もし一夏が最強だったら   作:猫林13世

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ここから原作であったフラグをバッキバキに折っていきます。


海での騒動と大天災

「海!海見えたー!」

 

「少し落ち着きなさいよ・・・でも、海ね~!」

 

「貴女も興奮してるわよ?まあ、気持ちは分かるけどね。」

 

 

バスの中でテンションが上がっているクラスメイトを横目に俺はこの臨海学校に少し不安がある。

行事自体には特に不安はないが、この期間内に篠ノ乃の誕生日がある。

最近疎遠になっているとはいえ、束さんが無いもしないなんてありえないだろうしな・・・。

篠ノ乃だけに向けてのプレゼントではなく、周りを巻き込んでのハチャメチャなプレゼントを計画しているような気がして素直に行事を楽しめないのだ。

 

「一夏さん、何か心配事でもあるのですか?」

 

 

隣の席にいるセシリアが心配そうに俺の顔を覗き込んできた。

心配事は常にあるのだが、今回の心配事はさすがに大きい。

だがら顔に出ていたのだろう。

 

「まぁ、ちょっとな。心配かけたか?」

 

「ええ・・・なにせ一夏さんがそこまで顔に出すのは珍しいですし、大事な友達の事を心配するのは当然ですわ!」

 

「そうか・・・ありがとな。」

 

「いえ・・・」

 

 

セシリアも随分と変わったな。

だが何故そこで顔を赤らめる?

 

「(彼女も年頃の乙女ですからね。一夏様の表情を見て耐えられる人のほうが少ないですよ。この女の敵!ラブコメ体質!!)」

 

 

何だ一体?

須佐乃男が暴走し始め、俺は動揺した。

てか酷くないか?女の敵って・・・。

 

「(酷くないですよ!十分女の敵ですよ!!四人も彼女がいて、それ以上に周りから想われているんですよ!?これが女の敵じゃなけてば何だって言うんですか!!)」

 

 

・・・好きで想われてる訳じゃないんだが。

俺の力ない反撃は須佐乃男の更なる怒りを買ったようだ。

 

「(一夏様が如何思おうが関係無いんですよ!そもそも滅多に見せない笑顔をセシリアさんに見せておいて関係無いじゃ済まされませんよ!!自分の笑顔にどれだけの威力があるか分かってるんですか!?私ですら滅多に見られないんですよ?その笑顔を高々2、3ヶ月の相手が顔を赤らめない方が不自然です!寧ろ異常です!!それだけの破壊力があるんです!)」

 

 

・・・そこまで言わなくても良いだろうが。

俺だってへこむんだぞ。

 

「(言われてへこむくらいなら自覚してくださいよ。どれだけ自分がもてるのかを。どれだけ自分の表情が出てないのかを。)」

 

 

・・・分かったよ。

もはや反撃する気力が無い俺は須佐乃男に言われた事を素直に受け入れた。

なんだか疲れたな・・・。

移動中のバスでこれほど疲れるとは思ってなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて諸君。荷物を置いたらしばらくは海で自由にしてきて良いぞ。」

 

 

旅館に着き、織斑先生の一言で自由時間に突入した。

俺はとりあえず旅館の人に挨拶をするために織斑先生の後ろで歓迎してくれている従業員の人に声を掛けようとしたが・・・

 

「あれ?どっかで見た事が・・・?」

 

 

記憶の中で該当する人を探す。

えーと・・・あっ!更識の屋敷で見たんだ。

よかった、今度は覚えてた。

俺は更識の人間であろう彼女に声を掛けた。

 

「あの、お世話になります。」

 

「ええ、御当主様から聞いています。ゆっくりしていってくださいね。」

 

「分かりました。できるだけゆっくりしたいと思います。」

 

 

俺はそれだけ言って部屋に向かった。

・・・あれ?俺の部屋って何処だ?

部屋割り表を見ても俺の名前は無い。

そりゃクラスメイトや他の同級生は皆女子だから同じ部屋では無いことくらいは部屋割り表を見る前から分かってはいたが、まさか野宿でもしろと言うのか?

 

「織斑、お前の部屋はこっちだ。」

 

 

部屋割り表を見て疑問に思ってるのが伝わったのか、織斑先生が案内してくれる事になった。

・・・嫌な予感しかしないのは気のせいだと思いたい。

 

「ここがお前の部屋だ。」

 

「ここって・・・先生たちの部屋ですよね?」

 

 

つれてこられたのは教師陣が泊まる部屋の一つ。

張り紙には織斑千冬と書いてある。

 

「そうだ。今回はクラスで部屋を分けたからな、更識と一緒に出来ない以上お前は私と一緒だ。」

 

「織斑先生と?本来なら山田先生が一緒になるはずですよね・・・まさかまた脅したんですか?」

 

 

クラス担任と副担任で一部屋のはずだが、この部屋は織斑先生一人。

なにか策略を感じるのは当然だった。

 

「気にするな。山田先生はもっと良い部屋に一人で泊まることになってるからな。」

 

「この作戦室って場所じゃないですよね?」

 

「なっ!何で分かった!?」

 

「なんとなくですよ・・・さすがは更識の手のかかった旅館ですね。何が起こってもすぐに対応できるようにこんな部屋まで用意してあるとは。」

 

 

さっき会った女性の他にも何人か見た事がある顔があった。

おそらくは更識の関係者が潜入しているのではなく、元々更識の関係者の旅館なのだろうな。

 

「さすが一夏。お前に隠し事は出来ないみたいだな。」

 

「てか、更識の人間があれだけ居れば分かるって。それじゃあ俺は海にでも行ってくる、本音に誘われてるし。」

 

「ああ、私も後で行く。」

 

 

教師と生徒の会話から姉弟の会話になったので俺は敬語から普段の話し方に変え、千冬姉と別れた。

さてと、何処で着替えれば良いんだ?

さすがに更衣室くらいはあるだろうが、何処にあるのか聞くの忘れた。

しばらくうろついていたら旅館の人が案内してくれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

更衣室から海に行くと既に女子たちが大勢遊んでいた。

どうして女子はこういった行事になるとはしゃぐんだろうか?

文化祭しかり体育祭しかり、行事になると張り切るのは圧倒的に女子が多い。

そんな事を考えながら歩いていると、女子たちの会話が聞こえてきた。

 

「わ、ミカってば胸おっきー。また育ったんじゃないの~?」

 

「きゃあ!も、揉まないでよぉっ!」

 

「ティナって水着だいたーん!すっごいね~。」

 

「そう?アメリカでは普通だと思うけど?」

 

「会話に割り込んですまないが、此処はアメリカではないぞ。」

 

「ん?君は確か鈴の・・・」

 

「ああ、織斑一夏だ。君は鈴のルームメイトのティナ・ハミルトンさんだよな?」

 

「ええ、よろしくね。」

 

 

何度か顔を合わせた事はあったが、実際に話すのはこれが始めてだ。

 

「何時も鈴がすまないな。」

 

「いやいや、なかなか面白い娘だよ。一緒に居て退屈しないからね。」

 

「それは俺も思うが、幾分暴走気味なのがな・・・。」

 

「ああ・・・それはもう。」

 

 

同じ苦労をしているもの同士、仲良くなれそうだな。

普段から友達を作ろうとはしているのに、俺が話しかけると何故か顔を赤くしてどっかに行ってしまう女子たち。

さっきバスの中で須佐乃男に言われた俺の事を想ってる娘たちなのだろうか?

それとも俺の事が嫌なのだろうか?

そんな事を思いながらティナさんと楽しく会話をした。

ああ、そういえば・・・

 

「さすがに外で胸を揉むのはどうかと思うぞ?」

 

「ふぇ!聞こえてた?」

 

「まぁ・・・一応は。」

 

 

一応注意だけして俺は本音たちを探すために彼女たちと別れた。

 

「あら?一夏さん、誰かお探しですか?」

 

「ん?セシリアか。ああ、本音と簪を。」

 

 

今度はセシリアが話しかけてきた。

 

「布仏さんと更識さんならさっきあっちに居ましたわ。」

 

「そうか・・・ありがとう。・・・む!」

 

 

お礼を言ったとたんに背後から何かが飛び込んできたので俺は咄嗟に回避をした。

そうしたら・・・

 

「むぎゃ!」

 

 

鈴が顔から砂に突っ込んでいた。

 

「・・・何やってるんだ鈴?」

 

「何で避けるのよ!」

 

 

ガバッと勢いよく顔を上げこちらを睨んでくる鈴。

 

「何でって、お前俺の肩にでも乗るつもりだったろ。」

 

「当然!」

 

 

疑問系ではなく断定口調で鈴に言うと、胸を張って堂々と頷く。

威張って言えることではないと思うが・・・。

 

「そうしたら重いだろ。だから避けた。」

 

「アタシはそんなに重くない!」

 

「そうか・・・ならもしお前が俺の肩に乗ったら、俺はお前の足を掴んで海に放り投げてただろうな。砂に埋まるのと海に沈むの・・・どっちが良かった?」

 

「・・・砂。」

 

 

俺がIFの話をすると鈴は顔を青ざめてボソッと答えた。

でも鈴は泳げるよな?海でも良かったんじゃないか?

そう思って鈴に言うと・・・

 

「だってアンタに投げられたら何処まで行くか分からないじゃない!しかも相当な高さと威力で海に落ちたら意識失うわ!!」

 

「俺だって加減ぐらいするんだが・・・。」

 

「アンタの加減は普通の人間の本気と大して変わらないわよ!」

 

 

やれやれ、IFの話でここまで本気にならなくても良いだろうが。

 

「あの、一夏さん!」

 

「ん?何だセシリア?」

 

 

鈴をからかって遊んでいたらセシリアが話しかけてきた。

そういえばセシリアずっとここに居たのか?

 

「背中にサンオイルを塗って欲しいのですが・・・」

 

「何でそれを俺に頼むんだ?」

 

「だってここには一夏さんしか居ませんし・・・」

 

 

鈴も居るんだが・・・。

俺はあたりを見渡し、クラスメイトを見つけた。

 

「鷹月さん!」

 

 

俺はクラスメイトである鷹月静寂さんに声を掛ける。

俺が話しても顔を赤くして逃げていかない数少ないクラスメイトの一人だ。

 

「如何したの、織斑君?」

 

「いや、セシリアがサンオイルを塗って欲しいみたいなんだ。鷹月さん、塗ってあげてくれ。」

 

「え、ちょっ!」

 

「分かったわ。じゃあセシリア、うつぶせになって。」

 

 

これで本音と簪のもとに行ける。

 

「おりむ~こっちこっち~。」

 

「一夏、遅かったね?」

 

 

二人のもとに着いたら簪に疑いの目を向けられた。

 

「ん?まぁ色々と話してたからな。遅くなったのは謝る。」

 

 

俺は素直に頭を下げ簪に謝った。

 

「別に謝ってほしかった訳じゃないよ。」

 

「分かってるが一応な。」

 

 

一緒に居たかっただけなんだろうが、それでも俺が遅れたのは事実だからな。

 

「おっりむらく~ん!一緒にビーチバレーしようよ~!」

 

 

簪に謝罪していると向こうから声を掛けられた。

確か・・・相川さんだな。

 

「ああ、良いぞ!ほら本音も簪も行くぞ!」

 

「えっ、ちょっ、まっ!」

 

「お~やるぞ~。」

 

 

本音と簪の手を取ってビーチバレーをするために移動する。

 

「一夏、モテモテだね。」

 

「シャル、そこのバスタオルお化けは何だ?」

 

 

ちょっかいを出してきたシャルの背後に謎のバスタオルで包まれたお化けが居た。

 

「ああ、これラウラだよ。」

 

「ラウラ?何でバスタオルに包まってるんだ?」

 

「兄上・・・だって恥ずかしい・・・。」

 

「なら何で水着になったんだよ・・・。」

 

「教官に言われましたので。」

 

 

ああ、千冬姉にね。

 

「いったいどんな水着なんだよ?そんなに恥ずかしい水着なのか?」

 

 

ラウラに聞いても意味がないだろうから、俺はシャルに尋ねた。

 

「いや、普通に可愛いと思うけど。」

 

「そうなのか?ラウラ、そのままだと遊べないだろ。バスタオルから出て来い。」

 

 

そう言ってラウラのバスタオルを本音に剥がさせる。

 

「やめろ!自分でする!!」

 

 

にたにたと笑みを浮かべながら近づいてくる本音に恐怖したのか、自分でバスタオルを剥がした。

 

「えーい、笑いたければ笑え!」

 

「別におかしな所は無いぞ?可愛いじゃないか。」

 

 

何処か恥ずかしがっているラウラに俺は素直な感想を述べた。

 

「か、かわ!可愛いのか!?この私が!?」

 

「ああ、可愛いと思うぞ?なあ?」

 

「可愛いよ、ボーデヴィッヒさん。」

 

「うん!可愛いよ~ラウラウ~。」

 

「やめろ!手をわきわきと動かすな!!」

 

 

本音に迫られ逃げていったラウラ。

おい、そっちは海だぞ・・・。

 

「織斑君、早くやろうよ。」

 

「ああ、すまない。それでどう言うルールでやるんだ?」

 

「きりよく10点先取で。スパイク無しの3対3で。」

 

「分かったが、どうやってチームを作るんだ?」

 

 

もし俺と簪と本音だったら、実質俺一人だ。

 

「ジャンケンで決めよう!」

 

「そうだね。織斑君とチームメイトになりたいし。」

 

 

ジャンケンか・・・それならなんとかなるだろうな。

 

 

 

 

 

 

 

ジャンケンの結果、俺のチームメイトはシャルと簪になった。

 

「よろしく、一夏、更識さん。」

 

「ああ、よろしくなシャル、簪も。」

 

「う、うんよろしく。」

 

 

体力面で若干の不安がある簪がだが、相手には本音が居る。

本音はこう言った球技苦手だからな。

 

「それじゃあ、そっちのサーブからでいいぞ。」

 

 

俺がそう言うと・・・

 

「ふっふっふ。七月のサマーデビルと言われたこの私の実力を・・・見よ!」

 

 

クラスメイトの櫛灘さんがジャンピングサーブを放つ。

てか、何だ、七月のサマーデビルって?

などと考えていたが、ボールが来た以上余計な事は考えている暇は無い。

 

「まかせて!」

 

 

シャルがボールを追い、レシーブに入る。

さすがは優等生、声掛けは基本だからな。

 

「え?きゃ!?」

 

 

砂に足をとられこけるシャル。

そして巻き込まれそうになる簪・・・おいおいやばいぞ。

俺は咄嗟に砂を蹴り二人のもとへ走る。

シャルを抱え、簪を庇い、ボールを蹴り飛ばす。

 

「大丈夫か?」

 

「え、一夏?うん大丈夫だけど・・・」

 

「一夏、ありがとう。」

 

 

何が起こったのかわからない感じのシャルと分かっている簪とで反応が違う。

ちなみに・・・

 

「わ~!ボールだ~!」

 

 

俺が蹴っ飛ばしたボールは本音のもとに飛んでいった。

 

「これで一点か?」

 

 

本音がボールを弾いてしまったので俺は確認する。

 

「ええ!?今の有効なの!?」

 

 

何をそんなに驚いてる、下に落ちてないんだから有効だろう、いやビーチバレーは足を使っちゃいけないのか?

 

「何をやっている馬鹿共。」

 

「織斑先生、馬鹿共は酷いんじゃ・・・。」

 

 

おっと織斑先生と山田先生の登場だ。

 

「織斑先生、綺麗・・・。」

 

「やまちゃんもすっごいね~。」

 

 

二人の水着は所謂ビキニだ。

これは先日俺と本音と簪とで出かけた日に偶然二人に会って俺が選んだ水着だ・・・いや選ばされた水着だ。

織斑先生が黒、山田先生が黄色の水着だ。

 

「我々も一緒にやっても構わないか?」

 

「ええ!じゃあ私たちは変わりますね。」

 

 

そう言って相川さんと櫛灘さんが織斑先生と山田先生と変わる。

 

「さて、いくぞ!一夏!!」

 

「織斑先生・・・今は学校行事中ですよ?普段呼びは拙いんじゃないですか?」

 

「構わん、今は自由時間だしな。」

 

「あっそ・・・なら来い!千冬姉!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この後俺と千冬姉以外が入る事の出来ない試合になってしまった。

 

「ふう、さすがに勝てないか。」

 

「よく言うよ。散々勝ちに来てたくせに。」

 

 

結果は僅差で俺の勝ちだった。

 

「それじゃあ俺はちょっと散歩してくるから、本音と簪のこと頼む。」

 

「ああ、じゃあな。」

 

 

俺は嫌な気配を感じてそっちに向かうことにした。

たぶん千冬姉も感じているのだろう・・・素直に俺が離れていくのを認めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さてと・・・何してるんですか、束さん?」

 

 

一見何も無い空間に声を掛ける。

すると・・・

 

「いや~、やっぱりバレちゃったか~。」

 

 

いきなり束さんが現れた。

相変わらず神出鬼没な人だな。

 

「本気で隠れてなかったでしょうが。俺や千冬姉から隠れたかったらこんな近くに隠れませんよね?」

 

「あはは~さっすがいっくん、お見通しだね~。」

 

 

バレたことをなんとも思わず、ケタけたと笑う束さん。

 

「何しに来たんですか?」

 

 

この人が何にも無くこんな人の多い場所に来るはずがない。

 

「ん~?なにやら楽しそうな事が起こりそうだからね~。それを見に来たんだ~。いっくん、今度須佐乃男をじっくり見せてね~。」

 

 

それだけ言ってどっかに行ってしまった束さん。

いったいこれから何が起こるって言うんだ?




まず今回はセシリアと鈴の海でのフラグを折りました。
サンオイルは鷹月さんに、肩車は避けられてその後の競泳も無し。
次回はシャルのフラグを折ろうかと思ってます。
そしてついにあのキャラが・・・お楽しみに。

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