もし一夏が最強だったら   作:猫林13世

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一人に反省の色が……


問題児三人に対するISの気持ち

 千冬様に呼び出されISの気持ちというのをシャルロットさん、セシリアさん、篠ノ乃さんに教えろと言われたのですが、正直私と他のISとでは気持ちというものでも違いがあるんですよね……

 

「お前がそれを教えれば、少しはISの見方が変わるかもしれないだろ」

 

「それはそうかもなんですが……ですが、私はIS代表でも無いのですが」

 

「一例として話してくれれば問題ない。全てのISがお前のようにしゃべれれば良いんだがな」

 

「一夏様に通訳してもらえば良いじゃないですか」

 

 

 一夏様は訓練機の声なら聞こえるのですし、シャルロットさんやセシリアさんだって訓練機の大事さは知ってるはずですし……篠ノ乃さんは微妙ですが。

 

「そうですね……気持ちというのかは分からないですが、私は一夏様に恋してますね」

 

「それは一人の男としてか? それとも自分の所有者に対してか?」

 

「もちろん男性としてですよ。一夏様はISである私の事もちゃんと女性として扱ってくれますし」

 

 

 私の言葉に、篠ノ乃さんが不満そうな顔でつぶやいた。

 

「所詮道具だろ……何故一夏は私よりコイツを優遇するんだ」

 

「一夏様の中で、篠ノ乃さんは単なる知人です。しかも知人と思うのも嫌な部類のです」

 

 

 これは一夏様の心を読んだ時に知った事ですし、一夏様もはっきりと仰ってたので間違いない話なのです。なのに篠ノ乃さんはその事を認めようとはしませんでした。

 

「そんな訳ないだろ! 一夏と私は幼馴染だ!」

 

「一夏はお前の事など幼馴染だとは認めてない。大体お前が一夏にした事を理解してそんな事言ってるのか?」

 

「私は何もしてないじゃないですか千冬さん!」

 

「学校では織斑先生と呼べ!」

 

 

 千冬様の出席簿アタックが炸裂し、篠ノ乃さんは押し黙った。

 

「一夏様は小学校のお友達を篠ノ乃さんが原因で無くしてますし、力の差がはっきりと出ているのにしつこく付き纏われた事を怒ってました。もちろんそれだけで嫌ってる訳ではないでしょうけども」

 

 

 そもそも一夏様は篠ノ乃さんの事を嫌ってる訳では無いのです。関心が無いだけなのですよね。だから付き纏わなければ普通のクラスメイトとしては接する事は可能だと思うのですが、それで満足する訳も無いですしね……

 

「それで須佐乃男、お前から見たこの三人は如何だ?」

 

「そうですね……私は異端の者としてコアネットワークには接続出来ないのですが、IS界の中でお三方は嫌われてると思います」

 

「ほう、興味深いな」

 

 

 千冬様が私の推察に興味を示したようで、根拠を言うように視線で語りかけて来ました。

 

「まずセシリアさんですが、IS操縦者である事を誇りに思ってるのに対して、ISを労わったりしません。ISを機械だと思ってるのでしょうが、ISだって生きているのです。無理をすれば疲れもしますし故障もします。それなのにしっかりとメンテナンスする時間をもったいないと言って定期メンテナンスの周期もかなり長めです。こんなんじゃISは心を開きませんよ」

 

「確かにオルコットのメンテナンス周期は長めだと、整備科のヤツらも言っていたな」

 

 

 一夏様がブルー・ティアーズの声が聞ければ所有者に不満を持ってるのかがはっきりするのですがね。残念ながら一夏様は訓練機の声しか聞く事が出来ないんですよね……

 

「次にシャルロットさんですが、ISは自由を手に入れる手段だとお考えのようです。デュノア社での事は一夏様から聞いています。ですがISを使って大量虐殺を考えているような人には力を貸してくれませんよ」

 

「そ、そんな事僕考えてないよ!」

 

「いいえ、これは一夏様と千冬様も見抜いていますが、復讐としてIS学園の生徒を数人と一般人をも巻き込むつもりなんですよね? 反省したフリをして」

 

 

 一夏様も千冬様も、相手の思惑を大体正確に読み取る事が出来ますし、それにシャルロットさんの考えてる事は私でも分かるくらいはっきりと表情に表れてますしね。

 

「シャルロットさん、貴女……」

 

「人間の屑だな」

 

「そして篠ノ乃さんですが、貴女は漏れなく全てのISから嫌われています。これは前にも言われたかも知れませんがね」

 

 

 確か体育祭の時に一夏様が言っていたような気がするんですよね。言われてるのに態度を改めないなんて、IS操縦者としてやってくつもりが無いんでしょうか?

 

「そしてクラスメイトの大半から怖いと思われており、一夏様や千冬様から散々指導されてるのに改めようとしない態度、これまで特別指導室に入れられなかったのが不思議なくらいですよ。やっぱり束様の妹さんって事が関係してるんでしょうか?」

 

「別にアイツの妹だという事は関係無い。少なくとも私と一夏にはな。だが日本政府は篠ノ乃の事を気にしてるからな。コイツに善くしとけば束のヤツがコアを造ってくれるんじゃないかって思ってるんだろうよ」

 

「束様が篠ノ乃さんをあまり思って無いと知らないんですか?」

 

「知る訳ないだろ。本人も知らなかったようだからな」

 

 

 千冬様に言われ、私は篠ノ乃さんの表情を見た。私の発言が信じられないのかあんぐりと口を開けて固まっている。

 

「総じて言えるのは、お三方はIS操縦者としては失格の判定をされても仕方ないという事ですかね。一夏様も気にしてましたし」

 

 

 ISを道具として割り切るのは、声が聞こえない人じゃ仕方ない事だと言ってましたが、機械だと割り切ってるのにちゃんと整備しようとしないのが気に食わないとも言ってました。  ISたちも自分たちが機械だと思われてるのは分かってるようですが、それならそれでちゃんとした対応をしてほしいと言っているらしいのですよね。

 

「そういえば須佐乃男、先ほど一夏からメールが着ていてな。終わったら生徒会室傍の物置に来てほしいそうだ」

 

「物置ですか?」

 

 

 確かあの場所には更識や生徒会の重要書類が保管されているんじゃ無かったでしたっけ? 何故そんな場所に呼びつけるのでしょうか?

 

「ご苦労だったな。これで少しは反省に繋がるだろう」

 

「そうですかね? 篠ノ乃さんにいたってはまだ現実復帰してませんけど?」

 

「後で叩いて直すさ」

 

 

 篠ノ乃さんは昔の家電製品では無いんですけどね……まぁ別に良いですけど。

 千冬様に許可をもらい、私は一夏様が待つ生徒会の物置へと急ぐ事にしました。千冬様と一夏様から同時に何かを頼まれたら、私は一瞬の迷いも無く一夏様の頼みを聞くくらい一夏様が大事ですからね。あまり待たせるのもよくありません。

 

「一夏様、来ました……? ここって物置じゃなかったでしたっけ?」

 

 

 到着して扉を開けると、そこは物置では無く一つの部屋になっていました。場所を間違えたんでしょうか?

 

「遅かったな」

 

「あっ一夏様……物置ってここであってます?」

 

「ああ、ここはさっきまで物置だった場所だ。一応挨拶させようと思ってな」

 

 

 そういって部屋の奥から三人の女性が現れました。見た目はしっかり女性ですが、この三人は人間では無い。私のセンサーがしっかりと反応しています。

 

「この姿では初めてですよね。四月一日美紀さんが専用に使ってる打鉄の雪乃と申します」

 

「元エイミィの相棒で、今は鷹月静寂のペアの月乃だ。よろしくな、先輩」

 

「小鳥遊碧さんが専用に使ってるラファールの花乃だよ。お兄ちゃんの専用機さんなんですよね? これからよろしくお願いします」

 

「えっと……一夏様、私は夢を見ているのでしょうか?」

 

「いや、これはれっきとした現実だ。お前以外のISの擬人化に成功したんだよ」

 

 

 可能性としてはあってもおかしくないでしょうが、まさか本当にISが擬人化するとは……私の独占市場が……

 

「何メタな事考えてるんだよ」

 

「大丈夫ですよ。他人の服の具現化などは、須佐乃男さんしか出来ませんし」

 

「ウチらは自分のしか出来ないもんな」

 

「しょうがない、ボクたちは訓練機、第四世代の須佐乃男さんには敵わないよ」

 

 

 とりあえず一夏様が他のISを使う訳では無いようなので、私は冷静さを取り戻す事が出来ました。それにしても、皆さんお綺麗ですね……

 

「雪乃と月乃は修学旅行にも同行してもらうし、花乃も別移動だが京都には来てもらう。荷物の準備とか手伝ってやってくれ」

 

「何故私が!?」

 

「同じISだろ? 俺よりもお前の方が良いだろ。女同士って事もあるし」

 

「ですが、着替えなどは具現化すれば良いだけですし、荷物って言われても学生やってる訳では無いですし……」

 

 

 この三名は私のようにIS学園の学生では無く、あくまでも学園所属の訓練機扱いのはずです。だから荷物なんて無いと思うんですが……

 

「ある程度の自由行動は認めるつもりだからな。少なくともあの問題児三人よりは自由に動けるはずだ」

 

「あの三人を連れて行くんですか?」

 

「まだ最終判断はしてないから何とも言えんが、一応連れて行っていざと言うときの戦力にはなると思ってる。自由行動は今の段階では認められないが」

 

 

 京都まで行って自由行動無しですか……それだったら大人しく学園で反省してるほうが良いと思うのは私だけでしょうか……

 

「とりあえずよろしくな! 須佐乃男さん!」

 

「一夏さんの武勇伝とか聞かせてください」

 

「お兄ちゃんに動かしてもらうって、どんな気分なの?」

 

 

 三名が一斉に私に群がって来ましたが、正直私は自分以外のISとの交流が無かったもので、如何すれば良いのか迷ってしまいました。まさか一夏様がISを擬人化させる事に成功するとは……さすが私たちの恋人です!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 思いのほか擬人化させるのに苦労しなかったため、俺は残りの時間で白椿製造を進める事にした。三人の相手を須佐乃男に任せて……

 

「一夏、私も手伝うよ」

 

「簪。それじゃあデータ整理を頼もうか」

 

 

 簪はあの中でもISに関しての知識が豊富だ。元々自分で専用機を完成させようとしてたんだから当然と言えば当然なのだが。

 

「それにしても、一夏がISを女の子の姿に変えちゃうなんて思って無かったな」

 

「俺だってあの子たちに出来るって聞かなかったらしなかったさ。元々待機状態に出来ないか研究するつもりだったんだから」

 

「そうなの?」

 

 

 俺は簪の問いに頷きながら白椿の本体を組み立てていく。まだコアを入れてないのでただの鉄の塊なのだが、後で文句を言われないように慎重に、正確に組み立てていく。

 

「何時もと違う声が聞こえてな。それで雪乃を動かしたんだ」

 

「一夏、須佐乃男以外のIS動かせるようになったんだ」

 

「まだあの三人だけだけどな。その内他の子も動かせるようになるって雪乃に言われたがな」

 

 

 えっと……これがこっちか。正直訓練機を組み立てるのとは難しさが違うな……もちろん訓練機も難しかったんだが、何機も組み立てたうちに簡単に出来るようになってたからな。

 

「一夏って人間の女の子だけじゃなくって、ISにもモテるんだね」

 

「今更だな。彼女の一人はISだぞ」

 

「そうだけど、須佐乃男は一夏の専用機でしょ? だからだと思ってた」

 

 

 まぁ俺も須佐乃男が俺に恋愛感情を抱くとは思って無かったがな……大体須佐乃男はISなのによくものを食うからな……食費が結構かかってるんだよな。

 

「一夏、このデータは?」

 

「ああ、それはさっき使った静寂のデータだな。月乃にインプットさせてたからな」

 

「月乃のペアは静寂だったね、そういえば」

 

「香澄とどっちにするか悩んだんだが、香澄が辞退したから」

 

 

 これでとりあえず外装は完成だな。後はコアを入れてからじゃないと作業出来ねぇな。

 

「簪、ちょっとデータを見せてくれ」

 

 

 サラ先輩のデータを呼び出してもらい、俺は武装の案を巡らせる。セシリアのピッド兵器のデータはなかなか面白かったが、あれじゃあ第四世代の武装としては弱い……如何やって改良するかな……

 

「大津波のデータも使う?」

 

「あれはミサイル兵器だからな。ピッドとはまた違う」

 

「でも一夏なら応用出来るよね?」

 

「簡単に言ってくれるな……俺だって何でも出来る訳じゃないんだが」

 

「ううん、一夏なら何だって出来るよ。だって私のヒーローだもん」

 

 

 そういって簪は俺の肩に頭を預けてきた。そういえば甘えたがるのは久しぶりだな……

 

「最近構ってやれなくて悪いな。簪だけじゃないが、悪いと思ってる」

 

「仕方ないよ。私たちの彼氏は、世界中から注目を浴びる存在、学園の明暗を分ける存在だからね。忙しいのは分かってるし、それで私たちの相手が出来ないのも仕方ないって理解してるよ。でも、偶にはこうやって甘えたいな」

 

「なるべく時間は作る。だからその時は思いっきり甘えてくれ」

 

 

 簪の髪を撫でながら武装を考える。簪の申し出はありがたかったけども、やはりミサイルとピッドでは根本的に違うしな……

 

「ねぇ一夏」

 

「ん? 何だ」

 

「一夏まで修学旅行に行かないなんて事は無いよね?」

 

「今のところは俺は参加するが、何でそんな事を思ったんだ?」

 

「だって、白椿の製造や、あの三人の指導なんかて残るって事もありそうだって本音が……」

 

 

 本音か……余計な事を考え付いたな……

 

「安心しろ。俺は簪たちと一緒に修学旅行に参加するし、あいつらより簪たちの方が大事だと思ってるから」

 

 

 そもそも問題児更生は教師である駄姉の仕事だ。残るなら俺では無く駄姉だと思うのだがな。

 

「ねぇ一夏、今日はもう作業を終わらせて部屋に戻ろうよ。皆一夏とゆっくりしたいって思ってるよ、きっと」

 

「そうだな……煮詰まったしこれで切り上げるか」

 

 

 せっかくあの三人の事が早く終わったんだ。元々今日は白椿製造には時間を割く予定ではなかったし、外装は完成したんだから今日はもう終わりでも良いよな。俺は誰に聞くでもなくそう心の中でつぶやき、簪と一緒に部屋に戻る事にしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 先ほど須佐乃男さんに言われた事が心に響いています。ISだって感情があれば個性もあるのだと、須佐乃男さんを見ていれば分かるはずでしたのに、私はブルー・ティアーズの事を大事に扱ってませんでしたわ。

 

「セシリア、作業の手が止まってるよ」

 

「考え事するのは後にしろ! ただでさえ仕事が多いんだ! クソッ、一夏め……人の事を幼馴染だと思って無いだと? 私と一緒に過ごした時間は、お前にとって何だと言うんだ!」

 

 

 シャルロットさんと箒さんは何も感じてないようですが、私は先ほどの須佐乃男さんの言葉はかなり気になってます。

 

「(IS操縦者としては失格ですか……ただ動かせるだけではいけないという事なんですね)」

 

 

 私やシャルロットさんは代表候補生ですし、箒さんと比べれば十分操縦者としての技術は持っているのでしょう。ですがそれだけではいけないと、さっきの須佐乃男さんの話で思うようになりました。

 

「(何が足りないのか、まだ分かりませんけどね)」

 

 

 そもそも今手元にブルー・ティアーズは無いですし、ISを動かせる環境でも無いですしね。とりあえず今はしっかりと反省しなければいけませんわね。

 

「シャルロットさん、箒さん、早くこの作業を終わらせますわよ!」

 

「今まで固まってたのに、急に何さ……」

 

「当たり前だ! 理不尽に虐げられるのはこれ以上我慢出来ん! だが逆らえ無いから仕事を終えてから抗議するぞ!」

 

 

 なにやら箒さんは違う理由で頑張ってるようですが、私は今までの自分の行動を恥じる為に作業するんですけどね。IS操縦者になって国家代表候補生にまで上り詰めた事で慢心してましたわね。春先に一夏さんにプライドを砕かれて分かったはずでしたのに、私はまた同じ事を繰り返してたんですわね。

 

「おーし。ここが終わったら次は向こうで作業してもらうからな。しっかり反省して私たちに京都行きを認めてもらえるように頑張るんだな」

 

「分かりましたわ!」

 

 

 私の返事に、織斑先生は少し驚いた表情をしてました。仕方ないとは私も思います。だって昨日まで……いえ、先ほどまで嫌々作業してた私が気合の入った返事をしたんですから。

 

「オルコット、お前変わったな」

 

「そうですか?」

 

「さっきの須佐乃男の話が心に響いたか」

 

「そうです。ISの気持ちを聞いて、改めて自分が驕ってたんだと実感しました」

 

「お前は反省出来るだけマシだ。中には一生驕ったままISを動かす輩も存在するから」

 

 

 元世界最強でIS開発に携わったとされている織斑先生の言葉は、なかなかの重みを含んでいました。

 

「あとの二人もお前のように反省してくれると良いんだがな」

 

「まさかシャルロットさんがあんな事を考えていたなんて、思ってもみませんでした」

 

 

 シャルロットさんの計画が露呈したため、私たちよりシャルロットさんの作業が多めになりました。可哀想だとは思いますが、ご自分が考えていた事が原因ですので、同情は出来ませんけど。

 

「オルコットはこのまま行けば京都旅行を楽しめるかもな」

 

「精一杯頑張ります!」

 

 

 せっかく京都に行けそうなのですから、精一杯観光したいですし。私は反省の為と京都満喫の為に精一杯修繕作業をする事にしました。




セシリアはこのまま反省するのか……

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