることは分かったけど、私の欲しい強さは別の強さなんだよ。」

 

 

ちょっと嫌な娘な感じがするが、これが今の私の本音。

一夏の言ってくれたことは、うれしいけど欲しかった言葉は違うものだ。

一夏の強さ、そのことを知りたかったのに教えてくれなかったのだ。

 

「そういえば、何で簪は俺のことを強いといったんだ?」

 

 

彼は本当に分からないといった感じで聞いてきた。

とても惨めな感じがするが、わたしは、

 

「だって、一夏の方が明らかに私よりも強いじゃない。だからその強さの秘訣を聞きたかったの。」

 

 

私は自分の気持ちを一夏に伝えた。

言葉だけで見ると、今さっきの気持ちを伝えると言う表現は告白とも取れるが、内容が実に惨めだ。

泣きたくなってきた。

堪えきれず下を向く私。

だが一夏が、

 

「確かに俺は簪より強いかもしれない。だけど簪だって俺より強い面はあるだろう。」

 

 

と言ってきたので、顔を上げ一夏を見る。

私が一夏よりも強いとこ?

そんなとこあるのだろうか?

 

「実際に戦ったわけではないからなんともいえないが、戦闘では俺の方が強いだろう。だが、精神面では分からないぞ。」

 

 

何を言っているんだ。

精神面でも勝てるわけがない。

 

「一夏の方が精神面でも強いよ。絶対に。」

 

 

もう私は落ち込んでいることを隠そうともしなくなった。

勝手に期待して勝手に落ち込んでいる私に一夏はさぞあきれているのだろう。

だが、

 

「強さを求める。この一点だけでも簪は俺よりも強いじゃないか。」

 

 

この一言は興味を引かれた。

強さを求める強さ。

そんなこと考えたことも無かった。

ただ、お姉ちゃんに近づきたい。

ただ、家の人を見返したい。

ただそのことのために強さを求めているだけなのに、それも強さだといわれたのだ。

 

「一夏は知らないからそんなことを言えるんだよ。家族と比べられ落ちこぼれだと言われている私の気持ちが。」

 

 

もういいよ。

私は弱いんだ。

諦めよう。

最初から無いものを探していたんだ。

滑稽だな、私は。

 

「俺も姉と比べられていた。」

 

 

一夏の言葉で私は思い出した。

彼の姉織斑千冬は世界最強の称号持つIS乗りだ。

彼が比べられていても不思議ではない。

 

「IS無しなら俺は姉に勝てるだろう。」

 

 

一夏はそんなことを言った。

たしか織斑千冬は生身でも相当強い。

だが一夏は、

 

「でも、俺はまだ強くない。周りから強いといわれても自分では強いとは思わない。」

 

 

そう言ったときの一夏は少しかっこよかった。

でも何で強く無いんだろう?

疑問に思った私はそのことを聞いた。

 

「何で強いと思わないの?十分に強いじゃん、一夏は。」

 

 

私は虚さんや本音がうなずいているのを見て、やはり一夏は強いんだと確信した。

だが、

 

「自分で強いと認めてしまったら、そこで終わりのような気がするんだ。だから俺が強いというなら、『強くなりたい』から強いんだと思うよ。」

 

 

一夏が少し照れながら言った台詞を聞いて私はまたドキドキした。

まるで、まるで、------

 

「(ヒーローみたい。)」

 

 

一夏が私のあこがれるヒーローみたいだと感じた。

後でこのことを思い出すとこう思うんだろう。

 

「(きっとこのとき私は一夏のことが好きになったんだろうな)」

 

 

って。




はい、簪が落ちました。
性格が変わっても一夏のフラグ建築は流石ですね。
つぎは刀奈の番ですかね~。
どうやって落とそうか?少し悩みどころです。
何かありましたらコメントの方に書いてください。
出来るだけ反映していきたいと思っています。
ではまた~。


p.s.
なんか虚さんも落ちそうな感じになってるきが・・・。
タグ増やそうかな。

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