もし一夏が最強だったら   作:猫林13世

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今回は臨海学校の帰りの話です。


禁断症状の姉

色々とあった臨海学校は終わり、今は帰りのバスで移動中だ。

周りの女子たちは朝早くから最後の思い出作りと言ってはしゃいでいたため寝ている者が多い。

さすがに専用機持ちは起きてるが。

 

「一夏様!トンネルですよ!」

 

「それぐらい言われなくても分かってる。てか須佐乃男、テンションが上がってるのは分かるが寝ている人が居るんだ。声量は抑えろ。」

 

「(分かりました。では脳内に直接話しかけます。そうすれば一夏様も声を出さなくても良いですよね?)」

 

 

・・・以外と便利なんだな。

須佐乃男が脳内会話に変更したため、俺も声を出す必要が無くなった。

人の姿になってもこれが出来るのは正直ありがたい。

俺はテンションの上がっている須佐乃男の相手を声を出さずにした。

 

「一夏さん?須佐乃男さんはどうしたのですか?さっきまであれだけはしゃいでいたのに急に黙ってしまって。」

 

 

だが脳内会話が出来る事を知らない他の人には不審に思ってしまうだろう。

現にセシリアが心配している。

 

「ああ、別に心配する事はないよ。はしゃいでいて五月蝿かったから普通の会話から脳内会話に切り替えてもらっただけだから。」

 

「脳内会話・・・ですか?」

 

「そうです。私は一夏様の脳に直接語りかける事が出来るのです。ですが、他の方には出来ないので傍目には黙りこくっているようにしか見えないんですけどね。」

 

 

俺の説明に須佐乃男が補足する。

 

「そうなのですか。確かに寝ている人が多いこの場所であのような大きな声を出すのはいけませんものね。」

 

「昔のセシリアさんも相当五月蝿かったですよ。教室であのような大声をだして。」

 

「昔の事は言わないでください!」

 

「セシリア、五月蝿い。」

 

 

須佐乃男に入学早々の事を指摘され大声を出すセシリアを注意して落ち着かせる。

 

「すみません、つい興奮してしまいましたわ。」

 

「まあ須佐乃男が煽ったからな、お互い様だろう。」

 

「そうですね、私もつい煽ってしまいました。すみませんね、セシリアさん。」

 

「いえ、一夏さんが仰ったようにお互い様ですし此方もすみませんでした、須佐乃男さん。」

 

 

互いに謝罪した後、声を抑え笑いあう須佐乃男とセシリア。

 

「随分と楽しそうだな。」

 

「ええ、すっごく楽しいですよ。これまで一夏様以外と会話することは出来ませんでしたし、おしゃべりは女の子の趣味ですよ。」

 

「ええ、そうですわね。須佐乃男さんは意外と気さくな方ですし、話していて楽しい気持ちになりますわ。」

 

「そうか?話していると疲れるんだが・・・。」

 

「「それは一夏様(さん)が男の子(男性)だからです(わ)!!」」

 

「そ、そうか・・・。だが二人とも、少し声がデカイぞ。」

 

「「す、すみません・・・。」」

 

 

俺もたじろいたが、二人も俺の反撃にたじろいた。

 

「一夏、楽しそうだね。僕も仲間に入れてよ。」

 

「シャル、俺は楽しくはないんだが・・・。」

 

「そう言うことは別に良いの。セシリア、須佐乃男、僕も一緒におしゃべりしても良いかな?」

 

「「勿論良いですよ(わ)。」」

 

 

女三人よれば姦しい。

これは今の時代にも当てはまるようだ。

声量こそ抑えているが、近くで聞いている俺にとっては迷惑極まりないのだ。

しかしそのことを言えばどうせ怒られるだけだしな・・・。

諦めて意識外に追いやって他の事考える事にした。

須佐乃男のベッドは如何するか。

部屋にスペースはまだあるから学園に申請して部屋に追加してもらおう。

須佐乃男は床に寝ると言っていたが、さすがにそれは可愛そうだしな。

そうすると男一人に女子五人になるな・・・弾には言えん。

考え事をしていたら声が増えていた。

 

「ラウラ、お前まで一緒になっておしゃべりか?」

 

「はい兄上。所謂ガールズトークと言うやつです。」

 

「その知識も副官からか?」

 

「そうです!とても頼りになる副官です。私の知らない事を知っていて、私に教えてくれるのです。彼女が居なかったら私は何も知らなかったことでしょう。」

 

「そうか・・・頼りにしているんだな。」

 

「はい!」

 

 

この純真無垢な女の子に余計な知識を与える神経は如何なんだろう。

俺は会ったこともないその副官について考える事にした。

どうせまたおしゃべりで盛り上がるのだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時は遡りIS学園生徒会室。

 

「おーーーーーそーーーーーいーーーーー!」

 

 

私は生徒会室で一夏君の帰りを待っていた。

現時刻は朝の7時。

当然まだ帰ってくるはず無いのだが、もう二日も一夏君に会ってないのだ。

更識関連の旅館に居るので情報は入ってくるが、それでもやっぱり会いたいのだ。

 

「お嬢様、気持ちは分かりますが仕事をしてください。」

 

 

ちなみに何故生徒会室に居るのかと言うと、虚ちゃんの言葉で分かるように仕事がたんまりあるのだ。

最近は一夏君が手伝ってくれていたので、そこまで大変ではなかったのだが、この二日間はそれはもう大変だった。

今までに無いほどの量の書類の山、それに更識関連の仕事まであったのだ。

なので学園の仕事は朝早くからやる事にしていたのだ。

 

「でもでも虚ちゃん、一夏君に会えなくて寂しくないの?」

 

「それは・・・寂しいですけど。」

 

 

一夏君が学園に入学してから会わなかった日は無かったのに、二日も会えなかったのだ。

虚ちゃんも寂しいに決まっているよね。

 

「これは帰ってきたら甘えまくるしかないわね!」

 

 

私は決心した。

一夏君が帰ってきたら甘えまくってやると。

報告によると一夏君の専用機が人の姿になって一夏君と一緒の部屋で過ごしたようだし、かんちゃんと本音は海で一緒に遊んだようだし、これは甘えても文句は言われない。

私は頭の中で一夏君に如何甘えようか考えていた。

 

「お嬢様、甘えるのは良いですけど仕事してください。・・・私だって甘えたいですよ。」

 

 

文句の後にボソッと虚ちゃんが何かを言った。

 

「ん?虚ちゃん、何か言った?」

 

「い、いえ。何でもありません!さあお嬢様、HRまでにこの書類の山を片付けますよ。」

 

「え~~!無理だよ!」

 

「無理でもやるんです!さあ早く!!」

 

「虚ちゃん、怖いよ。」

 

 

藪をつついて鬼が出てきた。

これからは好奇心に負けないように努力しよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

会ったこともない副官の事を考えていたらまた声が増えていた。

 

「織斑先生?何やってるんですか?」

 

「いやなに、私もガールズトークと言うやつをしてみたくてな。」

 

「なら山田先生や他の教師達とすればいいでしょうが。何で生徒達と一緒になってしてるんですか。」

 

「何でって、話題がお前の事だったのでな。」

 

「教師が生徒の話題で生徒と盛り上がらないでくださいよ・・・。」

 

 

まさかバス移動で疲れる事になるとは。

須佐乃男の事、ラウラの副官の事を考え、姉の行動に呆れ、さらにその行動の原因が俺だと来たもんだ。

精神的に疲れがたまっていっているのがよく分かる。

これ以上疲れないために、俺は寝ることにした。

が・・・

 

「織斑先生。私も良いですか?」

 

「ああ、山田先生。勿論良いですよ。な?」

 

「「「「はい。」」」」

 

「何で山田先生まで来るんですか・・・。」

 

 

もはや俺に逃げ場は無いのか?

夢の世界に逃げようとしても捕まり、もはや手詰まりかと思ったが・・・

 

「そうか・・・山田先生此処どうぞ。」

 

「ありがとうございます、織斑君。」

 

 

山田先生に席を譲り、俺は本音の所に移動する。

 

「あれ~、おりむ~如何したの~?」

 

 

俺が来たことに驚いた本音が聞いてきた。

 

「いや・・・少し疲れた。本音の隣は空席だったよな、休ませてくれ。」

 

「いいよ~、どうぞどうぞ。」

 

 

本音の隣に座り俺はすぐさま眠ってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

私の隣に座ってすぐ、おりむ~は寝てしまった。

昨日のあの騒動の後でも色々と動いていたおりむ~はまともに休んでは居なかったのだろうな~。

顔には出さないがおりむ~はすっごく疲れていたんだろうな~。

そこにあの集団でのガールズトーク、しかも話題が自分の事となると居づらいんだろう。

肉体的、精神的に限界に近い状態だったんだろうと私でも簡単に推測できるくらい、おりむ~は疲れていた。

そういえば私、おりむ~の寝顔見るのは初めてかもしれないな~。

普段私より早く起き、私より遅くまで起きているおりむ~の寝顔を見るのは不可能だったのでこの寝顔はとても新鮮だった。

 

「(こんな顔して寝てるんだな~。えへへ~可愛いな~。)」

 

 

普段はカッコいい印象を与えているおりむ~の顔だが、寝顔は意外と可愛いと感じた。

この顔を他の人に見られないように、私はおりむ~の顔をカーテンで隠したのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目が覚めると目の前に布が広がっていた。

何だこれは・・・。

俺はその布を掴んで正体を知った。

 

「カーテンか・・・でも何で俺の顔に?」

 

 

顔からカーテンを外し、ふと疑問に思ったので口に出した。

 

「え、え~と・・・」

 

「ん?本音、何か知っているな。」

 

 

変に言い淀んでいる時の本音は、何か隠し事をしている合図なのだ。

俺はそのことをよーく知っているので本音に追求をした。

 

「うん・・・私がおりむ~の顔に巻いたんだ。」

 

「何でそんな事を・・・」

 

 

とても意味のある行動には思えない。

そもそも顔にカーテンを巻く行為に意味などあるのだろうか?

 

「ひょっとして悪戯か?」

 

「違うよ!おりむ~の寝顔を他の人に見られたくなかったの~。」

 

「寝顔?そんなもの見られても困らないんだが・・・」

 

「おりむ~が困らなくても私が困るの~!」

 

「何でだよ・・・」

 

 

俺の寝顔はそんなに変なのか?

 

「だっておりむ~の寝顔は女の子を恋に落とすから~。ただでさえおりむ~は女子の間で人気なんだから、これ以上敵は増やしたくないんだよ~。」

 

「敵って・・・そんなに俺の寝顔は良いのか?」

 

「そりゃあもう凄いってもんじゃないよ~!女子のギャップ萌えなんて目じゃないぐらいに萌えるよ~。何で普段から私は見れないんだろ~。」

 

「そりゃあお前が俺より遅くに起きて、俺より早くに寝ているからだろうが。」

 

 

何か暴走している前半部分は聞かなかった事にして、後半部分にのみ答える。

 

「そんな事わかってるよ~!でも見れなかったからこそあんなに衝撃を受けたんだと思うんだ~。だから偶に見るのが良いんだよ~。」

 

「それはつまり・・・生活態度を改める気が無いって事か?」

 

「うん!」

 

 

元気良く頷かれてしまった。

少しは改善してくれると俺も楽なんだけどな・・・。

 

「でもでも~おりむ~の寝顔を見るために少しは努力しようかな~とは思うよ?」

 

「なんで疑問系なんだよ・・・。自分の事だろ。」

 

「えへへ~、なんでだろ~。」

 

「俺が知りたいんだよ・・・」

 

 

本音の反応にまた少し疲れてきた。

せっかく寝て体力回復と精神的疲労が減少したのに、何で俺の周りはこう俺を困らせる人が多いんだよ。

 

「はーいみなさーん!そろそろ起きてくださーい!もうすぐ学園に着きますよー!」

 

 

山田先生がもうじき到着だと告げ、俺は席に戻る事にした。

 

「じゃあ本音、また後で。」

 

「それじゃ~ね~。」

 

 

本音が大きく手を振っているのをみて少し噴出してしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

学園に着いてバスを降りると・・・

 

「おっかえり~。」

 

 

刀奈さんが飛びついてきた。

 

「楯無さん!?危ないですよ。」

 

 

俺は咄嗟に受け止め刀奈さんに注意する。

 

「だって二日半も一夏君に会えなかったんだよ~。これくらいは許してほしいぞ♪」

 

「前は一週間くらい会わなかった事だってあったじゃないですか・・・」

 

「でも一夏君がIS学園に入学してからは毎日会ってたんだよ!なのに二日半も会えなかったんだから寂しかったんだよ。」

 

 

下を向き、声が若干涙声だ。

 

「そんなに寂しかったんですか?」

 

「勿論だよ!一夏君は違うの?」

 

「正直寂しいと思える暇が無かったですね。」

 

 

色々あったからな・・・束さんに計画を警戒したり、束さんの新発明に付き合わされたり、束さんが計画した事件の解決に借り出されたり・・・。

あれ?俺は束さんの相手をしに臨海学校に行ったのか?

 

「色々あったのは聞いてるよ。でも酷いな~。おねーさんはこんなにも寂しかったのに一夏君はまったく寂しがってくれないなんて・・・。」

 

「・・・何か企んでませんか?」

 

 

あまりにも不自然な刀奈さんの言葉に俺は警戒心を働かした。

 

「何もないよ~?生徒会の仕事を手伝ってほしいくらいだよ~?」

 

「本当ですか?まあ生徒会の手伝いくらいはしますけど・・・他に何か隠してますよね?」

 

「・・・須佐乃男ちゃんのベッドは準備出来てるわよ?」

 

「何で言い淀んでんですか?そして何故目を合わそうとしないんですか?」

 

 

これは何かあるな。

俺は確信して生徒会室に向かう。

 

 

 

 

 

 

 

「お帰りなさい、一夏さん。」

 

 

生徒会室に着いた俺を、虚さんが迎えてくれた。

 

「ただいま戻りました。虚さん、もしかして刀奈さんが何か企んでいるか知りませんか?」

 

「そ、そのような事は知りません。」

 

 

やっぱり何かあるな・・・しかも虚さんも一緒になって何かするつもりなのか。

まあ虚さんも寂しかったんだろうし、今回はあまりに酷くないかぎり見逃すことにしよう。

 

「そうですか。で、これが今回の仕事ですか?」

 

「え、ええそうです。お嬢様、さっさと終わらせますよ!」

 

 

唐突の話題変換に驚いた様子の虚さんだが、すぐに立て直し刀奈さんをせっつく。

 

「分かってるよ~虚ちゃん。さあ一夏君、この山を片付けるぞ~。」

 

「俺だけで片付ける訳じゃないんですから、刀奈さんも頑張ってくださいよ?」

 

「おねーさんにまっかせなさーい!」

 

「普段からこれくらいやる気があれば・・・」

 

 

刀奈さんのやる気に何故か嘆く虚さん。

まあ確かに何時もこのやる気ならば、仕事も溜まらないだろうしな。

 

「虚ちゃん、それは言わないお約束だよ。」

 

「そんな約束は知りません!」

 

 

・・・いいから早く始めません?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

生徒会の仕事が終わり、部屋に戻ると・・・

 

「随分と凄いベッドですね・・・」

 

「そうでしょ~。会長権限で用意したんだ~。」

 

「だからって何でダブル!?シングルでいいでしょ!!」

 

「え?だって偶には一夏君と一緒に寝たいじゃない!」

 

「偶にベッドに忍び込んでるでしょうに・・・」

 

 

最後は小声で刀奈さんにツッコミを入れる。

 

「一夏さん、今何か言いました?」

 

「いえ、何も。刀奈さんの行動力に呆れただけですよ。」

 

「確かにこれだけの行動力があるのなら、仕事にも発揮して欲しいですね。」

 

「お姉ちゃん、これはやりすぎだと思う。」

 

「でもおりむ~と一緒に寝れるのは嬉しいな~。」

 

「私も一夏様と一緒に寝られるのは嬉しいですね。」

 

「・・・使うのは決定なんですか?」

 

「「「「「当然(です)!!」」」」」

 

「そうですか・・・」

 

 

まさか簪や虚さんにまで言い切られるとは思わなかった。

 

「じゃあ今日は私と虚ちゃんが一夏君と一緒に寝るね。」

 

「え~ズルイですよ~。」

 

「確かに、何でお姉ちゃんと虚さんなの?」

 

 

いきなりの爆弾発言に唖然としている俺をよそに、簪と本音が刀奈さんに不満をぶつける。

 

「だって二日半も会えなかったんだよ?甘えたいに決まってるでしょ。だから一緒に寝て、目一杯甘える事にしたんだ~。」

 

「したんだ~、って虚さんも納得してるんですか?」

 

「え、ええ。勿論です!私だって一夏さんに甘えたいです!」

 

「そ、そうですか・・・」

 

 

虚さんが開き直って甘える事を恥ずかしがらずに抱きついてきた。

こりゃあ、大変だな。

普段なら頭を撫でれば解決出来るが、これは無理だな。

今日は二人が満足するまで甘えさせる事にした。




禁断症状が出てるのは千冬では無く刀奈と虚でした。
次回はIS学園でのナターシャを書きたいと思ってます。

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