もし一夏が最強だったら   作:猫林13世

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全然祭りの話が終わりませんでした。



祭りまでの時間潰し

 

先に行っていた三人と合流して、俺たちは一旦神社から移動することにした。

 

「じゃあ何処に行く~?」

 

「そうですね~・・・近くをぶらぶらするのは如何でしょか?」

 

「ぶらぶらって、昨日もしただろ。」

 

「でも私たちはしてないよ?」

 

「そうだろうが・・・」

 

「おりむ~この辺案内して~。」

 

「それ良いね~。」

 

「・・・拒否権は無さそうですね。」

 

「一夏さん、お疲れ様です。」

 

「よ~し!しゅっぱ~つ!」

 

「刀奈さん、この辺知ってるんですか?」

 

「・・・知らない。」

 

「じゃあ先陣を切ろうとしないでくださいよ。迷子になりますよ?」

 

「ならないもん!」

 

「はいはいお嬢様おいて行きますよ?」

 

「えっ!待ってよ~!」

 

 

俺たちは神社の周りを散歩することになった。

 

 

 

 

 

神社を出てすぐ、会いたくない人に出会った。

 

「ん?一夏!おねーちゃんを助けてくれ!」

 

「何だいきなり。」

 

「空腹で死にそうなんだ!」

 

「なら何か食べればいいだろ。」

 

「金が無いんだ。」

 

「自業自得だろ。あれだけ散財したんだ、少しは反省しろ。」

 

「してるさ!してるから少し用立ててくれないか?」

 

「・・・幾らだ?」

 

「3・・・いや2万ほど。」

 

「はぁ・・・ほら。無駄使いするなよ。」

 

「ああ!ありがとう一夏、さすが私の弟だ。キスしてやる!」

 

「いらん!馬鹿な事言ってるとさっきの金回収するぞ。」

 

「やめてくれ!死んでしまうぞ!」

 

「いっそ死ねよ・・・」

 

「ヒドイぞ!」

 

「なら苦労をかけるな!問題を起こすな!!無駄使いするな!!!」

 

「すまない・・・」

 

「もっとマシな姉が良かった・・・」

 

 

俺の独白を聞いて更にへこむ千冬姉。

言われたく無いならしっかりしてくれよ、まったく。

 

「じゃあ私はもう行く。一夏、ありがとな。」

 

「くれぐれも無駄使いはしないように。」

 

 

更に念を押すと、千冬姉は悲しそうに・・・

 

「そんなに信用無いのか?私は。」

 

 

などと言った。

 

「当たり前だろ。そもそも信用されてると思ってたのか?今までの行動を省みて何処を如何信用されるのか言ってみろ。」

 

「それは・・・お金を稼いだり・・・」

 

「俺が管理してなかったら、それ以上に散財してるだろ。下手したら借金まみれだ。」

 

「稽古の相手をしたり・・・」

 

「そのおかげで、余計な問題まで俺に回ってくるようになったな。」

 

「お前を助けに行ったり・・・」

 

「そもそも俺が誘拐された原因は千冬姉だろ?俺の油断があったとはいえ千冬姉の弟では無かったら誘拐すらされなかったぞ。」

 

「それはそうだが・・・」

 

「それに結局自分で片付けたしな。」

 

「でも私が行かなかったら危なかっただろ?」

 

「更識の部隊やドイツ軍の人たちが居ただろ。千冬姉が居なくても何とかなってたと思うけどな。」

 

「じゃあ・・・」

 

「もう無いだろ?」

 

「あるもん!きっと何かあるはず!」

 

「俺たちはもう行くから、そこでずっと考えてろ。一人で。」

 

「待って!待ってくれ一夏!」

 

 

こんな所で姉と口論などしたくは無い。

 

「じゃあな、くれぐれも無駄使いはしないように。」

 

 

更に念を押し、俺たちは移動することにした。

背後で千冬姉が何か言ってる気がするが、聞こえない事にしよう。

 

 

 

 

 

 

「一夏君、良いの?」

 

「何がですか?」

 

「織斑先生の事。」

 

「良いんです。少しは反省しろって前から言ってるんですけどまったく反省が見られませので、あれくらいキツク言えば反省するでしょう。もし反省しないようなら・・・」

 

「一夏君、怖いよ?」

 

「?・・・スミマセン、刀奈さんを怖がらせても意味無いですよね。」

 

「いや、良いんだけどね。でも一夏君、本気で織斑先生の事考えてるんだね。」

 

「一応唯一の肉親ですし、千冬姉が居なかったら俺はどうなってたか分からないのも事実ですしね。」

 

「おりむ~が此処に居るのは織斑先生のおかげなんだね~。」

 

「一夏様が居るのは千冬様のおかげなんですね。」

 

 

本音と須佐乃男が声を揃えて同じ事を言った。

 

「千冬姉のおかげかもしれないが、それ以上の迷惑をかけてるからな。それを引いたら感謝の気持ちなど残らないんだよ。」

 

「・・・そんなに酷いんだ。」

 

「ええ、そりゃあもう。」

 

「一夏様の苦労は一言では語れませんよね~。」

 

「須佐乃男は知ってるんだ~。」

 

「ええ、昔に聞かせてもらいました。」

 

「私たちも聞きたいな~。」

 

「長くなるので、今度機会があればなら良いですよ。」

 

「約束だよ~、おりむ~!」

 

「聞いて楽しい話じゃないんだがな・・・」

 

「なら一つだけ聞かせて、その他は聞いた後で判断してもらうって言うのはどうですか?」

 

「それにけって~い!」

 

「俺の意思は無視なんですね・・・まあ良いですけど。」

 

「それで一夏、まずはどんな話なの?」

 

「簪まで興味あるのか!?」

 

 

こう言った話には興味無いと思ってたのに。

 

「そうだな・・・どうせなら須佐乃男も知らない話にするか。」

 

「それは楽しみです!」

 

 

一気にテンションが上がった須佐乃男。

こいつもやっぱり気になってたのか。

 

「俺が昔剣術を習ってたのは須佐乃男は知ってるよな?」

 

「ええ、篠ノ乃さんの実家の剣道場で教えていた篠ノ乃流剣術ですよね。」

 

「ああ。その篠ノ乃流剣術だが、千冬姉が高校生の時に俺が始めたんだ。」

 

「それも聞いてます。」

 

 

此処までは前に話した内容なので、須佐乃男が相槌で先を促してくる。

 

「その剣術で千冬姉がやらかしたんだ。」

 

「それは知らないですね。いったい何をしたんですか?」

 

 

一気に興味を持った須佐乃男。

他の四人も同様に興味津々といった感じだ。

 

「高校生の男子なんて普通は子供だ。特にまだISが発表されていなかったので、どちらかといえば男尊女卑の世界だったんだ。」

 

「うん、まだ世間は男の方が偉いみたい感じだったね。」

 

「そうだっけ?よく覚えてないな~。」

 

「本音は昨日の事もろくに覚えてないでしょ。」

 

「え~そんな事ないよ~。」

 

「続けて良いか?」

 

「ええ、お願いします。」

 

 

簪と本音が別のことで盛り上がりそうだったので、一応確認する。

俺としてはこのまま終わりでも良いんだが、須佐乃男と刀奈さんがすっごい目でコッチを見ているものだから、下手に終わらせられないのだが。

 

「それでその高校に馬鹿な男子が居たんだ。千冬姉にちょっかいを出そうとした猛者が。」

 

「どう言った意味でのちょっかいなの?」

 

「悪戯的なちょっかいですね。」

 

「それは・・・なんと言いますか・・・怖いもの知らずな方ですね。」

 

「どちらかと言えば命知らずの方があってる気がしますけどね。」

 

「一夏君、続きは?」

 

「分かりましたよ。」

 

 

何とか脱線させようとしたのだが、刀奈さんはそれに乗ってくれなかった。

 

「確か千冬姉が掃除してたんですよ。ほら、あるじゃないですか。モップみたいなやつが。それを持っている時に背後から近づいたもんだから、思いっきり柄で殴られて、その男子気を失っちゃったんですよ。」

 

「あらら、それは痛いわね~。」

 

「幸い命に別状は無かったんですけど、7針縫う大怪我でしてね。千冬姉に親が居ないものですから、師匠の篠ノ乃龍韻さんと俺で相手の親と学校に謝りまして、なんとか退学にならなかったんですよ。」

 

「その時って一夏君、まだ小学生よね?」

 

「ええ、そうですよ。それが何か?」

 

「いや~、しっかりしてるな~と思ってね。」

 

「そうですか。それで治療費の負担と壊したモップを弁償する事でなんとか許してもらったんですけど、その後龍韻さんにもの凄く怒られたんですよ。」

 

「まあ当然かな?」

 

 

ここまで黙って聞いていた簪が感想を言う。

 

「俺もそれは当然だと思ってたさ。だが、その後何故か試合をする事になったんだ。」

 

「誰が?」

 

「・・・俺と千冬姉が。」

 

「それは・・・」

 

「何て言って良いのか・・・」

 

「それで如何なったの~?おりむ~早く続きを聞かせて~。」

 

 

同情してくれた刀奈さんと虚さんと続きが気になってしょうがない感じの本音。

言葉にはしてないが、須佐乃男と簪も本音と同じように続きが気になっているようだ。

 

「当然俺は何で自分が試合をしなければいけないのか聞いた。だが、龍韻さんは君がやるべきだとしか言ってくれなくてな。結局俺と千冬姉で剣術の試合をする事になったんだ・・・それも真剣で。」

 

「あっぶな~い。」

 

「真剣って・・・当然刃は潰してあるんだよね?」

 

「いえ、正真正銘の真剣でした。」

 

「さすがに篠ノ乃さんの親だけあって過激ですね~。」

 

「過激ですまないと思うよ。」

 

 

もはや他人事の須佐乃男。

別に良いが聞きたいって言ったのお前だろうが。

 

「それで一夏君、怪我しなかったの?」

 

「平気でしたよ。一方的に俺がやったので。」

 

「ええ!一夏が一方的にやられたんじゃなくて!?」

 

「ああ。俺が一方的に千冬姉をやったんだ。」

 

「おりむ~って昔から強かったんだね~。」

 

「剣術だけなら初めて2,3ヶ月で俺の方が上だったな。」

 

「あれ?でも千冬様は師範代レベルの実力だって前に言ってましたよね?」

 

 

前に話した事を思い出し、須佐乃男が聞く。

 

「教えるって事も含めての師範代だからな。俺は誰かに教えるのは苦手だったから、実力だけ師範代クラスって言われてたんだ。」

 

「2,3ヶ月でそれなら十分だと思いますけど・・・」

 

「実力だけ合ったって仕方ないですよ、虚さん。俺は別に誰かに勝ちたくて剣術を始めた訳ではないですし。」

 

「確か無理矢理剣道場に連れていかれ、あっさり篠ノ乃さんに勝ってしまって剣術を勧められたんでしたっけ?」

 

「そんなとこだな。」

 

「でも何でその師匠はおりむ~と織斑先生を戦わせたの~?」

 

「さあな。俺を不憫に思ったのか、自分が使った技で同じような目をみれば、少しは反省すると思ったのか、今思えば色々理由は有るが、龍韻さんの真意は分からない。結局その後すぐにISが発表されて、篠ノ乃道場には行かなくなったからな。龍韻さんも今何処に居るのか分からないしな。」

 

「そうなんだ・・・一夏君は昔から苦労してたんだね~。」

 

「私は今の話以外にも聞いてますけど、本当に苦労してるんですよ、一夏様は。」

 

「それで、今はIS学園でまた苦労していると・・・一夏さん、体調には気をつけてくださいね。もし一夏さんに何かあったら、私たちが悲しみます。」

 

「そうだよ~。おりむ~が病気にでもなったら心配でお菓子食べられなくなっちゃうよ~。だからおりむ~、自分を大切にね~。」

 

「それは俺の心配をしてるのか?それとも本音のおやつタイムを心配してるのか?」

 

「え~とね~、両方かな~?」

 

「そんな事だと思ったよ。まったく本音は・・・」

 

「かんちゃんだっておりむ~が病気になったら心配でしょ~?そうしたらお菓子食べられないでしょ~?」

 

「心配はするけど、私はあまりお菓子食べないし。」

 

「ええ~!かんちゃんだって・・・」

 

「本音?」

 

「何でも無いよ~。」

 

 

簪に睨まれて黙る本音。

何を言うつもりだったのか気になる・・・。

 

「別にこの程度で体調を崩す事は無いので、ご心配なく。」

 

「そうですよね~。この程度で体調を崩していたら、一夏様はとっくに病気になってますよね~。それこそ病院がお友達になってるかもしれませんよね~。」

 

「そんな友達はこっちから願い下げだ!」

 

 

確かに俺は友達が少ないが、無機物の友達なんてほしくないぞ。

そもそもそれは友達なのか?

 

「さあ?知りませんよ。」

 

「お前また思考をよんだな。」

 

「何の事ですか~?」

 

「とぼけるのが壊滅的に下手だな、お前。」

 

 

明後日の方向を向きながら口笛を吹こうとしている須佐乃男。

 

「吹けてないぞ?」

 

「・・・分かってますよだ。」

 

「なにも拗ねる事ないだろ。」

 

「拗ねてないです!」

 

 

吹けないなら最初から試みるなよな。

 

「ねえねえおりむ~、他にはどんな事があったの~?聞きたいな~。」

 

「私も~。一夏君、教えて~?」

 

「教えてあげたら如何ですか?」

 

「やっぱ拗ねてるじゃん。」

 

「だから拗ねてないです!」

 

「私も拗ねてると思うよ。」

 

「簪様まで!」

 

「落ち着け。」

 

 

自分が拗ねている事を簪にまで指摘され興奮気味に対応する須佐乃男を宥め、俺は周りを見渡す。

随分と浴衣姿の人間が増えてきたな。

 

「千冬姉の話はまた今度な。」

 

「ええ~!」

 

「一夏君、絶対に話してもらうからね!」

 

「分かりましたよ。ですがそろそろ神社に戻った方が良いみたいですし、今日は勘弁してくださいね。」

 

「そうですよ。一夏さんの苦労話を聞いていてお祭りに行けなかったなんて事になったら、せっかくの浴衣がもったいないですよ。」

 

「苦労話と言うか、千冬姉の駄目っぷりを話しているだけですけどね。本当にあの人の才能は戦闘と勉学にしか開花しませんでしたし。」

 

「私はもっと多いよ~。」

 

「何処が?」

 

「ん~とね~・・・ISの技術はおりむ~のおかげで平均以上だし、料理だっておりむ~には勝てないけど、上手な方だし、それに周りを癒す力だってあるよ~。」

 

「確かにもう千冬姉を超えたな。」

 

「そうですね~。世界最強の千冬様も、あっさり抜かれちゃいましたね~。」

 

「まあ才能は数じゃないもんね。」

 

「別にフォローする必要なんてないですよ。」

 

 

刀奈さんが一応千冬姉をフォローしようとしたが、俺が必要無いと言うとあっさり引き下がった。

 

「それじゃあ神社に戻ろうか~。」

 

「そうですね~。大分歩きましたし、戻った時には祭りも始まってるでしょう。」

 

「よ~し、いっぱい食べるぞ~!」

 

「本音、お前さっき屋敷でお菓子食べてなかったか?」

 

「食べてたよ~。でも歩いたからもう消化されちゃった~。」

 

「早いよ。しかもお菓子分のカロリーを消化するほど歩いてないぞ。」

 

「だいじょ~ぶ!私お菓子なら幾らでも食べられるから~。」

 

「本音、お菓子ばっか食べてちゃ駄目だって前から言ってるでしょ。」

 

「は~い、ゴメンねおね~ちゃん。」

 

「本当に反省してるの?」

 

「してるよ~。」

 

 

へらへらとしている本音を見て、思わずため息を吐いた。

丁度虚さんもため息を吐いたみたいで、本音が文句を言ってきた。

 

「何でため息なの~?そこは拍手でしょ~。」

 

「拍手でもないと思うよ。」

 

「そうだね。」

 

「酷いですよ~。楯無様だってお菓子は好きですよね~?」

 

「まあ嫌いな女の子は少ないと思うけど。」

 

「ですよね~。」

 

「だからってお菓子ばかり食べてたら駄目ですよ。」

 

「だから分かってるって~。おね~ちゃんは心配性だな~。」

 

「俺も心配してるんだが。」

 

「おりむ~とおね~ちゃんは心配し過ぎなんだよ~。そんなに心配ばっかしてると胃に穴が開いちゃうよ~?」

 

「なら少しは心配事を減らす努力をしろ!」

 

「そうですよ。私たちを心配する前に自分の行動を改めなさい!」

 

「怒られちゃった~。は~い、頑張りま~す。」

 

「・・・本当に分かってるのか?」

 

「・・・如何なんでしょう。」

 

 

本音の態度に虚さんと二人で首を傾げた。

 

「なんだか一夏様と虚様って本音様のご両親みたいですね~。」

 

 

須佐乃男が茶化そうとして言った言葉に虚さんが顔を真っ赤にした。

 

「つまり須佐乃男は、俺と虚さんが夫婦だと言いたいのか?もしそうだとしてもこんな大きな子供は居ないだろ。」

 

「・・・一夏様。問題はそこではないのですが・・・」

 

「?」

 

 

他に何の問題があるんって言うんだ?

首を傾げながら周りを見ると・・・

 

「う、う、う、虚ちゃんと一夏君が夫婦!?」

 

「そんな・・・」

 

「私が二人の子供なの~?」

 

「///」

 

「何を興奮してるんですか?例え話ですよ。」

 

 

虚さんは興奮して顔が真っ赤だ。

刀奈さんと簪は逆に真っ青だった。

 

「ねえねえおりむ~。おと~さんって呼んだほうが良い?」

 

「・・・やめてくれ。俺はまだ父になるつもりは無い。」

 

 

冗談でもやめてもらいたい。

こんなやり取りをしていたら神社に着いた。

祭りはすでに始まっていたので、五人と一緒に祭りの中に入っていった。




次回こそは終わらせて新しい話に行きたいです。

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