もし一夏が最強だったら   作:猫林13世

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戦闘シーン難しい!
密漁船以外にも余計なものを登場させました。


福音戦開始

織斑先生の発言に息を呑む他の専用機持ちと須佐乃男。

無理も無いだろう。

本来なら学生に任されるような事ではないのだからな。

 

「監視海域を離脱後、衛星による追跡の結果、福音はここから二キロ先の空域を通過する事が分かった。時間にして50分後。学園上層部からの通達により、我々がこの事態に対処する事となった。」

 

 

つまり俺たちは数合わせって事かな?

さすがに前線で軍事用ISと戦えなどとは言わないだろう。

だが、妙に嫌な予感がするんだが・・・。

 

「教員及び更識家は学園の訓練機、船を使用して空域及び海域の封鎖を行う。よって、本作戦の要はお前たち専用機持ちに担当してもらう。」

 

 

嫌な予感って当たるんだな~。

織斑先生に言われた事は俺が最も避けたかったものだった。

なにせ責任重大だからな・・・。

 

「織斑先生、質問なのですが。」

 

 

なんとなくは分かってはいるが、確認しておきたい事があるので、俺は挙手をして発言する。

 

「何だ、織斑。」

 

「軍事用ISに対して実践経験の乏しい俺たちを向かわせるのは何故ですか?連携をまともに確認していない状況では、専用機持ちというアドバンテージも意味を成さない。実力で勝る先生達が前線の方が勝ち目があると思うのですが。」

 

「本来ならそうしただろう。だが、時間が無い。空域及び海域の封鎖に国防が出てくるのを待ってたら福音を取り逃がす。訓練機にも数があるからな。更識の力を借りたとしても完全封鎖出来るかどうか・・・。だから問題点があろうとお前たち専用機持ちの力が必要になるんだ。分かったか?」

 

「納得は出来ませんけど理解は出来ました。では目標ISの詳細なデータを見せてください。それが無いと戦おうにも戦えませんから。」

 

「分かった。ただし、これらは二カ国の最重要軍事機密だ。決して口外はするな。情報が漏洩した場合、諸君には査問委員会による裁判と最低でも二年の監視がつけられる。」

 

「監視なんて今更ですし、此処に居る奴らは事の重大性を理解してますからね。口外するとは思えません。だろ?」

 

 

振り向き他の専用機持ちに尋ねる。

当然とばかりに頷くシャルと鈴とセシリア。

ラウラは軍所属とあって簡単に口を割ることは無いだろうし、簪と本音は暗部世界の人間だ。

須佐乃男も俺に迷惑がかかるような事はしないだろうしな。

全員の意思表示を確認して、織斑先生に向き直る。

 

「良いだろう。これが銀の福音(シルバリオ・ゴスペル)のデータだ。」

 

 

モニターに映し出された銀の福音のデータは、相当厄介なものだった。

 

「広域殲滅を目的とした特殊射撃型・・・私のISと同じくオールレンジ攻撃を行えるようですわね。」

 

「攻撃と機動の両方を特化した機体ね、厄介だわ。しかもスペック上ではアタシの甲龍を上回ってるから、向こうの方が有利ね・・・悔しいけど。」

 

「この特殊武装が曲者って感じがするね。丁度本国からリヴァイヴ用の防御パッケージが来てるけど、連続での防御は難しい気がするよ。」

 

「しかのこのデータでは格闘性能が未知数だ。持っているスキルも分からん。偵察は行えないのですか?」

 

 

データを見て上からセシリア、鈴、シャル、ラウラの順に発言する。

皆の発言に俺が答える。

 

「おそらく偵察は不可能だ。スピードもあるし、何より下手をすれば敵に気付かれる恐れがある。」

 

「確かにそうだな。」

 

「次にセシリアの言っていた事だが、オールレンジ攻撃は確かに同じだが向こうは相当高い攻撃技術があるだろうから、ブルー・ティアーズよりも厄介だと思う。」

 

「悔しいですけど、私はまだ完璧に使えこなせてはいませんし・・・。」

 

「そう落ち込むな。次に鈴が言っていた攻撃と機動の両方に特化しているといったことだが、恐らくだがデータ以上に高い能力なんだろう。」

 

「これ以上だって言うの!?」

 

「だから恐らくだと言っただろ。現段階では確実な根拠があるわけではないんだ。アメリカ・イスラエル両国が正確なデータを送ってきたという確証もないんだし、疑って見た方が良いってだけだ。」

 

 

余計な不安を生むかもしれないが、データを全て信用できる訳ではないからな。

 

「最後にシャルだが、連続で防御出来ないのなら連続で攻撃させないように動けば、そのパッケージは役に立つ。」

 

「どう言うこと?」

 

「相手が攻撃態勢に入ったら、それを妨害するように他の人が動く。恐らく相手の動きに対応出来るのは俺と簪、後は本音の機体ぐらいだろう。だから俺たちが攻撃を拡散させる。それでこぼれた攻撃で、回避が難しいものだけ防御してくれ。そうすればダメージも減るだろうしその分攻撃に回せる。」

 

 

俺の発言に頷く簪と本音。

だがシャルはまだ不安顔だった。

 

「言ってる事は分かったけど、本当に出来るの?相手のスピードや攻撃威力だって定かではないのに・・・。」

 

「俺たちの専用機の本来のスピードならいけるだろう。もう隠す必要も無いですよね?ねぇ、束さん。」

 

 

俺は天井に向かって話しかける。

 

「何!?束、そこに居るのか!?」

 

 

どうやら織斑先生は気が付いては居なかったみたいだな。

 

「えへへ~、いっくんにはバレちゃったかやっぱり。でもちーちゃんは気付けなかったみたいだし、このステルス機能は相当のモノなんだね。」

 

「篠ノ乃博士!?」

 

 

例のステルスを使っていたので他の人も気付いてなかった。

気配を察知出来るラウラですら気付けないモノなら他の人には見つける事は出来ないだろう。

 

「一夏、何故分かった!?」

 

「呼び方が変わってるぞ、千冬姉?」

 

「ええい、そんな事より何故だ!?」

 

 

どうやら公的ではなく私的に気になるようだ。

 

「朝話しただろ。束さんに会ったって。その時にこのステルス機能は知っていた。」

 

「だが、完全に気配を絶たれてはさすがに気が付けないだろ?」

 

「だから気配ではなく存在を探ったんだよ。」

 

「存在?空間を探ったのか?」

 

「ああ、千冬姉は気配察知は得意でも空間を探るのは苦手だったもんな。気付けなくても無理は無い。俺だって気配は感じてなかったんだからな。」

 

 

あっさりと言う俺に、周りは驚いたような顔をしている。

 

「一夏様、そんなこと普通の人間には出来ませんよ?」

 

「分かってるよ、そんな事は。俺が異常だってこともな。」

 

 

須佐乃男に突っ込まれたが、既に分かってる事だ。

俺はサラリと流して話を進める。

 

「それで、もう隠す必要は無いですよね?」

 

「元々隠す必要なんて無いと思ったんだけどね~。いっくん達に言われたから隠してたんだよ。」

 

「どうせこの件にも絡んでるんでしょ?まったく・・・。」

 

「あはは~、それは如何かな~?」

 

 

やはりこの人は今回の事件に絡んでいる。

何かやらかすとは分かっていたが、随分と厄介な事をしてくれましたね。

 

「織斑先生、そう言う事ですので本来の機能を使わせてもらいます。」

 

「・・・しかたないか。よし!織斑、更識、布仏、その専用機本来の能力を持って銀の福音の討伐ならびに捕獲に当たれ!他のメンバーは三人のフォローに回れ。」

 

「了解!」

 

 

俺だけが反応出来たみたいで、まだ他のメンバーは束さん登場に驚き、固まっていた。

 

「分かったのか!!」

 

「「「「「「は、はい!!」」」」」」

 

 

織斑先生の一喝で現実に復帰した専用機持ち達・・・大丈夫か?これで。

一抹の不安を感じながらも作戦決行のために移動する事にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それで一夏さん。本来の能力と言うのは、どう言うことですの?もしかしてまだ手を抜いていたと言うんですか?」

 

 

移動中にセシリアに聞かれた。

まだと言うのは、クラス代表選考の時に俺が雪月、天叢雲剣を使わなかった事を覚えているからだろう。

他の事実を知らないメンバーもこっちを見ている。

 

「別に武器や技を隠してた訳ではないぞ。俺と簪、本音の専用機が第四世代って事だ。」

 

「第四世代!?何でそんなものアンタ達が持ってるのよ!?」

 

「そうだよ!?まだ各国とも第三世代の製作に着手しだした段階だし、形になってるのも少ないのに・・・。」

 

「そうですわ!?第一第四世代なんて一体誰が作ったんですの!?」

 

「そう興奮するな。作ったのは束さんだって言ったろ。」

 

 

簡単な事を失念していたセシリアは「あっ」と口を押さえて驚いた。

 

「でも何故兄上達の専用機を篠ノ乃博士が?兄上だけならともかくこいつらの専用機まで篠ノ乃博士が造ったんだ?」

 

 

さっきの束さんを見て、ラウラなりに束さんの性格が分かったのだろう。

 

「元々は俺の専用機だけを造るつもりだったらしいが、俺がお願いしたんだ。あの人にモノを頼むのは苦労したが、まあそう言うことで簪と本音の専用機を造ってもらったんだ。まあ簪のはある程度出来てたのを束さんが組み立て、改良したものだがな。」

 

「私と~おね~ちゃんの専用機はコアから造ってもらったんだ~。」

 

「はぁ!?コアからですって!!」

 

 

随分と興奮してるな。

こうなる事が分かってたから隠してたんだが、緊急事態だしな。

 

「更識がIS産業に手を出したのは知ってるだろ?」

 

「ええ、それくらいは知ってるわよ。」

 

「専用機を造ろうにも空きのコアが無くってな。一時は断念したんだが、丁度束さんが俺の専用機を造ると連絡してきたからついでに頼んだんだ。」

 

 

あの時は恥ずかしかったな・・・。

 

「それなら一夏!アタシのも頼んでよ。」

 

「はぁ!?嫌だよ。」

 

「何でよ!友達でしょ!?」

 

「もうあの人を動かすのは勘弁したいんだ。何せ代償が大きすぎるからな・・・。」

 

 

あの日の事を思い出し顔を顰めて鈴の発言を断る。

 

「・・・アンタが顔を顰めるって、一体何をしたのよ?」

 

 

付き合いが長い鈴だからこその質問だった。

 

「・・・言いたくない。」

 

「あのね~おりむ~が・・・」

 

「本音~?何を言うつもりなのかな~?」

 

「な、何でもないよ~。」

 

 

余計な事を言おうとしていた本音に、最高に良い笑顔で問い詰める。

本音も危機を感じ取ったらしく、それ以上は何も言わなかった。

 

「余計に気になるじゃないの~!!」

 

 

鈴が暴走しかけたが、簪が宥めてくれた。

 

「それで本来の能力だが、威力とスピードを抑えていたからそれを解き放つだけだぞ?」

 

「それってどれくらいなの?」

 

 

シャルが好奇心を隠しきれてない顔で聞いてきた。

 

「さあ?俺も全力で使ったのは最初だけだし、自立進化型ISらしいから、経験を積めばさらに高い能力になるらしいから現段階でどれくらいかは俺にも分からん。」

 

「じゃあ、ぶっつけ本番ってこと!?」

 

「ああ、そうなるな。」

 

 

あっさりと言う俺をシャルは化け物を見た時のような顔で見ていた。

 

「とにかく、さっき話した通り、銀の福音のスピードに対抗できるのは俺達三人だけだろうから、バックアップは任せたぞ。」

 

 

それだけ言って、出動準備に取り掛かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それでは、そろそろ出動してもらう。標的はもうすぐこの近くの海域に現れる。織斑、この作戦の指揮はお前に任せる。現場の判断で動いてもらって構わない。責任は私が負うから心配するな。」

 

「分かりました。一応は相談しますが、咄嗟の判断で動く事もあるでしょうから、その時はお願いしますよ。」

 

 

それだけ言って俺達は銀の福音が通るであろう軌道上に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「頼むぞ・・・。」

 

一夏達が向かった方向に、私は小さくそうつぶやいた。

本来なら私が行きたいのだが、私はこの作戦の責任者に指名されてしまったので、本部に居なくてはいけない。

折角一夏にカッコいい所を見せれるチャンスだったのにな。

 

「ねえねえ、ちーちゃん。」

 

「何だ、束。まだ居たのか。」

 

 

旅館に戻ると束が話しかけてきた。

 

「この戦闘を箒ちゃんにも見せていいかな~?」

 

「ふざけるな!これは機密情報だぞ!!」

 

「何か起こってるのはもう他の屑達も知ってるって。それに箒ちゃんに見せたいんだ。いっくんの本気を。」

 

「一夏の本気?それを見せて何になる?」

 

 

恐らくだがこの作戦で一夏は本気を出さざるを得ないだろう。

 

「箒ちゃんは知らなきゃいけない。力の御しかたを、力を正しく使える人の姿を。」

 

「・・・だがそれだけでアイツが変わるとは思えないんだが。」

 

「私だってそれだけで変わるなんて思ってない。だけどきっかけにはなるんじゃない?散々悩んで答えを探している箒ちゃんに答えを得た人間の戦い方を見せればさ。」

 

 

束は本気で妹の事を考えているのだろう。

 

「わかった。山田先生に連れてこさせよう。」

 

 

私は束の案に乗ることにして、箒を作戦室に連れてこさせた。

良い結果になることを期待しているぞ、一夏!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そろそろ接触するころだろう。皆、頼むぞ。」

 

 

余計な期待をされている事など露知らず、俺達は目標座標に到着した。

集中して気配を探ると、高速で此処に向かってくる気配を察知した。

 

「来るぞ!」

 

 

雲間から銀色のISが現れた。

あれが銀の福音だろう。

 

「簪!本音!」

 

 

短くそう言って三人で福音を囲むように戦う。

やはり厄介だな、正確なデータが無いと言うのは。

 

「一夏!下に船が!!」

 

 

福音の攻撃を分散させるために動いていたら、シャルからオープンチャネルでそう伝えられた。

 

「船?密漁船か!シャル、ラウラ、攻撃されないようにこっちで何とかするから、二人は密漁船を更識の船の所まで誘導してくれ!」

 

「了解だ、兄上!」

 

「分かった!」

 

 

海上封鎖もやっぱり完璧ではなかったか。

これ以上余計な事が起こらなければいいのだが。

福音の発射したミサイルを斬り捨てながらそう願ったのだが・・・。

 

「一夏さん!封鎖海域周辺に中国の戦艦が!!」

 

「中国!?確かに近いが、何しに来た!俺のデータを取りに来るにしても邪魔にしかならないのが分からないのか?」

 

「分かってても欲しいんでしょ!!」

 

 

鈴に言われて、頭にきた。

 

「鈴!セシリア!二人で戦艦と交渉してきて追い返してきてくれ。当然交渉内容は録音しておく事。もし強行侵入してくるのなら攻撃しても構わない。」

 

「でもそれって国際問題にならないの!?」

 

「今まさにそれの尻拭いをしているんだ。邪魔するなら排除しろ。それに録音内容次第では向こうに非があることが証明出来るかも知れないからな。」

 

「アンタ・・・相変わらず性格悪いわね。」

 

「この状況でそんな事言ってられるお前も相当だ!」

 

「分かったわ!なるべく下手にでて交渉してくるわ!私だって国際問題の原因にはなりたくないしね!!」

 

「鈴さん、問題になるのを前提に考えるのはどうかと思いますよ。」

 

 

先に向かった鈴を追いかけるようにセシリアが追いかける。

これで後詰は居なくなった。

 

「簪!本音!周りに気を使う必要がなくなり次第堕とすぞ!」

 

「分かった!」

 

「りょ~かいだよ~!」

 

 

密漁船はまだ福音の攻撃範囲に居るが、戦艦はその範囲に無い。

密漁船が居なくなり次第決める、そう伝え攻撃を捌き続ける。

 

「おりむ~!向こうのスピードが上がったよ~!向こうに行こうとしてる!!」

 

「分かってる!簪、大津波で足止めを!!」

 

「分かった!」

 

 

福音が密漁船を追おうとしたので大津波で足止めを計る。

120発のミサイル相手にさすがに無理と判断したのか、福音の興味はこちらに向いた。

 

「よし、一先ずこちらに足止めは出来た。」

 

「一夏、密漁船が攻撃範囲から出た!」

 

 

簪の言葉を受けて、俺は銀の福音を堕とすことにした。

いくぞ!須佐乃男!!

 

「(分かりました!リミッター解除、現段階で出せる最大出力で攻撃します。)」

 

 

零落白夜で銀の福音に斬りかかった。

普段の威力を抑えた攻撃ではなく、最大威力だ。

銀の福音は海に落ちていった。

 

「これで終わりか?」

 

 

安堵していたら、落ちていった福音が眩い光を放った。

どうやらまだ終わっては無いようだ・・・。

 




次は第二形態移行ですね。
ちなみに次回はチョッとした試みをします。

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